最終更新: 2022年6月25日

The xxのメンバーであるOliver Sim(オリバー・シム)がソロデビューアルバム『Hideous Bastard』をリリースする。

この記事では『Hideous Bastard』収録曲である「Hideous」をBELONG独自の解釈で和訳している。

オリバーが長年引け目に感じ、隠し続けていた衝撃の事実とは?

Oliver Simとは

Oliver Sim(オリバー・シム)
Oliver Sim(オリバー・シム)は1989年6月15日生まれのイギリス・ロンドン出身ミュージシャンで、The xxのベーシスト兼ボーカリストである。

オリバーのミュージシャンとしてのキャリアのスタートは、15歳の時にロミー・マドリー・クロフトとデュオ形式でバンドを始めたことであった。

2005年に活動を開始すると、ギタリストのバリア・クレシが加入し、その1年後にジェイミーXXとしても知られるジェイミー・スミスが加入し、The xxがスタートする。

The xxは2017年にサードアルバム『I See You』をリリースし、O2アカデミーでソールドアウト公演の最長記録を打ち立てた後、バンドメンバーは現在、全員ソロ活動を行っている。

Hideous

Hideous Bastard

Oliver Sim(オリバー・シム)の新曲「Hideous」はThe xxのメンバーであるJamie xxがプロデュースし、2022年9月9日にリリースされる『Hideous Bastard』の収録曲である。

「Hideous」はBronski BeatとThe CommunardsのJimmy Somervilleをゲスト・ボーカルに迎え、2022年5月23日にアルバムより先行リリースされた。

ミュージックビデオはYann Gonzalezが監督している。

Oliver Sim – Hideous (Official Video)

Hideous和訳

Oliver Sim(オリバー・シム)の新曲「Hideous」について。

今まで目を背けていた居心地の悪い事実がテーマの楽曲を和訳していく。

僕は醜い
今は不安定で、沈んで血みどろだ
だけど、ずっと不運な人生を歩んできたわけでもない
僕のことを本当に愛してくれる人がいるんだ

“I’m ugly
I’m up and down right now, I’m down and bloody
But I don’t feel as though I’ve been unlucky
I have people in my life that really love me”

引用元:Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」歌詞(Genius Lyrics)

君の瞳に映る僕を見た
両側から僕を見てみたら
僕は恐ろしいかな
光にあたると僕の涙は自然と乾くんだ
僕は恐ろしいかな

“Caught my reflection in your eye
Now you’ve seen me from both sides
Am I hideous?
My tears naturally dry
On exposure to the light
Am I hideous?”

引用元:Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」歌詞(Genius Lyrics)

僕は隠れる
家にいる連中は嫌な奴にならないでくれてるのに
僕は一人で生活して、うちに篭って
知らない男に全てを捧げていながら
寂しいだなんてね

“Oh, I hide
Though the company at home can be unkind
Yet I live alone and refuse to go outside
How dare I feel so lonely
When I’m giving all my time to a man who doesn’t know me”

引用元:Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」歌詞(Genius Lyrics)

ボロボロに捨ててくれよ
病んでいてひねくれた僕を
あぁ僕はおぞましい
君が最悪な時にいたのなら
代わりは簡単だったのに
あぁ僕はおぞましい

“Why don’t you leave me in the dirt?
That I’ve been sick and I’m perverse
Oh, I’m hideous
If I’ve had you at your worst
It was easy in return
Oh, I’m hideous”

引用元:Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」歌詞(Genius Lyrics)

僕の声に従ってくれ
愛らしい少年よ
ただ君を守るために
聞いてくれ
立派で、信じる心を持ってくれ
愛されることを、ただ喜んでくれ

“Follow my voice
Sweet natured boy
Just to keep you safe
Listen for me
Be brave, have trust
Just be willing to be loved”

引用元:Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」歌詞(Genius Lyrics)

絶対に嘘はつかないという誠実さが
僕を自由にしてくれるかもしれない
17歳の頃から
HIVだってことは
僕をおぞましくするかな
僕は恐ろしいかな

“Radical honesty
Might set me free
If it makes me hideous
Been living with HIV
Since seventeen
Am I hideous?”

引用元:Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」歌詞(Genius Lyrics)

Hideous和訳まとめ

苦悩
クレジット:pexels
Oliver Sim(オリバー・シム)の新曲「Hideous」では、彼自身がゲイであること以外に17歳の時からHIVであるという、衝撃的なカミングアウトが盛り込まれている。

HIVについて

レッドリボン
クレジット:pexels
まず、オリバーがカミングアウトしたHIVについて、正しい知識を紹介したい。

“HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス (Human Immunodeficiency Virus)の頭文字を取ったもので、ウイルスの名前です。HIV感染とは、身体の中にHIVが住み着いている状態をいいます。HIVに感染していても多くの人では長い間、症状は現れません。この状態を「無症候性キャリア」といいます。

HIV感染症が進行すると身体の免疫力が低下し、その結果として様々な感染症や合併症(以下の23の指定された日和見感染症のどれか=エイズ指標疾患)を発症してきます。その状態を「エイズの発症」といいます。

エイズ (AIDS) とは、後天性免疫不全症候群 (Acquired Immunodeficiency Syndrome) の略称です。HIVに感染することと、エイズを発症することはイコールではありません。”

引用元:HIV感染症とエイズの違い(AIDS/HIV総合治療センター)

Oliver Simインタビュー

オリバー自身にとってHIVであることをカミングアウトするのに15年もの歳月を要しており、明らかにすることは決して簡単なことではなかったはずだ。

下記にオリバー自身の言葉で語ったインタビュー内容を紹介したい。

“このアルバムの多くで羞恥心と恐れについて話さないといけない、僕は羞恥心の1番大きな原因を今まではぐらかしてきた、そんなことを思いながらこの曲を書いたんだ。

もし僕が羞恥心の底に沈んでいたら、そういうことは表現しないアルバムを作っていたと思う。

(中略)

「Hideous」ができた時、母はとても重要なアドバイスをくれたんだ。曲に取り掛かる前にちょっと人と話してみるのはどう?ってね。そこで、まずはエルトン・ジョンにコンタクトを取ってみたんだ。

(中略)

その烙印(ゲイであること)は僕のセクシャリティを通じて、HIVと結びつき始めたんだ。まるでセックス自体が破滅的であったり危険で恥じるべきものかのようにね。そして僕はそれら2つを切り分けたかったんだと思う。

このアルバムはHIVについての作品ではないんだ。僕は純真じゃない。もちろんHIVについても触れるし、それがこのアルバムを定義することの要素となるとは思うけど、それは僕の見方とは違うんだ。これは羞恥心と恐れ、そして祝福についてのアルバムなんだ。”

引用元:The Horror and Happiness of Oliver Sim
(The New York Times)

The xxとオリバー・シム

The XX(ザ・エックス・エックス)
The xxの音楽はメンバー、特にオリバー・シムがオープンマインドになることで、音楽性を進化させてきた。

前作『I See You』のテーマは親密さでバンドが自己開示することで、リスナーとの深いコミュニケーションをもたらした名作であった。

一方でオリバーの新作『Hideous Bastard』は、自身の辛い過去をさらけ出す内容である。

それをカミングアウトできたのはひとえにThe xxの『I See You』で達成できたリスナーとのより深いつながりなのではないだろうか。

だからこそ彼はすべてをリスナーに委ねるかのごとく、ここまで自身の暗部をオープンにできたのだ。

この曲でオリバーは自身のネガティブな部分をカミングアウトすることで、リスナーに秘密を共有することの大切さを伝えたかったのではないだろうか。

「Hideous」は彼にとって、記念碑的な1曲であると同時にThe xxにとってもより大きな飛躍をもたらす足がかりに違いない。

Oliver Sim作品クレジット

Oliver Sim(オリバー・シム)「Hideous」のクレジットは下記となっている。

プロデューサー:Jamie xx
作詞・作曲:Jimmy Somerville & Oliver Sim
リリース日:2022年5月23日

Oliver Simアルバム作品

1stアルバム『Hideous Bastard』

Hideous Bastard
発売日: 2022年9月9日
収録曲:
1.Hideous feat. Jimmy Somerville
2.Romance With A Memory
3.Sensitive Child
4.Never Here
5.Unreliable Narrator
6.Saccharine
7.Confident Man
8.GMT
9.Fruit
10.Run The Credits
+日本盤ボーナス・トラック
フォーマット:CD
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Oliver Sim代表曲(Youtube)

  • Oliver Sim(オリバー・シム) – Fruit (Official Video)
  • Oliver Sim(オリバー・シム) – Romance With A Memory (Lyric Video)

ライター:yabori
yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

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Twitter:@boriboriyabori