最終更新: 2023年9月21日

サマソニ2022で来日が決定しているThe 1975が新曲「Part Of The Band」をリリースした。

本記事では「Part Of The Band」という楽曲に至るまでのThe 1975の音楽ジャンルの変遷を追い、BELONG独自の解釈で考察している。

常に新しい音楽を追求し続けるThe 1975が影響を受けてきた音楽ジャンルとは?

そもそもThe 1975とは

The 1975(2022)
撮影:Samuel Bradley
The 1975はイギリスのマンチェスターを中心に活躍するバンドである。

メンバーは以下の通りである。
・マシュー・ヒーリー(Vo./Gt.)
・アダム・ハン(Gt.)
・ロス・マクドナルド(Ba.)
・ジョージ・ダニエル(Dr.)

メンバーは高校時代にバンドを結成し、2013年にはDirty Hitと契約、そしてアルバム『The 1975』でデビューした。

デビュー直後から世界的に注目の的であり、The 1975はサマーソニック2022でヘッドライナーとして来日する。

このように若手ながらもヘッドライナーを飾るほどの実力を持つスーパーバンドである。

2000年代における“ロックの王者”はArctic Monkeysと言われる事があるが、2010年代のそれはThe 1975であると思う。

そんな実力派のThe 1975が辿ってきた音楽ジャンルの変遷を見ていく。

そしてその末に生まれた新曲「Part Of The Band」はどの様な楽曲なのか考察する。

The 1975が歩んだ音楽ジャンルの変遷

The 1975が歩んだ音楽ジャンルの変遷を辿るためにまず、これまでにリリースしてきたアルバムごとの音楽性の特徴をまとめていく。

The 1975

1stアルバム『The 1975』
2013年にリリースされたThe 1975のデビューアルバム『The 1975』はデビュー前に発表していたEP『Music for Cars』などの楽曲を収録したアルバムである。

このアルバムの音楽性としては以下のようなジャンルのミックスと考えられる。

  • インディーロック
  • エレクトロポップ
  • ポップパンク
  • デビューアルバム『The 1975』は“ロックが主流じゃない時代におけるギターロック”に位置づけられる。

    歌詞で取り上げていたテーマは人間関係、ドラッグ、アルコール、恋愛など。

    そんな“若さ故の危なっかしさ”が若者の共感を得ており、そこが本作の魅力である。

    リードトラックの「Chocolate」ではドラッグの隠語としてチョコレートという言葉を使用している。

    よって本作を一言で表現するならば“10代へのアンセム”のアルバムである。

    サウンドも直球のインディーロックという範疇に収まり、そこが多くの人々にとってキャッチーな音楽であったと。

    The 1975 – Chocolate (Official Video)

    I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It

    2ndアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』
    The 1975が2016年にリリースしたセカンドアルバムはまず、長尺なタイトルにインパクトがある。邦題は『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』であり、このタイトル通り、前作に比べてアダルトな作風になっている様に感じる。

    本作には以下の音楽ジャンルの要素が見られる。

  • シンセポップ
  • ニューウェーブ
  • ダンスロック
  • ジャズ
  • サウンドは前作のバンドサウンド中心からサックスなど様々な音色が増えた事で先にも述べた様にアダルトな仕上がりになってる。

    歌詞のテーマは恋愛やドラッグなど前作の延長上にあるがそれらに対する“態度”は大人びたものになっているように感じた。

    楽曲「Somebody Else」では“元恋人の隣にいる新しい誰か”に対する感情がテーマであり、「UGH!」では“薬物依存への抵抗”がテーマとなっている。

    前作『The 1975』が“10代へのアンセム”ならば、本作はそれらを経験して大人になったがまだ未熟な若者の心境とマッチする。

    The 1975 – Somebody Else (Official Video)

    The 1975 – UGH! (Official Video)

    A Brief Inquiry into Online Relationships

    3rdアルバム『A Brief Inquiry into Online Relationships』
    2018年、The 1975のサードアルバム『A Brief Inquiry into Online Relationships』は前作『I Like It When You Sleep〜』までの頃から政治的、社会的メッセージを扱う様になったという点で大きく作風が変わった。

    また、「The Man Who Married a Robot / Love Theme」という楽曲などでは、発展しすぎた科学技術をテーマとし、時に憂い、批判する事もしている。

    The 1975によるそれらのアプローチに対して、ピッチフォークからは“ほぼ絶え間なく続く陰鬱な状況の中で、真面目に努力することの価値を証明している”と高い評価を得た。

    本作『A Brief Inquiry into Online Relationships』が持つ音楽ジャンルは以下の通り。

  • ニューウェーブ
  • シンセポップ
  • ポストパンク
  • 前作のような明るい雰囲気は弱まり、扱うテーマに比例して壮大な、少し暗めな作風と言えるかもしれない。

    収録曲の「Give Yourself A Try」はドラッグの依存症から抜け出した時のマシュー自身の体験、心境を赤裸々に歌詞に落とし込んだ曲である。

    またその時の感情と重ね合わせて“厳しい現実世界に立ち向かわなくてはならない”というメッセージ性を感じる。

    陰鬱とした現代社会へ対するマシューの思いと取ることも出来るだろう。

    リフは80年代のポストパンクバンドJoy Divisionの楽曲「Disorder」のリフのオマージュと言われており、そこからもポストパンクの影響が見てとれる。

    また楽曲「It’s Not Living (If It’s Not With You)」のMVはニューウェーブ、ポストパンクどちらの文脈でも語られる事のあるTalking Headsのライブパフォーマンスをオマージュしている。

    これらの事から本作はポストパンクから多大なる影響を受けているように見える。

    本作『A Brief Inquiry into Online Relationships』の特徴を一番良く表しているのは楽曲「Love It If We Made It」だろう。

    2018年当時の様々な社会問題に対して直接的に触れている。

    それは人種問題であったり、トランプ政権への批判であったり、移民問題などだ。

    まとめると『A Brief Inquiry into Online Relationships』は残酷な現代社会に対する希望の見出し方がテーマであった。

    The 1975 – Give Yourself A Try

    The 1975 – It’s Not Living (If It’s Not With You)

    The 1975 – Love It If We Made It (Official Video)

    Notes on a Conditional Form

    4thアルバム『Notes on a Conditional Form』
    2020年、The 1975の4thアルバム『Notes on a Conditional Form』は前作の延長上にある世界観の元、アルバムとしては前作までと比較して音楽的に難解な作風となっている。

    その理由としては前作まであったポップの要素が殆ど見られなくなった点にあると思う。

    その中で唯一、例外的に「Me & You Together Song」は聴きやすくポップなギターロックである。

    本作『Notes on a Conditional Form』が持つ音楽ジャンルは以下の通り。

  • インダストリアル
  • ポストパンク
  • エレクトロ
  • シューゲイザー
  • セルフタイトルの楽曲「The 1975」は環境保護活動家のグレタ トゥーンベリのスピーチを引用し、バンド初のインダストリアル的な曲調で挑んだ「People」ではマリリン・マンソンのような風貌のMVで“考えなしで行動する人々”を揶揄した。

    またオンラインから始まる恋愛がテーマの「If You’re Too Shy (Let Me Know)」などもあり、やはり前作『A Brief Inquiry into Online Relationships』の延長線上の世界観がある。

    それもそのはずで、この2作は“Music for Cars”というプロジェクトにおける兄弟アルバムなのである。

    エレクトロとシューゲイザー

    では『Notes on a Conditional Form』における前作『A Brief Inquiry into Online Relationships』との違いとは何なのか?

    その要素としてはエレクトロとシューゲイザーの要素があると思われる。

    エレクトロ、さらに言えばテクノ的な作風の「Yeah I Know」やシューゲイザー的なサウンドの「Then Because She Goes」は前作には見られなかった曲調に感じる。

    よってアルバム『Notes on a Conditional Form』は新しい音楽ジャンルを取り込んで新境地にたどり着いたアルバムと言える。

    The 1975 – Me & You Together Song

    The 1975 – People

    新曲Part Of The Bandについて

    5thアルバム『BEING FUNNY IN A FOREIGN LANGUAGE』
    The 1975はデビューから4作のアルバムをリリースし、2022年に新曲「Part Of The Band」をリリースした。

    アルバムごとに大きなジャンル変遷を辿ってきた彼らが生み出した新曲はどんな曲か。

    まず、特徴としてはストリングスのサウンドが印象的であり、フォーク的なアプローチをしている。

    それらが醸し出す雰囲気は前作までで見られなかった新しいものに感じる。

    そのため、バンドとして更に新しいサウンドを追求し始めたと考えることも出来るかもしれない。

    Part Of The Bandの歌詞

    また、「Part Of The Band」の主人公が俯瞰して自身の人生を見つめ直す歌詞はサードや4thアルバムで社会との関わり方について向き合った結果、もっと概念的な“生きていく事”という壮大なテーマに辿り着いたのではないかと考察した。

    よって新曲「Part Of The Band」はThe 1975が音楽的に新しい境地に辿り着いた事を予感させてくれる存在だ。

    The 1975 – Part Of The Band (Official Music Video)

    サマソニで最新のThe 1975が見られる

    サマソニ2022
    The 1975は様々な音楽ジャンルを取り込み、独自の音楽を作ってきた。

    そして彼らは新曲「Part Of The Band」を携えて、新たなThe 1975を見せてくれようとしている。

    また、活動を控えていた2021年を経て、新たな転換期に入ったThe 1975は2022年のサマーソニックで来日する。

    これは貴重な瞬間を目にするチャンスと言えるだろう。

    そして、10月リリースが予定されているアルバム『Being Funny In A Foreign Language』も間近である。

    現行の音楽シーンにおいて目を離すことが出来ない多才な音楽集団に進化したThe 1975。

    そんな進化が止まらない彼らのサマソニ2022でのライブはまさに必見であり、音楽シーンの最先端を見られると言っても過言ではない。

    今回のサマソニのヘットライナーでThe 1975は私たち、音楽ファンに見たこともない景色をライブで見せてくれることだろう。

    The 1975アルバムリリース

    The 1975はこれまでに5枚のアルバム(『The 1975』、『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』、『A Brief Inquiry into Online Relationships』、『Notes on a Conditional Form』、『Being Funny in a Foreign Language』)をリリースしています。

    5thアルバム『Being Funny in a Foreign Language』

    5thアルバム『BEING FUNNY IN A FOREIGN LANGUAGE』
    発売日: 2022年10月14日
    収録曲:
    1.The 1975
    2.Happiness
    3.Looking For Somebody (To Love)
    4.Part of the Band
    5.Oh Caroline
    6.I’m In Love With You
    7.All I Need To Hear
    8.Wintering
    9.Human Too
    10.About You
    11.When We Are Together
    フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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    4thアルバム『Notes on a Conditional Form』

    4thアルバム『Notes on a Conditional Form』
    発売日: 2020年3月22日
    フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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    3rdアルバム『A Brief Inquiry into Online Relationships』

    3rdアルバム『A Brief Inquiry into Online Relationships』
    発売日: 2018年11月30日
    フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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    2ndアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』

    2ndアルバム『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』
    発売日: 2016年2月26日
    フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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    1stアルバム『The 1975』

    1stアルバム『The 1975』
    発売日: 2013年9月2日
    フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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    The 1975バンドプロフィール

    The 1975(2022)
    撮影:Samuel Bradley

    “進化を続けるイギリスのバンド、The 1975はフックのあるダンス・ロックとアダルト・コンテンポラリーの洗練されたサウンドに、エレクトロニカやオートチューンを取り入れたポップスでアーティスティックさとポップさを両立させたアーティストである。

    The 1975は2013年の『The 1975』で初めてデビューし、英国でチャート上位に入り、ビルボード200でトップ30に入るなど、国際的なスターダムにのし上がった。2016年の『I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』でさらに飛躍し、英米両国で1位を獲得。2018年の『A Brief Inquiry Into Online Relationships』と2020年の『Notes on a Conditional Form』ではトップ5入りを果たし、チャートの常連であり続ける一方で、彼らはサウンドの実験を続け、これまで以上にジャンルを超えたポップスにおける美学を受け入れてきた。2022年の『Being Funny in a Foreign Language』で、彼らは予測不可能な芸術的進化を体現している。

    もともとThe 1975のメンバーは、2002年にマンチェスター郊外のチェシャー州ウィルムスローの高校に通っているときに出会った。そこでリード・シンガーのマシュー・ヒーリー、ギタリストのアダム・ハン、ベーシストのロス・マクドナルド、ドラマーのジョージ・ダニエルはパンクの曲をカバーし、地元のオールエイジ・ショーで演奏することから始め、必然的に自分たちのオリジナル曲を探求し始めることになった。2012年、イギリスのインディーズ・レーベルDirty Hitから1st EP『Facedown』をリリースし、その後すぐにLittle Cometsのツアーをサポートした。デビューEPのリードトラック「The City」はHuw StephensのBBC Radio 1の番組でプレイされ、そのエネルギッシュなライブパフォーマンスは観客を魅了し、彼らの存在は音楽ブログを席巻し始めた。2012年末には『Sex EP』をリリースし、タイトル曲はBBC Radio 1の有力DJ、Zane Loweにプレイされた。

    2013年には3枚目のEPをリリースし、UKトップ20にランクインしたシングル「Chocolate」を世に送り出す。The 1975は英国全土でライヴを行い、米国ツアーに合わせて業界のショーケースであるSXSWにも招待されるなど、バンドの人気は上昇し続けた。同年、The 1975は、プロデューサーにMike Crossey (Arctic Monkeys, Foals)を迎え、その名を冠したデビューアルバムを発表しました。このアルバムには、「Chocolate」、「Sex」などの既発曲や、シングル「Settle Down」、「Girls」が収録されており、後者は全米ビルボード・ホットロックソングチャートで12位を記録しています。英国で1位を獲得したアルバム『The 1975』は、米国でのバンドの評判を高め、ビルボード200で28位を記録した。

    The 1975は2016年に2枚目のフル・アルバム『I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』で復活を遂げた。シングル「Love Me」と「The Sound」を収録したこの作品は、バンドがより80年代のアダルト・コンテンポラリー・ポップとR&Bの影響を受けたスタイルへと向かっていることがわかる。このアルバムのプロモーションのため、バンドはイギリス、ヨーロッパ、北米でツアーを行い、Saturday Night Liveに出演して注目を浴びた。アルバムは英国と米国で初登場1位を記録し、栄誉あるマーキュリー賞の最終選考に残った。2017年2月には、英国の慈善団体War Childのために、Sadeの「By Your Side」のカバーをリリースした。

    2018年に登場したバンドの3枚目のフルアルバム『A Brief Inquiry Into Online Relationships』は、グラミー賞にノミネートされたシングル「Give Yourself a Try」が収録されている。さらに多彩なポップ・サウンドを披露したこのアルバムは、イギリスのアルバム・チャートで首位を獲得し、ビルボード200では4位を記録した。また、このアルバムは2枚組のアルバムの第1弾であり、2020年5月には2枚目のアルバム(1975年の4枚目のフルアルバム)『Notes on a Conditional Form』が発売される。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリをフィーチャーしたスポークン・ワード・トラックとともに、『Notes on a Conditional Form』(再び英国で1位、ビルボード200で4位を記録)には、シングル「People」、「If You’re Too Shy (Let Me Know)」、ゲストのフィービー・ブリジャーズが参加した「The Birthday Party’」も収録されていた。

    翌年、ヒーリーはブリジャーズのリユニオンツアーの一環として、ロサンゼルスのグリークシアターでブリジャーズのオープニングを務めた。2022年7月、1975は5枚目のアルバム『Being Funny in a Foreign Language』からのファースト・シングルとして、ジャック・アントノフ共同プロデュースの楽曲「Part of the Band」をリリースした。”

    引用元:The 1975バンドプロフィール(Allmusic)

    The 1975サマソニ来日決定

    サマソニ2022

    The 1975が2022年に開催されるサマソニへの来日が決定した。

    彼らは8月20日(土)幕張メッセ、8月21日(日)舞洲SONIC PARKのマリンステージに登場する。

    サマソニ2022
    2022年8月20日(土)・21日(日)
    東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
    大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

    サマソニ2022 来日プレイリスト

    BELONGスタッフで、The 1975を含む、サマソニ2022で来日するアーティストのプレイリストを作成した。

    サマソニを120%楽しむためにこのプレイリストを聴いて欲しい!

    The 1975関連記事

    The 1975の関連記事について、BELONGではこれまでにセカンドアルバムレビュー、4thアルバムレビュー、「If You’re Too Shy」の歌詞和訳、「Guys」の歌詞和訳を取り上げている。

  • セカンドアルバムレビュー
  • 4thアルバムレビュー
  • 「If You’re Too Shy」の歌詞和訳
  • 「Guys」の歌詞和訳
  • ライター:Seiya
    Seiya
    ジャンルは幅広く音楽について研究するのが好きです。

    楽器、レコード、ファッションも好きでその文脈からも音楽を楽しんでいきたいです。

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