最終更新: 2022年8月20日

台湾の新世代ネオ・ソウルアーティスト、9m88(ジョウエムバーバー)。

台湾のラッパーであるLeo王とコラボした「陪妳過假日」では現在Youtubeの再生回数は1000万回を超え、世界中にシティ・ポップが広がるきっかけとなった竹内まりやの「Plastic Love」をカバーしている。

そんな9m88の2枚目のアルバム『9m88 Radio』では出身国の台湾だけでなく、日本のStarRoを始め、5カ国ものアーティストとコラボしたアルバムを作り上げた。

自国の台湾のみならず、世界中から注目を集める9m88とは何者なのか?

アーティスト:9m88 インタビュアー:yabori 翻訳:M.H

9m88とは

9m88

-9m88(ジョウエムバーバー)というアーティストネームはイングリッシュネームと、それに学校のマイナンバー88を組み合わせたものだそうですね。台湾では英語の授業でイングリッシュネームを決めるそうですが、この名前は自分で決めるのでしょうか。それとも誰かに決めてもらうのでしょうか。
9m88:面白い質問ですね(笑)。私は自分の好みからジョアン(Joanne)という名前を選びました。台湾の学生が英語を学ぶ際に英語名を必要とする現象について考えるのは興味深いと思います。日本人は通常つけませんよね。この名前をつけた理由や、ジョーン(Joan)やジョアンナ(Joannna)にしなかった理由は覚えていないですが、とにかく、この名前は長い間頭に残っていて、確実に私の一部になっています。9m88はコードネームです。パフォーマンスで本名を使わないのは面白いと思って。自分のカリスマを強めてくれている気がします。

-ニューヨークではファッション関係の会社でインターンとして働いていたと聞きました。その後、ニューヨークの音楽学校でジャズボーカルを専攻されたそうですね。どうしてファッションの世界からジャズの世界へ飛び込もうと思ったのでしょうか。
小さい頃から歌うことは大好きでした。若い頃は歌うことにしか興味がなかったので、ちゃんとした音楽教育は受けませんでした。台湾にはあまり演藝專門學校(芸能にまつわる高等教育をする学校のことと思われる)がないので、大学の時には違う進路を選びました。ファッションデザインの学校に進み、そこではプロジェクトを完成させることやコンセプトを実際に制作に移すことについて、多くのことを学びました。マイルス(マイルス・デイヴィス)のレコードをある友人に借りたことがジャズを聴くきっかけとなりました。ジャズはそれまでに私が通ったことのない世界で、ニューヨークでのファッション関係のインターンを終えた後、ニュースクール大学のジャズ&コンテンポラリーミュージックに応募し、運良く合格しました。このことが今の人生を開いていくれたので、安全圏から飛び出すような決断ができてよかったです。

-そこから9m88として、活動を始めたいきさつについて教えてください。
大学在学中からずっと、時間や場所を選ばず演奏する機会を探していました。小さな劇場でのライブから、ジャズアンサンブルまで、できるだけ演奏するようにしていました。9m88という名前を使い始めたのは2014年ごろ、台北のヒップホップダンスパーティに友人のミュージシャンと出演した時決めました。本格的に活動し始めたのは2017年あたりからで、ラッパーのLeo王との『Weekends With You』でデビューしました。まだニューヨークに住んでいた頃の話です。

9m88 Radio

9m88『9m88 Radio』

-『9m88 Radio』は日本、韓国、アメリカ、台湾、オーストラリアのプロデューサーと一緒に制作されていますが、どうして色んな国の人たちを一緒に制作しようと思ったのでしょうか。
パンデミックによってクリエイティブな思考がかなり鈍くなり、同時に世界とのつながりも失われたようにも感じました。そうした状況を脱するためにも、積極的にこのアルバムにミュージシャンやプロデューサーを招聘することを決めました。人と再び繋がりたかったんです。結果的にこのことは作品に良い働きをもたらしました。参加したアーティストがこのアルバムに対して、彼らの創造性の限りを尽くしてくれたことにとても感謝しています。

-ここ日本からはStarRoが参加していますね。どうして彼と共作しようと思ったのでしょうか。
2019年に台湾では同性婚が合法化されました。Red Hot Organizationが制作しているコレクティブアルバムに、StarRoのリミックスで参加しないかと声をかけられたことから、彼の多彩な楽曲に出会いました。このアルバムの制作を始めた時すぐに彼を招待しようと思いました。一緒に制作した「Friend Zone」という曲には、私のヒーローの一人である、アメリカのラッパーOddiseeがフィーチャリングで参加しています。StarRoのようないいアーティストと共作できて光栄でした!

-「Tell Me」は英語と中国語が違和感なく歌われていますが、どうして2か国語で歌うのでしょうか。また、どのような基準でこのフレーズは中国語、ここは英語と歌い分けているのでしょうか。
興味深い質問ですね。曲の中で二つの言語を使う曲では、なるべくきちんと発音しつつも、それらの境界を曖昧にしようとしています。中国語の角ばった、直接的な感じに比べて、英語のフレーズは丸くて比較的あったかい感じがします。R&Bやソウルの楽曲ではこれらの違いをなだらかにしようとしています。

-アルバムタイトル『9m88 Radio』にはどういう意味があるのでしょうか。
チャンネルを変えるように、このアルバムが扱うジャンルは多岐にわたっています。異なる音を扱う、様々な地域から集められたプロデューサー達が、私の声と作曲を通じて混じり合っていることが、アルバムを聴くとわかるはずです。

-『9m88 Radio』をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
このアルバムは特に20~30代の女性に届けたいと感じています。それぞれの痛みや楽しみについて彼女らが語る手助けをしたいと思う私の思いが歌詞には表れています。もちろん年齢やジェンダーを問わず、R&Bやソウル、ヒップホップ、ジャズを愛す全ての人に聞いて欲しいと思っています。楽しいアルバムになっているし、ビビッと感じてもらえるはずです。

9m88とシティポップ

9m88(ジョウエムバーバー)2
-竹内まりやの「Plastic Love」をカバーされていたのが印象に残っています。どうしてこの曲をカバーされたのでしょうか。また、欧米では“シティポップ”が大きなブームになっていますが、台湾でも流行しているのでしょうか。
2017年にインディーレーベルの2manymindsが、7インチのレコードをリリースしないかと誘ってくれました。A面には「Nine Head Hinano」が収録されていて、Bサイドでは何か日本の曲をカバーしたいと思ったんです。その時はちょうどシティポップリバイバルのピークでした。ニューヨークにいる、友人の日本人映像監督が80年代の日本アイドルについて論文を書いていて、一緒にリサーチをした結果「Plastic Love」はカバーすべき象徴的な曲だという結論に至りました。この論文を基にした彼の作品の一つとして、私のカバーのMVを撮りました。MVでは采奈依(さなえ)というアイドルを演じています。シティポップは台湾でも流行っていたのですが、たくさんの偉大なアーティストと同じジャンルで闘う気にはなりませんでした。彼らもそう思ってたのでしょうか?

-(上記に関連して)好きな日本のアーティストがいれば教えてください。
シティポップについて語るなら山下達郎は外せないですよね。彼は真のアーティストで、音が最高です。個人的には久保田利伸も好きで、彼のソウルフルな声は聴かずにはいられません。

9m88のルーツ

-9m88の音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚づつ、どのような部分に影響を受けたかについても教えてください。

エリカ・バドゥ『Baduizm』
エリカ・バドゥ『Baduizm』

私はバドゥの大ファンなんです!彼女は歌詞をつぶさに読もうとさせる声を持っている気がします。気付いたら彼女の作曲にも夢中になっていました。彼女のアルバムにはそれぞれの魅力があって、一番好きなアルバムは選べません!

スタン・ゲッツ『Jazz Samba Encore』
スタン・ゲッツ『Jazz Samba Encore』

ただただ素晴らしいアルバムです!スタンの演奏は全て大好きで、音と表現に専念していることが伝わってきます。彼のソロを聴いていると時々泣いてしまいます。

アーチー・シェップ『Attica Blues』
アーチー・シェップ『Attica Blues』

本当に美しいアルバムで、特に「Quite Dawn」という女の子が歌っている曲が好きです。彼女の純朴さがこの曲を刺激的なものにしています。

-最後に私たちを始め、日本にも9m88のファンがいます。彼らにメッセージを頂けますか?
いつも愛情と応援をありがとう!何度か行った東京の公演はどれも素晴らしかったので、近いうちにもっと多くの街を訪れて、私の音楽を届けられるようになるのを祈っています!

『9m88 Radio』Special Message for Japan

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9m88リリース作品

9m88(ジョウエムバーバー)はこれまでに2枚のアルバム(『Beyond Mediocrity』、『9m88 Radio』)をリリースしている。

2ndアルバム『9m88 Radio』

9m88『9m88 Radio』
発売日: 2022年8月24日(水)
収録曲:
1.Whatchu Gonna…? (Produced by Chun Yin Rainbow Chan)
2.Tell Me(Produced by DJ Mitsu the Beats)
3.Sleepwalking (feat. SUMIN) (Produced by SUMIN)
4.Love is So Cruel (Produced by Arthur Moon)
5.A Merry Feeling (Produced by Layton Wu)
6.:-D
7.Friend Zone (feat. Oddisee) (Produced by StarRo)
8.:’-(
9.Dark Night / Sunlight (Produced by Chia-Lun Yue)
10.Prelude to A Star*
11.Star (Produced by Silas Short)
フォーマット:Mp3、CD
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1stアルバム『Beyond Mediocrity』

9m88『Beyond Mediocrity』
発売日: 2019年8月8日
フォーマット:Mp3、CD
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9m88プロフィール

9m88

“台北で生まれ、大学でファッションを学んだ後、NYの名門校『The School of Jazz & Contemporary Music』でジャズを専攻。R&B、ソウル、ジャズ、ポップスなど様々なジャンルからの影響を感じさせるメロウかつオリエンタル~エキゾなR&Bミュージックを体現し、台湾国内のツアーは全会場ソールドアウトするなど若者を中心に着実に人気を集めており、台湾のポップ・ミュージック/アート・シーンの次代を担う才能と言われている。2017年には台湾のレーベル、2manysoundから「九頭身日奈/PLASTIC LOVE」の7inchリリースが日本でも話題に。2018年には青山月見ルで来日公演、2019年にはサマーソニックのBillboard Stage出演。本国台湾ではAAAMYYY、D.A.N.、STUTS、Tempalay、TENDREといった日本国内からのメンツと共演し、落日飛車Sunset Rollercoasterの作品へのコーラス参加や、台湾で最も有名なヒップホップレーベル「KAO!INC」所属のラッパーLeo王とのコラボ作も。愛称は「バーバー」。”

引用元:9m88(ジョウエムバーバー)プロフィール(P-Vine)

9m88代表曲(Youtube)

  • 9m88(ジョウエムバーバー) – Tell Me (Prod. by Mitsu the Beats)
  • Leo王 – 陪妳過假日 feat. 9m88 (Official Music Video)
  • 9m88(ジョウエムバーバー) – ‘Plastic Love’ Cover Version (Original Song by Mariya Takeuchi)

9m88関連記事

9m88(ジョウエムバーバー)の関連記事について、BELONGではこれまでに新世代ネオソウルアーティスト、新世代アジアンインディーを取り上げている。

  • 新世代ネオソウルアーティスト
  • 新世代アジアンインディー
  • ライター:yabori
    yabori
    BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

    ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

    これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

    過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

    それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

    現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

    今まで執筆した記事はこちら
    Twitter:@boriboriyabori

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