最終更新: 2024年3月17日

コロナウイルスが蔓延してから久しいが、昨今ここ日本から海外への進出を果たすバンドも珍しくなくなった。

今回、インタビューをした3ピースロックバンドThe Wisely Brothers(ワイズリー・ブラザーズ)もそのひとつである。

ただし、彼女らはレーベルを離れて独立した形かつ”Wisely(賢い)”なやり方で海外進出を試みて、活動の幅を広げようとしている。

前作『AGLIO OLIO』から約1年半、茶目っ気や奔放さもちらつかせながら、ポストパンクを主軸に展開される新作『THINK WISELY』をリリースをした。

さらにはBandcampからのクラウドファンディングというやり方で来たる11月にUKツアーの開催まで漕ぎ着いた。

そこで今回はその新たな門出を祝うべく、メンバー3人にインタビューを行った。

本作『THINK WISELY』と待望のUKツアーの話を中心に伺い、”THINK WISELY”した内容となっている。

また、The Wisely BrothersはUKツアーを終え、ドキュメンタリー映像も制作し、上映イベントも決定した。(2023年4月19日 BELONG編集部追記)

アーティスト:The Wisely Brothers インタビュアー:滝田優樹、yabori

The Wisely BrothersとUKツアー

The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)

-The Wisely Brothersの新曲のMV撮影の監督を自ら担当したり、UKツアー開催に向けたクラウドファンディングを行ったり、最近はレーベルを離れてインディペンデントな活動も印象的です。その理由やきっかけがあれば教えてください。
The Wisely Brothers:レーベルに所属させて頂きながらの活動の中で沢山の経験をさせてもらいました。
約10年前にまだカバー曲を演奏しながらライブしていた頃の私たちを見つけてくれたスタッフの方には本当に感謝しています!
音源のリリースやいろんなイベントに出演するうちに徐々に私たちのバンドの在り方についてより深く考えるようになり、
改めて3人だけでそれを磨いていきたいと思い、今に至ります。

-いざ、レーベルを離れて活動してみてやりやすくなったことや良くなったこと、反対に大変になったことがありましたら教えていただけますでしょうか。
自分たちのペースで何事も進めていけることは私たちに合っていると感じています。
すごく小さな選択の積み重ねが、自分たちの作る音楽に大きな影響を与えることも実感しました。
大変になったことはこれまで私たちの知らないところで進めてくれていた諸々の連絡やプロモーションの作業。
こんなにいろんなことをやってもらっていたんだなとありがたい環境にいたことを改めて実感しました。
初めは戸惑いながらも今は少しずつですが自分たちでやれることも増えてきました!

UKツアーについて

UKツアーフライヤー
-UKツアーは数年前から企画していたそうですね。どうして海外ツアーを行おうと思ったのでしょうか。また、海外の中でもどうしてイギリスだったのでしょうか。
来日アーティストのライブに出演させていただく機会が何度かあり、同じ言葉が交わせなくても音楽をきっかけに通じ合えることが
とても嬉しく、私たち自身が海外へライブしにいくことにより憧れるようになりました。
ツアーのきっかけはレーベルから離れたばかりのタイミングでSNSのメッセージを改めてチェックしていて、ヨーロッパのイベンターさんから連絡が来ていたことに気づいたことからです。
コロナの最中だったので、延期が続いてしまいましたが今回やっと開催が実現につながりました。
パステルズやマリンガールズ、ドリーミクスチャーなど大好きなアーティストが暮らす国でもあるイギリスで純粋に音楽を楽しんでもらえる機会ができたことが心から嬉しいです。
今後このツアーをきっかけに他の国にも活動を広げて私たちが音楽を楽しめる場所を沢山見つけていきたいです。

-先日、UKツアー前のプレイベントとして下北沢LIVE HAUSにてワンマンライブを開催しましたね。新曲やイギリスツアーで披露予定の演出を盛り込んだものだと伺いました。現地で披露するに想定して工夫した点やパフォーマンス面で大きく変えようとしている点はなんでしょうか。
新曲を含め、昨年リリースした『AGLIO OLIO』の楽曲たちもイギリスツアーに向けて制作したものでした。
今回のライブはこの曲達を中心に、私たちが普段のライブで大切にしている空間の使い方を楽しめたらいいなと考えております!

THINK WISELY

THINK WISELY

-『THINK WISELY』は全てポストロックを基調とした英語歌詞とインスト曲を含めた4曲です。UKツアーを意識してのことかと思ったのですが、いかがでしょうか?また、この作品はUKツアーをしようと決めてから制作されたのか、それともその前から制作しようと決めていたのでしょうか?
この作品を作り始める頃には今年のイギリスツアー の計画も水面下で進められていました。
確定はしていなかったのですが、リリースする時期にUKツアーも開催できるかもしれないと頭の片隅に置きながらの製作となりました。
私たちから時折出てくる衝動的な要素もこれまでよりもさらに整えすぎずにそのまま押し出したところがあります。
実際これまでの私たちのことをよく知る人が聞いても変化を感じると言われることが多いです。実は元からこういう一面を持っていたと
わたしたちは自覚していたけどまだまだ伝え切れていなかったんだな、伝えられるようになってきたんだな、と新しい発見が沢山ありました!

-それぞれの楽曲自体を解体していくとサイケやガレージ、ドリームポップ、など複数ジャンルが含まれていますが、その音の響き自体は無駄が一切ない、シンプルなものとなっています。The Wisely Brothersとして生身の音を聴いているような。どれもセッションを基に制作されているからかなと思うのですが、それぞれの楽曲はどのように制作されたのでしょうか。
音楽をしている友人に、「ワイズリーは音楽のために楽器を使っているんじゃなく、3人のために楽器を使っているよね」と言われたことがありました。
どの曲も初めはスタジオでのセッションからスタートしています。この際に決まりは決めずに、その場のフィーリングを肌で感じ行うことが多いです。
聞き直して3人それぞれ気になったものをさらに作り上げていきます。
先行配信したTwo Minutesは実は二つセッションを混ぜ合わせて作っていて、さらにエンジニアさんにも協力して頂き
これまでにない面白さのある曲になりました!

Two minutes

-「Two minutes」はバンド自らがMVの監督を、映像編集は真舘さんが担当しております。ゴダールやレオスカラックスなどフランス映画の影響などを感じたのですが、映画から影響を受けた部分があれば教えてください。
今回撮影で使ったHiVIDEOCASSETTEのカメラを貸してくれた友人が「思ったようにやってみたらいいよ」とアドバイスをくれました。
友人は私たちがツアーの宣伝用の映像を作るためのカメラが必要かと勘違いしていたのですが、制作した映像を見せたら「え、MVを作るためだったんだ!」と驚いていました。
映画の良さを挙げるとキリがないですが、構図のかっこよさだけで気持ちが伝わってくることや、人の動きの面白さ、画が映し出されるという仕組み、
表現に一見理解できない部分があってもどこか別のところに通ずる瞬間があること、だと思っています。
ゴダールやアニエス・ヴァルダ、エリック・ロメール、ジャック・タチ、ジム・ジャームッシュなど10代の終わりからDVD屋さんで端からレンタルした映画監督の、
それぞれがスタイルを貫いて制作している映画を見たことは、心にずっと残っています。彼らの作り出したシーンの記憶はこれからもずっと人生の記憶のように思い出すのだと思います。

-『THINK WISELY』のアルバムカバーはタランチュラのような蜘蛛が印象的ですが、どうして蜘蛛なのでしょうか。
真舘家では家で蜘蛛を発見すると「フランソワ」と名前をつけて、挨拶をしていました。
日本の「朝の蜘蛛はいい蜘蛛」そんな言い伝えも面白いなと思っていて、昔から蜘蛛に愛着がありました。
本当はMVの素材にもタランチュラのオブジェを撮影していたのですが、ビデオカセットの劣化の為データに落とせず使用しませんでした。
心の中にいる蜘蛛、皆さんのイメージの蜘蛛とどこか、重なる部分があれば嬉しいです。

THINK WISELYの意味

The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)

-アルバムタイトル『THINK WISELY』の意味を教えてください。個人的にはメンバーそれぞれが思うThe Wisely Brothersはこれだ!という提示、意思表示なのかなと思いました。
私たちにとっての「賢い選択」をしていたいという意味です。今回だと、目標をこれまでと違う場所へ向けたこと、どんな場所で音楽をしたいか考えること、
活動の中でどこまでの作業を自分たちでやるのが一番いいか考えること、補えない部分はどうするのが良いのかなど、3人で話し合うこと。
賢いって一体どういうことだろう?という問いを持ちながらも、
私たちが進んでいく「THINK WISELY」を皆さんと楽しめたらこんなに嬉しいことはないなと思います。

-『THINK WISELY』をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
私たちの人生はいつ始まるかもおわるかも分からない中で生きています。
それなら、どんな体験をできるのか?しにいくのか?が私たちにとっては大事です。
この音楽を聴くと、一つの体験ができると思います。違和感かもしれないし、心地よさかもしれない。
色んな感情になるということが、人生の面白みなのかもしれない、と新しい場所にいくことを恐れながらも挑戦したい人々に聴いてほしいです。

-以前、UKの3人組インディーロックバンドのDream Wifeにインタビューした時、彼女たちの姿勢として“自分の悪趣味なところを信じろ”と言っていたのが印象に残っています。The Wisely Brothersは自分たちの悪趣味なところと言われて何が思い浮かびますか?また、それらは自分たちの作品に反映されていますか?
悪趣味なところ。誰かが見たら、何か変だと思うもの・違和感があり好きじゃないものを、自分はすごく居心地がいいと感じるところ。
自分だけが好きなもの、自分だけが良いと思うものをどれだけ信じられるのか、ということ。

誰かが私たちの音楽を知って楽しんでくれているのを知ると、その誰かの好きなものを応援したく思います。
誰かが、その人にしかできない表現をしていると、私たちも自分にしかできない表現をするべきだと強く影響を受けます。

The Wisely Brothersのルーツ

-The Wisely Brothersの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚づつ、どのような部分に影響を受けたかについても教えてください。

  • The Pastels『Slow Summit』
  • The Pastels『Slow Summit』
    音楽はそもそもすごく個人的なものであり、それがどこかで誰かの耳に届いたとき、その人の持っている何かに、作者の個人的なものが反応する、そんなことを
    思います。私たちの音楽も、そうありたいと思います。

  • The Velvet Underground『The Velvet Underground & Nico』
  • The Velvet Underground『The Velvet Underground & Nico』
    バンドのアルバムだけど様々なスケールの曲が入ってもいいと感じました。
    少しある心地よい違和感、それぞれ異なっていても大きな枠の中で遊ばれていて、なんてことないのに記憶に残る、とある映画のシーンが移り変わっていくようです。

  • Karen O & The Kids『Where the Wild Things Are: Motion Picture Soundtrack』
  • Karen O & The Kids『Where the Wild Things Are Motion Picture Soundtrack』
    映画「かいじゅうたちのいるところ」のサウンドトラック。
    近くで鳴っているようで、気づいた時にはずっと遠くまで広がって知らない国に辿り着く。見たことないものも信じてみたくなる1枚です。

    The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)

    -最後にまずはUKツアーの成功を願っておりますが、その後のThe Wisely Brothersについて決まっていることややりたいことがあれば教えてください。
    まずは、イギリスツアー後のライブ・トークショーに向けて色々準備しつつ、イギリスで感じた気持ちを音楽で残せたらいいなと思います。
    そして、これからも私たちが私たちらしく音楽を続けていける場所や空間を見つけていきたいです。

    The Wisely Brothersアルバムリリース

    The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)はこれまでに2枚のアルバム(『YAK』、『Captain Sad』)をリリースしています。

    EP『THINK WISELY』

    THINK WISELY
    発売日: 2022/10/12
    収録曲:
    1.Two minutes
    2.Julia
    3.Sonomama
    4.Purple
    フォーマット:Mp3
    Amazonで見る

    EP『AGLIO OLIO』

    AGLIO OLIO
    発売日: 2021/7/7
    フォーマット:Mp3
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    2ndアルバム『Captain Sad』

    Captain Sad
    発売日: 2019/7/17
    フォーマット:Mp3、CD
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    1stアルバム『YAK』

    YAK
    発売日: 2018/2/21
    フォーマット:Mp3、CD
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    The Wisely Brothersバンドプロフィール

    The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)
    撮影:タケシタトモヒロ

    “都内高校の軽音楽部にて結成。真舘晴子(Gt,Vo)、和久利泉 (Ba,Cho)、渡辺朱音(Dr,Cho)からなるオルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調とし会話をするようにライブをするスリーピースバンド。2021年7月7日に初アナログEP『AGLIO OLIO』を発売。”

    引用元:The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ)バンドプロフィール(FRIENDSHIP.)

    The Wisely Brothers代表曲(Youtube)

    • The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ) – Two minutes
    • The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ) – Teal
    • The Wisely Brothers(ワイズリーブラザーズ) – メイプルカナダ

    The Wisely Brothersライブ情報

    The Wisely Brothers THINK WISELY UK Tour Autumn 2022

    • 11/12 OLD WOOLLEN(イギリス・プジー)
    • 11/17 THE TRADES CLUB(イギリス・ヘブデンブリッジ)
    • 11/18 THE WAITING ROOM(イギリス・ロンドン)
    • 11/19 DARK HORSE(イギリス・バーミンガム)
    • and more show!

    UKツアードキュメンタリー映像


    The Wisely Brothersによる初のUKライブツアーのドキュメンタリー映像が東京で上映されることが決定した。

    この作品は昨年11月に敢行されたUKツアーの2週間に渡る滞在に密着して撮影されたものである。(2023年4月19日追記)

    初のUKライブツアーの記録

    The Wisely Brothersが初めてUKライブツアーを行い、偶然その場に居合わせた22歳のカメラマンが同行し撮影した2週間の記録が上映される。

    イギリスの5都市をライブで周りながら、移り変わっていくバンドの姿が記録されている。

    東京での上映会

    東京での上映会は代々木公園駅すぐにあるギャラリーバー“WONDER Yoyogi Park”にて4日間の上映となり、各上映後にはメンバーによるトークショーも行われる。

    メンバーコメントからのコメント

    “ひょんなことから集まった6人がイギリスをライブしながら旅する記録。
    私たちが感じた気持ち、あなたはそこに何を感じるのか。
    大阪の小さなシアターでの開催を経て、東京では異なる環境で鑑賞してみたいと、ギャラリーでの開催に決めました。
    WONDER Yoyogi Parkの大きな窓から見える夜の空気と一緒に、映画館とは一味違う映像体験をぜひお楽しみください!”

    イベント情報

    The Wisely Brothers UK TOUR ドキュメンタリー映像作品上映会「THINK WISELY」
    ・2023年5月18日(木)、5月25日(木)
    受付開始 19:00 上映開始 19:30

    ・2023年5月20日(土)、5月27日(土)
    受付開始 18:30 上映開始 19:00

    終映後メンバーによるトークショーあり(30分) TICKET ¥1,500+1DRINK

    開催場所:
    WONDER Yoyogi Park
    東京都渋谷区富ヶ谷1丁目8-7 2F
    http://www.wonderyoyogipark.com/

    予約方法:
    下記URLより予約可能。
    席に余裕がある場合は予約なしでの入場も可。
    https://forms.gle/V8sTEUKyGE55Q67s5

    作品情報

    「THINK WISELY UK TOUR DOCUMENTARY FILM」
    監督・編集:菱川太壱 /撮影:菱川太壱、ワイズリーブラザーズ(真館晴子、和久利泉、渡辺朱音)
    出演:ワイズリーブラザーズ、ケンキチ・イーノ、翁長良平、菱川太壱
    2022年/82分/カラー、モノクロ

    ライター:滝田優樹

    1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

    そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

    その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

    退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

    それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

    猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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    Twitter:@takita_funky