最終更新: 2024年3月21日

Frank Oceanも注目するサウス・ロンドンのSSW、Matt Maltese (マット・マルチーズ)が4thアルバム『Driving Just To Drive』をリリースする。

先に公開された表題曲「Driving Just To Drive」のMVでは、黄昏時移ろう景色をバックに唄いながら車を運転し、定点カメラで自身を捉える。

アルバムの内容は、MVそのものだ。バロック・ポップ的なアプローチで奏でられる軽やかなメロディ。そして自己内省である。

そんな4thアルバム『Driving Just To Drive』をナビゲートすべく、インタビューを行った。

Matt Malteseとは

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クレジット:Aria Shahrokhshahi
Matt Maltese(マット・マルチーズ)はサウス・ロンドンを拠点に活動する25歳のシンガーソングライターである。

彼の作風は、”日常の物語をロマンチックに描く”という特徴がある。

2018年にリリースされたアルバム『Bad Contestant』でデビューし、収録曲「As The World Caves In」はTikTokで8万本以上のビデオに使用され、Spotifyで3億回以上再生された。

2019年には、自宅でレコーディングを行った2ndアルバム『Krystal』をリリースし、プロデュース能力も開花。

同アルバムは、日本でのみCD盤が制作され、日本のリスナーを魅了した。

2021年には、ロマンスに満ちた3rdアルバム『Good Morning, It’s Now Tomorrow』をリリースし、NME、DIY、Under The Radar、Dork、Pasteなどのメディアから高い評価を得る。

パンデミックを乗り越え、2023年4月に4thアルバム『Driving Just To Drive』がリリースする。

マット・マルチーズについて

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クレジット:Reed Schick
アーティスト:Matt Maltese(マット・マルチーズ) インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:BELONG編集部

生い立ちについて

-まずはあなたはサウスロンドンで活動されていますが、生い立ちについて教えてもらえますか?
Matt Maltese(マット・マルチーズ):僕の生い立ちは、どう考えてもごく普通のものだったんだ。ロンドンと密接な関係にありながら、実際にはロンドンではないっていう町がイギリスにはたくさんあって。その反動もあってか、僕の子供時代はかなり野心的で、自分で行けると思ったところにはどこにでも出かけて行きたいと思うようになった。僕は基本的に田舎で育ったから、いつも都会が好きで、どうにかして都会に行きたいと思うようになっていたんだと思う。

マット・マルチーズの音楽

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クレジット:Reed Schick

若者に人気の理由

-あなたの楽曲はFrank Oceanにフィーチャーされており、TikTokでも人気です。特にTikTokはティーン中心の若者のフォロワーが多いと思いますが、そういったリアクションについて感想を教えてください。サウンド面に関してはドリームポップやインディーポップなど、心地よさが魅力だと思うのでそういったところも理由としてはあるのでしょうか?
それが理由のひとつだと思うよ。僕のファンの大多数に特定の層がいるっていうことはあまり考えていないんだけど、新しい音楽に最も興味を持つのは、やはり10代や若い人たちだと思う。その年代は、人生について考える方法を探していたり、いつも自分の中にあるものについて考える新しい方法を探していたりすると思うんだ。大人になるための探求は、とても混乱するものだけど、同時に信じられないほどオープンで、可能性に満ちていると思う。僕の曲の多くは、答えにたどり着いたというよりも、答えを見つけようとしていると思うんだ。そこが魅力なのかもしれないね。

失恋をテーマにした音楽

『Krystal』

-また2ndアルバム『Krystal』は失恋をテーマにしたアルバムだと話していて、あなたの音楽を構成するひとつの要素として失恋があると思います。ただ、サウンドはいつも明るいものになっている気がするんです。例えば、Gilbert O’Sullivanの「Alone Again (Naturally)」やTaylor Swiftの「We are never ever getting back together.」のように。それについて何か理由があれば教えてください。
僕はいつも、自分の音楽があまり自己憐憫的でなく、希望に満ちたものになるように努力してきたんだ。失恋はもちろん悲しいテーマだと思うんだけど、一度失恋してしまったら、これまでの関係を変えることができない。音楽を作っていると、こういう経験をポジティブなものにすることも、必要以上にネガティブにすることもできると思うんだけど、僕はポジティブに変換することが好きなんだ。それが、この人生をできるだけ軽やかに歩むための方法だと感じていてね。また、音楽が同時に表裏一体であることも好きなんだ。歌詞を聴いて、本当に幸せな曲だと思うこともあれば、もっと深く聴いて、自分でも気づかなかった部分があることに気づくこともある。それは、僕がソングライティングにおいてとても好きなことで、僕自身もそれを実現しようと努力しているんだ。

マット・マルチーズのバロップ・ポップ的なアプローチ

-今作は「Museum」のようにバロップ・ポップ的なアプローチで構成された楽曲が多いのも特徴だと思います。サウンド面でプロダクションについてポイントがあれば教えてください。
それが特徴のひとつに感じられるというのは、とても嬉しいことだね。意図的にそうしているわけではないんだけど、西海岸的なハーモニーを持つ曲はよく聴いているんだ。ランディ・ニューマンなどを聴いて育ったから、バロック時代の音楽に強い関心があるわけではないんだけど、不思議なことに、こういう曲から連想されることが多いんだ。

Driving Just To Drive

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-ここからは最新アルバム『Driving Just To Drive』について教えてください。まずはアルバムタイトルの意味について教えてください。なぜ、このタイトルにしたのですか?
このタイトルにしたのは、制作中にいろいろと考えていたことがあって。それが“Driving Just to Drive”が表現している“今を生きる”ということなんだ。結果を目指して何かしないことを止めることが、かえってより幸せな状況をもたらすことが多いと思う。ドライブしていると、音楽を聴いたり、考えたり、すべてが高まるように思う。今ではあまり運転しなくなったから、おかしな話なんだけど、今でもドライブしていたことをとても懐かしく思い出すことがあるんだ。

アルバム制作におけるジョシュ・スカーブロウとの協力

-ジョシュ・スカーブロウがプロデューサーを担当したそうですね。彼とはどのような話し合いがあったのでしょうか。またレコーディングや制作面ではどのようなスケジュールや進行でアルバムは完成されたのか教えてください。
僕とジョシュの話し合いは、本当にオープンで協力的なものだったんだ。僕の作りたいもののエネルギーとジョシュのエネルギーがマッチしているような気がして、作品に全力投球したんだよ。一方で『Driving Just To Drive』を作っている最中は、あまり生活感がなかったかな。僕はあまり人生を楽しんでいないかもしれないね(笑)。

マット・マルチーズの影響を受けた音楽

-今作の制作中はどのような音楽を聞いていたのでしょうか。作品に影響を与えた音楽があれば教えてください。
アルバムを作っている時は、他の音楽にはあまり興味が向かないんだ。以前ほど音楽を聴かなくなったし、自分の作る音楽に向き合いたい気持ちが強い。でもずっと気に入っているものもあって、オルダス・ハーディングやBlack Country、New Roadの『Ants from Up There』は素晴らしいと思う。このアルバムでは、特定のものから特に影響を受けたとは思っていないし、いい意味で本当に自己中心的な作品になっていると思う。

Biig Piigとのコラボ

-今回Biig Piigをフィーチャーした「Coward」が私のフェイバリットソングのひとつなのですが、どのようないきさつでコラボレーションが決まったのでしょうか?
Biig Piigは、以前にも何度か一緒に曲を書いたことがあるし、共通の友人もいて。僕はいつも彼女のファンだし、とても仲良くしていたんだ。そして、彼女のボーカリストとしてのアプローチは、僕にとって特別で、いつも信じられないほど感動的だった。僕たちは一緒に曲を書き、素晴らしいデュエットが生まれて、本当に特別な感じがした。彼女にはとても感謝しているよ。これ以上ないくらい素晴らしい作品になったしね。

ブレイクスルーとなった曲

-また、今回あなたにとってブレイクスルーとなった曲はどれでしょうか? 理由も併せて教えてください。
僕にとって、「Driving Just to Drive」と「Mother」の2曲は、とても重要な曲なんだ。それが何なのかはわからないけれど、時々、これらの曲は、アルバムの中心にいるように感じることがあるんだ。

「Driving Just To Drive」のMVについて

-「Driving Just To Drive」のMVでは実際にドライブしながらの撮影でしたね。運転されていたのはご自身の車ですか? またロケーションも自然豊かな場所で気になったのですが、ドライブコースについても教えてください。
僕はママの車を運転していたんだけど、このドライブコースは大学の6年間運転していたんだよ。僕にとってはとても懐かしいドライブコースで、すべてが自然で正しいように感じたんだ。ミュージックビデオにするつもりもなかったのに、自然とそうなってしまった。偶然なんだけど、素敵な作品になったね。

ドライブでかける曲について

-また今回のアルバムの中でドライブでかける曲を1曲選ぶとしたらどれですか? 私は「Suspend Your Disbelief」です。小気味のいいアルペジオではじまり徐々にテンションがあがりサビでシンガロングしながらいいドライブができそうだからです。
車の中で自分の曲を流しているのがバレるのは、たぶん嫌だよね(笑)。でも、この先、自分の曲を聴くこともたくさんあると思うから、どの曲を聴くかはまだわからない。でも、「Suspend Your Disbelief」は候補になりそうな気がするね。

その他

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クレジット:Reed Schick

『Driving Just To Drive』を聴いて欲しい人

-『Driving Just To Drive』をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
本当に誰でもいいと思うよ。誰に聴いてほしいっていう好みはないんだ。誰が聴いても心地よさを感じられるし、聴く人に良いメッセージを届けるようなものであってほしい。

日本のリスナーへのメッセージ

-最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
早く日本でライブをしに行きたい。遠く離れた日本に聴いてくれる人がいることに感謝し、これまでのサポートにも感謝しているよ。また会いましょう!

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Matt Malteseアルバムリリース

Matt Maltese(マット・マルチーズ)はこれまでに4枚のアルバム(『Bad Contestant』、『Krystal』、『Good Morning, It's Now Tomorrow』、『Driving Just To Drive』)をリリースしています。

4thアルバム『Driving Just To Drive』

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発売日: 2023年4月28日
レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT
収録曲:
1.Mother
2.Irony Would Have It
3.Florence
4.Mortician
5.Museum
6.Widows
7.Coward feat. Biig Piig
8.Driving Just to Drive
9.Hello Black Dog
10.Suspend your Disbelief
11.But leaving is
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3rdアルバム『Good Morning, It's Now Tomorrow』

『Good Morning, It’s Now Tomorrow』
発売日: 2021年10月8日
レーベル:Nettwerk Music Group
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2ndアルバム『Krystal』

『Krystal』
発売日: 2019年11月8日
レーベル:sevenfoursevensix
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1stアルバム『Bad Contestant』

『Bad Contestant』
発売日: 2018年6月8日
レーベル:Atlantic Records UK
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Matt Malteseバンドプロフィール

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クレジット:Aria Shahrokhshahi

“Matt Malteseは、60年代のサイケデリック・ポップに影響を受けた探求的なポップソングを作るアーティストだ。彼は2015年にピアノバラード「Even If It’s a Lie (Demo)」でデビューし、彼の歌詞は現代の孤独感や無意味さを表現している。彼は自分の音楽を「ブレグジット・ポップ」と呼び、2018年にファーストアルバム「Bad Contestant」をリリースした。その後、彼は2021年に2作目のアルバム「Good Morning It’s Now Tomorrow」をリリースし、2023年には「Driving Just to Drive」というアルバムもリリースした。”

引用元:Matt Maltese(マット・マルチーズ)バンドプロフィール(allmusic)

Matt Maltese代表曲(Youtube)

  • Matt Maltese(マット・マルチーズ) - As the World Caves In [Official Music Video]
  • Matt Maltese(マット・マルチーズ) - Mystery [Official Video]
  • Matt Maltese(マット・マルチーズ) - Museum [Official Video]

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ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky

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