最終更新: 2024年3月17日
Death of Heather(デス・オブ・ヘザー)は、タイのバンコクで結成された4人組ドリームポップ / シューゲイザーバンドだ。
My Bloody ValentineやThe Cure、Turnoverといったバンドをルーツに持ち、同じくタイで活躍するSafeplanetやFolk9、YONLAPAといったバンドと共鳴しながら海外からも注目を浴びる若手バンド――というのが彼らの簡単なプロフィールである。
特にここ数年のアジアのインディーシーンは活発で局地的な盛り上がりを魅せながら、点と点が線に繋がり、アジア圏以外でもピックアップされ始め、USやUKにも匹敵するホットスポットとなっている。
先日リリースされたDeath of Heatherの新作アルバム『Forever』はまさにその盛り上がりを後押しする出来となっており、1人のアジア圏に住むリスナーとしても諸手を挙げて歓迎するアルバムだ。
今回はそんなDeath of Heatherにインタビューを行い、新作アルバムについてはもちろん、気になるタイの音楽シーンから日本のインディーシーンとの親和性などを確認しながら、彼らのレコメンドすべくインタビューを行った。
目次
Death Of Heather インタビュー
アーティスト: インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:BELONG編集部
メンバーの出会い
-新作アルバム『Forever』を聴かせていただきました。あなたたちの奏でる音楽からは色彩感や情緒を感じることができ、そこがひとつの魅力だと思っています。今回ははじめてのインタビューなので、まずはあなたたち自身の経歴を詳しく知ることで、その魅力の源が何なのか知れたら嬉しいです。2017年にタイでバンドが結成されて活動されているとのことで、メンバーそれぞれどういった場所で生まれ育って、どのように出会ったのか教えてもらえますか?
Tay(Vo./Gt.):Death of Heatherは2017年にスタートしたんだ。僕は自分が好きな音楽のスタイル、ドリームポップとシューゲイザーを探求するプロジェクトをやりたくて。自分の部屋でデモを作り始め、それから顔なじみのバンドの仲間だった、Non、Nine、Thongと一緒にやろうと思ってね。
3人と出会ったいきさつは、まず2010年頃に高校でNonと出会い、一緒にバンドを組むことになったんだ。その後、2013年頃に大学でNineとThongと出会い、同じパンクバンドを結成することになってね。
Death of Heatherはデモを作成したあと、2018年に初めてライブをしたんだよね。
タイの音楽事情
-タイではあなたたちをはじめとして、SafeplanetやFolk9、YONLAPAといったバンドも活躍をして日本でも注目されています。私自身もタイの音楽事情や環境など詳しく知りたく思ってます。タイではどのような音楽が人気なのでしょうか。また、バンコクでは東南アジア最大級の音楽フェス”Big Mountain Music Festival”や過去にはIDLESとAlvvyasがヘッドライナーになった”Maho Rasop Festival”が開催されていたり、若者たちが国内のみならずインターナショナルな音楽に触れる機会も多いと思っているのですが、特にあなたたち世代の人に人気のある音楽も知りたいです。
今、タイで人気の音楽ジャンルはロックやインディーポップで、それがメインストリームにも波及していると思う。
Death of Heatherは特有のサウンドを持っているから、ファン層はそこまで大きくはないと思う。タイには国際的なフェスがあって、それもファン層を広げたり、新しいバンドと出会うきっかけになっているんだよ。
タイ国内のバンドシーンとの関わり
-先ほどの質問でもありましたが、新しい世代のバンドシーンが活気を帯びて、インターナショナルな音楽フェスも開催されています。そういった国内のバンドシーンに刺激を受けたりインスパイアされる部分もありますか?
僕たちはタイよりもむしろ海外のバンドにインスパイアされているんだ。タイの音楽シーンはとても多様で、素晴らしいアーティストがたくさんいるんだけどね。僕たちの音楽のスタイルはあまりタイのメインストリーム向けではないかもしれないから、どちらかというと僕たちは海外のバンドにより影響を受けていると思う。
For Tracy Hydeとのコラボ
-あなたたちは日本のバンドFor Tracy Hydeとのスプリット7インチシングルレコード『Milkshake / Pretty Things』をリリースされていたり、SafeplanetはROTH BART BARONとのコラボレーション楽曲をリリースしていたり、日本のバンドとの接点もあり、親和性も高いですよね。まずはFor Tracy Hydeとスプリット7インチシングルレコードをリリースしたきっかけやあなたたちから見た日本のバンドの印象を教えてください。
Kento(to’morrow music)からTwitterを通じて、For Tracy Hydeが僕らとスプリット7インチをリリースすることに興味があると連絡があったんだ。とても嬉しかったよ。僕らはFor Tracy Hydeが大好きなんだ。彼らがタイでライブをしたときに見に行っててね。とても嬉しいコラボレーションだった。彼らが解散する前に一緒に演奏することもできたのも良かった。
日本のバンドも大好きだよ。日本の音楽は、音楽性やメロディーの面でユニークだと思う。日本語が分からなくても、その面白さにのめり込んでしまうんだ。日本のアーティストは日本語で歌うけれど、彼らの音楽は世界中を旅することができると思う。
Death Of Heather – Pretty Things [Official MV]
アジアのバンドシーンでの位置づけ
-私自身タイの素晴らしいバンドたちと日本のバンドたちが関わりをもってお互いに共鳴しながらアジアのバンドシーンを盛り上げている状況は大変嬉しく思っています。あなたたちの音楽は国内外からも注目されていて、海外の活動ではシンガポールの音楽フェスへの出演もされていますね。なので聞きますが、あなたたちが目標とするのはインターナショナルな活動の拡大ですか? それとも国内での活動ですか? どちらの回答だとしても理由も教えてもらえると嬉しいです。
初日から期待以上だったよ。自分たちの音楽が国境を越えて通用するとは想像もしていなかった。海外で演奏すると、リスナーに(現実世界で)会えるんだ。何人かのリスナーとはオンラインやソーシャルメディアで話をするよ。インターネットは僕たちにとって大きな助けになっているんだ。僕たちには、これまでに演奏したことのない国で演奏するという目標があるよ。
英語で歌う理由
-歌詞は英語で歌われていて、サウンドも90年代の海外ドリームポップやシューゲザイザーバンドたちからの影響を感じられるものになっています。あなたたちの感性やアイデアをもってDeath Of Heather特有の音楽は確立されていると思っています。日本にも英語で歌唱するバンドはたくさんいますが、あなたたちが母国語ではなく英語で歌っている理由はありますか? またタイ出身のバンドという観点で見た時に、そのアイデンティティは自分たちの音楽にどのように作用していると思いますか? もしそこで意識していることがあれば教えてください。
ただ、僕たちのような音楽には、英語の方がより明確に伝えることができ、理解されやすいと思う。多くの人が英語を使っていて、英語の音楽を聴いているから、より広く伝わると思う。
Death of Heather – “Hard to Cure” [Official MV]
影響を受けたアルバム
-アーティスト写真やライブのアートワークではメンバーそれぞれMy Bloody Valentineやモリッシー、Joy Division、The CureなどのTシャツを着ていますね。あなたの音楽に影響を与えたアルバム3枚をあげるとすれば、どれですか。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードがあれば教えてください。難しければ、メンバーそれぞれ1枚ずつ好きなアーティストのアルバムを教えてください。
僕たちは皆、たくさんの音楽を聴いているんだ。好みは様々なんだけど、音楽への情熱も共有しているよ。僕たち全員が共通して好きで、大きな影響を与えた音楽をいくつかあげてみるね。
– My Bloody Valentine『Loveless』
このアルバムは、私たちの音楽の作り方に永遠に影響を与え続けているんだ。
– The Cure『Wish』:自分たちのセルフタイトルのアルバムを作るときに、このアルバムをよく聴いた。僕らにとっては、ギター・パートが大きな役割を果たしていると思うんだだ。
– Turnover『Peripheral Vision』: 彼らが2017年にこのアルバムをリリースした時、僕らがやりたい音楽の作り方が変わってしまうくらいに影響を受けてね。それまではパンクバンドだったんだけど、このアルバムでシューゲイザーを探求するようになったんだ。
Turnover – “Dizzy On The Comedown” (Official Audio)
バンド名の由来
-“Death Of Heather”という名前について教えてください。バンドとして活動するにあたり“Death Of Heather”という名前にした理由やその名前が持つ意味は何ですか?
Pale WavesのHeather Baron-GracieとDeath of Loversのファンなので、名前を組み合わせてIG(Instagramの略)のハンドルネームにしたんだ。このプロジェクトを始めた当初、名前が必要だったから、自分のIGから取っただけなんだ。
Pale Waves – Unwanted (Official Video)
Forever
最新作のコンセプト
-ここからは最新作『Forever』についてお聞きします。前作『Death Of Heather』は、機微感のあるバンド・アンサンブルを特徴として奥行きのあるサウンドスケープが魅力のアルバムでした。『Forever』もその魅力は損なわれていないのですが、前作よりもアグレッシブなサウンドになっていますね。特にギターのアプローチはレイヤー感のあるサウンドで奥行きよりも音の厚みにこだわった印象です。今作はどのようなアイデアや方向性をもって制作されたのでしょうか。前作との違いも教えてもらえると嬉しいです。
“Forever “を聞くと、また子供に戻りたくなると思うんだ。多くの人が、夢のようなポップ/シューゲイザーだった『セルフタイトル』(2020年)をまだ連想していると思う。『Forever』では、エモやグランジなど、自分たちが若い頃に好きだったものも取り入れたんだ。よりタフになりつつも、僕らの美学が注ぎ込まれた音楽になっていると感じている。自分たちらしさを変えることなく、思う存分直球勝負できたので、結果にはかなり満足しているんだ。
bdrmmとのコラボ
-今作「Pretty Things」と「Head In The Sand」はbdrmmのリミックスバージョンが収録されています。まずはbdrmmとのコラボにいたったきっかけを教えてください。
このEPを企画したときには6曲しかなかったから、レーベルのSmallroomがリミックスのアイデアを提案してくれたんだ。ブレインストーミングの結果、bdrmmがとても気に入ったから、お願いしたんだ。連絡を取ってみたら、彼らも僕らのことを気に入ってくれた。みんな楽しんでくれたよ。
-また「Pretty Things」と「Head In The Sand」。ダンスミュージックにアプローチしたアレンジとなり、ダンスビートとあなたたちの楽曲の相性のよさにも驚いたのですが、リミックスを依頼して完成された楽曲聴いたときの印象を教えてください。
コラボレーションは期待以上のものだったよ。彼らは僕たちの曲を、これまで考えもしなかったような新しい方法で再解釈してくれた。僕たちはこれらのリミックスをとても気に入っているよ。
Death Of Heather – Pretty Things | Remixed by bdrmm [Official Visualizer Video]
ブレイクスルーとなった曲
-今回の楽曲で、あなたたち自身ブレイクスルーとなった楽曲、もしくは最も変化や進化を感じさせる楽曲はどれですか?
「Pretty Things」は僕らのターニングポイントで、最初に取り組んだ曲なんだ。この曲は、デモの時とは全く違っていて、最初はとても、とてもヘビーだった。それで、レコーディング・スタジオでジャムることにしてみた。ヘビーとライトをミックスして新しいダイナミクスを加え、最高の組み合わせになった。この曲がこのアルバムの方向性を決めたんだ。
MVを渋谷で撮影した理由
-「Gaze At The Ceiling」のMVは日本の渋谷で撮影されていますね。なぜ渋谷で撮影しようと思ったのでしょうか? 理由と撮影時のエピソードがあれば教えてください。
2023年3月にジャパンツアーを行い、日本でMVを撮りたいと思った。その時点ではまだ曲は完成していなかったんだけどね。日本の俳優を見つけて、曲が完成していない状態で撮影したんだ。ストーリーは、渋谷を中心に起こる2人の関係を描いているよ。
「Gaze at the Ceiling」は渋谷ととても関係があるんだ。僕はそこで起こったことを元に曲を完成させた。渋谷には個人的なつながりもあるんだ。
Death Of Heather – Gaze At The Ceiling [Music Video]
最新作を聴いてほしい人
-『Forever』をどのような人、もしくはどのようなシチュエーションで聴いて欲しいですか?
『Forever』はこの1年の僕たちの姿だと思う。曲のひとつひとつが、身の回りに起こったことを抜き出しているんだ。自分の気持ちを曲の中に閉じ込めた。曲を聴くたびに、その時の気持ちを思い出すんだ。曲はどちらかというと陰鬱でメランコリックなんだけど、昔の物語を再確認するのはいい気分になるよ。
日本のリスナーへ
-12月には日本でのツアーも控えています。最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
これが日本でのスケジュールだよ。
12月12日 Moon romantic(東京)
12月13日 Compass(大阪)
12月14日 Club Quattro(広島)
これは今年2回目のジャパンツアーで、新しいEPで再び帰ってくるよ。みんなに僕らに会いに来てほしいし、僕らの変化を見てほしい。前回と同じではないから、僕たちと一緒に新しい経験をしてほしい。
僕たちは日本が大好きだよ!
Death Of Heatherアルバムリリース
2ndアルバム『Forever』
発売日: 発売中
収録曲:
1. Forever
2. Endless Emotions
3. Pretty Things
4. Head In The Sand
5. Drained
6. Gaze At The Ceiling
7. Pretty Things (bdrmm Remix)
8. Head In The Sand (bdrmm Remix)
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
Amazonで見る
Death Of Heather来日公演詳細
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Death Of Heather 2nd album 「FOREVER」 release JAPAN tour
- 東京公演
- 大阪公演
- 広島公演
日時:2023年12月12日(火) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京・青山 月見ル君想フ Moonromantic Aoyama
料金:ADV. ¥4,500 / DOOR ¥5,000 (各1D代別途)
出演:Death of Heather / Living Rita / ん・フェニ
チケット詳細:Peatix
日時:2023年12月13日(水) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪・心斎橋 CONPASS
料金:ADV. ¥4,500 / DOOR ¥5,000 (各1D代別途)
出演:Death of Heather / YUNOWA / MoritaSaki in the pool
チケット詳細:Peatix
『BIG ROMANTIC X STEREO RECORDS X HIROSHIMA QUATTRO presents
Death Of Heather 『Forever』 release party』
日時:2023年12月14日(木) OPEN 18:00 / START 18:30
会場:広島 CLUB QUATTRO
料金:ADV. ¥4,500 / DOOR ¥5,000 (各1D代別途)
出演:Death of Heather / 人体工学 / Barbara
※チケット:STEREO RECORDS SNSアカウントより後日発表
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Death Of Heatherバンドプロフィール
“Death of Heatherは、2017年にタイのバンコクで結成された4人組のオルタナティブ、シューゲイザー、ドリームポップバンド。メンバーは、テイ(Vo./Gt.)、ナイン(Gt.)、トン(Ba.)、ノン(Dr.)の4人組。
”
ライター:滝田優樹
1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky