最終更新: 2023年12月23日

トリップ・ホップの新星、a.s.o.がベルリンから登場した。

彼らのデビューアルバム『a.s.o.』は、このジャンルの黄金期を思い出させる驚異的な作品である。

90年代の最盛期を知るファンはもちろん、現行のインディーミュージックのファンにもぜひ聴いてほしい。

a.s.o.とは


a.s.o.はシンガーソングライターのアリア・セロール・オニールとプロデューサーのルイ・デイの二人組である。

どちらもベルリンを拠点とするオーストラリア人で、カイリー・ミノーグやマドンナへの共通の愛情から音楽を始めたという。

独特な選曲

彼らがセレクトした曲のプレイリストも興味深い。

The Smashing PumpkinsやU2のようなトリップ・ホップとは一見関係のない有名なアーティストの曲があるが、実はDISC2の隠れた名曲を選んでいたり、清水 靖晃や佐藤允彦といった日本人でもなかなか知られていない日本のアーティストの曲もあったりする。

一見するとバラバラに見えるが、彼らの音楽のルーツや影響を一貫して感じさせる選曲となっているので、こちらも聴いてほしい。

デビューアルバム『a.s.o.』


a.s.o.のデビューアルバム『a.s.o.』は、トリップ・ホップの伝統を踏襲しつつも、独自の色彩を放っており、多彩な音楽要素を駆使している。

ドラム、ベース、サンプルといったトリップ・ホップの基礎に加えて、ドリームポップ、ソウル、ダブなどのジャンルからもインスピレーションを得ているのだ。

ルイのプロダクション

これらの要素は、ルイ・デイの優れたプロダクションによって、見事に調和されており、音の重なりやエフェクト、空間感などを巧みに操作して、音楽に奥行きと広がりを持たせている。

彼の音楽は、トリップ・ホップの持つ暗さや緊張感を損なわずに、トンネルを抜けた先の開放感まで表現している手腕は素晴らしい。

セロールのボーカル

また、セロール・オニールは、これまでのトリップ・ホップのボーカリストたちがそうであったように息苦しさを感じさせるのではなく、むしろドリーム・ポップのような軽やかさすらある。

彼女のボーカルには派手さはないものの、リスナーに寄り添うように、ささやくように歌う。彼女の歌声は、トリップ・ホップの音楽に新しい息吹をもたらしていることは間違いない。

ささやかなトリップ・ホップ革命

a.s.o.のアルバムは、トリップ・ホップの音楽を再び注目させる作品だ。彼らは、このジャンルの歴史や伝統を軽視するのではなく、それを尊重しながらも、一貫して自分たちの好きな音楽の要素を取り入れてアップデートさせることに成功している。

トリップ・ホップの音楽に新たな魅力や鮮度を与えており、このジャンルの音楽の未来を予感させる作品だ。

a.s.o.アルバムリリース

1stアルバム『a.s.o.』


発売日: 発売中
収録曲:
1. Go On
2. My Baby’s Got It Out For Me
3. Rain Down
4. LITD pt. 1
5. Love In The Darkness
6. Cold Feeling
7. True
8. Falling Under
9. Thinking
10. Understand
11. Somebody
フォーマット:Mp3
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ライター:Tomohiro Yabe(yabori)
Tomohiro Yabe
BELONG Media/A-indieの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

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Twitter:@boriboriyabori