最終更新: 2025年5月25日
BEDのルーツ
BEDの音楽的DNA:影響を受けた3枚
-滝田優樹:あなたたちの音楽からはGrouperやMy Bloody Valentine、Cocteau Twinsらからの影響も伺えます。そのためBEDの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚づつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードについても教えてください。難しければメンバーそれぞれ好きな音楽アルバムとエピソードを教えてください。
ソル:My Bloody Valentineの重いテクスチャー、Cocteau Twinsのセイレーンのような声、そしてGrouperの深くてアンビエントでノスタルジックなサウンドが大好きなんだ。私たちは、一番暗くて悲しい時期にインスピレーションを見つけるの。
ニコ:だから、そうだな… My Bloody Valentineの『Loveless』、Cocteau Twinsの『Heaven or Las Vegas』、そしてGrouperの『Dragging a Dead Deer Up The Hill』かな。あと、Holeの『Pretty On The Inside』も加えたいね。
意識・刺激を受ける現行アーティスト
-滝田優樹:あなたと同世代もしくは現行のバンドで意識しているバンドもしくは刺激を受けているバンドはいますか?
ソル:私たち二人とも、10代の頃にPlaceboの同じワールドツアーのライブに行ったことがあるんだ。ラテンアメリカで“クィア”として育ったことは、私たちに大きな影響を与えたよ。最近はBlonde Redhead、Jessica Pratt、My Bloody Valentine…本当にたくさん。私たちのアーティストページのプレイリストをチェックしてみて。
ニコ:それに、僕たちのプロデューサーのパブロ・ティールマンのプロジェクト、例えばTelematやHombre Animal、それから最新のコラボレーターであるニノ・セイスみたいに、僕たちが演奏しているのと同じシーンの友達からも刺激を受けているよ。
BEDが影響を受けたアートとカルチャー
-滝田優樹:あなたたちの音楽要素にはシューゲイザー、ドリームポップ、ポストパンクがあります。そしてそれらのサウンドはゴシックアートにも通ずる耽美で幽玄さも感じたのですが音楽以外で自身の音楽性を形成するインスピレーションや影響にあるカルチャーやアートを上げることはできますか?
ソル:ニコはビジュアルアーティストなんだ。トレイシー・エミン、コートニー・ラブ、そして『バフィー 〜恋する十字架〜』(※1997年から2003年にかけてアメリカで製作されたテレビドラマ)が私たちに影響を与えたね。私にとって昔から一番好きなバンドはThe Cureだった。映画製作者としては、映画に出てくる“ゴス”な人たち、つまり普通じゃない、ちょっと変わったキャラクターがいつも好きだったな。
ニコ:うん、僕たちはビジュアルアート、映画、ポップカルチャー全般から影響を引きずり出してるんだ。ビジュアル要素に関して言えば、BEDは表現主義と“クィア”パンクの美学の混合にすごく基づいていて、トレイシー・エミンからメイプルソープまで、フランシス・ベーコンやエドヴァルド・ムンクの要素も交差してる。僕たちの歌詞はコートニー・ラブの文章に強く影響されているけど、エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』みたいなゴシック文学にも影響を受けてるんだよ。
新作『everything hurts』
『everything hurts』に宿る感情
-滝田優樹:ここからはアルバム『everything hurts』について教えてください。まずはタイトルから。”everything hurts”というタイトルはどのような感情や雰囲気が反映されているのでしょうか。
ソル:私たちはひどい恋愛関係を経験してきて、愛は人を泣かせるべきじゃないって思うんだ。
ニコ:うん。その曲のタイトルでありアルバムのタイトルでもある“everything hurts”は、僕が2021年にライプツィヒでやった展覧会から来てるんだ。失恋のつらさとか、落ち込んだ感情についての展覧会だったよ。
共同作業で磨かれたサウンド
-滝田優樹:アルバムの制作はアストルガとアストルフィによって作曲され、その後シラーが加わり、パブロ・ティールマンがプロデュースとミックスを担当し、ヤリ・アンティがマスタリングを行ったそうですね。制作時はディスカッションやアイデアの交換をして、進められたのでしょうか。
ソル:私たちの友情が最初の曲作りのアイデアを後押ししてくれたんだ。エマは美しいギターを、ニコは深い歌詞を、そして私はパンチの効いたベースラインを持っていた。パブロは私たちのWhatsAppの音声デモを、まるで魔法使いみたいに曲にしてくれたの。ニコはミキシングの時に彼と一緒に座って、すごく正確な指示を出すんだ。そしてヤリがアルバムをマスタリングしてくれた。とても繊細なチームだよ。
ニコ:たいてい曲作りはすごく衝動的に始まるんだ。ジャムセッションをして、アイデアの元を作る。それから構成がある程度できたら、僕も無意識の流れみたいな感じで、あまり編集せずに歌詞を書くんだ。パブロは僕たちのサウンドをどこに持っていくべきか完全に理解していて、同じようなリファレンスも共有しているから、そういう草案をパワフルな曲にするのを手伝ってくれるんだよ。