最終更新: 2025年5月29日

テキスト:Tomohiro Yabe

「これは無理だろう」

4月初旬、BELONG Media創設者のTomohiro YabeがロンドンのインディーレーベルBella Unionに試聴会のメールを送ったとき、周囲からそう囁かれた。

女性4人組のポスト・パンクバンド、SAVAGESのメンバーであるフェイ・ミルトンの新プロジェクト”Goddess”のアルバムを、日本における地方の小さな喫茶店から、ZOOMを通して世界中のリスナーへ届けるという企画は、大手でなければ実現不可能に思えた。

私たちBELONG Mediaは、2012年の設立以来、世界中のインディー音楽とその背景にあるストーリーを日本のリスナーに届けるべく、小さな灯をともし続けてきた。

13年という月日。それは決して平坦な道のりではなかったが、音楽への愛と、アーティストへの敬意だけを羅針盤に進んできた。

そして今、私たちの積年の想いが、一つの大きな形になろうとしている。

元Savagesのドラマーであり、現在は気候変動アクティビストとしても精力的に活動するフェイ・ミルトン。

彼女が始動させた新プロジェクト”Goddess”のセルフタイトル・デビューアルバム『Goddess』。

アルバムには、Ex:Re (Elena Tonra)とのコラボ曲「Shadows」を始め、珠玉の楽曲が並ぶ。

そのアナログレコードを、最高の音響環境で、日本から世界へ向けてオンラインで届ける試聴会の開催が決定したのである。

始まりは、一冊の雑誌記事と10年来の憧れ

Savages特集記事(2013年7月号の雑誌『HUgE』掲載)

BELONG Media代表のTomohiro Yabeには、忘れられない記憶がある。

「2013年7月号の雑誌『HUgE』に掲載されたSavagesの特集記事を読んだとき、強烈な衝撃を受けました。いつか彼女たちにインタビューを、という想いは、メディア立ち上げ当初からの夢の一つでした。今でもこの号は大切に持っています。」

その夢が、形を変え、10年以上の時を経て今、フェイ・ミルトン本人との直接的なコミュニケーションへと繋がった。

震える手で送った一通のメール。そこには、Savagesへの長年の敬愛と、彼女の新プロジェクトGoddessへの期待、そして何よりも”彼女の音楽を日本のファンに届けたい”という純粋な願いを綴った。

驚いたことに、フェイ本人、そして彼女が所属する名門インディーレーベル”Bella Union”の共同設立者であり、Cocteau Twinsの元メンバーでもあるサイモン・レイモンドの妻であり、同レーベルの社長であるアビー・レイモンドからも、温かい返事が届いたのである。

フェイ・ミルトン:素晴らしいわ!この企画にワクワクしています。

アビー・レイモンド:このアイデア、大好きです。ありがとう、連絡を頂き光栄です!

“夢のようでした”と語るのは、BELONG Media編集部の滝田優樹である。

「Cocteau Twinsの元メンバー、サイモン・レイモンドとロビン・ガスリーが設立し、Beach HouseやFather John Misty、Fleet Foxesらを擁するBella Union。彼らと一緒に何かを企画できるなんて・・・!」。

なぜ、オンライン・アナログ試聴会なのか

フェイ・ミルトンは、気候変動問題への強い意識から、自身のプロジェクトGoddessでは大規模なツアーを行わないという決断をしている。

気候変動が私たちに影響を与えることを人々に認識してもらうために、あらゆる手段を尽くした

フェイは私たちのインタビューでそう語ってくれた。

その意思を最大限に尊重し、私たちは考えた。どうすれば、Goddessの音楽を、そのこだわりごと日本のファンに届けられるだろうか。

答えは”オンラインでのアナログレコード試聴会”だった。

「Goddessのサウンドは、私たちのドラムとベースから出発している」とフェイが語るように、エイス・ハッサン(Savagesのベーシストでもある)との鉄壁のリズムセクションを核に、繊細さと硬質さが同居するサウンド。

それはまさに、アナログレコードというフォーマットでこそ、その真価が発揮される音楽である。

試聴会の舞台となるのは、新潟市にある”珈琲かどや”。

オーナー渡辺氏が長年かけて磨き上げたJBL Project K2 S-9500スピーカーを中心とする珠玉のオーディオシステムが、アナログレコードに刻まれた音をひとつひとつ丁寧に拾い上げ、豊潤な響きとして空間を満たす。

その音を、高音質マイクで集音し、ZOOMを通じて世界中のリスナーの元へ届けるという企画である。

フェイ・ミルトンからのビデオメッセージとリアルタイム翻訳

オンライン試聴の開催に伴い、フェイ・ミルトンから特別にビデオメッセージの上映も予定している。

また、ZOOMの有料プランの一つであるリアルタイム翻訳機能を用意。

英語は日本語字幕で、日本語は英語字幕で表示され、アルバムの感想共有を海外のリスナーと楽しむことができる。

DIY精神で実現する、国境を越えた音楽体験

新潟かどやリハーサル時

今回の試聴会で使用するアナログレコードは、私たちBELONG Mediaが自費でBella Unionから購入する。

フェイのサインが入りのレコードは現在、ロンドン・ガトウィック空港を経由し、13,471 kmの旅を経て、私たちの手元に届く。

サイン入りレコードは、日本のリスナー限定で参加者へのプレゼントとする予定である。

小さなメディアにとって、アナログレコードの自費購入は決して小さな負担ではない。

しかし、それ以上に大きな価値がこの企画にはあると信じている。

フェイは私たちのインタビューで、自身のデビューアルバムについて、下記のように語ってくれた。

このアルバムは、多くの信頼と脆さの中で作られました。それはまるでプレイリストのようで、異なるサウンドがありながらも一本の糸が通っています。

その糸を、私たちは日本のリスナーと共に手繰り寄せたい。

是非、6月7日(土) 日本時間 午前10時~の1時間、このまたとない機会に立ち会って欲しい。

オンライン試聴会詳細

Goddessアナログオンライン試聴会

イベント名: VVAVESS Vol.1(BELONG Media / A-indie主催『Goddess』オンラインアナログ試聴会)
日時: 2025年6月7日(土) 日本時間 午前10:00~11:00 (イギリス時間 深夜2:00)
配信方法: ZOOM(高音質モード: 48kHz/192kbpsを推奨)
実施会場 (配信元): 珈琲かどや (新潟県新潟市中央区)
参加費: 400円
特典:日本のリスナー限定で、試聴会に参加し、アンケートに答えてくれた方に、抽選でフェイ・ミルトン直筆サイン入り『Goddess』アナログ盤をプレゼント!
プログラム:
・アルバム『Goddess』AB面 試聴
・フェイ・ミルトンからの特別ビデオメッセージ上映
・感想共有タイム ※ZOOMのリアルタイム翻訳機能あり
注意事項:
・フェイ・ミルトン本人および、『Goddess』参加アーティストの参加は予定していません
・席数の関係上、新潟かどやでのお客様の参加はできません
・アルバム試聴中は必ずカメラとマイクをオフでご参加ください
・可能であれば高音質モード: 48kHz/192kbpsで視聴をお願いします
・当日、ネット回線の都合上で見れなかった方は、後日、Youtubeでの動画配信を検討しています
参加方法: 下記の項目より、“購入する”もしくは“有料購読”をクリック
※購入してくれた方に、当日参加できるZOOMのリンクをお送りします