最終更新: 2025年9月4日
2023年にフランス・パリで結成された4人組のオルタナティブロックバンド、SCHØØL(スクール)。
同じくパリを拠点とするポストパンクバンドRendez-Vous(ランデブー)のメンバーであるFrancis Mallari(フランシス・マラリ)が率いるバンドだ。
メンバーはErica Ashleson(エリカ・アシュルソン)(Ba.)、Jack Moase(ジャック・モース)(Gt.)、Alex Battez(アレックス・バテズ)(Dr.)。
9月5日にリリースされるデビューアルバム『I Think My Life Has Been OK』は、10代の頃のエネルギーと純粋さを感じたくて結成したという初期衝動を体現した作品で、ノスタルジーとピュアさという二極を両立させたシューゲイザーサウンドの楽曲群となっている。
先日インタビューしたベルリンのバンド、BED(ベッド)とともに推したい新星シューゲイザーバンドのひとつだ。
今回SCHØØLには、パリの音楽事情からアルバムの話、そして彼らにとってのシューゲイザーについて聞いてみた。
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アーティスト:フランシス・マラリ インタビュアー:滝田優樹 翻訳・編集・校正:BELONG Media / A-indie
バンドの成り立ちとメンバーの出会い
-滝田優樹:私たちはアーティストのルーツや音楽がうまれた背景、そして影響を受けた音楽・文化・芸術を大切にしているメディアです。今回私たちとははじめてのインタビューなのでバンドの成り立ちから質問させてください。あなたたちはパリで結成された4人組バンドですよね? それぞれFrancisがRendez-Vousというポストパンクバンドで、EricaはSpecial Friend、Dog Parkでの活動歴があって、JackはLiquid Face、AlexはMarble Archのメンバーでもあると思いますが、どのようにこの4人が知り合ってバンドが結成されるにいたったのでしょうか。
フランシス・マラリ:俺は再び10代の頃のエネルギーと純粋さを感じたかったんだ。
Alexとは2014年頃に知り合って、いつも彼に「もし新しいバンドを始めるなら、ドラムは君以外考えられない」と言っていたんだ。そしてここにいる、10年後にね。
Jackとは毎朝犬の散歩で行っていたドッグパークで出会った。彼はオーストラリアでバンド(Liquid Face)をやっていたんだけど、フランスに来てからは誰とも演奏していなかったから、俺と一緒にやらないかと誘ったんだ。
Ericaはみんな知っていて、彼女にベースを頼むのは当然だった。

スケートカルチャーが育んだ音楽的嗜好
-滝田優樹:メンバーそれぞれどのような幼少期を過ごしてどのような音楽を聴いていたのでしょうか。もしくはどのような音楽に興味をもって楽器をはじめられたのでしょうか。
みんなそれぞれ違う都市や国で育ったんだ。Ericaはアメリカ、Jackはオーストラリア、Alexはフランス北部、そして俺は南部でね。でも共通して言えるのは、みんなスケートボードのシーンで育ったということだ。俺にとって、スケートビデオのサウンドトラックが俺の音楽的趣味を作ったんだ。FlipのSorryやEmerica’sのthis is skateboardingみたいなビデオは大きな影響を与えた。でも俺が音楽を始めるきっかけになったのは、Ramonesを発見した時だった。すべての曲が同じパワーコードで弾けるということを知って、「俺の方が上手くできる!」と思ったんだ(笑)。

バンド名に込められた想い
-滝田優樹:バンド名についても教えてください。なぜ”SCHØØL”という名前にしたのでしょうか?”SCHØØL”というバンド名の意味についても教えてください。
最初の質問でも言ったように、俺は再び10代の頃の純粋さを感じたかったんだ。だから、プロジェクトをこのように呼ぶのは俺にとって当然のことだった。

英語で歌う理由
-滝田優樹:他のフランス出身のバンドもそうですが、歌詞は英語で歌われていますね。フランス語ではなく、英語にしている理由はなんですか? 日本にも英語で歌詞を書いて唄っているバンドは多くいるのですが、リズムやメロディに合わせやすいといった理由がほとんどですがあなたたちもそうなのでしょうか。
そうだと思う。俺たちはみんな英語の音楽を聴いて育ったからね。同じことをフランス語で歌うとちょっと真剣味に欠けるというか、英語で書く方が俺には自然なんだ。

パリの音楽シーンと現在の音楽事情

最近の音楽シーンはすごく面白いよ。誰が人気なのかはよくわからないけど、今俺のお気に入りはBryan’s Magic Tearsだ。ソングライティングがとても素晴らしいんだ。新しい世代のシューゲイザーへの関心がどんどん高まっていて、とても刺激的だね。Le Point EphemereやLa Maroquinerieみたいな素晴らしいベニューがたくさんあって、俺たちもLa Boule Noireでアルバムリリースパーティーを開く予定だ。
憧れのフェスティバル
-滝田優樹:ヨーロッパにはグラストンベリー・フェスティバルやレディング・フェスティバル、 ロック・アム・リングなど多くの音楽フェスティバルがありますが、あなたたちが出てみたいフェスはありますか? あれば理由も教えてください。もしなければ、ツアーやパフォーマンスをしてみたい国を教えてください。
去年の6月、ロンドンのビクトリア・パークで開催されたOutbreak Festivalに行ったんだ。ラインナップがすごくクレイジーで、すべてのバンドが最高だった!だから一つ選ぶとしたら、そのフェスティバルだね。場所も最高だし、ラインナップも完璧だった。それまでロンドンはそんなに好きじゃなかったんだけど、今はその街と良い関係を築いているよ。
レーベルとの共感
-滝田優樹:あなたたちの所属するレーベル、Geographieにはあなたたち以外にもMarble ArchやDog ParkをはじめとしてGood Morning TV、Bad Pelicansなど国内外から注目を浴びるバンド/アーティストが在籍していますね。現在国内で共感や親近感を覚えるアーティストはいますか?
そうだね、レーベルのバンドとはたくさん親近感を感じているよ。彼らの多くは友達だからね!そして先ほども言ったように、Bryan’s Magic Tearsが大好きなんだ。よく一緒に演奏しようと誘うんだけど、なぜか彼らのブッカーが理解してくれないんだよね。
音楽的影響とアルバム制作
人生を変えた3枚のアルバム
-滝田優樹:あなたたちの音楽はSwirliesやDrop Nineteensからインスピレーションを受けているそうですね。あなたたちの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードについても教えてください。難しければメンバーそれぞれ好きな音楽アルバムとエピソードを教えてください。
Blurのアルバム『13』、その中の「1992」という曲があるんだけど、初めてそのノイジーなギターを聴いた時、そのコントロールされた感じに心を奪われたんだ。そのギターは今でも俺の頭の中にあって、今でもインスピレーションを与え続けているよ。
Humのアルバム『You’d Prefer An Astronaut』、「Stars」は多分俺の一番好きな曲だと思う。まあ、一番好きな曲は200曲くらいあるけどね(笑)。
MBVの『Loveless』、これは目新しくないのはわかってるけど、このアルバムは俺のどんなトップリストにも必ず入るんだ。
デビューアルバム『I Think My Life Has Been OK』について
メランコリックなタイトルに込めた想い
-滝田優樹:ここからはデビュー作『I Think My Life Has Been OK』について教えてください。まずはタイトルから。”I Think My Life Has Been OK”というタイトルはどのような感情や雰囲気が反映されているのでしょうか。
このタイトルは楽曲「OK <3」から取ったんだけど、アルバム全体のメランコリックな感情をよく表していると思う。時には簡単じゃないこともあるけど、心配しないで、きっと大丈夫だよということを人々に知ってもらいたいんだ。
https://youtu.be/oyNbEuPD83s
ベッドルームミュージックのような親密な制作
-滝田優樹:今作はノスタルジックなサウンドや雰囲気がありつつも着地は瑞々しく爽やかな印象で、90年代由来のサウンドを再現しつつもしっかりとアップデートされていると感じました。こちらのアルバムの制作は外部のプロデューサーが参加していますか? もし参加していたらその方とはどのようなディスカッションやアイデアの交換をして、進められたのでしょうか。もし介入していなければメンバー間でどのようなコンセプトや方向性を持って制作を進めたのか教えてください。
Maxime Gendre(彼もRendez-Vousでプレイしている)と一緒に作業したんだ。彼には、アルバムは親密な感覚を持つべきで、ほとんどベッドルームミュージックのようでなければならないと話したんだ。その繊細さを保つために、過度にプロデュースされたものにはしなかった。本当にシンプルで控えめに保ったんだ。「Mouzer’s Quest」みたいな曲は、まさに一発録りなんだ。完璧じゃないけど、そういう風に存在すべきなんだ。
90年代MTVへのオマージュ
-滝田優樹:アルバムのアートワークや「N.S.M.L.Y.D」、「Gardener」のミュージックビデオも淡い色合いでノスタルジックな雰囲気が演出されていますが、どのような心象風景が反映されているのでしょうか。あなたたちが影響を受けた90年代のシューゲイザーバンドたちの雰囲気に通ずる退廃美や時代感を反映しているとも感じたのですがいかがでしょうか? ノスタルジックな雰囲気を演出している理由を教えてください。
俺はMTVで流れていた90年代後半のミュージックビデオが大好きなんだ。だから、あの感覚を再び味わうのが夢だった。スケートボードの時代から、魚眼レンズ付きのミニDVカメラをまだ持っているから、ここで再びそれを使うのはとても直感的だったんだ。
最もパーソナルな楽曲
-滝田優樹:アルバムのなかでブレイクスルーになった曲やバンドにとって最も変化を感じさせる楽曲はどれでしょうか? 理由も併せて教えてください。もしなければ最もパーソナルな曲を教えてください。
最もパーソナルな曲は「Chevalier B」だと思う。これは最近亡くなった親友について歌った曲なんだ。ライブで演奏する時、何かとても感情的なことが起こるんだ。曲の中間で入ってくるシンセが、俺にとって最も感情的な部分だね。
シューゲイザーサウンドへの愛
不完全さの中にある美しさ
-滝田優樹:アルバム全10曲、シューゲイザーサウンドが主軸にあります。あなたたちにとってシューゲイザーサウンドはどのように捉えていますか? またはどのようなところに魅力されていますか? 私がはじめてシューゲイザーに出会ったのはMy Bloody Valentineです。壮麗な音像に衝撃を受けたのですがそれ以上に驚いたのが、ノイズをかき集めて形成された音だということでした。
君が言ったように、ノイズに驚いたこと、その美しさにね。「1992」の話をした時も、それが俺に鳥肌を立たせたんだ。俺たちがシューゲイザーをこんなに愛している理由は、それが完璧じゃないからだと思う。その不完全さの中に、俺たちは最高の気分を感じるんだ。それは多分、俺たちの人生の反映なのかもしれない。
すべての人に届けたい音楽
-滝田優樹:『I Think My Life Has Been OK』をどのような人に聴いてほしいですか? もしくはどのようなシチュエーションで聴いてほしいですか?
誰でもこのアルバムを聴いてもらいたいと思っている。インディー音楽を聴かない人でも、そんなに聴くのが大変なアルバムではないと思うんだ。このアルバムが、人生で落ち込んでいる人たちを元気づける助けになってくれればいいなと思っている。
日本のファンへのメッセージ

パレスチナに自由を。
FREE PALESTINE
SCHØØLアルバムリリース
デビューアルバム『I think my life has been OK』
発売日: 2025年9月5日
収録曲:
1. Schøøl Suxx
2. N.S.M.L.Y.D
3. OK <3(<は小文字)
4. Missed Call
5. 3467200
6. Mouzer’s Quest
7. Gardener
8. Passing Breeze
9. The End
10. Chevalier B
bandcampで見る
SCHØØLプロフィール
2023年秋にフランス・パリで結成された4人組オルタナティブロックバンドである。同じくパリを拠点とするポストパンクバンドRendez-VousのメンバーであるFrancis Mallariが中心となり、Erica Ashleson(Ba.)、Jack Moase(Gt.)、Alex Battez(Dr.)とともに結成された。10代の頃に憧れていたバンドを自分たちの手で作りたいという想いから生まれたバンドで、SwirliesやDrop Nineteensなど90年代のシューゲイザーバンドからインスピレーションを受けている。デビューアルバム『I Think My Life Has Been OK』では、ノスタルジーとピュアさという二極を両立させたシューゲイザーサウンドを展開している。
SCHØØL ライブ情報
イベント名:SCHØØL – La Boule Noire
日時:2025年9月24日(水)
開場・開演:19:30
会場:パリ・La Boule Noire (120 Boulevard Marguerite de Rochechouart, 75018 Paris, France)
出演:SCHØØL
チケット:€13.68
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ライター:滝田優樹
1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky