最終更新: 2025年9月23日

『Death of a Daisy & Birth of an Oyster』制作秘話


-滝田優樹:ここからは最新アルバムについて質問します。まずはアルバムタイトル『Death of a Daisy & Birth of an Oyster』の意味について教えてください。アルバム収録曲である「Daisy」や「Oyster」がタイトルに入っているのも印象的です。今作はどのような感情や雰囲気が反映されているのでしょうか。

ヘレナ:「Daisy」は、パワフルでありながら同時に過度に繊細でもある、純粋な愛のもろさの象徴なの。恋に落ちたい、愛されたいと必死になる気持ちが高まっていくんだけど、それはただそのアイデアの感覚を味わいたいがためなのよね。「Daisy」は、人生は一度きりで、何かを試す機会を失うかもしれないから、恋に破れることへの内なる恐怖を無視するための最後の一押しであり、リマインダーなの。最終的に、もし恋に破れたとしても、自分が信じるもののために強く立ち、一時的かもしれない何かに屈しないように最善を尽くすことが大切でね。

一方で、アルバムのトラックは実は「Oyster」で終わるの。「Oyster」は、私が歌詞や考えを“自由にさせてくれないか”ってバンドメンバーに話した曲なんだ。その時期、私はPink Floydのアルバム『Meddle』に入っている「Echoes」という曲に夢中で。毎日そのトラックを聴き込んで、曲の長さに衝撃を受けたし、歌詞がすごく夢見心地で、ほとんど現実から乖離しているところにアイデアが自由に駆け巡った。「Oyster」の歌詞は、曲ができるずっと前に書いたもの。書いている瞬間、私はとても傷つきやすくて、利用されて、醜いと感じていた。人からどう扱われるか、どう話しかけられるか、どう見られるかが嫌だった。ある種の社交不安を抱えていたと言えるかもしれないわね。この曲は、スポットライトの下で働くことに伴う“醜さ”についての私の考えと、良いことはいつか必ずやってくる、ということを示しているんだ。まるで、歪んだ見た目の牡蠣の中に横たわる真珠のようにね。食べられて、そして身につけられる。

それが私がなりたい姿だけど、同時に、人々にも彼らが生き物であることを認めてほしい。私と同じように、彼らにも感情があるってことを。

アルバム名は主に、単純で壊れやすいもの(デイジー)から、複雑で弾力性のあるもの(オイスター)への、崩壊と創造、そして変容のサイクルの二面性を表しているんだ。詩的で、悲しくて、壊れやすいものから、無骨で生々しいものへの開かれた本。それが私の人生観であり、人生の様々な段階を通して人間の成長と変容をどう受け入れるかということ。意味が通じるといいんだけど。

-滝田優樹:今回のアルバムのアートワークも印象的でした。『Metamorphosis: Final Stage』ではJAHFLAMEというプーケット出身で高校の同級生だったアーティストにデザインをお願いしていましたが、今作はどなたが担当したのでしょうか。またこちらのコンセプトも教えてください。

ヘレナ:私たちは“Ayu”というペンネームのアーティストを選んだの。友人がインスタグラムのストーリーで、彼が新年に人々に送ったステッカーセットをシェアしているのを見て、偶然見つけたんだ。レーベルとバンドメンバーに、この人が私たちのために仕事をしてくれるかもしれないって話して、すぐに彼に連絡を取った。

JAHFLAMEとの作業コンセプトととても似ていて、私たちは通常、何が欲しいかを彼らに伝えないんだ。代わりに、アルバムの全曲(デモ)を渡して、彼らがそれを聴いて、自分の考えをどう表現したいかを反映させてもらうのよ。私たちが提供するのは、各トラックのモチーフとムード、そして各曲のストーリーがどのようにお互いに関連しているかということだけ。

私たちが作った曲と一緒に、彼の作品を世界中の人々と共有できることを、ものすごく楽しみにしているんだ。アートと音楽は決して切り離せないもので、私たちができないビジュアルを引き出してくれたAyuにとても感謝してる。彼でなければならなかったのよ。

KIKI Live

-”滝田優樹:収録曲の「Baby」のミュージックビデオでは、水色の肌をした人物が走っているのが印象的でした。それこそ、あなたたちが影響を受けたダフトパンクの「Digital Love」のミュージックビデオを思い出したのですが、これについていかがですか。

ヘレナ:私たちのイラストレーター(Annop、Sidoldaj、Methakawee)に、Daft Punkのようにしてほしいとか、そういうことは全く伝えていなかった。でも、私たちがDaft Punkを大好きなのは、誰もが知っていることよね。私たちは彼らと、このアルバムの初期コンセプトが“宇宙”だったことについて話したわ(そう、デイジーとオイスターに方向転換する前の話)。イラストレーターは、この青い肌の女性を私自身として表現したかったみたい。事前に話し合ったコンセプトの枠組みの中で、KIKIの何か、あるいは誰かを表現するキャラクターを見つけたかったのね。

限られた時間の中で、このイラストに命を吹き込み、このアルバムの最初のトラック「Baby」に彩りを添える手助けをしてくれたチームに、本当に感謝したいわ。

-滝田優樹:今回のアルバム制作を進めるにあたり、メンバー間でのディスカッションはありましたか?これまでの作品との違いがあれば教えてください。今作で私が印象的だったのがダンスビートの拡張です。ドラムでいうキックの音が肉体的で、積極的にダンスビートを導入したことで、パワフルでドライブ感のあるサウンドが最高でした。ビートプロダクションで意識したことがあれば教えてください。

ヘレナ:一緒に仕事をしてきた年月を通して、私たちはいつも新しいことに挑戦したり、色々なものを一度に統合したりすることに熱心だった。このアルバムに取り組んでいた時期、私たちはこれまで以上にエレクトロニックなサウンドや曲に夢中になって、KIKIにもう一つのサウンドの側面を与えたいと思ったんだ。曲のプロダクションの裏側は、すべてギタリストのTanon(Non)が担当している。トラックで聴こえるすべての音は彼が手掛けていて、もう一人のギタリストでシンセ担当のBossが全体のプロダクションを監修しているわ。

私たちが作る曲に新しい色彩を加える必要があると感じて、これまで以上に楽しくて踊れるものにしたかったの。ハウスミュージックは多くの曲に取り入れたけど、「Daisy」というトラックでよりはっきりと聴こえるかもしれない。そこではNonが、甘く流れるような曲を破壊したいというアイデアを持っていた。気に入る人もいれば、邪魔だと感じる人もいるかもしれないけど、それは意図的にやったことだと知っておいてほしいな。

私たちのバンドの中では、正しいも間違いもなくて、ただ好きか嫌いかだけ。私たちが嫌いなトラックをリリースすることは絶対にない。他の人を感動させるために曲を作るのは、どちらかというとボーナスみたいなもの。でも、私たちがやることの核心は、まず自分たちの心と情熱を注ぎ込むこと。そして、自分たちが作ったものを好きになれたら、それはみんなに聴いてもらう準備ができたということなのよ。

デザイン:つでん
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