最終更新: 2025年8月11日
先日、中古のレコードショップで何気なく、日本の70年代~80年代のレコードを見ていたときである。日本語のジャケットの中で一際異質な全面英語のレコードがあるではないか。
海外アーティストが混じっているのかと思いきや、なんとそれがオフコース(Off Course)のシングル「ENDLESS NIGHTS」であった。

日本のバンドなのにどうしてこんなに全面英語のジャケットなのか?というのが今回の記事を書くきっかけとなった。
ちなみにオフコースを知らないリスナーのために補足すると、オフコースは現在はソロで活動している小田和正(Vo./Key.)率いるバンドである。
そう、あの明治安田生命のCMでおなじみの人だ。
1分で分かる記事の要点
・歌詞を英語にするだけでは海外進出は成功せず、文化的背景や市場のニーズを理解することが不可欠
・オフコースの挑戦から学ぶ3つの壁とその壁を超えるヒントについて
キリスト教・プロテスタントとカトリックの連載

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テキスト:Tomohiro Yabe 使用ツール:Claude、Gemini 編集:Tomohiro Yabe
BELONG Mediaでは、アメリカとヨーロッパの音楽が持つ”質感”の違いの本質を探るため、その根底にあるキリスト教、特にプロテスタントとカトリックの文化的影響について考察するシリーズを連載している。
今回はその視点から、多くの日本のバンドが一度は直面するであろう問い、“海外進出のためには、歌詞を英語にすれば成功できるのか?”というテーマを深掘りしたい。
プロを目指すインディーバンドにとって、これは単なる疑問ではなく、将来のキャリアを左右する切実な問題ではないか。
結論から言えば、単純に歌詞を英語に翻訳するだけでは上手く行かないだろう。
もちろん、英語で歌うことが無意味だと言うつもりはないのだが、本質的な”何か”が欠けていれば、たとえ完璧な英語詞と最高のサウンドプロダクションを用意したとしても、真の意味で海外のリスナーの心を掴むことはできない。
そのことを、1980年代に果敢な挑戦を行った伝説的なバンド、オフコースの事例から紐解いていきたい。
国内屈指のバンドが挑んだ”全米進出”という夢

1980年代初頭、オフコースは日本の音楽シーンで頂点に立っていた。
小田和正(Vo./Key.)が生み出す美しいメロディとハーモニー、そしてリスナーの心の機微を捉える歌詞は絶大な支持を集め、彼らの楽曲はチャートを席巻し続けていた。
1982年には日本武道館での連続10日間コンサートを成功し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いであった。
そんな彼らが次なる目標として見据えたのが、”アメリカ進出”だった。
その夢を結実させるために制作されたのが、1985年にリリースされたアルバム『Back Streets of Tokyo』だ。
このアルバムは、収録曲の全て英語詞で書かれており、彼らは本気だった。その証拠に、制作陣には超一流のアメリカ人スタッフが集められた。
作詞には、TOTOやChicagoといった当代きっての バンドに歌詞を提供してきたヒットメーカー、ランディ・グッドラムを起用。
プロデュースとミックスは、数々のグラミー賞受賞歴を誇る名匠、ビル・シュネーが担当した。
そして、アルバムのラストを飾り、後にシングルカットもされたのが「ENDLESS NIGHTS」という楽曲だ。
元々は「たそがれ」という日本語の楽曲だったものを、ランディ・グッドラムが全編英詞に書き換えたこの曲は、まさに彼らの挑戦の象徴だった。
サウンドは、当時のアメリカのAORシーンの最先端を行く、洗練された完璧なものだった。
小田和正のハイトーンボイスは、英語詞の中でも何ら遜色なく、むしろ新たな魅力を放っていた。
おまけに楽曲は、アメリカのラジオ局でオンエアされていたようで、最高の楽曲、最高の英語詞、最高のプロデューサー。成功へのピースはすべて揃っているように見えた。
果たしてこの挑戦は上手く行ったのか?彼らはアメリカのレーベルと契約し、彼の地でアルバムは発売されたのか?
アメリカでの厳しい現実

しかし、現実は厳しかった。アルバム『Back Streets of Tokyo』は、アメリカのメジャーレーベルとの契約には至らず、正式な全米リリースは叶わなかった。
日本でシングルカットされた「ENDLESS NIGHTS」も、彼らの他のヒット曲と比べると、商業的には成功したとは言えない結果に終わった。
なぜか?
日本でとてつもない人気があり、歌詞を英語にし、世界標準のサウンドを手に入れても、なお越えられない”壁”があったのだ。
有料部分では、全盛期を迎え、完璧な準備をしてきたオフコースでも超えられなかった3つの”壁”の正体。
そして、その”壁”を乗り越えるために、現代を生きるプロを目指すインディーバンドは何をすべきなのか。
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