BELONG Vol.22を購入いただきありがとうございます。
ここでは本誌に掲載した、LIVE AT HAPPY WALLのインタビューを全文と未公開写真を掲載します。

◆HAPPYインタビュー全文(Vol.22掲載)

アーティスト:Alec(Gt&Vo)、Ric(Syn&Vo)、Chew(Gt&Syn)、Syu(Ba)、Bob(Dr&Vo) インタビュアー:yabori 撮影:Kei Nakamoto

-まずどうして地元の綾部にHAPPY WALLを作ろうと思ったん?
Ric:『To The Next』のジャケットを作る事になって、やるなら映画みたいに自分たちが描いた絵の前にいるっていうイメージはあって。スタッフに壁に絵を描きたいって言ってみたら、どんどん計画が現実的になってきて。最初は東京近辺で描く事を考えていたんですよ。
Chew:最初は原宿の壁とか言ってたやんな(笑)。
Alec:スタッフが絵が描けそうな場所の候補を調べてくれていたんですけど、地元に候補がいくつかあって。一つは綾部市内で駅前の通りの近くにあるけど、1年で取り壊しになるから描いていいっていう所があったんです。でもどうせなら残る方が良いと思って、もう一つの候補だったのが、実際に絵を描いた山本商店っていうガソリンスタンドの裏なんです。大きい壁やし、どんな絵でも描けるやろって言ってたんですけど、メンバーの間では思いついたまま描こうやっていう意見と、何を描くか決めてからやろうやっていう二つに意見が割れてて(笑)。
Ric:下書きはしたんですけど、まずHAPPYって描いて、あとは思いつくままに描こうっていう事になって。5人とも筆を取って、それぞれにどの辺を塗るっていう事だけを決めてやってみたら、形になっていって。
Syu:4時間くらいで描いたよな。
Alec:描いた後自然と僕らのお客さんがそこに遊びに行くようになってて、初めはそういう風になるとも思ってなかったんですよ。描き終えた後にみんなが来てくれたら面白いことになるかもしれんと思って、住所をSNSに載せたら、“HAPPY WALL”って名前で呼ばれるようになってて。

-“HAPPY WALL”って自分たちじゃなくて、HAPPYのファンが付けた名前だったんや。
Alec:そうです。そういえばこの前、“HAPPY WALL”が結婚式のドレスの撮影にも使われてたみたいで、パンフレットにも載ってたみたいです。そういう使い方をしてくれるのも良いなと思いました。

-そんな事もやったんや(笑)。じゃあその“HAPPY WALL”前でライブをしようと思ったのはどうして?
Bob:地元近くのライブハウスの店長がそこでイベントをやりたいって言ってて。
Alec:僕らがよく出てたライブハウス(丹波LASSON)があるんですけど、そこのクロージングパーティーでワンマンをやらせてもらった所で、色んな縁があって。
Syu:僕らが学生時代の頃から出ていたライブハウスなんですよ。
Bob:ライブ以外にもスタジオとしても使わせてもらってて。よく曲作りもさせてもらってて、『HELLO』や『Stone Free』の収録曲の多くがもここで生まれたんですよ。
Alec:クロージングパーティーが終わった後、どこかでイベントやりたいって話になった時に、“HAPPY WALL”の前がいいんちゃうっていう事で話が進んでいきました。
Chew:僕らがバンドを結成して5年だったんで、タイミングがよかったな!
Alec:ライブをする場所をどうするかっていう話になった時に、壁の前でライブをやるのも良いし、隣に営業してないパブがあって。そにスピーカーや照明とステージもあったんで、ここでライブできそうやなって話になって。最初はその建物の中でDJやフードも呼んで、小さめの規模でやろうと思ってて。
Ric:最初はそのパブの中でやるつもりだったんですけど、フリーライブを予定していたんで200人以上来そうやなって話になって。それだったら“HAPPY WALL”の前でやろうかっていう話になりました。
Alec:山本商店の山本さんがライブやるんだったら大工の知り合いもおるし、手伝うでって言ってくれて。そしたら話が大きくなっていって。でもそもそもよく考えたらみんなこんな山奥にどうやって人来るんやろうっていう話になって(笑)。
Chew:バスを出さないとあかんなって事でシャトルバスも用意する事になって、どんどん規模が大きくなっていったんですよ。
Alec:話を広げ過ぎてこのままだとまずいって事で、急ピッチで準備を進めてフライヤーができた頃にはライブをやるイメージが徐々に固まっていって。それが3ヶ月くらい前です(笑)。最初は僕らだけでイベントの宣伝をしないとって思っていたんですけど、地元のみんなに知らせて行ったら、綾部市の新聞社に取材されてそれが記事になったり、綾部市長にも対談する機会もあったり、地元のゆるキャラのまゆピーとも撮影したりしました(笑)。それが開催1ヵ月くらい前の話ですね。

-HAPPYの記事があやべ市民新聞の一面になってたよね。イベントの準備で地元に帰ったのはいつ頃?
Ric:1週間前に帰ったんですけど、帰った時にはイベントの話が広まってて。
Chew:いろんな人がいろんな所にポスターを貼ってくれたり、フライヤーを配ってくれたりしてくれたおかげで、ありとあらゆるコンビニや掲示板にポスターが貼ってあって。町興しのつもりはなかったんですけど、それくらいの熱気を感じられるまでに盛り上がってて。
Alec:ここまでは順調だったんですけど、ここからとんでもない事が起こるんですよ。

-え!?とんでもない事って何なん?
Alec:一番肝心のステージ設営のスタッフなどを誰も集めてなかったんです(笑)。
Ric:最初はステージは用意してくれるっていう事だったんで、てっきり設営までしてくれるもんやと思ってたから、地元に帰ったらステージできてるし、サウンドチェックしてから曲作りをしようっていう想定だったんですよ(笑)。
Alec:電飾や装飾関係その他もろもろは自分らがやらなあかんなってくらいしか考えてなくて。
Chew:会場には自分が一番早く着いたんですけど、着いたら壁の前に何もなくて、地元のライブハウスの店長が草刈りをしてるだけなんですよ。「何これ?」って思ってたら、大きいトラックが3台くらい来て、骨組みを下していくんですけど、設営スタッフは誰もいないんですよ(笑)。まぁ、これから組み立ててくれる人らが来るんやろうなと思ってたら、店長が「よし!やろうか」って言い出して。あ、この設営は俺らがやるんやっていう・・・(笑)。
Alec:出演者で地元の人らもいたんで、イベントの準備を手伝うって来てくれたんですけど、いざ来たら何もできてないから、みんなもビックリ、出演者にも設営を手伝ってもらいました(笑)。
Chew:一日目はステージの骨組みを組み立てるんですけど、俺らはノウハウを知らんから、いざやってみてもガタガタになってるっていう(笑)。そしたら地元の土木のおっちゃんらが通りがかりに見に来てくれて、これはあかんっていう事でやり方を教えてくれて。2~3日目までは順調に進んでいたんですけど、3日目がイベント当日の前日で。3日目に会場に行ったら、慌ただしい雰囲気だったんですよ。そしたら設営資材を貸してくれた会社の人たちが来てて、建物の強度をチェックしてくれていて。その時点でステージはほぼ完成していたんですけど、強度的にこれはやらん方がいいっていう話になって。その日の朝10時には、ステージで演奏するのは不可能っていう話になったんですよ。
Alec:当日は雨予報やったから、屋根を付けなあかんってことにもなってて。
Ric:屋根に水が溜まるからしっかり角度を計算して、屋根をつけなあかんっていう。そういうのもワイヤーを張りながら作業していって。もはや究極のDIYでしたね。
カズキ(スタッフ):せっかくステージを作ったのに、そこで演奏できんかもしれんってなってたから、みんなめっちゃ暗い顔してたもんな。
Bob:全員きれいこんがり焼けて筋肉痛でしたね(笑)。
Alec:準備の時に限って晴れてめっちゃ暑かった、みんな上半身裸でバンダナ巻いて作業してたもんな。それで前日に雨が降ってきて、屋根に水が溜まるし危ないって事で作業ができなくなって。
Ric:強度的な問題もあってステージで演奏できんかもってなってから、たまたま会場の近くに住んでた人が建築会社の人が来てくれて、補強してくれる事になって。それでやっとステージで演奏できる事になって。
Chew:それは良かったんですけど、肝心のステージ装飾が何も出来てないっていう。そこからはひたすら自分たちで飾りつけをして、前日の深夜3時まで作業しましたね。照明も専門の人がやった訳ではなくて、Syuが付けたんですよ。
Syu:照明をつけるのも初めてなんで大変は大変やったんですけど、教えてくれてた地元のおっちゃんの専門用語がとにかく面白くて(笑)。ネジを打つ細かい動作を“こづく”や“しごく”っていう職人さん独特の言葉を使っていて、そういうのが出る度にツボってました(笑)。
Ric:照明でも苦戦してたら、近所に井上さんっていう農業をしている方がいるんですけど、どんな道具でも持っている人がいて、フォークリフトまで持ってて。
Alec:井上さんは大きい布も持ってたんで、それを会場に付けたらサーカスみたいにできるなって思って。それをベースに装飾していきました。サグいサーカスって感じで。
Syu:ステージの板も井上さんが持っていたやつで、それが無かったら貧相なステージなってたな(笑)。
Chew:そこで何とか形になったんですけど、前日までは本当にここでライブができるのか不安だったんですけど、いざ当日になって警備員さんが来てくれて、初めてほっとしましたね。
Alec:前日まで暗闇の中で装飾していたから、ステージの完成系がどんなものか分からなかったんですけど、いざ明るい中でみたらいいなと思えるものができ上がっていて。あれが曇りやったら最悪やったやんな。
カズキ(スタッフ):自分はイベントの前日に会場に来たんですけど、その時は曇っててステージを見てみたら、すごいどよーんとしててビックリして(笑)。こういうノリでやるんかっていう。
Bob:空が全部見えるんで、天候に影響されまくるんですよね。
Ric:前日までは雨予報だったんですけど、当日は晴れましたね。

-ホンマに晴れて良かったな・・・!
Chew:晴れた事にも一つエピソードがあって、山本さんの家には娘が20年大事にしているてるてる坊主があったんですよ。絶対に晴れて欲しい日に使っているらしいんですけど、そのお陰で大事な日に一回も雨が降った事がないらしいんですよ。それを僕らのイベントの前日に吊るしてくれたみたいで。それで当日「てるてる坊主のお陰で晴れたよ!」って言いに来てくれて。「マジっすか!?ありがとうございます!」って。
Alec:まさかここまでDIYになるとは思ってなかったですね。DIYをテーマにしたフェスにするつもりもなかったんですけど(笑)。
-まさかの展開の連続やったんやな。実際に自分らで作ったステージでライブをやってみてどうだった?
Alec:自分たちで設営までしたせいかめっちゃ音が良かったんですよ。ものすごく演奏しやすかったです。そのせいかライブって自分たちでステージまで作って、演奏するのがバンドじゃないかとすら思って(笑)。
一同:(爆笑)。
Bob:僕ら本番まで一回しか練習できなくて。セットリストをみんなで合わせて演奏したくらいで。
Alec:でもここまでやったから、みんなのグルーヴも高まってるし、絶対にライブが成功するっていう予感はあったよな。

-いろんなフェスでいろんなやり方があるってバンドからインタビューして話を聞いたんやけど、自分たちが設営したって初めて聞いたで(笑)。
Syu:普通のフェスってバンドがやるって言って、演奏はするけど、実際に動くのはスタッフやもんな。
Chew:一週間くらいミュージシャンじゃなかったもんな(笑)。あいつら『Stone Free』を作ったと思ったらステージまで作っとるでって(笑)。
一同:(爆笑)。
Bob:今までは何とかなるやろで何とかなってきたけど、今回はホンマに何とかしたな。
カズキ(スタッフ):出演者がステージを設営していた事を来てくれたお客さんも知ってたんで、普段のライブハウスでやるようなライブとは全然違うんですよ。お客さんのテンションが全く違っていて、当日はおじいちゃんから小さな子供までHAPPYの音楽で踊っていましたね。
Chew:顔にペンキ塗りまくった外国の人も来てくれてたよな。その人がみんなの顔に“Happy”や“Peace”って描いていたんですけど、描いてくれた人も嬉しそうにしてて。
Syu:ほんまに現実離れしたピースフルな空間を作り出したよな。
Alec:全部が組み合わさって上手くいったな。音響的にも壁の前にステージがあってその壁の大きさがちょうど良くて、音が後ろに逃げなくて音も良かったんですよ。
Bob:ホンマに奇跡やったな。

-ホンマに奇跡としか言いようがないよな。そもそもどうしてこのライブはフリーでやろうと思ったん?
Ric:フリーライブをやろうと言ってくれたのがLASSONの店長で、僕らもそれが良いなと思って。ライブを開催する日がちょうど綾部市が平和宣言(世界連邦都市宣)をした日なんでお金はとれんなって(笑)。
Bob:僕らは節目節目でフリーライブやってるもんな。『HELLO』をリリースした日にラフォーレ(ラフォーレミュージアム原宿)でやったし、eo Music Tryで賞金を頂いた時も梅田シャングリラでDJを呼んでイベントやったし。

-綾部市は世界連邦都市宣を日本で初めて宣言したらしいけど、それって知ってたん?
Alec:実は東京に出てきて初めて知ったんですけど、バンド名がHAPPYやし、平和と自由は僕らのテーマでもあるなと思って、やるならこの日やろって事で。
Syu:学校で教えてもらった事はなかったんですけど、今思えば地元に平和って名前の付いた建物は多いんですよね。
Ric:ゆるキャラもまゆピーっていう名前なんですけど、綾部って下着を作ってるグンゼの発祥地なんで蚕が有名で、その蚕の“繭”と“ピース(平和)”を組み合わせて“まゆピー”って市長が言ってました。

-なるほど。今回のイベントはアメリカで1969年に行われたウッドストック・フェスティバルを意識したようなイベントになったと思うんやけど、どうして“Love & Peace”をテーマにした内容にしようと思ったんかな?
Alec:平和の日ってのがまずでかかったのと『Stone Free』を作っていた時に、平和について考えたんですけど、Ricの部屋にウッドストックのシャツがかけてあって、その写真を見て衝撃を受けて。今回のイベントもこういう風になれば良いのになって思いました。フェスって運営や宣伝とか、人もたくさん必要だし、色んなものに会社が絡んでくるものだと思うんですけど、そういうものが絡み過ぎてそこが押し出され過ぎるとると商業的なフェスになるなと思って。このイベントはそういうしがらみがないからこそ、ピュアなフェスになったなと思います。

-商業的なフェスにしないっていうのはまず念頭にあったんかな?
Chew:そうですね。フリーだったという事と地元の人たちと一緒にやろうってなった事が大きいです。
Ric:地元で手伝ってくれてた人たちが商業的じゃなくて、自由にやろうって雰囲気だったのもありますね。

-ライブを終えてどんな事を思った?
Alec:誰かが何かをやろうとして本気で動いたら、それに協力してくれる人っているんだなって素直に思いました。
Bob:このやり方のまま規模を大きくしていったら、どんな事でもできるんじゃないかっていう手ごたえは感じましたね。もちろん大変だと思いますけど(笑)。
Chew:気持ちが一番重要だと思いましたね。自分たちが頑張って設営をしていたからこそ、地元の人たちがここまで助けてくれたと思うし。
Ric:自分らで空間作りまでやってお客さんも見に来てくれたからこそ、ライブ中に今までで感じた事のない気持ちになりましたね。
Alec:今回のライブみたいに色んな場所に行って自分たちでステージ設営しながら、サーカスみたいにツアーしたいなと思いました。ライブハウスで演奏するだけがバンドじゃないなって。
Chew:それは自分たちもアメリカに行ったり、他の国に行ったりして感じた事なんですけど、日本ってライブだけを見に来ましたっていうスタンスが基本だと思うんですけど、海外はふらっと立ち寄ったバーでたまたまバンドがライブしていて、それがめっちゃ良くて気に入ったっていう発見がよくあるんですけど、日本ではそれがほとんどないんですよね。
Alec:地元の人たちにとって音楽がもっと身近に感じられる機会になったと思います。ライブハウスに行かないと見れないものではなくて、近くに行ったら音も聴こえるし、誰でも入れるし。
Ric:ライブってプレッシャーがつきものなんですけど、この日だけはそれが全くなくて。ライブ当日の1曲目でボーカルエフェクターが壊れて僕の声が出なかったんですけど、鳴らんくなったから、Alecの所のマイクで歌おうっていうくらい自然体でライブできたんですよ。
Syu:焦りが全くなかったし、そういうのも今までにない感覚やったな。
Alec:今回は来てくれた人と人との化学反応を感じましたね。“Love & Peace”ってこういう事なんかなって思えた。
カズキ(スタッフ):僕は客観的に見ていたんですけど、自分が作ったご飯は美味いみたいな感覚はバンドにもあったんじゃないかなと思って。出演者も設営を手伝っていたのもあって、これだけ演者側で結束力のあるライブは初めて見ましたね。それもあったからみんなが楽しめたんだと思います。

-では最後にこのイベントって次回もやりたいと思う?
Alec:やりたいけど、どうなるかな(笑)。でも次もっかいやるならやるならもっとすごいものになると思います。
Chew:地元の人たちはめっちゃ乗り気やったな。
Syu:次もやるんなら僕らもまた設営せなあかんな(笑)。
Ric:要領は良くなったので、次回はもっと早くできると思います(笑)。
Bob:また雨が降らんように山本さんにてるてる坊主をお願いせな(笑)。