最終更新: 2021年4月29日
アーティスト:百々和宏(Vo.&Gt.) インタビュアー:yabori 撮影:MASAHIRO ARITA
-前作のインタビューの時は、メンバーが同じ方向に向いていたとおっしゃっていましたが、今のMO’SOME TONEBENDER(以下、モーサム)はどのような状態だったのでしょうか。
百々:ここ最近の2作はみんな同じ方向を向いてましたね。
-一つにまとまったきっかけはありましたか?
きっかけというきっかけはないんですけど、リリースの前後でレーベルや事務所が変わったんですよ。またUK PROJECTに戻ってスタッフが変わったことにより、バンドを客観的に見るようになりましたね。モーサムの良いところ、悪いところの洗い出し作業があったりして(笑)。
-そうなんですね(笑)。今回のアルバムは地獄盤・天国盤と続けてリリースされるそうですね。
どういう作品を作ろうかという時に、2枚出すってどうかって意見があって。でもアルバム制作って身を削る作業なんですよ。それが2枚続くっていう・・・。前だったら反対してたけど、バンドの状態は良かったので、よっしゃやろうっていう空気があって。それとモーサムってジャンル分けから外れた所にいたいバンドで。貪欲になんでもやってやろうっていう気持ちがあるんですよ。世間からみると、3ピースの爆音ロックバンドみたいなざっくりしたイメージが強いと思うんですけど、2枚に分けることでモーサムってこういう面もあるよっていうバンドの在り方を見せたかったですね。最初はそれができたら良いなって感じだったんですが、振り切った曲はこっちのアルバムっていう。
-振り切った曲は地獄盤って感じですか?
いや、どっちにも振りきれた曲はあって(笑)。天国盤は開放感があって、魂が昇天するイメージかな(笑)。
-初めからかなりの数の曲数があったのでしょうか?
最初に16曲あって8曲づつ分けましたね、制作時にベクトルがはっきりしてたので。これまでのように一枚にまとめるって考えると、アルバムの雰囲気に合わない曲は倉庫に置いておこうかってなるんですけど、今回はそうなりそうな曲もよっしゃ天国行きだとか、地獄に入れてやろうっていう(笑)。だからボツ曲ゼロなんですよね。
-そうなんですね。それって初めてなんですかね?
今までで初めてですね。
-という事は仕上がったこの16曲は手応えがあったのでしょうか?
そうですね、このやり方はモーサムにとってアリだなと思いました。
-今回の地獄盤って3人とも作曲されていますよね。それぞれのカラーの違いってどのような所にありますか?
僕はバンドサウンド主体ですね。スタジオに入ってギターを弾いてメンバーに聴かせて、ここがサビって説明して。じゃあよし録ろうってRecボタンを押せるくらい勢いで作ってる部分がありますね。勇(藤田勇)は多様性がある男で、ゴリゴリのハードな曲もあるし、打ち込みの曲もあるし、デモの段階から音色まで作りこんでくるんですよね。設計図がハッキリしているものが多くて。
-勇さんは職人気質なんですね。
そうですね。武井は何を考えてるかさっぱり分からないものが多くて(笑)。もともと3人の中では一番のロック好きでもあり、竹を割ったようなロックンローラーなんですけど、作ってくる曲はまぁ妙な曲が多い(笑)。お前、よくこんな歌詞を書けるなっていう(笑)。特に今回の2作はその要素が強いですね。アルバムの中で異物感を感じたら、武井の曲だなって思ってください(笑)。昔はこんな曲を作ってこなかったんですけど、これが成長なのかなんなのか分からないんですけど(笑)。
-「イミテイションシティ」にも、モーサムってこんな側面があるんだっていう新しい発見がありました。
バンドの在り方って色々だと思うんですけど、うちはリーダー不在で。例えるなら個人経営者の集まりみたいなもので。レコーディングの時はその曲を持ってきた人がディレクションするっていう。なのでモーサムはプロデューサーをつけたことがないんですよ。全員プロデューサーみたいな部分があるし、一つもめ事が起こると大変なんですけど。事態を収拾する人がいないんで、えんえんと険悪なムードが続いたり(笑)。そういうのをずっと経験してるんで、最近はとりあえずやらせてみるって感じに変わってきて。バンドとしては健全になってきてると思います。昔は誰が勝った、負けたみたいな感じで、バンド内で戦ってる感じがあったので。
-そういう状態があったにも関わらず、モーサムはこれまでバンドを続けているのが本当にすごいと思います。どうして今までバンドを続けてこれたのかについて教えてください。
それが分からないんですよね(笑)。今までもう辞めてやるっていうのがさんざんありましたけど。2001年に東京に出てきたんですけど、それまでは福岡でやってて、その時は月に2~3回辞めてやるって思ってましたね(笑)。当時は外に対しても抗うというか・・・。分かられてたまるかって気持ちもあったし、分かって欲しいって気持ちがあって。その矛盾したものを抱えていたんで、スムーズにいかないバンドだったんですけど。その分時間をかけながらやってきたから、心の中にでっかいものとして、このバンドはなくしちゃいかんって気持ちがメンバーの中にあると思うんですよ。そういう話を3人と語らないんですけど、結局続いてこれたのはそういう事なのかなって。
-3人ともモーサムが必要としているというか、心の拠り所って部分もあるのでしょうか。
僕の好きなロックバンドって、メンバーがずっと喧嘩してて、本当にいつまで続くか分からないっていう危うさがあったんで。そういうものに美学を感じる部分があったから、これで良いんだって思いながらやってきたというのはあるのかも。
-バンドの在り方として参考にしているバンドはいますか?
音楽的な部分だとなかなかないんですけど、バンドの佇まいとしてはルースターズですね。聴き始めた当時は、まさかメンバーの方と知り合って、同じステージに立てるとは思わなかったんですけど。そこで知り合って、セッションやろうぜって誘ってくれて。そこで初めてバンドの内側も見えてくるんですけど、そうだったんだって思う部分がたくさんあって。長い年月を経て、ルースターズって名前でバンドをやっているからかも分からないんですけど、メンバーの方が凄くバンドを愛している気持ちが伝わってくるんですよね。
-バンド愛って部分がモーサムに近いって事でしょうか?
そうですね。ルースターズも色んなことを乗り越えてきたバンドなんで大変だったと思うんですけど、それでももう一度やろうぜっていうのが好きで。ステージ袖でライブを見させてもらった事があるんですけど、感動する部分が多くて。
『Rise from HELL』