最終更新: 2020年3月8日

IMG_9445
ギタリストのツネマツマサトシさんは、右手から血を流しながらも、鋭角のカッティングを弾き続けているのがかっこいいと思って。だから初期のモーサムはライブをやる度に、血だらけになってて(笑)。でも強く弾かねばと思って。

アーティスト:百々和宏(Vo.&Gt.) インタビュアー:yabori 撮影:MASAHIRO ARITA

-モーサムのルーツに当たるアルバムを3枚教えて欲しいと思います。またそれぞれのアルバムのどのような所に影響を受けたのか教えてください。
モーサムだと全員のカラーが出てくるんで、僕のルーツの3枚ということになりますかね。1枚目はフリクション『軋轢』ですね。フリクションは日本のパンクの初期に、東京ロッカーズというムーブメントがあって。その首謀者がレックさんという方で、ニューヨークでポストパンクの波を全部汲んで東京に戻ってきたんですよ。そのフリクションが大好きで、モーサムとして曲作りをする時に、強く影響を受けているなと感じますね。彼らのサウンドはすごくシャープで、ギターも教則本に書いているようなフレーズは一切弾いてないんですよ。ギタリストのツネマツマサトシさんは、右手から血を流しながらも、鋭角のカッティングを弾き続けているのがかっこいいと思って。だから初期のモーサムはライブをやる度に、血だらけになってて(笑)。でも強く弾かねばと思って、そういう所に影響受けていますね。今はレックさんと中村達也さんの二人で復活して、『Deepers』って作品を出していましたね。

2枚目はThe Stooges『Fun House』かな。あれって2重絵になっているんですよね。イギーのでっかい顔にも見えるし、寝ころんでいるような写真も見えるっていう。このアルバムは若い頃に聴いて、なんじゃこりゃ?となったアルバムで。なんてエネルギーなんだと思って。後々、この『Fun House』をコンプリートしたボックスセットが出るんですよ。そこそこ良い値段したんですけど、限定だという事で買ったんです。それで聴いてみると、アルバムに入っている曲の1テイク目からOKテイクまでの全てが入っていて。このアルバムはボーカル込みで一発録りしているんですよ。普通は一発録りといっても後からギターを増やしたり、後からボーカルを足したりするんですけど。このアルバムの制作方法は何時何分から3分間の録音で全てが完結しているんですよね。それを本人達が納得いくまで、えんえんと20テイクくらいまでやってて。だからこんなに壮絶なアルバムが作れたんだと思って。特に初期のモーサムもそうなんですけど、ライブの熱量に負けないくらいのアルバムを作りたいなと思っていて。東京の良いレコーディングスタジオで録らせてもらえるようになった頃も、自分たちのスキルも低いし、テクニックも追い付いていないから、どうやったら良い音になるか分からなくて。そんな中でもとりあえずテンションだけは高くと思って、レコーディングブースの中で上半身裸でやっていましたね(笑)。その場の空気感というか、緊張感が音にこもっているなと思うアルバムですね。今だったらレコーディングの技術は当時とは比べものにならない訳ですよ。あんな音欲しいって思ったら、誰でも作れる時代で。でもあんな空気感を作りたいと思っても、出せないと思うんです。モーサムはそういう空気感を大事にしてきたバンドだと思っていて。そういうのは60~70年代の音楽をたくさん聴いていたからこそ、そうなっていったんだろうなと思いましたね。

3枚目はThe Velvet Underground(以下、ベルベッツ)の『Loaded』で、捨て曲がないアルバムなんですよね。ボーカリストのルー・リードがソロになってからも、ずっと演奏し続けた曲が『Loaded』の中にかなり入っているし。16歳くらいの時に、友達の兄貴が持っているベルベッツの1枚目の『The Velvet Underground and Nico』のアナログを貸してもらったんですよ。今はロックベストアルバムの10位以内には必ず入るアルバムですけど、当時だと100位くらいで、知る人ぞ知るアルバムだったの。当時のアナログはジャケットのバナナがシールになっていて剥がすと、ピンクのバナナが出てくるっていう。シールをめくってすごく怒られたな(笑)。そのベルベッツの1枚目なんですが、間違ってまずB面から聴いちゃって。B面の1曲目って「Heroin」じゃないですか。なんじゃ、この念仏みたいな曲はと(笑)。その頃はロックン・ロールとパンクが好きだったんで、軽快なサウンドを求めていたんですよ。だけどいきなり、ドローンのノイジ―な木魚を叩いているようなサウンドだなと思って(笑)。ひどくて聴けなかったって翌日返したんですよ。そこから聴いてなかったんですけど、大学に入って先輩から借りたのが4枚目の『Loaded』でして。その頃はボブ・ディランやニール・ヤング辺りを好きになっていた頃で。そういう耳で『Loaded』を聴いたら、アメリカンロックに聴こえて、いなたいロックン・ロールというか。ひょっとしたら、ベルベッツ良いんじゃないかって思って。あのアルバムと全然違うじゃないかと(笑)。そこからリリースの順番は逆になるんですけど、3枚目、2枚目と遡って聴いていって。3枚目の『The Velvet Underground』を聴くと、フォーキーで曲と歌詞が最高だなと思えるアルバムで。2枚目の『White Light/White Heat』も聴いたら、アヴァンギャルドでこれもかっこいいなって。最後に問題の1枚目に戻って聴いてみたんですよ。そうしたらめちゃくちゃかっこいいじゃないかと思って。そういう経験をしているんで、モーサムを聴いてダメだなと思っても、また5年後にもう一回聴いてみてって言いますね。

-それ、すごく分かります。僕も洋楽でそういう体験した事あるんですよ。洋楽の洗礼というか。
若い頃の耳って、分かりやすいものを求めるじゃないですか。処理できないものはダメってなりがちっていう。でもロックはそういうものだけじゃないぜって事をベルベッツから学びましたね。アルバムごとにカラーが違う部分や、空気感の出し方はモーサムに通ずる部分があるんじゃないかな。

【BELONG Magazine Vol.11はMO’SOME TONEBENDERのインタビュー・ルーツを掲載】
BELONG-Vol.11

Web StoreでBELONGの最新号を購入して頂いた先着300名様には、MO’SOME TONEBENDERのサイン入りポストカードをプレゼント!購入はこちら

◆関連記事◆
【interview前半】MO’SOME TONEBENDERの百々が語る、バンドとしての美学
【interview後半】MO’SOME TONEBENDERの百々が語る、リスナーの脳天をかち割る「トーキョーロスト」