最終更新: 2015年10月9日
あのBLANKEY JET CITYの第四のメンバーとも言われた土屋昌巳が手掛けた、THE NOVEMBERSの新作『Elegance』は、想像を超えたポップなアルバムに仕上がった。このインタビューでも小林が答えているように、今作は無駄なものを省いた作品であり、素朴ながらも洗練されたものとなった。プロデューサーの土屋昌巳と共に新境地を開いた『Elegance』についてフロントマンの小林に今作の背景にあるものについて聞いた。
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アーティスト:小林祐介(Vo./Gt.) インタビュアー:yabori
-今作の歌詞にはジム・ジャームッシュの映画『Down by Law』だけでなく、ルー・リードの『Metal Machine Music』も出てきていますが、これらの作品に影響を受けた部分があったのでしょうか。
もともとどちらも大好きで、今まで色んな引用を入れてきたんですけど、今回はユーモアを入れて歌詞にしようと思って。『Down by Law』に関しては、好きなシーンがあって牢屋の中で“I scream ,you scream ,we all scream for ice cream!”ってセリフがあって檻の中でハチャメチャに歌うんですけど、それが僕にとって美しいと思えるシーンの一つで。このシーンは映画を見てもらえたら嬉しいですね。「出る傷を探す血」の歌詞はルー・リードのとある対談で言っていた言葉をアレンジしたもので。ルー・リードが『ブルックリンの最終出口』という小説を書いたヒューバート・セルビー Jrとの対談の中で、ルー・リードが“あなたにとって『ブルックリンの最終出口』はどのような作品だったのですか?”と聞いて、返ってきた答えが“あれは出る口を探す叫びだったんだ”と言ってて、僕にとってそれがすごく衝撃的で。その答えがものすごく好きだったので、『Fourth wall』の時に歌詞にしているんですよ。それを改めて意識したというか、微笑みかけるような曲がたくさん作られている中で、ああいう曲も作りたいなって気持ちも出てきて。だから「出る傷を探す血」を入れずにアルバムを作るというアイデアもあったんですけど、今作りたいって事はこれを鳴らす必然が自分の中にあるんだって思って。今この曲を入れなかったら次の作品には入れないかもしれないし。これを思いついたきっかけがルー・リードの詩集(『ニューヨーク・ストーリー』)から来ているから、どこかに彼の名前も出そうと。
-そうなんですね。『Metal Machine Music』も今回初めて聴いてみました。このアルバムは全編ギターノイズだし、傑作か駄作か両極端な意見が多くて聴くのが怖かったんですけど、聴いてみたら意外と聴けてビックリしました。
そうなんですよね。『Rhapsody in beauty』を作った時はこのアルバムばかり聴いていました(笑)。
-すごく不思議だと思ったんですけど、あのアルバムってノイズにも優雅さがあるように思ったんですよね。
ギターノイズなのに気品があるというか、聴いてて気持ち良いじゃないですか。本人がどう作ったのかは分からないんですけど、嫌な音だったら疲れちゃうと思うんですよ。長く聴けるのは自分にとって良い音なんじゃないかと思って。
-これを聴いてたらJulian Casablancas & Voidzの『Tyranny』を思わせる壮絶さが思い出したんですが、小林さんはあのアルバムを聴かれましたか?
もちろん最高でしたね。あのアルバムってメンバーが“これヤバいだろ!よし、やっちゃうか”って悪だくみをしているのが想像できる所だと思うんですよね。ああいうのって自分にとってワクワクするんですよね。インダストリアル好きでも納得できるような作品でしたし。
-そうですね(笑)。話は戻りますが、今回は6曲入りのミニアルバムでのリリースとなりましたが、この作品にコンセプトがあれば教えてください。
『Rhapsody in beauty』を作った後に、すごいロックアルバムを作りたいって思ってたんですけど、それを考えている途中でもう一つ作らないといけないテーマがある事に気づいて。それが今回のアルバムタイトルになっている『Elegance』なんです。気品があって意思のあるデザイン性がありつつ、気負わず、素朴な美しさのあるものが作れたらと良いなと思ってて。テーマが先にあったので、EPくらいのボリュームでテーマを明確に打ち出していこうと思って6曲入りにしました。
-ちなみにロックアルバムに行く前にどうして、『Elegance』を作ったのでしょうか。
『Rhapsody in beauty』を作ったので、その後にすぐアルバムを作るとしたら前作のパート2になると思ったんですよ。それよりは、『Rhapsody in beauty』のラスト2曲の「Romancé」と「僕らはなんだったんだろう」という流れがあるんですけど、それを深く掘り下げて一歩進んだような作品を作れたら良いなと思っていて。今そういう気持ちがあるのもそうだし、運命的に昌巳さんに出会ってプロデュースもお願いできるから、これは神様が今『Elegance』を作れって言ってるんじゃないかなと思って。そういう考えになってからはいかに美しいものを作れるかだけを考えてやりましたね。
-まさに運命的ですよね。土屋さんの経歴を知れば知るほど、今回のプロデュースは必然だと思いました。
耽美な音像を作れるのは昌巳さんが最高峰だと思うので、光栄ですね。
-土屋さんと一緒にやった事で発見した事や新たにTHE NOVEMBERSらしさが見えた部分があれば教えてください。
改めて美しいものが好きなんだなと思いました。特にデザインされた美しさですね。昌巳さんと一緒に作る事で、得たものが多くてそれが自信になったのかなと。自分たちが今まで美しいなと思ったものが間違いじゃないと思えたし、自分たちの良さを引き出してもらいましたね。あとは昌巳さんに比べて、自分たちは経験してきたものがいかに少ないかを感じました。今回の制作を通じて、自分たちが経験していない事が世の中にはまだまだ沢山あるんだという事を教えてもらいましたし、挑戦できる可能性が溢れているなと思ったので、未来への希望が沸いてきたしたね。
-土屋さんとの制作で印象に残っているエピソードはありましたか?
たくさんあるんですけど、昌巳さんが自分たちのイメージしているギターの音作りを手伝ってくれて。実際にギターを鳴らしてもらったんですけど、一音の説得力がすごくて。レコーディングは何回もやってきたんですけど、昌巳さんが作り出す音は自分たちにとっても気持ち良くて。こんなに良い音で録れたんなら余計な細工や飾りは必要ないなと思ったんですよ。それが今までの経験ではなかったことで。普段はこれを足したら良くなるって事はいつも考えてるんですけど、これを足さないから綺麗なんだっていう考えを身を持って体験できたなって。
-だからこのアルバムはこんなに素朴なんですね。最初にこのアルバムを聴いた時は意外でした。THE NOVEMBERSの聴かせる部分が一番出たアルバムだなって。
いい意味で力を抜けた所があるんで、それが意外だったもかもしれないですね。
-特に「裸のミンク」は今までのTHE NOVEMBERSにないような曲ですよね。
そうですね。「裸のミンク」は普段、自分たちがやらないようなリズムセクションだったから作るのが大変でした。特になまったようなハネ感を再現するのが難しくて。自分が今まで好きで聴いていたような音楽だったんですけど、今までバンドの体質ではなかった音だったんですよね。ちなみに、これは高松くんがリードして制作しました。
-高松さんのベースがすごく上手になってますよね。
そう、高松はLillies and Remainsのサポートもやってるし、色んな経験を経てさらに上手くなってますよね。それとこの曲は特に土屋昌巳マジックが作用していて、曲のこことここにこの音を入れたらどうかなって事やギターの定位をこういう風に変えてみようとか、細かいところまで意見を出してくれて。ちょっとした事を少しづつやっていっただけなんですけど、それだけでこうも風景が変わるのかと思って。昌巳さんがいなかったらもっと色んな音を入れてしまっていただろうし、こういった透き通ったアレンジにはたどり着けなかったと思います。
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【Live】
10th Anniversary TOUR – Honeymoon –
11/2 SHINKIBA STUDIO COAST / ONE-MAN
11/5 SHINSAIBASHI JANUS / ONE-MAN
11/6 KYOTO TAKTAK / ONE-MAN
11/8 TAKAMATSU DIME w/ cinema staff
11/10 Matsue AZTiC Canova w/cinema staff / OA:Bird In A Cage
11/11 HIROSHIMA CAVE-BE w/ cinema staff
11/13 FUKUOKA BEAT STATION / ONE-MAN
11/15 NAGOYA UPSET / ONE-MAN
11/19 NIIGATA GOLDEN PIGS BLACK STAGE w/ cinema staff
11/20 KANAZAWA van van V4 w/ cinema staff
11/23 SENDAI enn 2nd / ONE-MAN
11/28 SAPPORO COLONY / ONE-MAN – TOUR FINAL –
【BELONG Magazine Vol.5,10,11にTHE NOVEMBERSのインタビューを掲載】
※Vol.10,11を購入して頂いた方には限定でTHE NOVEMBERSのサイン入りポストカードをプレゼント
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THE NOVEMBERSの過去の記事はこちら
【interview前半】THE NOVEMBERSが歩んだ10年と小林の音楽人生
【interview後半】THE NOVEMBERSが歩んだ10年と小林の音楽人生
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— BELONG Magazine (@BELONG_Media) 2015, 10月 6
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