最終更新: 2014年2月13日
原発問題や風営法についての歌の中にも、聴いていて真剣に向き合って考えようと思わされるものはこれまでたくさんあった。本作、神戸出身の4人組踊ってばかりの国の3rdフルアルバムの中でも「東京」、「セシウムブルース」、「踊ってはいけない国」などで触れられている。ただここでは問題提起はなく毒された日常が直球で歌われ、“考えよう”ではなくゾッと“感じる”楽曲となっている。
2012年末に前ベース脱退・約半年間の活動休止を経て新体制での制作。その歌詞の直接さは音にも現れており、サイケデリックなサウンドは徐々に後退しフォーク/ブルース/ラグタイムなどルーツ色を強めたシンプルなものに。下津光史(Vo,G)の声も以前は忌野清志郎や佐藤伸治直系のクセの強いものだったが、ストレートな歌い方で味のあるものになった。今作を機にという訳ではなく3.11以降に取り組み始めた無駄をそぎ落とすマイナーチェンジが本作で結実しているようだ。
前作ミニ『FLOWER』収録の「セシウム」では日本の現状への風刺から“おっと、少し話はそれたが”と突如舵を切って下津の娘の話になるが、本作でもロバート・ジョンソン風ブルースver「セシウムブルース」となって聴ける。さらにノロけたくてしゃあないの?というほどに、娘への愛情を爆発させたブルーグラス調「song for midori」がボーナストラックとして付け加えられている。そんな個人的な歌も、社会に対して不謹慎な歌詞を持った曲も不思議とまとまりをもって聴けてしまう。それは可愛い娘を守る親である下津が、その時思うことを全部口に出しちゃったラブソングとしてはどちらも同じと思っているからだろう。
発言にも責任が伴う窮屈なご時世だからこそ、使命感のない無責任でバカ正直な毒が心地いい。踊りやすいモータウンビートに乗せて“踊ってはいけない~”と歌っているところも深読みは出来そうだが、Don’t think,Feelでいいのである。日本への風刺やストレートなサウンドでは同じだが70年代アングラフォークの持つ社会性とはまるで違う、2010年代型のフォークロックアルバムだ。
【Writer】峯大貴(@mine_cism)