海外のシューゲイザーや、ART-SCHOOLやSyrup16gのようないわゆる国内オルタナティヴ・ロックの影響を受けた熾烈な轟音や倦怠感のあるクリーン・サウンド、そして繊細ながらも情念を感じさせる佐藤の圧倒的なボーカルの存在感がきのこ帝国の武器だと思っていた。しかし今回のEPではドロッとした情念は消え、少年のような凛としたボーカルに変化しており、サウンドも風通しが良く爽快で清々しい。

象徴するのはやはり「海と花束」で、最小限まで削ぎ落とされた甘いメロディーと『Going Blank Again』の頃のRideを彷彿とさせる青々しい轟音、それが3分程度の尺にギュッと凝縮されておりオルタナ・ポップとして完璧(に僕の好み)だ。これはいわば2013年度版「ニーナの為に」だ。リリックに関しては、「僕たちはいつも/叶わないものから順番に愛してしまう」、このラインが全てだ。罪悪感、迷い、怒りや苛立ちを歌にしてきた彼らだが、今だけはそんな青々しさと真っ向から対峙しているのではなく、少しはにかみながら接している、とでもいうような印象。僕が90年代初頭オルタナティヴ・ロックの血を引くような国内ギター・ロックの流れを追いかけてきてどうやらもう10年近く経つのだが、諦めずに日本のギター・バンド聴いてきて良かったな、と心から思える1曲。

当然他の曲も素晴らしく、ポスト・ロックやフィッシュマンズの影響が垣間見れて興味深い。ただ、この開けたサウンドをバンドが維持出来るのかは分からないし、もしかしたらこんな作品が生まれるのは今だけなのかもしれない。そう思うほど本作は怒りと優しさ、諦めと決意、ラウドとポップの両面のバランスが絶妙で、すぐにこのバランスが崩れてしまいそうな気もしなくはない。そこに少しだけ淋しさもあるが、だからこそ余計に美しくも思える。とはいえ彼らが更に何処へ向かうのかも楽しみであるし、とにかく今のきのこ帝国のモードを僕は支持する。

【Writer】たびけん(@02tabiken02)

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