弦楽器隊が奏でるタイトで歯切れの良くクラシック音楽の名残あるメロディ、低音から中音域の間で変幻自在に変化するシンセサイザーARP2600の音色、柔らかく打突を続けるシンプルなトラック、ファルセットを多用した線の細い歌声。クラシック+エレクトロニカ+ポップスという複合は、それぞれの音色に注力して聴くことも、メロディラインの浮沈に心を寄せることもできる、それが今作『In Conflict』だ。

Owen Pallettは2002年ごろからソロ活動を開始し、今作は2010年にリリースした『Heartland』以来、Owen Pallet名義では2枚目、Final Fantasy名義から数えると通算4枚目のソロアルバムだ。同時に、The Last Shadow Puppets、Taylor Swift、Snow Patrol、Arcade Fireなどに参加しストリングス・アレンジャーとして評価され、今年開かれた第86回アカデミー賞においてスパイク・ジョーンズ監督の新作『her/世界でひとつの彼女』においてついに作曲賞にノミネート、より注目を集める中でのリリースになった。

自身がかつて在籍していたバンドLes Mouchesのリズム隊を従えながら、バッキングボーカル/シンセサイザー/ギターの一部をあのブライアン・イーノが務め、チェコ・フィルハーモニック管弦楽団も参加するなど、自らの音楽をワンランクあげよう期待がこもった人選が今作でなされている。CDジャケット裏側にはDanieka Gesundheitという名前があるが、彼女はカナダ・トロントを中心に活躍するインディーバンド「Snowblink」のボーカリストだ。

学校で学んだクラシック音楽の学理を中心におきつつ、権威的にも思えよう重厚さを一切省いたことで、ある意味味気ないようにも聞こえる彼の音楽は、EDMのような無機質かつ暴力的な音色による圧力ではなく、流麗なメロディラインで耳に結びつけようと躍起になり、しまいには粗暴な振る舞いも見せる。その一瞬の粗暴さを、同性愛者である彼の内情とつなげたり、または「クラシックがいかにポップミュージックと接続するか」という歴史学的俯瞰など、今作には多くの伏線が隠されている。だが僕は、<混乱のなか>から、美しく柔和に広がったこの音世界を抽出する彼の才能とキュリシオリティに惚れ惚れとする。

【Writer】草野 虹(@grassrainbow)
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