80年代や90年代の音楽を今の時代にそのままやっても、当時の音楽聴いたら良いやんって話じゃないですか。今それをやる必然性を考えたら、その時代、その時代の文化と結びつける必要があると思っていて。そうなるとアニメであったり、最近の音楽だとチルウェーブのシンセの使い方を持ちこんでみたりしていますね。

アーティスト:夏bot(Gt.)  インタビュアー:yabori

-For Tracy HydeはTHE NOVEMBERSの小林さんから直接教えてもらったんですよ。小林さんがGalileo Galileiのボーカルの尾崎さんが良いって言ってたって。
夏bot:そうなんですね!尾崎さんの影響ですか、ありがたいです。

-それではFor Tracy Hydeというバンド名に込めた意味について教えてください。
よく映画「小さな恋のメロディ」の子役であるTracy Hydeから取ったと間違われるんですが、実際はWondermintsの「Tracy Hide」という曲が由来で、曲名をイギリスっぽくもじってバンド名にしました。ただこの曲自体が結局「小さな恋のメロディ」へのオマージュだったりするのでややこしいんですが……。Tracy Hydeの存在は他の方の指摘ではじめて知りました。Wondermintsの「Tracy Hide」は外界の冷たさや偽りからひとりきりで身を隠す少女と、彼女に想いを寄せる少年の歌なんですが、アニメや青春小説で育った身としてはアウトサイダー的な立場の美少女ってすごくロマンチックな存在なんです。なのでそういった女の子に捧げる歌、彼女が聴く歌をつくりたい、という想いがなんとなく込められていると思います。ぱっと見バンド名っぽくなくて、英国的で、自分たちの音楽的嗜好も反映されているということで、なかなか気に入っています。

-小林さんもFor Tracy Hydeって良い名前だねって言ってました。バンド結成のきっかけについて教えてください。
前やっていたDaydropというバンドが活動休止をして、しばらくバンドはもういいやって思ってたんですけど、Friends(現Teen Runing)のライブを観に行って、日本にもまだまだかっこいいバンドっているんだなって思って。そのライブの後に一緒に観に行った子がBoyishというバンドを始めたんで、自分もまた始めようかなと思って、ゆるく始めましたね。

-今のメンバーの方にはどう出会われたのですか?
ベースを弾いているMavは前のバンド(Daydrop)でベースを弾いていて、ギターを弾いているU-1はTwitterで知り合って、ドラムのまーしーさんはTwitterでメンバー募集したのがきっかけですね。今ボーカルを担当しているラブリーサマーちゃんもTwitterでやりとりをしていてライブを見に来てくれたので、バンドに誘ったら入ってくれてたんですよね。For Tracy HydeはTwitterバンドなんですよ。

-ラブリーサマーちゃんが入ったことは話題になっていましたね。
そうですね。For Tracy Hydeもボーカルを替えようと思っていて、僕が歌っていてもしょうがないなと思っていたんで。

-歌ってもしょうがないっていうのは?
単純に僕はボーカルが上手くないし、このままやっていても平行線だなと思ったからです。アニソンが好きというのもあって、女の子ボーカルのバンドをずっとやりたかったんですよね。そこでラブリーサマーちゃんが入ったのは大きかったですね。彼女は声質が素晴らしいですし、音楽の趣味も僕たちに近くて楽曲もセンスがいいので。

-そうなんですね。プレスした音源を無料でレコード・ショップに配布しているようですね。当然コストがかかっていると思いますが、どうしてこれをやろうと思ったのでしょうか?
色んな人に聴いてもらおうと思った時に、ちゃんと製品化されているもので中身もしっかりして、更に無料だったらみんなもらうじゃないですか。それと僕たちは渋谷系に影響を受けていて、昔Spiral Lifeという音楽ユニットがいたんですけど、彼らがデビュー前にやったのがデモバージョンの曲をCDにして全国のタワレコで配るというもので。自分たちも同じような事をやったら面白そうだなと思ったのでやってみました。

-無料配布されているEPは『In Fear Of Love』というタイトルでしたが、これにはどういう意味があるのでしょうか?
80年代から90年代のインディーポップって自虐的なメンタリティが強くて。自分が好きになった女の子が、自分の存在を知らないだとか、幸せになるのが怖いとか。そういうのって馬鹿らしいけど、共感もできるんですよね。その両方の意味をタイトルに込めました。

-歌詞は恋愛をテーマにしているようですね。
アニメが好きというのもあって、自分の書きたいシチュエーションや理想的なキャラクターありきで書いていますね。また日常的な瞬間に宿る美であったり、ありふれたものを美化・異化する事も大切にしていますね。

-アニメの影響と言ってましたが、For Tracy Hydeの音楽からは渋谷系とアニメを融合させてアップデートしていこうって意思が感じらるんですよね。
そうですね。そこは意識してやっている所ですね。80年代や90年代の音楽を今の時代にそのままやっても、当時の音楽聴いたら良いやんって話じゃないですか。今それをやる必然性を考えたら、その時代、その時代の文化と結びつける必要があると思っていて。そうなるとアニメであったり、最近の音楽だとチルウェーブのシンセの使い方を持ちこんでみたりしていますね。接する人にしても東京のインディーシーンに良いバンドがたくさんいるので、その界隈の人たちと接していきたいというのがあります。渋谷系を今そのままやっているミュージシャンよりも、現在進行形で音楽をやっている人たちの方が刺激を受けますね。

皮肉を抜きにしても自分たちの音楽はYouthwaveというのがしっくりくるなというのも本音なんですよね。

-アップデートしたいという思いが強いという事ですね。それでは音楽の聴き方について詳しく伺いたいのですが、普段どのように音楽を聴いていますか?
新しい音楽を聴くのは動画サイト、Sound Cloud、Bandcampが中心ですね。ネットで見たり聴いたりして、良いなって思った物はamazonですぐに買って、届いたCDをずっと聴いていますね。

-気になった音楽はどのように調べますか?
Youtubeの関連動画を辿っていきますね。例えばWashed Outの動画を開いたら、隣にネオン・インディアンだとか、トロ・イ・モアが出て来ますよね。その周辺のミュージシャンってBandcampで音源をフリーダウンロードできるものが多いじゃないですか。Bandcampにリンクがあるんなら、そこでダウンロードしようって感覚ですね。

-そうなんですね。次回のBELONGはYouthwaveという特集をやろうと思っていて、その主役はデジタル・ネイティブ(インターネットが日常の一部としてある環境で育った世代)なんですよ。彼らが今、新しい感性で音楽を作っているという内容なんですね。お話をしていて、もしかして夏botさんはデジタル・ネイティブなんじゃないかと思いました。ちなみに今おいくつでしょうか?
今24なんですよ。うちは父親の職業も関係しているのかもしれませんが、物心ついた時からネット上でゲームをダウンロードしていたんで。

-まさにデジタル・ネイティブですね!それでは以前、京都のThe Foglandsというバンドをインタビューした際に古い年代のアーティストでも、自分が知らなければ新しいという価値観があるようです。その考え方に共感しますか?
分かりますね。渋谷系の時代に言われていたのが、ロジャー・ニコルスやオレンジ・ジュースといった年代がバラバラの音楽が日本で初めてCD化されたんですよね。その結果、日本のCDショップに行けば世界中の色んな音楽が買えるっていう状況ができるんですよね。そういった音楽の並列化っていう現象が今、Youtubeで起きているので、渋谷系の時と同じ状況だなって強く思いますね。なのでThe Foglandsの皆さんが言う事も分かります。

-Sound Cloud上では自身の音源に“Youthwave”というカテゴリーを付けていましたね。僕らもここから特集タイトルを頂いたのですが、この“Youthwave”にはどのような意味が込められているのでしょうか。 
失礼な事を言うようですが、何とかwaveってジャンル名が一時インディー界隈で流行っていたじゃないですか。Dark Waveや、CHILL WAVEだとかVapor waveなんてものまで出て来ましたよね。最後にはパロディ的な感じで、Wave Waveって名前まで出て来ましたし、そのパロディ的な流れで自分たちは青春っぽい音楽しか作らないし、Youth waveで良いじゃないかってなりましたね。EPのタイトルもそうなんですけど、皮肉を込めているものが多いんですよね。皮肉を抜きにしても自分たちの音楽はYouthwaveというのがしっくりくるなというのも本音なんですよね。僕はソロでShortcake Collage Tapeという名前でやっていて、その中でも『Spirited Summer』というアルバムが評判が良くて。(BELONGでレビュアーをやっている)草野さんがこのアルバムを20代の音楽とアニメおたくで、休日も暇な大学生作っている様が目に浮かぶようだって言ってまして、暇を持て余して作っている感じが好きだと。僕らの世代の音楽ってそんな気質があると思うし、それを括る言葉はYouthwaveが一番ふさわしいんじゃないかなと思いました。

-そうですね。自分たちも色々とネーミングを考えたんですが、Youthwaveというのが一番しっくりきましたね。
最初は皮肉で付けたんですが、役立って良かったです。

-BELONGという名前も少なからず皮肉を込めていますよ。BELONGって属するという意味ですけど、自分たちはどこにも属している感覚がないんですよね。スタッフが関東と関西にいるというのもありますし、自費出版なんで、広告費を会社からお金をもらっている訳でもないんですよ。
それ凄い共感できますね。以前インディーロック系のイベントに行ったんですが、そのイベントの空気に全然馴染めなかったんですよ。その時頭の中で考えていた言葉がまさに「BELONG」だったんですよ。The Pains of Being Pure at Heart(ペインズ)やWashed Outが「BELONG」という曲を出していたじゃないですか。みんながこぞって「BELONG」って言いたがるのは、どこにも属せない孤独感の現れなんじゃないのかなと思って。

-そういう感覚もあると思います。
誰もどこにも属さなくなるようになって、見果てぬ夢としての「BELONG」に皆が憧れを抱いているんじゃないかって、その時想像したんですよ。今思えば、ペインズの「BELONG」はサビで「僕らはどこにも属せないんだ」って歌ってるんですけど、Washed Outは逆に「自分の属している世界を隠す必要はないんだよ」っていう歌詞なんですよね。「BELONG」って不思議な単語ですよね。

-そうですね。一時インディーロック界隈のキーワードのようになっていましたよね。話は戻るのですが、聴いた音楽はどのように曲に落とし込んでいるのでしょうか?
好きなものはダイレクトに作品へ落とし込んでいますね。だいたいの曲は元ネタがあるんですよね。一時期は曲ごとに元ネタの動画をブログで紹介したり、ツイートしたりもしていましたね。

-ということはリスペクトという意味合いが強いのでしょうか。
そうですね。過去の素晴らしいアーティストの音楽は継承していく必要があるし、凄く良いんだけど誰も知らないバンドって世の中にいっぱいあるじゃないですか。そういうのを語り継ぐ手段って何が有効なのかなって考えた時に、その人たちの音楽を自分たちの中に取り込んで、折に触れて自分たちはこういうバンドから影響を受けてるって紹介するのが有効だなと思って。

-夏botさんのブログに『サード・サマー・オブ・ラブ』が起こると強く信じていたとありましたが、これについて詳しく教えてください。
ジャパンタイムズの記事ですね。かなり前の事なのであまり記憶にないんですけど、M3という同人音楽のイベントに渋谷系であったり、マッドチェスター風の音源を出していて。それに元ヴィレッジ・ヴァンガードのバイヤーのおじさんが興味を持ってくれたんですよね。その方が言うには『サマー・オブ・ラブ』は20年おきに起こっていて、文化的な結びつきがあると。そしてそろそろ『サード・サマー・オブ・ラブ』が来るんじゃないかという話になったんですけど、それがどういうものになるかといえば、今日本のアニメ文化が海外でも評価されているじゃないですか。そのアニメから派生する同人文化はアマチュアが参入しやすいんですよね。そういう意味では海外のインディーミュージックとも似ていて。だから日本の同人文化と海外のインディーミュージックが融合すれば、すごく面白いムーブメントが起きるんじゃないかという話を力説されて。今となっては本当かなって話なんですけど、当時は真に受けてしまって。Twitterで知り合った人にボーカロイドでマンチェスター系の音楽を作る人やギターポップをやる人たちを集めて、音源をリリースしていったんですね。

-バンド以外にも色んな活動をされているんですね。それではこれからの目標について教えてください。
僕はBeatlesやBeach Boysが好きなので、彼らがやっていたような録音芸術としての音楽にこだわりがあるんですよね。ただ今の音楽業界の流れを考えると、ライブの方が採算が取れるという意味でメインになっているので、その二つにどう折り合いをつけるかが今後の課題ですね。

-ライブよりもレコーディングっていうことですよね。
はい。それとインターネットを使って何か面白い事をやりたいなって思います。以前バンドを何組か呼んで、スタジオライブをユーストリームで生中継したんですよ。そういう感じでネットを使って面白い事をやりたいですね。インターネットという文化に影響を受けてネット上で組んだバンドだからこそ、活動をネット中心で行うというのはとても自然な流れだと思うし。そういう前例になって、後進のバンドに選択の幅を提示できたら良いなと思いますね。

【BELONG Magazine Vol.9にFor Tracy Hydeのインタビューを掲載】
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