最終更新: 2014年11月26日
一曲目「Lily For Your Pad To Rest On」を再生する、Primal ScreamやHip-Hopのような緩いグルーヴ感を伴ったドラムビートとそこヘ絡みつくギターリフ、そんな出音を聴いた瞬間に思わず、画面に記載されたミュージシャンを確認してしまった。Superfoodのデビュー作「Don’t Say That」、その出足に何とも驚かされた。
インターネットは多様多彩な音楽と触れ合うチャンスを与える、ユーザーが望むがまま、時間が許す限り。少し年長の方からすればにわかには信じられないだろうが、そうやって音楽リソースを脳に詰め、今を生きるバンドマンはそれぞれに住まう場所において音をかき鳴らしている。
Superfoodが結成されたイギリス第二の都市バーミンガム、Swim DeepやJAWSなどが飛び出したこの地のアンダーグラウンド・シーンは<B-town>とも言われ、彼らはそこに揉まれることで脳内リソースをアウトプットする術を磨き上げてきた。
Superfoodという若きバンドが今作でアウトプットしたのは、先述した緩いドラムビート/そこにノるダブルギターワーク/ほんの少しのサイケデリック感。それは先行公開された「Mood Bomb」のような、ブリットポップ期のUKロックを感じずにいられないサウンドとなり、彼の地の王道ロックを愛するリスナーを魅了しにかかる。
こう書いてしまうと、大観衆で大合唱できるようなアンセムソング、深くへともぐりこんでいくようなアンサンブルの妙、そういった巧みさをついつい求めてしまう。早合点な気持ちも分かるが、わずか結成2年バンドに求めるのは酷であろう。
その不足を補うかのように彼らは、バンド名の由来となった「Superfood」、また「TV」「It’s Good To See You」「Don’t Say That」などに聴こえるように、飛び交うギターリフとボトムを支えるベースラインから漂う「あえて外している」と言わんばかりの狙いとセンスを持ち合わせている。全うなポップソング・マナーを守りつつ、ユーモアとオリジナリティをキラリと光らせる、まるで別人のようなペルソナを備えたバンドなのだ。
2000年代のUK/USロックシーンにおいて、80年代サウンドがリバイバルしたのを鑑みれば、2010年代に90年代らしきサウンドが復活するのは秒読みだったように思える。ここ日本でも形を変えて顕在化しているムードを、このSuperfoodも持ち合わせている、リスナーにとって古くとも、彼らにとっては最新のサウンドとして産み落とされるマジック、面白くない、わけがない。