バンド・スカート、ひいては澤部渡という人は、いわゆる東京インディーの界隈においてとりわけ優れたポップス職人だ。実は相当に複雑で独特なコードの流れに、ポップで時にファンタジック・時に感傷的なメロディを軽々と載せ、派手な飛び道具を殆ど用いないバンドサウンドでさっと仕上げる様はストイックさすら感じさせることもあるが、その中から澤部氏の有するロマンチックさや薄暗さがそろりと滲みだすところに、ただのポップス製造機になり得ないだけの豊かなポテンシャルがある。

そのスカートが現在の四人編成メンバーを固定して活動するようになって3年程が過ぎた。2014年夏にリリースされた『サイダーの庭』においてその作曲能力やバンドの演奏力は既に円熟の域に達していたが、しかし、万全の完成度と同時に「これ以上この編成で何が出来るんだろう?」といった類の倦怠の予感を覚えたりもした。

しかしながら、彼らの2014年最後のリリースとなる今作『シリウス』は、そんな不安を吹き飛ばす、“気だてのいい佳曲”といった形容を撥ね除けるような、持ち前のポテンシャルがこれまで以上に炸裂した、個性の強い楽曲が収められている(4曲入りレコードのみの発売というのも個性が強い)。

冒頭タイトル曲「シリウス」の、静かで冷たい夜空から宇宙にまで一気に浮かび上がるようなスケールの大きさは、これまでも幾つも寂寥感でソフトにファンタジーする歌世界を描いてきた彼においても新境地と言える程の、大きな重力のようなものを抱えている。この曲と、スカートお得意のシンプルで味わい深いショートポップ「どうしてこんなに晴れているのに」が収録されたレコードA面はこれまでの4人バンド編成にて、ダビング等も極力少なく作ってある。

それに対して、ゲストミュージシャンを迎えて音数も比較的多め(スカートにしては、という程度だが)なB面2曲は、よりポテンシャルの迸り具合が明確だ。これまでのスカートでは考えられない程不穏なコードや歌、サウンドが反響する「タタノアドラ」の退廃的な雰囲気。これまで以上にバッキバキにファンクに踏み込んだ、okadada氏との共作「回想」の岡村靖幸さえ想起しそうなシャープネス。この2曲においてスカートはその楽曲・バンドサウンドどちらの幅も明らかに広げてきている。

スカートは時に、優等生的で可愛らしいバンドと見なされることもあったように思う。翻って本作は、そんな雰囲気を覆すような、ケレン味を伴った広がりをはっきりと示している。意欲作であり、静かに新たな爆発の始まりを感じさせる、年末に突きつけられた不敵な贈り物だ。

以上のような楽曲に加えて、今作は『惑星9の休日』『夜とコンクリート』などの作品で独特のロマンチシズムを発揮されている漫画家・町田洋氏による、こちらも壮大でファンタスティックな書き下ろしジャケットが添えられている(ぜひ手に取ってジャケの表と裏を見比べてほしい)。これをレコード限定でリリースする澤部氏の密かに挑発的な姿勢に熱いものを感じるし、またレコードを普段手に取らない人が、この作品からレコード生活に引き込まれていくのも、とても素敵じゃないか、と、そんなことを思った。

【Writer】おかざきよしとも (@YstmOkzk)

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