最終更新: 2020年5月16日
制作の中心である2人にそれぞれ単独インタビューを敢行したのは、各々の心により図々しく踏み込もうと企んだから。思惑通り、2人ともとても個人的な視点からバンドの事を話してくれた。しかし同時に、全く別の段取りで取材したにも関わらず、2人の口から似たようなキーワードが幾度となく紡ぎ出されたのも興味深いところ。
2人の個人的な心の動き、リンクしている部分、そこから垣間見えるDroogの想い。著しい成長をありありと見せつけながら、なお加速する彼らを探る2つのインタビュー、カタヤマヒロキ編。
アーティスト:カタヤマヒロキ(Vo) インタビュアー:Miyaco
―今まで単独インタビューを受けたことはあった?
カタヤマヒロキ:1回あったかな。その時はすごい広い会議室の隅っこにちょこんと座って、関係者の人がいっぱいおって緊張して。こんなにラフに話せるのは始めてかもしれん。
―リラックスしてたくさん口を滑らせてくれたらいいなと思います(笑)。Droogの成長ぶりがとても興味深いんだけど、そこに関する周りの声はカタヤマ君にも届いてる?
その、人の声を聞きたいと思ってライブのやり方を変えたのがあって。前は、「対、人」っていうライブのスタンスじゃなくて、自分達のしたいことをやってる、それをたまたま人が見てる、っていう感じだったんだけど。それじゃ伝わらないと思って、そこにいるひとりひとりを強く意識するようになったから、そういう声も前に比べて聞こえるようになった。こっちがアクションを起こしたことに対して、リアクションが返ってくるようになった。今まではアクションだけだったけど、リアクションが欲しくなったし、わかるようになった。
―個人的な印象だけど、最初にDroogの印象が変わったように感じたのは、『ぶっとびぱなし』リリース前に見た広島ナミキジャンクションでのライブ(2013.3.29)だったんです。
そのライブ覚えてる。俺いつも白のジャケットと黒のパンツでライブに出るんだけど、その日だけ柄パン履いてみて、すごい後悔したの(笑)。
―そうだったの?気付かなかった(笑)。後にも先にもあの日だけ?
あの日だけ。もう二度とやらない(笑)。
―そうなんだ、貴重だったね(笑)。そのライブで何かしらの変化を感じて、その後ライブを見れるだけ見に行くようにしたんだけど。本当にすごく目に見えて成長しているよね。それがなぜなのか知りたいんです。ライブのやり方がいつ頃からぐっと変わっていったか、自覚的なものはある?
うーん、いつだろう…
―なんとなく変わっていった?
いやいや、なんとなくじゃない。はっきりと、変えようと意識して変えた。「対、人」っていうのを意識し始めてからだから、すごく最近のイメージ。俺達のライブのスタイルって、最初は、短くてMCしなくて「何なんだろうこの人達」っていうインパクトを残したいっていうのが強かったの。それで地元からずっとやってきて。でも、俺らの想いが全然伝わってないんじゃないかなって思うようになって。伝わってないって思ったのは、単純にお客さんが増えなかったから。じゃぁ変えていこうってことで、いろいろと封印してた事をひとつずつ解いていって。MCとか、笑うとか、コールアンドレスポンスとか。
―敢えてしてなかったの?
敢えてしてなかった。しない美学みたいなのが大好きだったし、反抗心のようなものもあって。初めてその封印を解いたのがいつなのか覚えてないけど、徐々に徐々に解いていって、今も解いていってる最中。
―『LOVE SONGS』でメジャーデビューをした頃は、状況がどんどん変化したと思うんだけど、この頃は何を感じてた?
今思えばだけど、何も考えてなかった。流れに乗ってた。もちろんその小さい中では考えてたし、悩んでたし、苦しかったけど、今思えば視野が狭かったし、大人に任せきりの部分もあったし、言われるがままだったし、「俺らなら大丈夫でしょ」って変な自信があった。
―次の『End of teenage』で少し作風が変わって、歌詞の内容も変わってきたと思うんだけど、なぜあんな風に変わったんだろう?
うーん、歌詞が変わったって感じるのはどこの部分?
―それまでの作品は反射的にバンと出てきた言葉っていう印象で、このアルバムからは1度頭で考えてから出てきた言葉のように感じる。
あぁそれは、『End of teenage』より前は「今、この瞬間だけ、最高に爆発できればそれでいい。明日なんていりません。過去、未来どうでもいい」みたいな考え方だったの。それが『End of teenage』からは、明日が欲しいなと思って。この瞬間が爆発するのももちろん大事だけど、それが言い訳のように感じたの。で、次の日のことを初めて考えたんだよね。明日のために今日セーブするとかじゃなくて、明日を良くするために今日どうするか。そういうのを考えだしたのがその頃。それを12曲目の『からっぽの世界』で歌ってるんだけど。
―なんで明日が欲しくなったんだろう。
たぶん、普通の人は明日が欲しいっていうのが基本にあると思うの。それが、だんだんロックとか聴いていくうちに「明日なんていらねぇ」ってなるんだと思う。だけど俺たちの場合はなんか逆で(笑)。「この瞬間が大事だ」って思ったのが15歳くらいで、早かったんだろうね。だから高校も中退したし。19歳くらいで初めて明日が欲しくなったのは、それまではずっと自分たちの世界だけでやってたんだけど、事務所に所属していろんな大人の人と関わって、初めて人並みに社会勉強ができて、それで思ったんじゃないかな。
―先のことを考えてもっとよくして行こうっていうのは、自分はどう生きるかっていう事に関わるから、いつかみんな考える時が来るんだと思うけど、それがカタヤマ君にはそのタイミングで来たっていうことだよね。
うん、そのタイミングだった。それまでは、明日目を覚ましたらすごい突拍子もないロックスターにポンってなれるって思ってたの。それが19、20歳くらいで、ポンってなるのは無理だなって思って。だったら、今日よりも明日ロックスターに近づいてたら、だんだんだんだん日が経つに連れ、そのうちストーンズみたいなバンドになれるんじゃないかって思った。それかもしれない、明日が欲しいっていうのは。
―その『End of teenage』のツアー(Droog GIG TOUR 2012 End of teenage)は振り返ってどうだった?
すごい悔しい思いを、ずっとしてたような気がする。ツアーファイナル(2012.7.25 @新宿LOFT)は自分達的には良いライブだと思ったんだけど、SAのNAOKIさんが見に来てくれてて「最後バーッと暴れてた、その感じを最初からやったらもっと良かった。なに余力残してんだ」って言われたのが悔しかった。だからあのツアーで本当に良かったのは、ファイナルの最後の5分10分だったかもしれない。あれを最初からやってたらもっと良かっただろうし、NAOKIさんに言われたのはその日のライブの最初からって意味だったけど、ツアーの最初からやってたら、とも言えると思う。
―その後『ぶっとびぱなし』の制作が進むわけだけど、個人的にはこの辺りの時期に何かしらの変化を感じたんだよね。制作をしながらライブもこなしていたこの時期はどんなことを考えてライブをしてた?
ツアーが終わってからのライブに関しては、アルバム毎のツアーだとか関係なく全てについて同じように言えるんだけど。ツアーでライブってどんどん良くなるのね。新曲も馴染んでどんどん良くなって高まっていくの。でも、ツアーファイナル―だいたいワンマンだよね。それが終わると、それ以上のライブが出来なくなるの。だからいろんなバンドって、ツアーが終わったら制作に入って、新しい曲を入れて、またツアーをやるんだと思うんだけど。
―そのサイクルがあるよね。
そう、サイクルがある。だけど、俺らってファイナルが終わってもめちゃくちゃライブをやるの。だからそこはすごい試行錯誤するし、とにかく悔しい思いをする。だってツアーってさ、どんどん高めてきて、新曲もどんどん馴染んできて、いい感じでファイナルを終えて。そこからのライブって、なんかね、超えていかないんだよね。
―リセット感がある?
うーん、リセットというか…同じようには上がって行けないんだよね。でもここで上げなきゃいけないんだよ、本当は。だからすごい悩む。だって新曲はもうないし、ファイナル後のライブはワンマンじゃないからそれみたいに盛り上がらないし。その時期はすごい葛藤して、一番もがいてるかな。だからその制作のタイミングも、同じように苦しんでたと思う。
―『ぶっとびぱなし』のリリースツアー(Droog やけっぱちTOUR 2013)は、振り返ってどうだった?
あのツアーくらいから吹っ切れたかもしれない。吹っ切らないとマズいぞっていうのも薄々気付きだした。だからツアータイトルも「やけっぱちツアー」だし。
―この頃は特に、お客さんを巻き込む力が付いたような気がしたのだけど。
うん、そうだったと思う。どうやったらお客さんを乗せられるかっていうのをすごく考えてた。
―さっき言ってた「対、人」っていう部分?
そうそう。どうアクションしたらリアクションがもらえるかっていうのを考え出したのがこの頃かな。この時、avexを離れることは既に決まってたの。なぜavexにいたかっていうと、すごく好きなディレクターさんがいて、その人がすごいいろんな事を教えてくれたし、とっても大きな存在だったから。その人ももの凄く一生懸命俺らの事をやってくれたけど、今後その人とは一緒にやれないっていう状況になって色々感じたり考えたりしてた。そういう時期でもあった。
―そこからのシングル(『In A Ghost World』)制作だったんだね。そのレーベル移籍っていうことに、カタヤマ君は何を感じてた?
自分の好きな人と離れるっていう意味を強く感じた。向こうもやりたいって思ってくれてるし、自分達もその人を信用してる、それでも自分達の力不足で離れなきゃいけないのは本当に悔しかった。
―この頃は、大事な人を守るとか、仲間っていうワードを頻繁に使っていたよね。
あぁ、そうかもしれない。絶対そうだ。
―気付いてなかったんだ?そういう想いの籠ったシングルなのかなと思っていたんだけど。
あー、そうだね。確かこのシングルのツアーファイナル(2014.7.20 @新宿red cloth)でも、アンコールのMCで俺言ってたもんね。「大事な人と離れなきゃいけないのが悔しい」って。そう、そのことです、その人とのこと。
―雑誌のコメントにも、そんなことを書いてたよ。
わー…うん、そうだ。「ぶっ壊すのがロックだと思ってたけど、大切なものを守るのがロックだ」って書いた。うわー、そうだ。エグいわー(笑)。
―意識してその言葉を使ってるんだと思ってた。
うん、気付いてなかった。無意識に使ってたんだと思う。
―そうだったんだ。このシングルの3曲目の『BAND ON THE ROAD』。バンドのことを歌おうと思ったのはなぜ?
バンドのことというか、あれは別れのこと。別れる寂しさをすごく考えていて、自分にとって一番辛い別れは何かって考えたらバンドだと思ったから、それを歌ってみようと思って。
―歌詞に出てくる「2人」について、改めて説明してもらえますか。
はい。「2人」っていうのは、俺とDroog。俺と祐太朗とか、右田、拓斗ではなくて。そのDroogの中には、俺とは違うカタヤマヒロキも入ってる。
―聴いていてとても胸が熱くなるんだけど、歌いながら込み上げてきてしまうことはない?
あるよ、そりゃ(笑)。でも今までライブで歌いながら泣いたことは一度もないの。昔は感動する映画とか本でも全然泣けなかったけど、最近すぐ泣いちゃうんだよね。バラエティ番組見てもボロボロ泣いちゃうから、歳かなと思うけど(笑)。でも自分の歌では泣けないから、今後は自分の歌で感動したい(笑)。
―今後ステージで泣いてるカタヤマヒロキが見れる日が来るかな(笑)。このシングルのリリースツアー(Droog TOUR 2014〜地獄めぐり〜)は、今振り返ってどう?
人との繋がりを強く実感したツアーだった。全国で応援してくれてる人や、カメラマンさん、映像の人、CDショップの人、媒体の人とか。上辺だけの関係じゃない人達が残ってるから、自分達がどうこうっていうよりも、そういう繋がりを強く感じた。
―それは、はたから見てても感じるかな。Droogは今、本当に周りから愛されてるなって思う。
うん、本当に嬉しい。だからみんなにステージから恩を返したいって思った。俺達は本当にね、人と出逢う運はすごく強いと思う。
―この頃はラジオのレギュラー番組もやっていたよね。
ひとつのすごく大きな出来事だった。ラジオをやるときに決めてたことがあって。それはステージの俺じゃなく、こっち側の俺を出すっていうことで。だからカッコつけずに素の感じで喋ったし、素で思ってることを喋った。そこも伝わって欲しいなって思ってた。
―思うようにできた?
いや、できなかった。後から聴くと「はい、はい」が多いなとか(笑)。一緒にやってたDJの今泉圭姫子さんが音楽にとっても詳しい方で、たくさん音楽を勉強させてもらったし、本当に大きな経験だった。またやりたい。
―そういうのも今後に活かせそう?
うん、活かせると思う。それがあってライブでも少し喋れるようになったし。
―ここまで聞いてると、自分達の事をリアルに伝えたい想いが強くなったっていうのがポイントかなと思ったんだけど。
それだろうね。伝えるっていうのを意識し始めてから、前に比べて強くなった気がする。怖いことを知ったから強くなった。守りたいものができたから強くなった、ってよく言う言葉だけど、本当にそれだと思う。
―それは例えば大切な人だったり、バンドだったり?
そう。それを一回失ったから。失うまで気付かなかったのはバカだったけど、気付いて確実に強くなった。
―ツアーが終わってからもハイペースでライブの予定が入ってるけど、ツアー後から今日までのDroogも変化してると思う?
うん、めっちゃ変わってると思う。今は、最初に言った(ツアー後の)もがいてる時期だから、ツアーファイナルのレッドクロスでのライブを超えようとしてぐちゃぐちゃの状態。この状況を変えるには新曲しかないから、新曲をどんどんライブでやって、それをリリースして、ってやっていったらまたスタイルの違うDroogになるだろうし。だから今のDroogはすごく貪欲。禁じ手もないし、考えついたら全部やるし、封印してたのをこれからも解いていく。
―カタヤマ君が思ういいライブってどんなライブ?
真面目な答えでいくと、毎回自分で「今日のライブはここが合格点」っていうのを決めてるの。それを超せた時が良いライブ。不思議なのは、合格点を超せなくてもいいライブをするときもあるんだけど。
―どんなライブをしたいって思う?
LIVEって「生きる」ってことだから、生き様をみせたい。そしたらそこに絶対感動があるはずだし、俺が好きなバンドはそういうバンドだから。どんな想いでそこに立ってるのかが伝わるっていうか。その解釈は間違ってても別にいいんだけど、とにかく濃く伝わってほしい。
―祐太朗君にも聞いたんだけど、4人を兄弟構成に置き換えるとどうなる?
俺が絶対末っ子。あ、いや、右田かなー?(笑)。祐太朗は兄ちゃんやな。祐太朗、拓斗、右田、俺かな。祐太朗はなんて言ったの?
―祐太朗くんは、『俺とヒロキは夫婦や』って言ってた(笑)。
ははは(笑)。夫婦だとしたら、祐太朗が旦那さんで俺が奥さんだね、絶対。『お父さんからもっと言ってよ!私が言っても右田も拓斗も言う事聞かないんだから!』みたいな(笑)。超しっくりくる(笑)。
―じゃぁ、Droogってどんなバンド?
中途半端なバンドなんじゃないかな(笑)。すごい不良でもないし優等生でもないし、かといってすごいオタクでもないし。毎回やりたいことも作りたい曲も変わるし、いろんな曲を好きになるし。その中途半端さが俺らの芯だと思う。それは最近気付いたことかな。そこをもっと出せたらこれまでにないバンドだと思うし、それで売れてるバンドっていないし。
―そうだね、振り切ってるのがカッコいいみたいな観念があるよね。
確かにそうなんだろうけど、そうじゃない人の方が多いはずじゃん。そこを出せたらいいし、それが出来たら俺らの勝ちかな。俺達ひとりひとりの人間性がもっと伝わればいいなって思う。なんか惜しいんだよね。今は的をかすってる感じで…これを、中心にヒットさせたい。
―そのためにやらなきゃいけないことは見えてる?
うん、見えてる。いっぱい山積み(笑)。だからそれを一個ずつやっていく。だけどまぁ、その方が転がってる感じがあるし、楽しいから。