最終更新: 2021年2月20日

ピックアップアーティスト・・・OGRE YOU ASSHOLE/Los Campesinos!/Incubus/THE NOVEMBERS

OGRE YOU ASSHOLE(yabori)
デビューした当時はどこか浮遊感を感じる、USオルタナ系のギターロックバンドであったOGRE YOU ASSHOLE。当初の音楽性からロキノン系というジャンルで括られる事もしばしばあったが、今では当時から想像できない程、めざましい進化を遂げている。

現在のOGRE YOU ASSHOLEはゆらゆら帝国の黄金期のサウンドを作り上げたプロデューサーの石原洋とエンジニアの中村宗一郎という鉄壁のサウンドチームと楽曲を練り上げたり、代表曲のセルフアレンジ盤である『confidential』をリリースしたり、唯一無二の道を歩んでいる。そして最新作『ペーパークラフト』のサウンドはオチのないシュールな映像作品のバックで流れてる音楽というような雰囲気を持った、とても異質なアルバムであった。今まで聴いた何かに似てるなと考えてやっと思いついたのが、ウルトラQのオープニングテーマだったという所に彼らの歩んだ道のりの独特さが伺える。一体、これからどうなるのか想像もできない。

Los Campesinos!(Chappy)
2006年よりイギリスで結成しメンバーの脱退などを経て、現在男女6名で活動しているLos Campesinos!。通算5作品を出しており初期の作品は、明るさ溢れるポップ全快の弾けたサウンドで一躍その名を広めた。

3rdアルバム以降、度重なったメンバーの脱退などの影響もあってか少し喪失的な切なさが垣間見えてくる。しかし、ブランクや更なるメンバーの脱退を経て仕上げた5thアルバムでは、受け入れた焦燥感と葛藤して得た力強さとの交わりを感じる内容で、一皮も二皮もむけ成熟した傑作となっている。

Incubus(ohamu)
彼らのアルバムだったらどれが好き?と聞けば、友達を作る際に参考資料となる。1995年、ファンキーでハードな1stアルバム(自主制作)を出した当時は驚きの19歳。ラップメタルというジャンルで呼ばれたインキュバス。

インキュバスは、進化を追求するバンドだということを従来のファンは知っていた。しかしそんなファンでさえバンド名を二度見してしまったのは、2011年の7枚目のアルバムが出た時じゃないだろうか。「まさかこのメロウで壮大なサウンドを奏でるのが、あのインキュバス…?」と、いくら変化するバンドとは言えミクスチャーバンドとしてイメージが根本にあった彼らだったからこそ、この展開には驚かされたであろう。その噂のアルバム『If Not Now, When?』は、もちろん今までのミクスチャー色もチラリと見せる(このアルバムの中では逆に異質に見えて目立つほどだ)が、全体を通して攻撃的な狂気さは無い。ただただ穏やかで美しいのだ。それは”進化を恐れないという意志の輝き”だと言われ再び評価されることとなった。

THE NOVEMBERS(桃井かおる子)
東日本大震災から4年が経った。その時バンドマン達のほとんどが、様々な思いを巡らせたに違いない。私の知り合いにはその時バンドの解散を決意し、今では音楽とは全く関係のない仕事をしている人もいる。たぶんだけど、あの時の世の中の流れ的にそう決断した人は多いのかもしれない。そうした中でも、彼らTHE NOVEMBERSはそういう類の思いとは違う思いを巡らせていた。「このままじゃダメだ。もっと考えないと。」って。初期の彼らの曲は今と比較すると歌詞の内容も分かり易く、それこそラブソングなんかもあったりした。こう言ってはご本人に申し訳ないが、正直尖っていなかった。

だがそんな彼らに、震災という変革の時が訪れる。震災以降の彼らの楽曲の作風は、それまでとは全く違うものになる。音も言葉も鋭利さが増し、だけどその鋭さの中には確かに人を包み込めるような優しさがある。人の心が、その命が、日々の中で触れるものや感じ取るものの美しさを、それができることを尊いことなんだと歌っている。どんなに鋭利なメロディーや言葉にも、そういった繊細な意味合いを含ませる。タレントで映画監督の北野 武はこう言っている。「暴力と優しさは紙一重だ。」と。その言葉の意味を唯一音楽で表現することができるアーティストは、THE NOVEMBERS、彼らしかいないと思う。