最終更新: 2015年4月8日
アーティスト:桝田 康広(Ba) インタビュアー:yabori、桃井かおる子
-新作の話題の前にドラマーの方が前回と変わっていますね。新しく加入されたドラムの方はどういういきさつで加入し、今までどんな活動をしていた方なのでしょうか。
桝田:新しいドラマーは10代でアメリカに渡りドラムと音楽を学んで、最近まで東京で活動していました。フジロックに出演したり、アメリカやイギリスでの海外公演を行ったりと、実力のあるドラマーです。経緯としては前のドラマーが活動出来なくなり、元々面識があった彼に声かけて一緒にやる事になりました。
-新しいドラマーの方になって今までで、3人のアンサンブルが一番まとまっているのではないかと思います。実際に演奏してみて、いかがでしょうか。
とても良い感じです。過去のドラマーも2人とも文句無く良かったのですが、今のドラマーが出したいバンドのグルーヴには一番フィットしてると思います。
-今作のタイトル『Beg』は日本語で【~を請う】という意味がありますが、なぜ今回この言葉をタイトルにしたのでしょうか?またこのタイトルにどのような意味を込められていますか?
響きとフィーリングで決めました。普段からリスナーからの理解を請っているからか、自然とピンと来てこれにしました。
-タイトルトラックの「Beg」は浅井健一さんのソロ作やLittle Barrieに通ずるギターフレーズやアンサンブルを感じる素晴らしい楽曲だと思います。この曲がどのようにしてできたのか教えてください。
寺垣(Vo/Gt.)がスタジオに原曲を持って来て、後はセッションして作っていきました。タイトかつクールで、シンプルな曲を目指しました。
-今作は過去の作品と比較して、より男らしい作品に仕上がっていると思います。制作過程において、今までの作品との差別化なども図られたのでしょうか?その際、最も大変だったことはありますか?
前作と差別化を計ろうと意識はしてません。ただ、普段から常に新しくて格好良くて、聴いた人がビックリする様な音楽を作ろうと日々考えています。
-Long Tall Sallyの曲は、歌詞が曲中で韻を踏んでいるものが多いと思うのですが、今作は特にそれが顕著に表れていると思います。今回歌詞を書かれる中で、注意したことや工夫した点などはありますか?
今回の作品に限っての事ではありませんが、まずは耳触りの良さを意識してます。歌詞は意味がありすぎるとダメだし、無さすぎてもダメなので、分かりそうで分からず、分からなさそうで何となく分かる、くらいの感じが良いと思います。
-今作の音作りにおいて、最もこだわった部分を教えて下さい。
今回はコンパクトなアルバムだったので、それぞれの曲を最大限に活かす音作りにこだわりました。シンプルかつダイナミックなロックンロールや、独特のグルーヴのあるサイケな曲、美しいバラード、繊細なメロディーの楽曲と様々ですが、どの曲もシンプルながら奥行きのある音作りを心がけました。
-しっとりとした質感の曲が多く収録されている中、5曲目の『Gettig Started』は疾走感があって、今までのLong Tall Sallyの楽曲とは違う印象を受けました。この曲はどのような思いで、どのようにして作られたのでしょうか?
この曲は単純にポップな曲がやりたくて作りました。前作の『Believe』に収録されている「Sunny & Co.」もそうですが、元々ポップな音楽も好きです。
-最後に収録されている『Eternal Crystal Armor』は、歌詞の中で「getting started」など、アルバムの他の曲の歌詞が引用されているのですが、これはなぜですか?そして、この曲にはどのような思いが込められているのか教えて下さい。
この曲は大袈裟に言うと、科学の矛盾や現代社会への危惧を歌っているんですけど、歌詞についてはあまり説明したくないです。歌詞を説明したら音楽にした意味ないので、聴いてくれた人が個々に感じてくれたらそれで十分です。曲は不穏な雰囲気を醸し出すイントロから、最後までずっと同じコード進行で進んで行くのですが、後に引けない今の社会と上手くリンク出来たんじゃないかと、後になって思ってます。
-今作の制作において、雰囲気などを意識したアルバム(アーティスト名も含め)を教えて下さい。そして、なぜその作品からヒントを得たのかについても詳しく教えて下さい。
具体的に意識したアルバムはありません。オリジナルでいて、聴く価値のある格好良い曲の入ったアルバムを作ろうと心がけていたので。影響を受けたアーティストは沢山いますが、雰囲気まで意識する事はありません。
-(先の質問とは別に)音楽面と活動面の両方で、現在のLong Tall Sallyに最も影響を与えているアーティストを、洋楽・邦楽ともに一組ずつ教えて下さい。そして、どういった所で影響を受けているのかについても教えて下さい。
洋楽ではThe Beatlesです。特に音楽面ですが、彼らも色んな音楽から影響を受けていて、挑戦してますが、ただのコピーではなく、ビートルズ流のポップスに仕上げて、一枚のアルバムに色んな曲を入れている所に影響を受けています。一枚を通して全部同じに聴こえるアルバムより、色んなアプローチの曲が入ってるアルバムの方が聴いてて飽きないし、音楽家としてクールだと思います。邦楽ではTHA BLUE HERBをよく聴いています。彼らには音楽だけでなく、活動にも影響を受けています。とにかく「自分達の道は自分達で切り開くしか無い」っていう姿勢に影響を受けました。
-Long Tall Sallyは来年で結成10年になりますが、結成して10年になる前にバンドとしてやっておきたいこと、今まで出来なくて後悔していることはありますか?
今までのバンド活動に対して後悔は無いんですが、「もっと早く知っていれば良かった」と思う事はあります。逆に知らなかったからこそ、苦戦したり、失敗したり、学んだり、充実した良い時間を過ごせたりした部分もあるので文句も後悔もありません。
-現在バンドとして目標にしていることや、今後のビジョンについて教えてください。
今後の目標はとにかくもっと多くの人に知ってもらって、聴いてもらう事です。それで何が本物で、誰がクールなバンドか知ってもらいたいし、それがお金という価値に変われば言う事はないです。具体的にはアルバムをもっと多くの人に届けて、地元の鳥取以外でもイベントを企画していきたいです。
-最後になりますが、このアルバムをどのような人に聴いてほしいですか?
老若男女問わず、1人でも多くの人に聴いてもらいたいです。地域やレーベルではなく、自分の耳で、良いか悪いか判断してもらえたらそれで十分です。
『Beg』
2015.4.22 RELEASE