最終更新: 2020年12月6日
元NIRVANAであり、Foo Fightersのデイブ・グロールが「グランジは死んだことなどない」との趣旨のコメントをしたのが2013年だ。
そしてこの年にCloud Nothingsの『ATTACK ON MEMORY』がリリースされた。線の細いローファイギターロックバンドが真っ向から制作したグランジアルバムがヒットし、世界中の大型フェスのラインナップに名を連ねた。
日本で彼らのライブを見たが、インディロックファンにもラウドファンにも受け入れられそうな、新感覚のグランジサウンドだった。
その影響が英国シーンで表面化し、新しいタイプのグランジバンドが登場した。「ギターロックバンドの復権を!」と、本国ではこのポストグランジ世代の台頭に盛り上がっている。
ROYAL BLOODのデビューアルバムが初登場全英1位を獲得した。アルバムリリース前のDaliaが大注目されている。そしてDrengeの存在。
目次
Drengeとは
DrengeはEoin-Loveless(兄でVo./Gt)とRory-Loveless(弟でDr)の兄弟デュオだ。まだ少年の面影を残す男の子たちが、実にハードなライブをする。
その評判がじわじわと広がり、「あなたは(労働党なのに)泥だらけのグラストンベリーにいなかった。
凄いバンドを観たいなら、Drengeを薦める」と労働党トム・ワトソンの党首への批判文にも引き合いに出され、一気に注目されてしまう。
直後にリリースされた1stアルバム『Drenge』も大絶賛。さらに、同じデュオバンドでよく比較されるROYAL BLOODに「人間的には好きなんだけど、ポップ過ぎじゃん」っていう、いかにも英国のロックバンドっぽい、ビックマウスっぷりを晒し、愛すべきキャラクターの地位も確立した。
『Undertrow』
今年に入り、幼馴染Rob Grahamの加入で3ピースバンドへ。リリースされた本作『Undertrow』はHYPEを軽くぶっとばす大傑作品だ。
まず”森の奥でテールランプが怪しく光らせ停車するスポーツカー”というジャケットデザインからして最高だ。
まるで映画「ドライブ」を彷彿とする、ダサさギリギリから成り立つ新しいニヒリズム。時代を超わかってる。
そして音源も、ジャケットの世界観とリンクし、グランジのダーティーな音楽性をベースに、コンセプチュアルにまとまっている。
プロデューサーはArctic Monkeysの『AM』やM.I.Aに関わった経歴のROSS-ORTON。より重いドラム、よりラウドなギター。
出音の質が前作から比べものにならないほど改善されてるのもアルバムの一体感を感じさせる要因だ。
ハイライトは、M4「We Can Do What We Want」を挟む前後。M3「Never Awake」までの、重い空気を晴らすように、Foo Fighters直系の、メジャーコードのパワーポップソング「We Can ~」が一気に突き抜ける。
転調していくアウトロの展開がものすごく効果的で、この爽快さがたまらない。そして同じBPMを保ちながら再度ダーティー曲調のM5「Favorite son」に突入する。
この躁鬱的な展開を経て、その世界観はさらに深いところに入っていく。そういったグランジ視点のわかりやすいフックや展開に、エンターテイメント作品としての完成度の高さ感じる。
Dregeが、今作が、果たして”グランジ”なのか?90年代のオリジナルグランジは、より内向的に、インディペンデントな志向を突き詰め、暗礁に乗り上げた。
Foo Fightersはグランジを精神的なものから開放し、音楽的に進化させ、より広く届くように再構築させていった。この直線上にあるのが、Cloud Nothingsの転機であり、Drengeの今作だ。
“あの”グランジとは違う、”今あるべき”グランジを、ライトで新しい感覚のロックファンにこそ是非聴いてほしい!