最終更新: 2020年3月22日
The Weeknd(ザ・ウィークエンド)がギアを上げてきました。6月8日に、きたるべきセカンド・アルバム『Beauty Behind the Madness』へのリード・シングルとしてリリースされた「Can’t Feel My Face」。
キャリア屈指のダンサブルでアップリフティングなディスコ・ジャムとして、シーンから驚きと称賛の声が上がっています。海外メディアでは、「”Uptown Funk”級のバズ」との評までも。
現行の海外ポップ・シーンから、”今の1曲”を紹介する連載『振り向けばキラー・チューン』。 第2回では、この曲を取り上げましょう。
まずは、アーティストのバックグラウンドから。The Weekndは、カナダ人シンガー/プロデューサーであるアベル・テスファイのソロ・ユニット。
2011年にリリースされた、”バルーン・トリロジー”と呼ばれるミックステープ3作が、ネット・メディアを中心に大きな話題を呼び、アベルは一躍時代の寵児となりました。
そして、翌年にはメジャー・レーベルの〈Republic〉と契約し、2013年にファースト・アルバム『Kiss Land』を発表。全米アルバム・チャート2位を記録します。
以降も、サウンドトラックへの提供やコラボレーションなどで精力的に活動。Ariana Grandeのアルバムに収録された、彼女とのデュエット曲「Love Me Harder」が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
チャートを華々しく飾ったものの、アルバム『Kiss Land』は決してフレンドリーな内容ではありませんでした。
閉塞感を煽る冷たいシンセ・エフェクト、暗闇のなかで、なにかが迫りゆくような不穏なビート。
アルバムの通奏低音となっている”どこにも行けない”という感覚、それはインターネットの気鋭から、突如ポップ・シーンの先頭へと立たされることになった、アベル・テスファイの悲鳴そのものだったのかもしれません。
憑物がとれたかのような晴々しさ。新曲「Can’t Feel My Face」では、暗黒面への傾倒が見られた『Kiss Land』期を完全に脱した、彼の姿を見ることができます。
さらにさらにと天へと昇りつめるヴォーカル、ブリっとしたファンクネスが詰まったビート。3分30秒、しかもシャウトでバシッと終わる構成含め、もうパーフェクトなポップ・ソングでしょう。
それもそのはず、プロデュースを手がけたのは、 Britney Spears「…Baby One More Time」からTaylor Swift「Shake it Off」まで、15年にわたりシーンのトップを作り続けるヒットメーカー、Max Martin。
ポップス職人の匠は、10年代きっての才能をかつてないほど煌めかせています。まさにキラ星のごとく。「Can’t Feel My Face」は、2015年の夏において、欠かすことのできない1曲となりそうです。
【Writer】
田中亮太
ライター。OTOTOY連載『隣の騒音』やsign magazineで執筆しています。春から上京します。
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