本作はTHE STROKES再始動後のソロアルバムであることが大きい。STROKESのデビュー作『IS THIS IT』は、ミニマルな音のハーモニーという引き算の音で構成されており、これは当時隆盛のヘヴィ・ロックやエモーショナル演出のスタジアムバンドに対してのカウンター的位置づけとして非常に新鮮なスタイルであった。しかしその後、その独自性に対して、実はスタジアムで音が届けられるバンドに成長していかなければならない、宿命とのジレンマを繰り返した。

2006年にリリースされたアルバート・ハモンドJr.のソロ1作目『Yours To Keep』の特徴は、キャパシティに関係なく『IS THIS IT』で確立した手法を可能な限り突き詰めることにあった。要するに”変わっていくSTROKESサウンド”に対して、”変わらなかったSTROKES”の幻影であり、この手法でストレートなポップネスを展開させることで、これだけ良い作品になるのだ、という存在意義を示した。STORKESの活動が止まった2008年の2作目『Como Te Llama』はなんだか迷いがあって、バランスが良い作品とは言えなかったことを思うと、やはりSTROKESとソロ作の2つが噛み合っていたというのもあるのだろうか?

だからか、今作『Momentary Masters』は本当に調子が良い。今までのような、統一されたコアなインディ・ギターポップ路線と異なり、エキサイティングな曲が多く、バラエティに富んでいて一時たりとも退屈を許さない。全体的にメロデイというよりも、ギターのカッティングも含めた、リズムへのこだわりが前面に出ており、再始動後のSTROKESでも顕著であったグルーヴ面の強化が本作でも如実に反映されていることが伺い知れる。特に、2曲目「Power Hungry」が80sニューウェイヴ風の印象的なシンセ使いだったり、ラウドなギターリフを前面に出した3曲目「Cought By My Shadow」なんかは今までと違うアプローチでもあり、それが顕著だ。これらがうまくアルバムの中でハマっている。また、その相乗効果で「Born Slippy」や「Losing Touch」と言ったお得意の美メロ曲もより際立っている。先行でMV公開されていたこの2曲がアルバムで通して聴くと、また印象が変わってくるのもそのせいであろう。そして後半のクライマックス、「Touche」、「Drunched in Crumbs」、「Side Bood」というスピード感のあるこの3曲の並びはこのアルバムのパワフルさを物語っており、何度聴いても爽快だ。

今作をレコーディングする直前に、アルバートはニューヨークから離れた。結婚をし、自然に囲まれた場所に住居を移し、生活環境を変えた。その心境の変化、開放感といったプライベートな影響が、このアルバムの自由な発想に繋がっているのだと思う。アルバート・ハモンドJr.という1人のミュージシャンのこだわりや葛藤。そして、感情的で、やさしい、歌声とギターのカッティングが、ストレートに伝わってくるのは、バンドでは味わえないソロ作品の魅力だ。

【Writer】ŠŠŒTJ(@indierockrepo)
今までのレビューはこちら

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中