「何処の国か分からない架空の外国のサウンドトラック」みたいな感じに形容されることしばしばである、北里彰久率いるAlfred Beach Sandal(以下ビーサン)の音楽に宿るロマンとは、他の多くの「アメリカーナ」と呼称される音楽に時折感じる不思議な豊かさや郷愁、寂しさにどこか似ているかもしれない。ただ、そのアプローチにおいてビーサンはより整然とアバンギャルドでこんがらがっているが。

そんな彼らの新作アルバム『Unknown Moments』がリリースされ、彼らの音楽の国籍はよりこんがらがったのか、それともむしろ整理されたのかは、聴く人によって印象が変わるだろう。前作アルバム『Dead Montano』以来継続している3ピースの演奏はより洗練されたものとなり、リズムはプレイやベースの音色も含めてより多様化し(変な拍子の曲はなくなったが)、また5lackのラップやビートメイカーのSTUTSの参加により曲のアプローチや世界観もまた変化を見せている。

しかし何にせよ不思議な音楽性は相変わらずで、一部分を切ればジャズだのラテンだのアフロだのと言えるかもしれないが、彼らの演奏はその辺を当然のように・無意識的に横断し、様々な小技を畳み掛けながらも「歌もの」の曲としての素朴な良さを決して邪魔せず、むしろ北里彰久の繊細流麗なうたを際立たせる。

そう、音楽性がどんなに無国籍コラージュめいていても、結局のところビーサンの音楽はポップソングだ。より豊穣になったバンドの演奏もさることながら、彼のつま弾くギターと、そこから導き出されるのであろうメロディと言葉こそが彼らの世界観の豊かさの根っこだということは、今作でも変わらない。

一曲目「名場面」の歌そのもの、といったシンプルな演奏から二曲名「Supper Culb」の勢いサーフポップで弾ける感じに飛び込んでいくことでアルバムが始まり、アルバム終盤、先行シングルにもなった「Honeymoon」のシックで深くてサルガッソーなイメージの奔流から最終曲「Swallow」でさらりと少し寂しげな季節感に着地するまで、聴く人はまた不思議な旅に出る。それが冒険か逃避行か慰安旅行か懸賞旅行かは知らないけれど、その中で繰り広げられるダイナミックでダンディー、時にクールでメロウなあれこれに、ぼくはやはり新鮮なワクワクさと甘い荒涼感を覚えて、静かに胸は騒ぎ立つのです。

【Writer】おかざきよしとも (@YstmOkzk)

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