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マイクスタンドを両腕で抱き寄せながら黒服の男が立っている。獲物を定めたかのように真っ直ぐにこちらを見つめながら。男の両脇にはスピーカーとアナログ・シンセが据えられ、艶かしい光がシンセサイザーの影を壁に描く。妖しげなアクアリウム・ショップのごとき青色のネオンに据えられた文字は”ナイト・スクール”。先日発表された、Neon Indianのニュー・アルバム『VEGA INTL. Night School』のジャケット・デザインは、過去作におけるベッドルーム・ポップ色の払拭を予見させる、夜のざわめきに満ちたアートワークとなっていました。そして、現在先行で音源公開されている「Slumlord」は、プレイ・ボタンを押すやいなや、ジャケット上のネオンが点滅を始める、アーバンなファンクネスが注入されたディスコ・ポップのキラー・チューンです。

Neon Indianことアラン・パロモのソロ・ユニットが活動をスタートさせたのは2008年頃のこと。酩酊のシンセ・フレーズと宅録のエレクトロニック・ビートが溶け合ったサウンドが、当時のインディ・ムードであったチルウェイヴの一角として人気を博しました。2009年にリリースされたファースト・アルバム『Psychic Chasms』はピッチフォークの年間ベストでも上位にランクイン。2011年には、セカンド・アルバム『Era Extraña』をリリース。フィンランドでの録音やデイヴ・フリッドマンとの作業など、サイケデリアの純度を高めた意欲作に仕上がっていました。

前作から約4年とレコーディングに長い時間をかけたサード・アルバムは、ダンス・アルバムと報じられています。この「Slumlord」は、『ヴェガ国際夜間学校』の開校を告げるサイレン代わりの一発でしょう。甘いシンセがスロウな旋律から徐々にスピードを上げ、もう抑えきれないと高まったところで太いビートがイン。ファンキーなベースラインとギャラクティックな鍵盤リフがあとに続きます。そして、アランのなめらかなファルセットがたまらなくセクシー。まさにミラーボールを回らせるためにあるようなフロアど真ん中のディスコ・ポップです。ダンサブルという点では、Neon Indian以前の彼のプロジェクト、GhosthustlerやVegaを思い出させもしますが、破格に細やかとなったビート組みによるグルーヴのしなやかさは当時とは段違いでしょう。連載の前回で取り上げたThe Weeknd「Can’t Feel My Face」を最新に、近年枚挙に暇がないディスコ・フレーバーのアンセム群ですが、この「Slumlord」は10年代以降のインディ潮流からの最良回答と言えるのではないでしょうか。

『VEGA INTL. Night School』

【Writer】

田中亮太
ライター。OTOTOY連載『隣の騒音』やsign magazineで執筆しています。春から上京します。
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