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“ジャパニーズ・ミニマル・メロウ”というコンセプトを掲げて活動しているD.A.N(ダン).。彼らが今年の7月にリリースした4曲入りの『EP』を聴いた時、ほぼ同時期にJamie xxが新作『In Colour』を出しており、同じタイミングでその2枚を聴く事があった。驚いたのがその2枚を全く並列で聴けた事だ。今までだと“洋楽”と“邦楽”という壁があり、少なからず聴き手もモードを変えないと聴けない事がしばしばあった。しかし彼らのように海外の音楽と日本の音楽とを並列に聴き、それを自身の音楽に落とし込める世代が現れたからこそ、もはや今までのような“洋楽”と“邦楽”という分け方は不要だと確信した。今回のインタビューでは、実際に彼らがどういう考えで音楽を聴いているのか、作っているのかについて聞いてみた。

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インタビュー:桜木大悟(Gt, Vo, Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr) インタビュアー:yabori

-「Ghana」では曲の冒頭にサンプリングの音声が使われてると思うのですが、どうしてこの曲はサンプリングから始めようと思ったのでしょうか。
市川:えっと、The Booksというアメリカの実験音楽ユニットがいて、3人とも彼らの音楽を敬愛していて。彼らがやっているようなことをしてみたくて、サンプリングの音を入れました。彼らも喋り声がビートにのっかってるというスタイルで音楽を作っているんですよ。ヒップ・ホップの声ネタの使い方とはちょっと違うんですけど。意図的にのっけてなくて、偶然のっかったみたいな感じなんで。「Ghana」もスタジオでセッションしている時にできた曲で、サンプリングもスタジオで流してたら、自然とそのビートにのっかったんですよ。だからこれを入れようと思って。

-偶然ハマったんですね。このサンプリングはどこから引用しているのでしょうか。
桜木:Youtubeからサンプリングしたんですけど、アレン・ギンズバーグっていう詩人がぼそぼそ言ってるのを引用しました。その時は意味が分からずサンプラーに入れたんですけど、後々、オオクボリュウくんが「Ghana」のMVを作ってくれた時に、言っていることを書き出してくれて。その時にこう言ってるんだって知りました。あのギンズバーグの気だるい声が良いなと思って。気だるそうなムードから始まるっていう僕らの音楽にハマったかなと思います。

-「Now It’s Dark」は曲の途中で転調すると思うのですが、この曲はどのように作ったのでしょうか。
川上:この曲はまず歌メロに対して、テンポが違うアレンジが二つあったんです。その2つを上手いこと組み合わせられないかなっていうので、色々とアレンジを繰り返しました。

-そうだったんですね。自然な流れで転調してるなと思ったんですけど、苦労した部分はありましたか?
市川:この曲はみんな何も考えないで個々にアレンジしていたら、こういう感じで転調すればいいんじゃないかってアイデアが自然と出てきて。スタジオでとにかくやりまくって、合わせまくって出来たって感じですね。
川上:ここで速くなったら気持ちいいだろうなって。感覚的なことなので説明はしづらいですね。
桜木:僕の解釈ではこの曲って暗闇の中を追いかけ回されてるイメージなんですよ。サンプラーで呻き声が転調する時に入るんですけど、あの部分は何かから逃げてるっていう感覚で作りましたね。

-「Morrison」のライブ映像では音源と違ったアレンジをしていますね。ライブでは音源と違ったアレンジをするように工夫しているのでしょうか。
川上:そうですね。今後ライブに向けていろんなアレンジを考えていきたいなと思ってます。音源とライブは全く別だと思うので。
桜木:レコーディングだと自分たちの持ってる腕以上のものを足せるじゃないですか。演奏不可能なトラックができちゃうっていう。だからこそ遊びを入れたりできるんですけど。ライブだとできる事が限られてるので、限られた手数でどう工夫するかを日々試していますね。
市川:僕らも同じ曲でもいくつかお気に入りのアレンジがあって。そういうのはライブごとに変えて演奏するっていう見せ方はしてみたいですね。この曲はこれだから、これしかやらないというのではなくて。その時に感じているこれが気持ちいいんだっていうアプローチを思った時にやるというのが理想です。

-『EP』のリリース前は自分たちで手作りのZINEと一緒にCDを組み合わせて販売していたそうですね。最近、ZINEとCDと合わせて販売するアーティストが増えていますが、どうしてZINEを制作して販売したのでしょうか。
川上:物を買う目的を持たせるっていう事だと思います。今は音源ってデータで買えちゃうと思うんですけど、音源+ZINEだったら物として持つ意味があると思うんですよ。だからCDに合わせてZINEも作りましたね。すごく数は少なかったんですけど。
桜木:参考にしたのは、KITCHEN.LABELっていう日本とシンガポールに拠点があるレーベルで。ものすごくいい作品をいっぱい出していて、それは純粋に欲しいなって思うんです。だから僕らもそういう形でやってみようかなって。

-最近、ZINEを出すミュージシャンって急に増えましたよね。その現象はどうしてだと思いますか?
桜木:そうですよね。やっぱりみんなが同時多発的にその物としての価値っていう事を考えるようになったんじゃないですかね。
川上:ファッション性みたいなものもあるかもしれないですね。
市川:ZINEや写真っていう文化としての波が来てるからっていうのがあると思います。色んな子たちが、自分でフィルムのカメラ持ち始めたり、個展を開いたりしている人が増えていると感じます。そういう時代になっているんだと思います。CDって売れないし、自分たちも普通のCDよりは物としての価値があるものの方がやっぱり欲しいなって思ったので。そういう物としての要素をつけるなら、ZINEが一番作りやすかったんです。

-なるほど。それでは特集の質問です。今回のBELONGは“YOUTHWAVE”という特集で、“デジタルネイティブ”がインターネットを通じて、新しい音楽を作り始めているって内容です。実際に邦楽・洋楽の垣根を越えるバンドが続々と現れていると思うのですが、世代的にD.A.N.はデジタルネイティブでしょうか。
川上:小学校くらいからは家にパソコンはあったかと思います。だからデジタルネイティブなのではないでしょうか。
市川:中学1年くらいで親や兄弟のパソコンを使ったりしてましたね。
桜木:幼稚園や小学校1年の時からパソコンをやってたという訳でないですね。

-ネットで色んな音楽にアクセスできると思うんですけど、それはD.A.N.の音楽にも根付いていると思いますか?
市川:Youtubeで知らなかった音楽をすぐに聴けるし、この人のルーツはこういう音楽だってすぐに調べる事もできるし。古い音源から新しい音源まで調べたら一発で聴けるから、昔に比べたら探す労力が格段に違う。だから僕らは、洋楽と邦楽を区別しないで聴く事ができたんだと思います。歴史的な意味では、この時代はこうだからこういう音があるんだなって分かるんですけど、そういう事を考えながらは聴かないですね。ネットのアーカイブのおかげで、60年代から最近の音楽まで、時代や国も関係なく聴けるっていうのがでかいのかもしれないですね。

-だとしたら古い年代のアーティストでも自分たちが知らなければ、新しいなって思いますか?
桜木:温故知新ですね。もちろんあります。
市川:それこそFrancis Bebeyという南アフリカのアーティストがいるんですけど、その人が80年代にテクノみたいな音楽を作ってて。それがめちゃくちゃ新しいなって。新しいというか、僕たちにとってすごく新鮮で。
桜木:最近はCD屋さんでよく新しい音楽を探しているんですけど、高校生の時は、Youtubeで探したりしてて。
川上:僕が思うにYoutubeは情報がありすぎて、何を聴けば良いのか分からなくなる。僕はCD屋さんでおすすめされているのを聴いて、そこから掘るほうが自分が好きなものをピンポイントで当てられると思います。
市川:気に入ったアーティストを検索して、ミックスリストや関連動画を適当に選んで、偶然ハマったりする事もあります。
川上:関連動画って発明はヤバいですよねえ。
桜木:僕らの「Ghana」っていうPVも、最初は関連動画でガーナ人のコメディアンしか出てこなくて(笑)。
川上:でもCD屋さんはセレクトしたものをまとめてくれるから、よく行きます。Youtubeだけってことはないです。
桜木:やっぱりYoutubeは、きっかけでしかなくて。ネットだけで満足してる人がすごく多いなと思うんですけど、僕は実際に生演奏見たりしないと本当の音楽体験はできないと思うんです。

-Youtubeはきっかけでしかなくて、そこからどうするかっていう事ですよね。
桜木:そう知るきっかけというか、ツールだとしか思ってなくて。
川上:音楽で全体的なこと考えれば、何かを見て好きになったらそれに対してお金を払いたいっていう文化みたいなのが、日本にはあまり根付いてないのかなって思いますね。

-その通りだと思います。ネットで聴けたり、見れたりできればタダでいいっていう。
川上:いいものはいいとして、そこからCDを自分のものにしたいとか、ライブに行きたいとか、そういうところに行きつかないことが多いですよね。それが文化として根付いてないんじゃないかと。そこを変えていけるようなきっかけにはなりたいなと思いますね。

-今の“YOUTHWAVE”のシーンの流れは今度どうなっていくと思いますか。
川上:括るのは自由だと思うんですけど、括る意味は僕たちには必要ないなと思っていて。このシーンはたぶん一過性のものだと思うので、この流れに絶対にのっかるんだって気持ちは特にないです。自分たちがやりたいものを突き詰めてやっていくことが一番、重要だと思ってます。
桜木:ほんとにいいものを作ろうってそれしか考えたくない。
市川:この世代の音楽に対する姿勢に何かしら共通するものはあると思いますね。時代性もあると思うんですけど、今まで出来てきたバンドってこうだよっていうイメージを崩そうとしてる感じはあるのかなと思います。

-なるほど。バンドとしての新しい在り方みたいな感じですよね。
桜木:崩そうとしてる訳じゃないのかもしれないですけど、結果的に自由にやったら、みんなちょっと違うことをやり出したというか。ZINEの話もそうですけど、CDだけで売るってそれだけじゃ面白くないよねって、皆思い出したんじゃないかな。
市川:データ化社会っていう時代性があったからこそ、そういう流れが出てきたと思うので。時代がそうなっていったから、おのずとこうなったんだと思います。僕らが何かを変えてくぞとかというより、自然とそうなった感じがするんですよね。変えてかなきゃ、ダメじゃんっていう。

-その通りですね。それではD.A.N.のルーツに当たるアルバム3枚を教えてください。
川上:1枚目はWarpaintの『Warpaint』ってアルバムです。去年の今ごろは死ぬほど聴いてました。自分たちが言うと偉そうですけど、同じ感覚でやってるなっていう部分がたくさんあって。頭の中のイメージがD.A.N.と似てるなぁと思うんですよ。遊び心もたっぷりあるし、一緒にご飯食べたら絶対に仲良くできるんじゃないのっていうくらい好きなバンドです(笑)。

桜木:僕はJuana Molina『segundo』です。僕がギターとシンセサイザーと歌っていうスタイルでやることになったヒントがこのアルバムにあるんですよ。あとはサウンド・スケールが心地良くて。アンサンブルがユニークだし、リズムもファニーなんだけど、何故かおどろおどろしいというか。表現の仕方が自分とフィットした大好きなアルバムです。

市川:The Books『Lost and safe』というアルバムです。聴いたときに衝撃受けたというのもあるんですけど、物音をサンプリングしたり、アンサンブルが面白かったり。物音でリズムを作って声ネタが入ったり、歌も入ってきたり、ギターのコード感もすごい良くて。独特な雰囲気があるっていう。
川上:サンプリングの面白さを教えてくれたよね。
市川:あと空気感ですね。サンプリングだからこそ出る空気感があると思うんですよ。リズムがすごいミニマルで、反復しててアンサンブルが面白いっていう。そういうのは彼らから影響を受けていると思います。

世界各地の良質なインディー・ミュージックを紹介している音楽サイト、beehypeにて本インタビューの英訳したものが公開されています。詳細はこちら

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『EP』

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