最終更新: 2020年12月6日
Never Young Beach
今回の特集“YOUTHWAVE”では、物心のついた頃からインターネットへアクセスできる“デジタルネイティブ”の時代に生まれたアーティストを中心にインタビューを行った。その中でもNever Young Beach(ネバヤン)は“デジタルネイティブ”世代にも関わらず、自ら肩パンして喜び合う“旧世代のバンド”と言っていたのが印象的だ。そんな彼らはどのように音楽を作っているのか、また今回の特集“YOUTHWAVE”の事をどう思うのか?本筋から脱線しながらもメンバー全員に話を聞いた。
アーティスト:安部勇磨(Vo,Gt)、松島皓(Gt)、阿南智史(Gt)、巽啓伍(Ba)、鈴木健人(Dr) インタビュアー:まりりん 撮影:Masahiro Arita
目次
never young beachという名前の由来
-最初は宅録ユニットだったらしいですね。それがどういう風にして、バンドになったのか教えてください。
鈴木:ボーカルの安部くんとギターの松島くんの2人が去年の初めくらいに『HOUSE MUSIC』っていう宅録の名盤を作って。バンドで演奏している「夏がそうさせた」はその時からあったんですよ。去年の夏に2人の宅録で作った曲をライブでやりたいからバンド形態にしようってなった時に、Twitterでギターとドラムとベースいないかなってつぶやい
てて、まず阿南くん(Gt.)が連絡して、僕も共通の友達がいて。たっさん(巽)は「ベースやったことないんだけど大丈夫かな」っていうツイートをしてて。ちょうど1年くらいだよね、みんな出会って。
安部:みんな嫌いだったわ。色黒くて、現地の人みたいだし、顔でかいし、革靴はいてるし。
-そうだったんですか(笑)。それではnever young beachという名前の由来について教えてください。
安部:宅録の時からnever young beachって名前だったんですけど、こんな風になるとは思ってもなくて、そんなにこだわりもなかったからバンド名も変えようとしてて。“ヤシの木フラミンゴ”って名前にしようとしてたんですけど、ダメだって言われて。
鈴木:大バッシングだったよね。
安部:never young beachはかっこいい単語をつなげただけで。“Never ending Story”みたいな感じで、なんでもいいから入れちゃおうって。“ヤシの木フラミンゴ”は阿南がLINEで、ヤシの木とフラミンゴが立ってるスタンプを送ってきて「バンド名これでよくない?」って言ったので、それにしました。
阿南:1回、その名前でライブをしたんですけど、いろんな人に戻した方がいいって言われて戻しました。
独特な歌詞について
-歌詞についてお聞きしたいのですが、“喫茶店”や“フラミンゴ”など、なんとなく昭和っぽい言葉が多く使われていますが、どうして若いのに違和感なくこういう言葉が出てくるのでしょうか。
安部:カフェって言ってもダサいしなって。あまり行かないカフェって嫌だし。しっかりした言葉の方がかっこいいなって思うんですよ。カフェって軽率じゃないですか。ファッショナブル感が僕には強すぎて。僕はそもそもそんなにカフェとか喫茶店に行かないんですけど、もし行くなら喫茶店かなって思って。喫茶店っていう語感の良さが好きなんだと思います。
-前身のバンドでは感情的な歌詞だったとインタビューでは語っていましたね。never young beachは些細な幸せについて歌われている事が多いと思うのですが、どのようなきっかけがあって歌詞のテーマが変わったのでしょうか。
安部:今より不平不満ばっかりだったんですよ。些細な幸せもそんなに気にしていなくて、身近なことだけを歌ってました。でも『YASINOKI HOUSE』を作ってる時はそうしてたんだけど、最近インタビューで些細な幸せについて歌ってますよねって言われ過ぎてそれも嫌になってきたからまた変わるかもしれない。エモかった時は嫌だなぁって毎日思ってたんですけど、今はそう思わなくなってきたんで楽しいなってことだけを歌ったほうが良いなって。嫌だなぁって歌うと嫌だなぁって人がいっぱいついてくると思うので、それが嫌ですっきりしようと思ったんです。もしかしたら次は超暗い歌を書くかもしれない。
-サウンドについてお聞きしたいのですが、現在の編成ではギターが3人いますよね。5人編成でギターが3人って珍しい構成だと思うのですが、どうしてこのような構成で演奏しているのでしょうか。
阿南:たまたギタリストが3人集まったから?
安部:それは違うぞ。俺はちゃんとギターが3人のバンドがやりたかった。
松島:弾けないからな。
安部:弾けねーし(笑)。僕が歌ってるときに歌いながらじゃ弾けない音がやりたくて、ギターは僕以外の2人にしたかったんです。
-ギターをやめてボーカルだけにするということは考えなかったのですか。
安部:僕がピンボーカルだと絵面的にきついんで一応ギターは持ってたいなって。でも僕のギターもないと困るよね。
松島:いやいやいやいや(笑)。
阿南:困る(笑)。
安部:「あまり行かない喫茶店で」とかギターなかったらサビ何しとるねん(笑)。
阿南:ライブではやってないけど、ギターソロ弾いてる曲もあるしね。
-リズム隊としてはギターが3人だと何か違いはありますか?
鈴木:一人多い分、ズレが出やすくなるから、合わせにくいっちゃ合わせにくい。最初はそうでしたけど、今では慣れました。
松島:バンドをやったことなかったからね。
鈴木:そうだよ、初めてのバンドなんだけど(笑)。まぁリズム隊の2人が最初は合ってて、3人ともそれに合わせられるレベルなんで。全員っていうか2人が合うように意識してます。でもギターが多いと楽しいです。色んな音が鳴ってて。
-サウンドを通じて、ボーカルがはっきり聴こえるようにミックスしているのではないかと思います。音作りでこだわっている部分があれば教えてください。
安部:無意識でやってるよね。みんなセンスが良いからある程度ポンってやっても、もともとの前提が高いからいい感じになるんですよ。
巽:インタビュアー泣かせな答えだな(笑)。
安部:そのフレーズちょっと変えてほしいっていう細かいところは言うこともありますけど、おおまかなメロディーは作ってこういうノリがいいって言って。そして2人(安部と松島)が「じゃあこういう感じで」ってセッションみたいにまとまるまでやる、みたいな感じです。
-次号のBELONGは前回特集した“YOUTHWAVE”という内容をもう一度やろうと思います。要は“デジタルネイティブ”がインターネットを通じて、膨大な音楽のクラウドにアクセスし、新しい音楽を作り始めているって内容です。実際に邦楽・洋楽の垣根を越えるバンドが続々と現れていると思うのですが、世代的にnever young beachはデジタルネイティブだと思うのですが、どうでしょうか?
鈴木:俺らは旧世代のバンドだからな(笑)。肩パンして喜んでるっていう(笑)。
松島:言われて初めて思った。今バンドを始めたらみんなそうなっちゃうよね。
鈴木:Youtubeでなんでも見れちゃうってことでしょ。TSUTAYAでCD借りることはなくなったもんな。
阿南:当たり前だから意識したことない。
鈴木:曲を作る時にYoutubeのアドレス貼っちゃってこういうのがいいって。すぐ意思の疎通ができて便利な時代ですね(笑)。
安部:邦楽・洋楽の垣根を越えてるって言いますけど、英語か日本語かの違いだけですよね。もともとそんな垣根なんて俺は超えてると思うんですけどね。最近、ファッション的に英語を使う事が増えただけで、昔から評価されるバンドはちゃんと評価されてるから。
松島:日本はそんなレベルにいないってことだよ。
安部:島国だけで終わって、世界に発信できてないってだけなんですよ。
-なるほど。ネットで聴いた音楽をどのように曲に落とし込んでいるのでしょうか。
安部:こういうノリが良いって思えるバンドや、ギターが3本あるバンドが他にいたらこういうギターの絡み方が良いっていう風に落とし込めるんですけど、僕らは僕らでしかないので、結局は無理なんですよ。要は2人がどう絡むかだけなんですけど、こういうのがいいなっていうのは聴かせます。あとはやりたいようにやってくれって感じですね。
鈴木:海外って音が日本と違うなって思うよね。ライブの音とか。ドラムも日本だと尖った音になっちゃうけど、海外だと丸くて、でも抜けるみたいな感じがして。そっちのほうがいい。
安部:日本って括るの好きですよね。ガラパゴス的というか、日本だけで変に発展し続けてる音があって。だから海外の音がどうとか言われますけど、そんなこと言わずに勝手にやれよって思います。(never young beachは)昔っぽいって言われるけど、ナウいと思うんだけどなぁ。みんながメンヘラな歌ばっかり歌ってるから、俺らが昭和っぽいってことばっかり言われる気がするんですよ。
松島:昭和っぽい感じを狙ってやってる訳じゃないのにね。
安部:やりたくてやってるよね。なんかインタビューってどれも同じような流れですよね。どう結成したか、どう集まったか、曲はどう作ってるかとか。僕らは幸せな歌詞を書いてるけど、乳首を舐めあってるし、肩パンするし。イメージは良いと思うんですけど、そういうところばっかりフューチャーされて、どんどん僕らが好青年みたいなイメージになって、乳首を舐めてると怒られるの嫌だよね。(笑)
鈴木:バンド内で流行ってる肩をパンチしてお互いを高め合うっていう遊びがあって、1回安部くんにパンチ受けたところがこうなりました。字で表すなら「壊死」(笑)。
-(笑)。例えばどんな質問をされてみたいですか。
安部:「何をやって遊んでるんですか?」って気にならない?
松島:俺らはそうだけどさ、読む側からしたらどうなんだろうね。
安部:他にも機材はどこで買ってるんですかとか、そういうのを聞かれたい。
-ちなみに機材はどこで買っていますか?
安部:僕は中野坂上にあるF-Sugar(エフ・シュガー)ってところで配線をいじるんですよ。そのおっちゃんが死んだら終わりってとこがあって、配線はすぐヴィンテージのものにしてくれる頑固おやじで。あとミリメーターズ ミュージックって町田の駅からすぐのところにペトロールズの長岡さんやアジカンの後藤さんとか、色んな人が行ってる楽器屋があって。そういう人が行くだけあって本当に楽器を愛しているお店で。僕もギターのエフェクターのアンプを3時間くらいかけて探してくれて。宇宙みたいな音が出したいっていう無茶なこと言っても、色んなの出してくれて「これもいいんだよ」っていうおっちゃんがいるところで買ってます。あとはハードオフ。
鈴木:ドラムはなかなかそういう店が無いのが悩みで、絶対に量販店になっちゃう。秋葉原にあるドラム屋さんの品揃えはいいんですけど。
安部:品揃えとかじゃねぇよな。
鈴木:でしょ?ドラムはそういうところがないの。スピリットのあるところが。最近スネアが壊れちゃいまして、いいドラム屋さんあったら紹介してほしいですね。
松島:阿南はあれでしょ、Amazon。
阿南:今使ってるリッケンバッカーはeBayで買って。
安部:ヒュー!帰国子女!なんかあのギターってアメリカの匂いがするんだよな。
阿南:高校の時からバンドをやってた訳じゃないから、いい機材とか知らないんですよ。
安部:こいつこの前、8万円の折りたためるギター買おうとしてて、すげー止めたんですけど「音がいいんだよ」って言って。買おうとしてローンを組めなくて買えなかったんですよ。(笑)
阿南:ネックの15フレットくらいから二つ折りできて、弦はふにゃってなるんですよ。別に折りたためることについては面白いとしか思ってなかったけど、見た目の色や形と音が気に入ってて。でも買えなかったんだけど。
鈴木:たっさんは?
巽:僕はヤフオクで。あ、でも僕もayUtokiOの人に配線直してもらってて。
鈴木:ドラムは配線なんてねーわ。でも踊ってばかりの国の謙介(佐藤謙介)さんはチューニングの鬼だったんで、もっと話聞きたいですね。
リリース
Roman Label / BAYON PRODUCTION (2015-05-13)
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収録曲:
1.どうでもいいけど
2.ちょっと待ってよ
3.あまり行かない喫茶店で
4.散歩日和に布団がぱたぱたと
5.無線機
6.夏がそうさせた
7.どんな感じ?
8.駅で待つ
9.chill morning
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プロフィール
安部勇磨(Vo./Gt.)、阿南智史(Gt.)、巽 啓伍(Ba.)、鈴木健人(Dr.) ※松島皓(Gt.)は2018年7月に脱退。
土着的な日本の歌のDNAをしっかりと残しながら、USインディなど洋楽に影響を受けたサウンドと極上のポップなメロディ、そして地に足をつけて等身大の歌詞をうたった楽曲で、音楽シーンに一石を投じる存在として、注目を集めるバンド。2014年春に結成。2015年に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、様々なフェスやライブイベントに参加。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。2018年に10inchアナログシングル「うつらない/歩いてみたら」をリリース。そして2019年に、4thアルバム「STORY」を発表し、初のホールツアーを開催。また近年は中国、台湾、韓国、タイでもライブ出演。
ルーツにまつわるインタビューはこちら
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