最終更新: 2016年4月23日
24HOUR CONTROLの楽曲はシンプルなのに複雑な魅力を持っている。先進的な洋楽のドリ-ミ-・サイケデリックな楽曲と、歌謡曲やフォ-クを彷彿させる日本文学的な詞で成り立ち、外国的と日本的、新しさと懐かしさ、いろんな魅力がクロスオ-バ-している。そしてライブでは攻撃的な音でその魅力にとどめを刺す。
24HOUR CONTROLが活動を開始した2014年ごろに自分のイベントに出てもらった。演奏後に何人もの観客が賞賛を伝えに来た。決して派手なパフォ-マンスではないが、彼らの音には初めて聴く人の心を掴む素質があるのだろう。昨年4月にリリ-スした初音源『PIKE.e.p』は、京都JETSETで初回分が数日で完売。大阪のロ-カルバンドがJapanese Popランクでトップ10入りをした。インディ・バンド群雄割拠の関西で、また新たなシ-ンのきっかけになろうとしている、注目の逸材だ。そして、この4月にリリ-スされるミニアルバム『COKE AVENUE』ではさらなるバンドの成長が現れている。前作で引っかかった人はもちろん、新しく24HOUR CONTROLを知る人にも深く刺さる作品になるだろう。この作品に至った音楽性、バンドの成長について、話を聞いた。
ア-ティスト:山内大地(Vo./Gt.)、中川 博之 a.k.a”ブル-ス”(Gt.)、山岡 錬(Ba.)、西 祥吾(Dr.) インタビュア-・撮影:TJ
-RIDEの来日は行きました?
山岡:ボクだけ見に行ったんですけど、それほどの感動は無かったです。それよりは前にみんなで行ったD’Angeloのほうが最高やったんですよ!
-4人全員で行ったんですか?UKロックがル-ツにあると思っていたんで意外ですね。
山岡:ちょうどボクがブラックミュ-ジックにはまるきっかけがあって、元々古いブラックミュ-ジックが好きなブル-スさん(中川 博之/Gt.)にD’Angeloを薦めたら気に入ってくれれて、その会話を聴いててみんな共通で好きになったっていうか。
大地:ブル-スは古い音楽ばっか好きやんな(ブル-スさんはこの時点は遅刻中)。
山岡:ブル-スって名前だけあって、60年代に生まれたら良かったなぁって話してたんです。あ、こんな話で大丈夫ですか?
-(笑)。それでは新譜の話に移ります。前作より聴き応えのある作品になっていると思うんですが、今作はどうして6曲収録のミニアルバムという形式でリリ-スしたのでしょうか。また全部新曲ですか?
大地:全部、前作『PIKE.ep.』の後に作った曲です。最初の曲「DECOYRUN」と最後の曲「NATSUKAZE」を先に録って、その後で間の曲を作りました。
-作曲の段階から作品全体を意識してたのが作品としての完成度に繋がってるんですね。
山岡:「long long long」はDemo音源が“クリスマスプレゼント”って送られてきて(笑)。
-とんだクリスマスプレゼントですね(笑)。どの曲もル-プ使いが特徴的だと思いました。王道のギタ-ロックみたいに目立ったサビに頼ってないのは前作と一緒ですが、サイケとはまた違う作用で、ヒップホップ、R&Bみたいにグル-ヴで昂揚感を煽るような効果を狙ったのでしょうか。
大地:ル-プが多いって所は意図的にやったけど、そこへ乗せてる歌は普通のメロディ。他のバンドはなかなかやっていないような事をやっていると思います。
山岡:展開はあんまりなくて同じことをやって上がってく感じ。らせん階段的に高揚してく感じはブラックミュ-ジックの影響かもしれないですね
-音色の表現がカラフルで、アルバム的に設計しようとする意図を感じました。特に歪んだ音の4曲目「SUPER RUSH」からトレモロ処理の5曲目「long long long」の流れがハイからChillへ振れる様が感覚的に分かりやすいなと。ミックスの段階で意識して音を大きくいじってるんですか?
大地:音をいじらないと分からないですね。いろいろ変えてみてどうすべきか見えてくるんです。ライブは生で演奏する良さがあって、音源となるとまた違った演出にしたくって。ライブとは違った音も入れてます。
-もう一つの重要なのは歌詞ですが、メルヘン的であったり、現実的だったり。独特な言葉遣いですよね。でもギリギリなところでちゃんとスジがある。登場人物に関しては主語をあえて無くしてて、いろんな関係性が解釈できると思います。実際にはどんなことを歌ってるんですか?
大地:(主語をはっきりさせないのは)限定させたくないってところがあるし、聴いてる人からは何を言ってるか分からへん所があるかもれないけど。
-キ-ワ-ドを意味なく羅列してるだけじゃないから、ちゃんと情景は浮かんできて、ガッチリ耳に残ると思いますよ。
大地:うん。まぁ、全部セックスの歌ですけどね(キッパリ)。
-マジか(笑)。24HOUR CONTROLの歌詞は大滝詠一的なカラっとしたポップさというより、もっと泥臭いというか、哀愁がある。フォ-クとか歌謡ロックに近いと思います。
大地:あ-・・・、そうなんや。
山岡:はっぴぃえんどで言ったら細野晴臣側ってことですかね。
(ここでブル-スさんがレコ-ドを小脇に抱えて到着)
-せっかくブルースさんも登場しましたし、レコ-ドを持ってきてもらってるんで、ル-ツになったレコ-ドの紹介をお願いします。ブル-スさんはJIMI HENDRIX『ELECTRIC LADY LAND』ですね。今作にどのように影響が?
ブル-ス:このアルバムがというか、ジミヘンは永遠に好き。レコードの面面よりもこっちがいい(レコ-ドの裏面を指さす)。
-具体的にどんなところが好き?
ブル-ス:ギタ-ばっかり注目されて、曲は2の次にされてるところあるけど、実はギタ-以外のところがすごい。本当は曲があってのギタ-なんで。ライブは即興でやるけど、スタジオはまた別で。短い曲もあるし、流れもちゃんと考えてる。こことか(後半3曲を指して)宇宙的だし。
-なるほど。他のアルバムはどうですか?
山岡:ボクはこれです(Tame Impala『InnerSpeaker』のレコ-ドを出す)。
大地:これな(Tame Impala『InnnerSpeaker』のCDを前に出す)。
山岡:えぇ?おんなじ?言ってくれよっ!
-随分と気が合うようで(笑)。Tame Impalaの魅力は?
山岡:とにかくイカレてる。
大地:トリップしてるみたいな感覚が好き。1曲の中での展開で、緩急がうまいこと作用する曲が多い。
https://www.youtube.com/watch?v=5MuOgjXSia8
-24HOUR CONTROLの今回の音楽性にも共通点ありますね。
大地:あ、そうだ!これ言うとかな。前作を作った時に、どこに持って言ってもUK、UKって言われ過ぎて。そんなこともないねんけどなって思ってたんですよ。
-実はボクもさっき(RIDEのくだり)まで思ってました(笑)。
大地:ホンマにどこに持ってっても言われた。スト-ン・ロ-ゼスを狙ったのをちょっとだけ入れたんやけど、そこまで言うかと。それだけじゃないのにというのがあって、前のレコ-ディングが終わってからはイギリスの音楽を聴いてない。
山岡:その間はArabama Shakesをよく聴いてましたね。
大地:それとかMac Demarcoを聴き出したり。モ-ドをガラっと変えた。今作を聴いた人にUKって言葉を使わせたくなかった。
-確かに全体的にはUKから遠いですけど、フックになる部分だけが意図せずに目立ったかもしれないですね。似たような境遇で、オ-ストラリアのDMA’sが“オアシスってすごい言われるけど自分はそこまで聴き込んでないし、影響されてない”って世間の評判に困惑してるんですが、たぶんストレ-トで強い音のギタ-ロックのバンドがあまりいない割に求めてる人が多い結果としてそう言われるんじゃないかと。今作でいうと「SUPER RUSH」も“オアシスみたい”って勘違いされる節がある。
大地:結果的にそれっぽくなってますけど、もともとはDEERHUNTERの『monomania』のような粗くてザラっとした音を意識したんですよ
-なるほど、確かに言われたらそっちの音ですよ。それでは今後のバンドの予定はどうでしょうか。
山岡:アルバムを4月29日に発売します。そして京都nanoでレコ発。
-前に「nanoでレコ発やれ!」ってnanoの店長のモグラさんがラブコ-ルを送ってましたね。
大地:nanoには恩を返したいなと。京都から活動を始めたってのが大きくて。大阪とはシステムも違ってて、迎えてくれるっていうか。本当はそこに甘えてはいけないかもしれないですけど。
山岡:ちゃんと見てくれる人がおるってわかったのが京都でしたからね。自分らにとっては特別な場所です。あと近況で言えば、イベントに呼んでもらえるようになりました。Your Romanceが共演するイベントやKETTLESのレコ発だとか。
-イベントだと人が多いところで演奏する機会が出てくると思いますが。ブル-スさん、観客は多いほうがいいですか?
ブル-ス:気にしない。執着がない。
-西さんは?
西:ボクは後方ですしね。逆にいないほうがめちゃめちゃできていいかもしれない。
大地:全然おらん時の前はホンマに地獄やで(笑)。
西:でも多いほうが前の3人が楽しそうやなってのが分かって、自分も楽しいかな。
山岡:テンション上がってるのが後ろからバレてるんやね(笑)。
『COKE AVENUE』
2016年4月29日 発売
【Live】
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