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Apple Musicの“今、最も注目すべき新人アーティスト”に選出され、先日開催されたAmazon Fashion Week TOKYOにてBED J.W. FORDのランウェイショーの音楽も担当するなど、話題に事欠く事のないyahyelがデビューアルバム『Flesh and Blood』を11月23日にリリースする。“血と肉”という生々しい言葉をアルバム名した意味、ボーカルにエフェクトをかける事、宇多田ヒカルとの共通点という3つのテーマを基に彼らの表現の本質に迫った。また彼らの音楽はなぜ時代と共振するのか?yahyel(ヤイエル)の同時代性を解き明かすであろう、ボーカルエフェクトがキーとなった10曲をプレイリストも掲載。

アーティスト:池貝(Vo.)、篠田(sample/cho)、杉本(synth/cho)、大井(Dr.) インタビュアー:yabori

-アルバムタイトル『Flesh and Blood』に込められた意味について教えてください。
池貝:タイトルを直訳すると“血と肉”って意味なんですけど、もともとはこのアルバムの最後の曲である「Why」に入っていたフレーズで。僕が海外で生活していた時に、「人って時間によって自分が変わっていく事に無関心だよね」って話をしていて。その時に友人が「僕らは結局“血と肉”でできた人間なんだからしょうがない」って言っていて。“血と肉”だからしょうがないって表現はもの悲しいと思うんですけど、僕らがそういうものだからこそ起きる現象だと思って。“血と肉”だからこそ僕らが日常生活で生々しい事を考えたり、起こしたりしている事をアルバムを通してストーリーとして伝えていきたいと思ってこのタイトルにしました。僕らが忙しさの中で無意識のうちに流している軋轢や不自然さを一つの事実として提示するのが、このアルバムの本質だと思います。

-ジャケットは血管のデザインになっていますが、これにはどういった意図があるのでしょうか。
池貝:このジャケットは僕らの体の中って実は生々しいって事を提示していて。このアートワークは僕の友人でスペイン出身のマティアス君っていう人にやってもらっているんですよ。スウェーデンにいた時に仲良くなったんですけど、僕が表現したい事にすごく敏感で。彼とはこういう話をたくさんしていたので、国を超えて僕らの世代で感じる事について深い部分で繋がっている人とコラボレーションする事ができたのは僕らにとって嬉しい事でした。

-それでは今作の制作前にドラマーの大井一彌さんが加入されたと思うのですが、どのようにして出会ったのでしょうか。
大井:僕は杉本がやっているDATSのメンバーでもあるんで元々面識はあって。一プレイヤーとして、彼らが作り込んだトラックを手作業でトレースする事が僕の役目だと思っていて。
篠田:彼は正確無比なドラマーですし、機械でできる事以上の表現を出してくれるので、大井くんと一緒にやりたいと思って。

Vol.17はyahyelが表紙で結成のいきさつやトラックメイクへのこだわり、ニューエイジ・サイバーパンク・カルチャーを語る。詳細はこちら

-なるほど。大井さんが加入されて既存の曲も再度レコーディングされたのでしょうか。
篠田:再度レコーディングした訳ではなくて、今作はいくつかの曲をミックスし直したんですよ。
杉本:例えば「The Flare」だとフロアタムの部分は打ち込みだったんですけど、せっかく一彌(大井一彌)も入った事だし、叩いてもらおうって事でそこだけはドラムを叩いてもらって録り直しましたね。今回のアルバムで取り直した部分はそこだけです。
池貝:「The Flare」はハウスとしてのグルーヴをミックスで出したくて。マスタリングはジェイムス・ブレイクやFKAツイッグスなどを手がけているマット・コルトンにやってもらったので、音としてのクオリティが上がったと思います。

-どうしてマット・コルトンにマスタリングをお願いしようと思ったのでしょうか。
杉本:きっかけは僕らが所属するレーベルのBeat Recordsがマットとコネクションがあったからなんですけど、彼が手掛けてきた作品を見ていると僕らの表現や出したい音を分かってくれるだろうと思ってお願いしました。

-実際にマスタリングをやってもらっていかがでしたか?
篠田:ちゃんと素材を生かしてくれているし、聴こえるべき所は聴こえてブラッシュアップされたなって思いました。素晴らしいとしか言いようがないですね。

-前回まではご自身でマスタリングまでしていたのでしょうか。
池貝:前回はメンバーの杉本や僕らのエンジニアとしてやってもらっているクシ・マツヤマにマスタリングもお願いしていて。
篠田:今回のアルバムもミックスまでは彼と一緒にやっていて。そこまではみんなでスタジオに入って納得がいくまで何時間もミックスしていて。今回はできたものをマットにお願いするっていうやり方で作りましたね。

-なるほど。それではどうしてyahyelの楽曲はボーカルにエフェクトをかけているのでしょうか。
池貝:ボーカルがメインになるよりも曲として完成したものでありたいという事と、僕らが音楽を始めた時にオンタイムで流れていた曲がボン・イヴェールやジェイムス・ブレイクなど、ボーカルにエフェクトをかけているものがいくつかあって。僕らもそのコンテクストを踏みたいというのもありましたね。また、表現したい“匿名性”という意味で人らしさという所から一線を置いた音作りをしたくて、ボーカルにエフェクトをかけるようにしました。
杉本:最初に僕と池貝が会った時に、この声はエフェクトをこんな感じでかけたらかっこいいだろうなっていうイメージが沸いてきて。ボーカルの揺れをストレッチして機械っぽく伸ばすっていう試みをしていったら、ボーカル自体が一つの楽器というか気持ちいいシンセの音みたいな感じになってきて。
池貝:それと歌詞で表現したい事の兼ね合いもあって、様々なバランス感覚の中でできあがっていきましたね。

-ボーカルのエフェクトだけでなく、それぞれの楽曲にもエフェクトをかけた声がいくつかちりばめられていると思うのですが、あれは誰の声なのでしょうか。
池貝:どれも僕の声ですね。曲の表現としてデモを作った段階から入れていて。自分で声を録って、自分で加工しているものもあります。僕がこういうやり方を好んで使うのは自分自身のジェンダー性やパーソナリティーが消えて、一つの曲の中に色んな人がいるように感じさせられる撹乱作用が面白いと思うんです。
杉本:女性の声を1オクターブ下げたら、男性の声に聴こえるんですよ。逆に男性の声を1オクターブ上げると、女性の声に聴こえるっていう。だから僕らの表現にマッチしていると思いますね。トラックメイクという観点で言うとシンプルな構成だけど、声ネタがちりばめられている事によって聴いていて飽きないんですよね。池貝の声も世界に一つしかない楽器じゃないですか。だからボーカルで自分達にしか出させない音を作るっていうのは、僕らの強みだと思います。
篠田:今みたいな質問が投げかけてくれること自体が良い効果だと思うんですよね。加工しても声は声だと分かると思うんですけど、どうしても人って声色というか声の表情を読み取ろうとするものだと思うんですよ。「Midnight Run」は曲としてシンプルな構成だけど、声のループがある事によって面白いものになるっていう。

-「Alone」にもサンプリングされた音が入っていますが、これはどうして入れたのでしょうか。
篠田:フリーサンプルの音源を使っているんでサンプルの出自は分からないんですけど、レジの音っぽくも聴こえるし、リモコンのスイッチっぽくも聴こえるねってメンバーで話していて。「Alone」は曲の冒頭と末尾にサンプルの音が入って、ドリーミーな雰囲気で現実から離れていくみたいな感じで始まって、最後はエモーショナルな展開で終わるんですけど、世界の入り口の出口を示すマーカーとしてサンプルの音が機能しているんじゃないかと思いますね。
杉本:生活音からいきなり無機質なトラックに入るっていうダイナミズムを表現したくて、こういう音を入たんですよ。

-今回のアルバムにコンセプトがあれば教えてください。
池貝:このアルバムは曲の流れに重きを置いている訳ではなくて、1曲1曲のクオリティを追求していて。それぞれの曲に表現したい事があるので、それを感じ取って欲しいですね。
篠田:曲を適材適所に置いて音を中心に流れを作りました。

-前回のインタビュー(本誌Vol.17に掲載)では、自分たちは“アウトサイダーだ”と語っていたのがとても印象的でした。最近、宇多田ヒカルが新作『Fantôme』をリリースして、そのインタビューでは同じようにアウトサイダーだと語っていました。それは両者に繋がるテーマだと思うのですが、皆さんは彼女の表現するテーマに共感する部分はありますか?
池貝:最近はボン・イヴェールの新作『22, A Million』を聴きまくっていたんで『Fantôme』はまだしっかり聴けてないんですけど、僕は宇多田ヒカルがずっと好きで。ストーリーテリングというか情景をイメージさせる力があると思っていて。トム・ウェイツにも通じると思うんですけど、常に対象と距離を置いた第三者的な目線があるっていう。そういう視座って一人でものを見る事に慣れている人しか成しえない事だと思います。曲作りとしても偉大な先駆者だと思いますし、宇多田ヒカルとしか言いようのないメロディーっていうのがあると思います。今回のアルバムの1曲目「Kill Me」のメロディーや歌詞は宇多田ヒカルっぽさみたいなものがあるかもしれませんね。

-なるほど。それでは先ほど名前が出てきましたが、ボン・イヴェールの新作はどういう部分が魅力的でしたか?
篠田:僕らにも通じると思うんですが、曲の加工や音の配置が本当に面白くて。例えばわざとノイズを入れている部分があったり。それとミックスとマスタリングもすごくて本当にどうやっているのか分からないくらいで。
池貝:ボン・イヴェールらしさがありつつ、今までにコラボしてきたアーティストからの影響も感じられるし、彼が音楽家として色んな所に手を伸ばしてきたものが更にアップグレードされていると感じて。本当にバイタリティのある人だと思いますね。

-それでは今後の活動について教えてください。
篠田:今後は他のアーティストとのコラボレーションワークをやっていきたいと思っています。

-そうなんですか!コラボしたいアーティストはいますか?
池貝:自分たちの好きな人に全て声をかけて、一緒に何かできたらと思います。僕らがヨーロッパツアーをした時、自分たちがやりたい事を自分たち発信でやっていった部分が大きいので、ここに関しても妥協したくないと思っています。

-コラボと言えば以前、7インチ『Fool+Midnight run』を出した際に楽曲のパラデータ(各楽器ごとのオーディオファイル)をダウンロードできるコードを付けていましたよね。
杉本:そうですね。それでLicaxxxっていうDJや荘子itっていうトラックメーカーが僕らの楽曲をリミックスしてくれて、どれも僕らの楽曲とはまた違う面白いものになりましたね。そういう事がもっと色んな所で頻繁に起こったら良いのにと思って。海外だとThe xxが新曲をリリースした瞬間に、色んな人がリミックスし出すんですよ。彼らの音楽は音数が少ないからリミックスし甲斐があると思うんですけど、リミックスする事でDJやトラックメーカーが有名になっていくっていう循環が海外にはあって。日本でもそういう事がもっと起これば良いのにって思いますね。
篠田:僕らもそういう事を国内・国外問わずにやっていけたらと思っています。

-それでは最後にこのアルバムをどういった人に聴いて欲しいと思いますか?
池貝:どういう人って言うのはなくて、全員に聴いて欲しいですね。僕らの音楽は特定の人に向けて作っている訳ではなくて。僕らの表現すべきことを表現してどういう影響を与えていくんだろうって事を考えているので、全ての人に伝わっていけば良いと思うし、それで何か感じたり、考えたりするきっかけになれば良いなと思います。

【Release】

『Flesh and Blood』
2016.11.23 Release


yahyelがインタビューで挙げていたように現行のポップミュージックシーンには、ボーカルにエフェクトをかけている曲が少なからずある。今回は彼らがインタビュー時に取り上げていたアーティストを含むボーカルエフェクトをかけた10曲のプレイリストを作った。この10曲を通じて彼らのデビューアルバム『Flesh and Blood』がいかにシーンと密接に結びついているか楽しんでもいらいたい。(11月23日追加)


yahyelのアルバムリリースパーティーでBELONGから物販決定!yahyel表紙のVol.16だけでなく、デビュー前の貴重なインタビューを掲載したVol.13の販売もあり。詳しくはこちら

【Live】
– FLESH AND BLOOD LIVE –
[1st ALBUM RELEASE PARTY]
12月16日 (金)@渋谷 WWW
OPEN 19:00 / START 19:30
前売¥3,500 (1ドリンク代別途)

INFO: BEATINK 03-5768-1277 / WWW.BEATINK.COM

チケット詳細:
一般発売:11/12~
●BEATKART [shop.beatink.com]
●イープラス [http://eplus.jp]
●チケットぴあ (Pコード:313-943) 0570-02-9999 [http://t.pia.jp]
●ローソンチケット (Lコード:74615) 0570-084-003 [http://l-tike.com]
●clubberia [http://www.clubberia.com/ja/events/tickets/]

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