最終更新: 2019年1月1日

写真中央は画家の黒田征太郎氏

若者も若い心を忘れないそこのあなたも、これさえ聴けばもう安心!一途で真っ直ぐ過ぎる愛はズボーンの1stフルアルバム『どれじんてえぜ』の魅力をメンバー全員が語る!
アーティスト:儀間建太(Vo./Gt.)、 金城昌秀(Gt./Vo.)、白井達也(Ba.)、富永遼右(Dr.) インタビュアー:桃井かおる子
-今作の『どれじんてえぜ』は黒田征太郎さんがジャケットを手掛けたそうだけど、黒田さんにお願いしたのはどうして?
金城昌秀:黒田さんはアメ村にKAKIBAっていうアトリエ兼作業場を持ってたんですよ。自分たちもずっとアメ村で活動していたんですけど、知らなくて。最初に黒田さんの絵を知ったのはFM802のオフィスの壁に絵を描いているんですけど、それがかっこええなぁって言ってて。あの絵って誰が描いたんですか?ってDJの方に聞いたら、黒田征太郎さんって教えてくれて。
儀間建太:アメ村のマクドナルド前の壁に大きな絵を描いてあるんですけど、それも黒田さんが描いたものなんですよ。あの絵は誰が描いたんやろうって言っていたものもここで繋がってきて。黒田さんはライブペインティングをいち早くやっている方でもあって、今でも各地のライブハウスでやっているっていう。こないだは元BLANKEY JET CITYの中村達也さんと一緒にやってましたね。
金城:DJの方に黒田さんの事を教えてもらってから、僕と儀間くんで黒田さんのアトリエに行ったんですけど、その時はいらっしゃらなくて。そこから儀間くんが1年くらいかけてたまに顔を出すようになって。

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儀間:KAKIBAの存在を知ってから、アメ村で待ち合わせする時に1時間くらい空いたら、そこに絵を見に行くようになったんですよ。5回目に行った時、征太郎さんに偶然会って。そこで『MAGMAそれは太陽のデジャヴ』のCDを持っていたんで、自分たちはこういうバンドなんで聴いてくださいって渡したら、すかさず無言で絵を描き始めて。あれ?作業し始めたし、帰れって事なんかな・・・って思ってたら、自分らの為に一枚絵を描いてくれてて。「俺にできるお返しはこれしかないから」って黒田さんが言ってくれて。描いてくれたものは“ART”って描いているんですけど、“A”が逆さまになって土に刺さっていて、横にシーソーが描いてあって子供が遊んでるっていう絵だったんですよ。そこからお話させてもらったんですけど、とても魅力的な人でしたね。今回のアルバムを出すってなった時に、金城くんとジャケットについて話していたら、征太郎さんに描いてくれたら最高やなって話になって。そこで今作のレコーディングの期間中にKAKIBAに行ったら、たまたま征太郎さんがいらっしゃったんで、自分たちのジャケットを描いてくださいってお願いしたら即答で「いいよ」って言ってくれて。征太郎さんからライブしている音を聞いて、ライブペインティングで描こうかって提案してくれたんで、アメ村のBIGSTEPでイベントをやる事になったんですよ。
白井達也:ジャケットを描いてくれるって話が決まってから、ライブまでが3週間くらいの話だったんで、あっという間でしたね。
金城:征太郎さんがすごいのは無邪気な子供と喋っているような瞬間があったり、研ぎ澄まされたオーラを感じる瞬間があったりして不思議な方なんですよね。年齢は70歳を超えてますけど。
儀間:たまにすごく鋭い眼をするんで、ドキッとする瞬間がありますね。4人で挨拶しに行った時に俺は100枚ライブペインティングで描くよって言ってくださって。その中の1枚は君たちが選んでジャケットにすればいい、他の絵は切り刻んで君たちのリリースするCDに封入するといいよとまで言ってくれて。最終的に50枚程度描いてくれましたね。
-黒田さんの提案で絵がCDの購入特典になったんだね!ちなみに黒田さんはズボーンのアルバムを聴いた上で描いてくれたんですか?
金城:最初に征太郎さんは自分たちの音源を聴かないまま、ライブペインティングで描くと言ってくれましたね。ライブの前日に新作のデモを聴いてはくれていたんですけど、それよりもライブを聴いて閃いたものをその場で描くというのを大事にしていて。今回はアルバムジャケットにQRコードが付いているんですけど、それを読み込んだらそのライブの模様を見れるようになっていて。買わなくても店頭でQRコードを読み込んでくれさえすれば、見れるようになっていますね。
-買わなくてもQRコードを読み込んだら特典映像が見れるんだ。いざ黒田さんにジャケットを描いてもらった訳だけど、この絵にはどのような意味があると思う?
白井:単純に心に突き刺さるものかなと思ってました。
金城:自分がこの絵を選んだんですけど、他の絵も鳥をたくさん描いてくれていたんですよ。自分の認識では征太郎さんにとって音楽は鳥なんかなと思ってて。FM802に飾ってある絵も5線譜が鳥になっているものを描いてはったし。これ以外の絵は鳥が羽ばたいていたり、鳥の表情が穏やかだったりするんですけど、僕らの状況を考えた時にそういうのはまだ似合わないなと思ったんですよ。それとこの鳥だけ目が赤くてうつむいていて、はっきりと足が描いていたから、ジャケットはこれが良いなと思いました。この絵を描いてくれた時は、僕らが表題曲の「どれじんてえぜ」を演奏している時だったみたいで。目が赤くて黒目しかないから、どういう表情にでも取れるっていうのが今回のアルバムをよく表していると思います。
儀間:この鳥だけ寂しい感じがするのが良いですよね。1人の帰り道なんかなっていう。好きな人と初デートした帰り道のホームで「ほな、また遊ぼうな」っていう帰り道の顔みたいに見えるねんな。「今日、手つないだやん」みたいな喜びを噛みしめてるような顔にも見える(笑)。
一同:(笑)。
富永遼右:この絵がアルバムジャケットになった時に、すごくパワーがあるなと感じましたね。グッと来るものがあるというか。

-今回のアルバムは一つ一つの曲の個性がはっきりしていて、しっちゃかめっちゃかなりにまとまっている所はズボーンらしいと思うんだけど、今回のアルバムにはどんなコンセプトやテーマがあるの?
金城:どの曲もギミックが効いていて曲調はバラバラですけど、愛はズボーンがやったらどれも愛はズボーンの曲になっていて、12曲を通して流れで聴けるように考えて作りましたね。今回は特に音の幅を工夫していて、左右に限界まで入れているものがあったり、頭のイントロで音がしぼんでAメロに入ったら、音が全面に出てくるものがあったりするんですよね。特に「adult swim」では電子音がメインになって、リバーヴも宇宙で鳴っているような音の広がりが出るようにしておいて、「27」では今までで一番狭いようにしていてっていう。これはゆらゆら帝国の「3×3×3」でやっていたような「ユラユラウゴク」から「ドックンドール」に行く時の気持ち良さを出したくて。宇宙空間で歌っているような感覚から、4畳くらいの地下室で演奏しているような感覚を出したくて。

-音響的にもそういう工夫があったんだ。曲順も凝ってるよね。儀間くんが弾き語りしている「もねの絵のよう」が曲順で言うと真ん中にくるっていうのが面白いなと思って。
金城:曲順もめっちゃ考えましたよ。アナログ盤の曲順を意識していて、A面は金城押しなんですけど、そのエンディングが「もねの絵のよう」だったら面白いかなと思って。
-なるほど。アナログを意識したと。
金城:内容的にも征太郎さんの絵も含めて、この作品があったからこそ、自分たちはここまで来れたっていうような作品になったらと思っていて。単純にこのジャケットはアナログにしたいですね。話は戻るんですけど、「空飛ぶピンクのユニコーン」は開始20秒以内に音の幅が4回変わるんですよ。
儀間:この曲はミックスも歌詞を書くのもめちゃめちゃ時間かかりましたね。歌詞はラブソングを書いたつもりなんですけど、好きな女性の鼻歌で舞い上がっちゃって、主人公が魔法にかかったようになって。いつもと違った景色が見えるようになってくるんですよ。そしたらいつの間にか自分がユニコーンになってるやんっていう。この曲はタイトルが先にあって、自分の頭の中で絵本をイメージして作りました。
-儀間くんは絵本はよく読むの?
儀間:今まで絵本にハマっていた時期があったんで、これからは絵本を描こうと思っています。主人公は割れたグラスで(笑)。
-今作では金城くんと儀間くんの掛け合いが今まで以上に進化しているのも聴きどころだと思うんだけど、そこの手応えは感じてる?
金城:「ちゅうぶらりん」ですよね。あの曲はめっちゃ自信あるんですよ。
-天の声みたいな“大丈夫 みんなそんなもん”っていうくだりが(笑)。
金城:あれは儀間くんが勝手にやったんですよ(笑)。
儀間:3テイクくらい録って、一番人間っぽい声を収録したんですよ。
金城:この曲が一番いろんな要素を詰め込んでいますね。最初はみんなで歌えるフレーズで始めてラップがあって、Aメロで二人の掛け合いがあるっていう。これは聴く人の事をかなり考えて書いたんですけど、学生でもサラリーマンでも共感できる内容だと思うし。最後の最後まで一人称を男にしたくなかったんですけど、結局そこは譲ったんですけど、誰にでも訪れる経験を書いていて。儀間くんと僕が会話してて、Bメロに入ったら実は知らない街の神社で猫と会話をしている事になっているんですよね。実はこれって儀間くんの天の声は猫っていう事後報告になっているんですよ。でもここの会話は猫と喋ってたっていう風に聴いてもいいし、僕と儀間くんの会話っていう風に聴いてもいいっていう。
白井:建太(儀間)の正体が猫だったら面白いけどな。
金城:そのつもりで作ったで。神社で猫と喋ってて、おみくじ引いて大吉やって、その後神様ちょっとだけあっち見ててってくだりになるから。
儀間:猫を憑依させて録音したんですよ。
白井:あれ猫のイメージやったんや(笑)。
儀間:ぼてっとした毛の長いおじいちゃん猫っていう設定やで。
-今回のアルバムは聴く人によって捉え方が違うように狙って作ったの?
金城:前から歌詞は一人称を自分にしないように気を付けて作っていたんですけど、「27」はあえて一人称を自分にして、それを聴く人に置き換えて聴いてもらっても面白いんじゃないかと思ったんで、そういう作り方にしました。
-確かに金城くんの趣味全開の曲よね。The Beatlesのオマージュもあるし。
金城:ロックファンならニヤッとなる曲でしょ。途中でNirvanaの「Come As You Are」のベースラインが入ってくるし。これって要はカート・コバーンとポール・マッカートニーとを比べる歌なんですけど、どちらの名前も出さず、自分が今何歳かも言わずにタイトルだけ「27」にするっていう小粋なポエムを書いたつもりなんですよ。国語の先生が生徒に1行づつ解説できるようなものを作りたかったんですよね。
白井:それってお客さんにめっちゃ良い寄り添い方やんな。分かる人には分かるし、分からない人でも歌詞の内容だけでも楽しめるっていう。
金城:いつも歌詞の一行目は一番気にしますね。今回だと“一瞬息が詰まった 来週誕生日だ”っていうのから入ったら、絶対次の行も気になるやろうなっていうのは意識しました。なんで息が詰まったのかっていう答えはどこにも出ずに終わるんですけど。

-それでは今回のアルバムを作っている中で特に大変だったのはどんなことだった?
金城:ドラム録りちゃう?
富永:初めてパーカッションを叩いたんですけど、加減が分からなくて。
金城:「どれじんてえぜ」にティンバレスっていうパーカッションの一種を入れて録音したんですよ。スネアドラムの後ろの皮を剥がしたらずっと音が伸びるんですけど、その音が入ってます。僕と富ちゃん(富永)の二人でスタジオ入って、ああでもないこうでもないって言いながら叩いてもらって。
富永:今のテイク良かったよって言われても、えっ?どれ?みたいな(笑)。理想としているサウンドを出したいんですけど、それを噛み砕いて出す技量がまだないですね。ただ今作を作るようになってからは今まではバチバチに叩く事ばっかりだったんですけど、今回は小さく叩く事が多かったんでストレス溜まってましたね(笑)。我慢できずに一回、思いっきり叩いた事があって(笑)。
金城:ああ、あの時な(笑)。録音をする時ってチューニングを近いものから順に録るんですけど、小さめにドラムを叩く曲を3曲連続で録り終えた時に、「空飛ぶピンクのユニコーン」を録るってなってチューニングを変えた時に、富ちゃんがめっちゃ疲れてるはずやのにおもくそ叩いてんすよ(笑)。やっぱりもの足りんかったんやろうなって(笑)。毎回レコーディングスタジオは変えてるんですけど、今回のスタジオが一番しっくりきましたね。広くはないんですけど、ブームマイクの音や風通しが良い場所だったんですよ。
儀間:スタジオの隣が団地なんですけど、夜になると等間隔で電気が点くじゃないですか。一番右側の端っこの電気が点いたり消えたりするんですけど、ぼーっと見てたら、何かああいう風になりたいなと思って(笑)。
金城:ドラム録りの時、儀間くんは暇なんでずっとアコギ弾いてたんですよ。
儀間:「生きてるって感じ」はシングルの「ゆ~らめりか」をレコーディングしていた合間に作った曲なんですよ。この曲はアルバムの最後に収録したんですけど、“生きてるって感じ”で終わるのが良いじゃないですか(笑)。
金城:アルバムを通して聴いて最後にこの曲がきたらホンマに泣けるんですよ。


-「生きてるって感じ」は白井くんのベースが出だしで入るのが印象的だよね。
白井:あの曲はコンプレッサーをかけまくってたんですよ。原音とエフェクターの音の2つを録ってもらうんですけど、原音の方にコンプレッサーがかかってたんで、取り返しのつかない緊張感のある状態で録ったのが良かったんだと思います。
金城:ドラムとベース録りは自分もめっちゃ疲れるんですけど、この曲のベースはポール・マッカートニーがリッケンバッカーを弾いている感じで録ろうって言ってて、エンジニアの人も頑張ってくれてて。ドラムもリンゴ・スターが録っていたようにマイクを配置して、アナログを再現して録ったんで狭い音にしましたね。
-デビューミニアルバム『IWZBN』から3年近く経ってようやくファーストアルバムをリリースすることになったけど、こんなにも時間がかかってしまったのはどうしてだと思う?
金城:今思うと1stアルバムを出したいって意思がなかったんだと思いますね。結局は与えられたものを作るっていうスタイルからは抜け出せてないと思ってて、自分たち発信で曲を12曲作れば、もっと早くにアルバムを出していたかもしれないですね。今回もオーナーが11月にフルアルバムを出しますって〆切を作ってくれたからこそ、できた部分はあったんで。そこから抜け出さないとあかんなって思っているのとこれだけ時間がかかったっていうのは自分たちも反省する所が大いにありますね。僕は〆切がないとずっと考えるだけ考えるから、曲を作るのが遅いんですよね。作ろうと思ったらできるとは思うんですけど、〆切を与えられないと自分たちから曲を作ろうとはならないんですよね。
-メンバー間でアルバムを作ろうっていう話にはならなかった?
金城:ならないっすね。(みんなに向かって)なるか?
白井:口で言うだけで実行にはなかなか移せないですね。
金城:メンバーの中で最初にやろうかっていうのが僕なんで、自分が動かないとみんなも動かないんですよね。なのであえてここで言いますけど、来年中にはアルバム一枚出したいですね。自分は集中し始めるまでのスタートが遅いんですよ。だからまずは二度寝を辞めます(笑)。
-じゃあ約束ね(笑)。こないだインタビューしたアメ村天国の開催を経て、バンド内の役割が明確になってきたのかなって思うんだけど。
金城:僕は今回のアルバムを出すにあたって、最初から最後までやりきるって決めてたんで、3か月間で12曲をマスタリングしてMVを撮影・編集するまでやって。でもその後はめっちゃ寝て、海外ドラマを一気見するくらいダラダラしましたね(笑)。自分の心境の変化としてはアルバムが完成するまでは帰れま10みたいな気持ちでやっていました。
儀間:大きな舵取りは金城くんに任せてますけど、今回は俺もMVを一緒に作りましたね。MVの絵コンテはサイゼリアで真っ新なノートにアイデアを書き始めていったんですけど、店に入った時になんちゃらアントニオ(アントニオ・ブオノモ)っていうスペイン人の曲が流れてて、変な曲やなとか言いながら作業を開始したんですけど、7時間くらい経ってノートも半分くらい埋まったけど、何か変やなって言ってて。で、気づいたら店に入った時にかかってたなんちゃらアントニオの曲がずっとかかっているんですよ。気になって音楽検索アプリや動画を調べ始めて分かったんですけど、MVを7時間考えている間に350回くらい聴いている計算だったんですよ(笑)。まさかずっとリピートしてたっていう(笑)。
一同:(笑)。


-では改めて、『どれじんてえぜ』というタイトルにはどんな意味が込められているの?
金城:“テーゼ”と“アンチテーゼ”っていう哲学用語があって、まず1つの主張(テーゼ)があって、そのに対する反論(アンチテーゼ)があって、じゃあ次はそれに対する反論があって哲学は絶えず論争をしているんですけど、その果てに全てを超越できる主張が生まれる事があるらしいんですね。それが“ジンテーゼ”っていうんですけど、一体全体どれ?“ジンテーゼ”っていう意味で。それを探している若者たちと一緒に頑張っていきましょうっていうのが今回のアルバムタイトルになっていますね。僕らも活動していきながら色んな人からアイデアやアドバイスをもらうんですけど、結局やるのは自分なんで一体、どれが正解なんかなっていつも思うんですよ。迷ってるっているっていうのをありのままタイトルにしたっていうのもります。これと同時に『銀ギラ』っていう7inchも出したんですけど、これはやるのは自分やねんから、やれやって自分に言い聞かせている曲で。そういえば言い忘れてましたけど、アルバムのテーマはもう一つありましたね。最近、SNSで「死にたい」や「殺す」とかネガティヴな言葉が話題になり過ぎていると思うんですよ。
-今、連日ニュースで報道されている神奈川の事件がそうだよね。
金城:そうですね。人に刺す言葉やゴシップを上手く伝えられる人が勝っていくような風潮があるじゃないですか。そういう人たちって一次的な注目を浴びるのは早いと思うんですけど、下の世代には何も伝わらないと思うんですよ。そういうものの延長線で音楽業界もちょっとした爆発ばっかりですよね。でもそういうのはもういいんじゃないかと思うんですよね。もっと真面目にやろうやって。僕らも「自分たちがやりたい音楽をやっているから、売れなくてもいいの?」ってよく聞かれるんですよ。そんな事全然思ってないんですけど、世間を真似て単発的にネガティヴな事を言って売れる気はさらさらないし。
儀間:何だって自由な所からスタートしているはずやのに、勝手にこういう事をしなくちゃ売れないみたいな事に縛られ過ぎてるんじゃないかなって。バンドやそれを売る人がこうしたら売れるっていう方程式を作って、そこからはみ出していくバンドを売れる気がないみたいなレッテルを貼るのはどうかと思いますね。
金城:めっちゃ分かるわ。もともと楽しくてバンドを始めたはずやのにな。
儀間:あんまりフラストレーションを溜め込む方じゃないんですけど、めっちゃ腹の立つ事があって。そういう事に縛られている人が可愛そうだとも思うんですけど、それが自分たちの足を引っ張っているなとも思っていて。「Z scream!」はその事について歌っていますね。
金城:そうやな。あの曲で儀間くんが“愛想尽きたぜ ロックンロール”って歌っているのは初めてやったもんな。
儀間:そういう感情はもう要らないですね。積み上げるのは時間がかかるんですけど、壊すのは一瞬じゃないですか。最近は変な壊し方を競ってるみたいな気がして、もういいのもういいですわって。
-揚げ足の取り合いになってるっていう。
金城:そうですね。本当に揚げ足の取り合いばっかりで、不倫報道が流行ってるって気持ち悪いじゃないですか。
儀間:それって小学生が「あいつ女の子と喋ってんで」みたいな事を大の大人が背広を着てやっているようなもんじゃないですか。ああいう事をしても何も残らないっすよね。
金城:「どれじんてえぜ」でもそれについて歌ってるんですけど、歌詞の“劣等感で旨い酒は飲めるけど 美味しいご飯は作れません”に全てが詰まってますね。

-それではそんな気持ちで作ったアルバムをどんな人に聴いてほしいと思うか聞きたいんだけど、最初にインタビューしたときに、“どうしようもないクズに聴いて欲しい”って言ってたと思うけど、今作はそこに返ってきたんじゃないかなと思って。
金城:確かにそうですよね。今回は特に自分たちと同じ世代の人に聴いて欲しいですね。年上の人から何と言われようが、自分らにしか分からない事が絶対にあるんで。例えば本当にどうしようもなく仕事がしんどい人は、辞めたら良いと思うし。そういう事は僕らの世代なら経験した人が多いと思うし、世の中の若者にクソみたいな奴はおるぞっていう事を教えてやりたいです。上の世代は本当にクソみたいな奴が多いし、自分たちもそうはなるなよって言いたいんですよ。もちろん上の世代は悪い人ばかりではないし、尊敬できる人もいるんですけど。僕ら4人はピュアなんで何でもかんでも受け入れちゃうんですけど、それを上手い事利用するような奴もおるっていう経験が根底にあって、このアルバムを完成させましたね。
儀間:このアルバムでも歌詞で“大丈夫 みんなそんなもん”って僕が歌っているんですけど、そういう事を誰かに言って欲しいですよね。僕自身は悩み事を言うタイプではないんですけど、言って欲しいですね。みんなそんなもんかって言われて安心するのは日本人っぽいんですけどね(笑)。で、誰に聴いて欲しかっていう話に戻るんですけど、自分も同世代に聴いて欲しいです。さっき言ってた神奈川の事件があるじゃないですか。その被害を受けた方がチケット代を払って俺らのライブを見に来てくれたら、ああいう結果にならずに済んだかもなって思うんです。俺らのライブを見たらすっ飛んで、ポジティヴな事にエネルギーを使おうと思ってくれると信じてるんで。ああいう事件を見る度にどこかで俺らの音楽と出会って欲しかったなって思いますね。
金城:こんなに楽しませることを100%で考えてるバンドはそうそういないと思うんですけどね。
儀間:他のインタビューで「愛はズボーン」とは何ですか?って聞かれたときに、一時間くらい考えて「生きた証です」って答えたんですけど、愛はズボーンっていうのは名前だけでこの時代を4人の若者が生きていると。それを見に来てるお客さんもその時代を作る一つのピースなんですよね。お客さんが愛はズボーンを思い出すとその当時の事を思い出すし、それこそが生きた証だと思うんですよ。その輪にみんな入って来て欲しいです。今回のアルバムがそのきっかけになって欲しいですね。
富永:俺は自分の兄ちゃんに聴いて欲しいっすね。最近、元気無さそうなんで。失恋しておまけにめっちゃ忙しいパチ屋で働いてるんですよ。これを聴いて元気出してって。
白井:さっき二人が若い世代に聴いて欲しいって言ってましたけど、その質問を聞いた時に考えてみたら、ある程度以上の年齢の人に聴いて欲しいっていう発想がなくて。例えばおじさんに聴いて欲しいって思ってないんかなって思って。でもたまに「愛はズボーン、めっちゃかっこいい!」って目を輝かせて言ってくれるおじさんもいて。そういうのは今思うと嬉しいですね。もしかしたらそういう人らは心が若いのかもしれないなと思って。
儀間:だったら若い人に聴いて欲しいっていうのは、そういう人たちも入りますね。心が若い世代みたいな。
白井:本音を言うとRadioheadのトム・ヨークに聴いて欲しいです(笑)。
一同:(爆笑)。
白井:しかも日本語を覚えて、歌詞の意味まで理解して聴いて欲しい(笑)。トム・ヨークに聴いて欲しいって言いたいが為に、さっきまでの流れを作って言いました(笑)。何ならトムに「Z scream!」のMVに出てもらって、「Lotus Flower」のMVみたいなコンテンポラリーダンスを踊って欲しいです(笑)。


-(笑)。Radioheadの「Lotus Flower」のMVの音を消してズボーンの曲をかけたら何か新しいものができるかもよ。
金城:それおもろいっすね。あのMVに何の曲が一番合うか今度試してみよ。
儀間:コンテンポラリーダンスって良いですよね。
金城:儀間くん意外とコンテンポラリーダンスできるんとちゃう?
儀間:やってみたらできるかもですね。ロシア人のコンテンポラリーダンサーがいるんで今度連絡しよ。
(注釈:Radiohead「Lotus Flower」のMVの音量を0にし、「MAJIMEチャンネル」のMVを頭出しで同時再生したら、驚異的なシンクロ動画が見れます)


【Release】

『どれじんてえぜ』
【Event】
11/25(土)愛はズボーンpre.「アメ村天国」
公式HP:http://amemulove.com
【Live】
愛はズボーン「どれじんてえぜ」発売記念インストアイベント
2017年11月19日(日)大阪府 ヴィレッジヴァンガード アメリカ村店
2017年11月23日(木・祝)大阪府 タワーレコード難波店
2017年12月8日(金)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
2017年12月9日(土)愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店
愛はズボーン×DENIMS Wレコ発ツアー「デニムズボーンツアー2018」
2018年1月11日(木)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2018年1月12日(金)京都府 GROWLY
2018年1月18日(木)千葉県 千葉LOOK
2018年1月19日(金)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
2018年1月26日(金)広島県 HIROSHIMA 4.14
2018年1月27日(土)大分県 club SPOT
2018年1月28日(日)宮崎県 SR BOX
2018年2月2日(金)香川県 高松TOONICE
2018年2月3日(土)岡山県 PEPPERLAND
「どれじんてえぜ」発売記念“すぺ~すしゃとるつあ~2018”
2018年2月17日(土)東京都 下北沢SHELTER(対バンあり)
2018年2月18日(日)愛知県 CLUB ROCK’N’ROLL(対バンあり)
2018年2月24日(土)大阪府 Shangri-La(ワンマン)