テキスト:pikumin 撮影:Kazumichi Kokei(※写真は東京公演1日目のものを使用)

「ロックは死んでなんかいない。」
そう世界に向けて叫ぶ20世紀ロック界の新星・スタークローラーが、今年3月に、待望の来日公演を行った。デビューシングルがテレビCMに起用されてからというものの、ザ・ストロークスのニック・ヴァレンシ率いるCRXのサポートアクトを務めたり、彼らのファンだと公言するデイヴ・グロールから真っ先にラブコールを受け、フー・ファイターズが主催する音楽フェス「CalJam 17」に出演したりするなど、デビューから話題をかっさらい、数々のスターたちにも絶賛されるスタークローラー。初めての来日公演にして、追加公演を行い、東京・名古屋・大阪・京都の4都市5公演を完遂した。今回レポートするのは、9日に行われた大阪公演。サポートアクトには”ブルータルオーケストラ”を掲げる大阪発のロックバンド・ヴァンピリアを起用。破天荒な面々で駆け抜けたエキセントリックな夜を、お届けしたい。

定刻19時半。ステージ袖からは息を合わせた掛け声が聞こえ、そのままステージに登場したヴァンピリア。主旋律を担うバイオリンとピアノが広大な自然を描き、要となるデスボイスは生まれては消えてゆく生命のような儚さを見せた。こってり厳つげなルックスや激しくヘドバンしながら弾き散らす様とは相反し、壮大な景色を彷彿とさせる神秘的な音楽を生み出し続け、早くも30分のステージが終わる。今夜の大阪・CONPASSは無秩序に生きる者たちの遊び場。型破りなショーの幕開けを飾ったヴァンピリアは、スタークローラーへバトンを渡した。

20時半。会場はたくさんの人で賑わっていて、特に前方部分はすし詰め状態。ステージの照明が灯り、続々と登場するスタークローラーを待ちわびたように、野太い歓声があがる。喜びの声を浴びながら「Castaway」で彼らのショーが幕を明けた。アロウ・デ・ワイルド(Vo.)は身軽に飛び跳ねながら、軽やかに歌っていて、その前をダイナミックなパフォーマンスを見せながらギターをかき鳴らすヘンリー・キャッシュ(Gt.)は一曲目から輝かしい笑顔を見せていた。

そのままエンジンをかけてハイテンポなロックンロールナンバー「Used To Know」に続くとアロウはマイク片手に動き出し、踊り出す。メンバーたちも温まってきたようだ。「Love’ s Gone Again」「Full Of Pride」とテンポ良く曲を繋ぎ、オーディエンスは暴走機関車のようにパワフルなナンバーを続ける彼らに続けとばかりに飛び跳ねて踊り出す。波打つ観客たちを更に刺激するように、ヘンリーはセンターでダイナミックにギターを着鳴らしていた。

イントロが流れると同時に大きな歓声が沸きあがった「I Love LA」は、今や彼らを代表する曲の一つ。原曲よりもハイスピードで攻めきる中、サビではアロウに合わせて歌う観客たち。会場が一体感に包まれた瞬間だった。彼らが人気となったきっかけでもあるキーナンバー「Ants」と続き、場内のボルテージはぐんぐんあがっていく。ステージ前ではモッシュが起き、熱気がライブハウス中を埋め尽くしていた。そして、会場の隅々まで笑顔が溢れている。最高の空間だ。

彼らのソウルフルな音楽は、今年発売されたデビューアルバム『Starcrawler』を通して知ったつもりでいた。しかし、それだけで語れぬものが目の前に存在したのだ。まず、なんといってもアロウの絶対的存在。一本の枝のような細い身体を音に合わせて小刻みに震わせては、折れたように首や腕をかくかくと動かす。奇怪な姿でありながら、官能的にも見える。そんな細い身体とは反して、野性的な眼差しと内から絞り出した毒や熱を顔のあらゆる部位を動かして吐き出して歌う姿には圧倒されるばかりだった。そして、そんなアナーキーガールを存分に暴れさせる為のステージを作る他のメンバーの凄みは、ライブではより強く感じることができる。

ヘンリーのダイナミズムなパフォーマンスで視覚的にも刺激されるのは間違いないが、何よりも彼の悪ガキなクレイジーサウンドが痺れる。チューブスクリーマーとビッグマフで作られたシンプルかつストレートな歪みは、ダイレクトにハートを揺るがし、高揚感を引き連れてくる。時にはシンセサウンドを駆使したやんちゃな音をグイグイ押し、時にはレトロな味わい深いギターサウンドを演出したりと、厳選された機材で必要なものだけを表現する。それは譲れない彼の良さである。そして一見穏やかに、無心に鳴らすティム・フランコ(Ba.)とオースティン・スミス(Dr.)の二人によるリズムセクションはどこまでも安定していて、一瞬たりともよろけない。落ち着きを見せながら呼吸を合わせ、暴れゆくアロウとヘンリーを常に後押ししていた。音源を通して聴くよりももっとドラマチックでダイナミック。そして自分たちがどれを大切にして、どれを見せたいか。どれを聴かせたいか。その必要性を把握した上で役割を担い、最大級のプレイをしているということ。

加えて、ヘンリーの見せ場では必ずアロウが一歩引いていたり、それぞれがタイミングを見計らっていたり。ハチャメチャな破天荒さが取り上げられていたスタークローラーだが、自らの音楽やパフォーマンスをしっかりとプロデュースし、出し引きを考えながら演奏していることを知ることができるのも、ライブならではの醍醐味ではないだろうか。それが今後、どのようにナチュラルに落とし込んでゆき、余裕あるプレイやパフォーマンスへ進化していくのか。そこが楽しみなところでもある。

ほとんどの楽曲が3分を満たないものばかりのスタークローラー。「Ants」が終わり、水を飲む小休憩を挟んで後半戦がスタートすると、ライブは驚くべき早さで終わりに向かってゆく。中でも「Different Angels」では髪を振り乱しながら踊っては叫んで、飛び跳ねては暴れながら掻き鳴らす、といったやんちゃ具合。まさしく、我々が思い描いた破天荒なスタークローラーそのものだった。その姿はとても清々しく、「これを楽しみに来たんだよ」とばかりに観客はさらに飛び跳ね、身体をぶつけあった。ブラック・サバスを彷彿とさせるドンシャリサウンドが響く中、ムーディーな空気を醸し出す「What I Want」、手拍子やコールアンドレスポンスが起こりより場内が一体感を増した「Pussy Tower」と続くと、本編のラストナンバー「Train」へ。目をかっぴらいて威嚇するアロウと暴れ狂うロックンロールにオーディエンスのボルテージは最高潮に達する。1分30秒も満たない時間とは思えないほど濃密で圧巻のパフォーマンスを見せたスタークローラーは一度ステージを下りた。

止まない歓声とアンコールに応え、再びステージに帰ってきた4人。最後の最後を飾るのは「Chicken Woman」。彼らにとってはお馴染みのラストナンバーだ。ヤーヤーヤーズやザ・キルズのような不穏なサイケデリズムと見え隠れする女の色気、そしてメタリックなヘヴィ―サウンドに、ずしんと重たいリズム隊の圧迫感。ガラクタだらけの異質都市で目を光らせて、未来と希望を射抜くアロウの姿には、思わず背筋がぞくりとした。曲後半になれば後はもう暴れるだけだと、すべての音がひっくり返ったように荒々しく叩き鳴らされていく。アロウとヘンリーは客席へダイブ。流されていくうちにアロウはステージから消え去り、残りの3人はただひらすらに雑音を掻き鳴らし続ける。ヘンリーは次々に観客をステージにあげてはギターを弾かせたりと、好き放題。残りの体力、精神を全て削るように最後までプレイする姿に、観客は大きな歓声を上げ続けた。そして気が済んだように3人はステージを後にした。残された場内はただならぬ熱気に満ち、人々は満面の笑顔で何度も拍手を送り続けた。40分という短いステージではあったが、これほど満足感のあるステージに巡り合えることはそうそうない。初めての来日公演・大阪編は大喝采を浴びながら終演を迎えた。

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