最終更新: 2026年4月4日
“いつか日本でライブをしたい”と願い事のようにつぶやいたら、あっという間に現実になってしまった。
日本のバンド、bedのメンバーとの出会いをきっかけに、来日公演が実現したmolar system(モーラーシステム)。
ソウルを拠点に活動するこのインディーバンドは、몰라(わからない)という言葉をバンド名の核に据え、EP『system malfunction』で独自の世界観を築いてきた。
音楽を深く掘り下げることへの真摯さと、自分たちを“変わり者たちのバンド”と笑いながら語る飾らなさ。
その両方がぎゅっと詰まったロングインタビューを、初来日を記念してお届けする。
アーティスト:sannie、popcorntvgulchan インタビュアー:まりりん 翻訳・編集・校正:BELONG Media / A-indie
molar systemというバンド名の由来

-まりりん:molar systemというバンド名には“몰라(モラ)= わからない”という言葉が含まれていると聞きました。バンド名をmolar systemに決めた背景と、”わからない状態”を創作の起点にしようと思ったきっかけを教えてください。
PTG・Sannie:もともとは3人組バンドとして始まったんだ。3人で集まりたての頃、お互いの質問に対して“몰라(わからない)”と答えることがすごく多くて(笑)。
“何食べたい?”“うーん・・・わからない”“いつ帰る?”“わからない”って感じで。
最初は“band molla”という名前を考えていたんだけど、何かが足りない感じがして。そこで“system”という言葉を加えることにしたんだ。
気に入ったのは、英語で“molar system”と書くと“solar system(太陽系)”に少し似た響きになって、”歯の宇宙”とか”奥歯の宇宙”みたいなおかしな感じが出てくるところ。でも韓国語では“몰라 시스템”、つまり“わからないシステム”としてそのまま読める。”わからないことにも、それ自体のシステムがある”という解釈もできる。その不思議な二重の意味が、molar systemというバンド名をしっくりこさせてくれた。
出会いから結成へ 役割分担と曲作りのプロセス

-まりりん:お二人が出会い、molar systemとして音楽を作り始めるまでの経緯を、できるだけ具体的に教えてください。また、現在のお二人の役割分担、作詞や作曲はどのように進めているかも聞かせてください。
PTG・Sannie:さっきの答えにも書いた通り、バンドはもともとベーシストのジニョンを含む3人で始まったんだ。
3人が初めて一緒になったのは、学校でSannieのオリジナル曲のステージを準備していた時。一緒に演奏してみると、すごく楽しいエネルギーがあって、“音楽がどこへでも行けそう”という予測不能な感覚があった。その感覚が好きで、バンドを始めようという気持ちになったんだ。
基本的には、Sannieが歌詞とトップラインを書いて、曲作り自体はとても自然な流れで一緒に進めている。固定のリファレンス曲を決めたり、厳密な作業順序を設けたりはしていなくて、その場の流れに任せて自由に動くことが多い。
ベーシストのジニョンもプロダクションに関わっていて、ベースとギターを録音している。PTGは学校で電子音楽を専攻していたので、ミキシングとマスタリングを担当しつつ、トラックのアレンジにも大きく貢献している。
音楽のルーツ 影響を受けた3枚のアルバム
-まりりん:これは私たちが取材するすべてのアーティストに必ずお聞きする質問です。お二人の音楽のルーツとなったアルバムを3枚、それぞれの影響やエピソードとともに教えてください。
Sannie:
Queen『Jazz』
小学生の頃、「Bicycle Race」という曲にどっぷりハマっていた鮮明な記憶があります。近所をずっと自転車で走り回っていたから、曲の中にある自由な感覚がすごく響いたんだと思う。当時は歌詞の社会的・政治的な意味は全然わからなくて、ただ“自転車に乗ってどこへでも行きたい”というメッセージが好きだった。
ロックなサウンドとフレディー・マーキュリーの力強いボーカルも大好きで。あとで調べたら、フレディーは実はそれほど自転車が好きじゃなかったと知って、中学生の頃だったかな、なんか変なところでガッカリしたのを覚えています(笑)。
Amy Winehouse『Back to Black』
中学生の頃から好きなアルバムだと思います。小さい頃は親がよくかけていたけど、あまり気にしていなかった。大きくなるにつれて、だんだん違う聴こえ方をするようになって。すでに亡くなった天才アーティストの声を聴くことの、切なさと美しさが混ざり合う感覚がとても特別でした。
The Beatles『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
聴くたびに新鮮に感じるアルバムです。しばらく忘れていても、ふと思い出すとまた聴いてしまう。若い頃はそれほど好きじゃなかったけど、大学に入ってから繰り返し聴くようになりました。いつも旅に出るような感覚にさせてくれるんです。
PTG:
3枚だけ選ぶのは本当に難しい! 最近はアルバム単位で聴く人が減ってきているなとも感じるけど、音楽的に直接影響を受けたレコードを3枚選んでみるよ。
Green Day『American Idiot』は中学生の頃に出会った。音楽を深く掘り始めたのはここからだったと思う。“ロックが最高だ!”と周りに布教して回る、ちょっとダサいロックキッズにだったんだよな(笑)。
Flying Lotus『Cosmogramma』は、音楽を作り始めてから見つけた作品。ずっとロックが好きだったけど、コンピュータ音楽の受験準備を始めた頃、“YouTubeのOverwatch MAD動画みたいな音楽を作らないといけないのかな”という絶望感があって。このアルバムが全く新しい道を開いてくれた。
Four Tetのインタビューや音楽への語り口からは、本当に多くのインスピレーションをもらってる。『Beautiful Rewind』と『Pink』は自分の考え方を大きく変えてくれたアルバムだ。その頃はサンプリングをヒップホップの文脈で考えていたんだけど、これらのレコードがそのアイデアをずっと広げてくれた。
・・・結局4枚になってしまったけど(笑)。
音楽を超えた影響 映画、ゲーム、文学
-まりりん:音楽以外で、制作に影響を与えたカルチャーはありますか。映画、文学、ビジュアルアート、あるいはゲームなど、具体的な作品や体験があればぜひ教えてください。
PTG:挙げればキリがない!
映画は『Evil Dead 2』(1987年)、『悪魔のいけにえ』(1974年)、『イレイザーヘッド』(1977年)が大好き。ユニークなビジュアルエフェクト、奇抜なアイデア、印象的なサウンドデザインを持つ映画に惹かれる。最近だと『The Wolf House』(2018年)や『ねこぢる草』(2001年)もすごく好きだった。
最近はInstagramやYouTubeで活躍する若くてクリエイティブなアーティストも本当にたくさんいる。SNSは心底嫌いなんだけど、そこだけは本当に好きなところだと思ってる。
ゲームはひとつの芸術形式だと思っていて、映像・文学・ビジュアルアート・音楽が一体になったメディアだと感じている。『夢日記』、『Cruelty Squad』、『Undertale』は強い印象を残してくれて、最近のものだと『Lucid Blocks』が特に心に刺さった。
いつか自分でもゲームを作ってみたいな。
Sannie:映画、ドラマ、文学が大好きです。本をたくさん読むというわけではないけれど、手に取った本には完全に没頭してしまうことが多い。
molar systemの曲が直接そこから来ているわけではないけれど、初めてオリジナル曲を書いたのは映画『グラン・ブルー』を観たあとだったんです。本やドラマに触発されて歌詞を書くことも多くある。
最近は音楽に合ったビジュアルコンテンツをちゃんと作れるようになりたいと思って、ビジュアルアートへの関心もずっと高まっています。
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