The Strokesのフロントマンであるジュリアン・カサブランカス率いるThe Voidzがニューアルバムをリリースした。2014年のデビューアルバム『Tyranny』から4年。セカンドアルバムとなる今作『Virtue』は自身のバンド名を“Julian Casablancas+The Voidz”から” The Voidz”へ改名して初めてのリリースとなる。

+を取り払い、The Voidzと完全に一体となったことで、ついに”彼の音楽”の一つとなった今作。彼らが今作で訴えるのは、不穏の影が渦巻く環境の中で、真実を追求することの必要性だ。

The Strokesといえば、今やロック界のアイコン的存在でもある。2001年にデビューアルバムをリリースすると、その都会的な空気感と極めてシンプルなガレージロックサウンドはVelvet Undergroundを彷彿とさせると話題を集め、死んでしまったと言われ続けていたロックシーンに再び火をつけた。彼らに続くようにシンプルな構造に重きを置いた昔のロックに回帰するバンドが次々と現れ、”ロックンロール・リバイバル”と呼ばれるほどの一大ムーブメントを巻き起こしたのだ。

21世紀のロックシーンに衝撃を与えたThe Strokesのフロントマンであり、ソングライティングまで担う最重要人物。それがジュリアン・カサブランカスだ。音楽はもちろんのこと、ジュリアンのカリスマ性やファッションにも多くの人たちが影響を受けただろう。今もなお、人気であり続けるジュリアンがThe Voidzで見せる姿は、一味違う。

まず、『Virtue』を聴いて思ったことは、あらゆるジャンルを取り入れたバリエーション豊富なアルバムだということだ。アルバムといえば収録曲の中で起承転結の波があって、それぞれの繋がりや、総合的に雰囲気が統一されていることが多いが、今作はまるで別々のショーを見ているかのように、様々なジャンルの音像が飛び交う。

アルバムの始まりを飾る「Leave It in My Dreams」ではポップス感が強く爽やかなナンバーだが、続く「QYURRYUS」では奇妙に揺らめくエフェクトサウンドが満載のダークエレクトロとさっそく2曲目で違うアルバムを聴いているかのような感覚になる。「Pyramid of Bones」や「Black Hole」では砂嵐のようなノイズをまき散らしたハードコア色を前面に発揮しているかと思いきや、打って変わって「ALieNNatioN」では低音と高音を織り交ぜながら甘美な歌声をR&Bに乗せていたり、聴くたびに一つの音像に囚われないスタイルを伺える。

中でも印象的なのは「Think Before You Drink」と「Coul As A Ghoul」だった。前者は今作では唯一のアコースティックサウンドで、ヴェルヴェッツを彷彿とさせるようなフォークソングとなっている。まるで懇願するように、「立ち止まって考えてくれ」としゃがれた甘い声で歌うのがやけに切なく、頭から離れない。

一方、日本盤限定のボーナストラック「Coul As A Ghoul」はジュリアンの抑揚のない声とソリッドなバンドサウンドが冷たく響き渡るポストパンク。間には「ご列席の皆様。第187回 年間最優秀主戦論者賞へようこそ!」と奇妙に揺れる声。まるで壊れかけのテレビから政治ニュースが流れてくるような怖さを抱く。「おまえのせいでこうなったんだ」と恨みを込めながら唸るような歌声は、抑揚はないのに、これほどまでに感情を浮き彫りにさせている。華やかな楽曲が多い中、この2曲の衝撃は特に大きく、アルバムの中でも異色の存在だった。

ボーナストラックを含めると16曲というボリューミーなアルバムの中に、これ程までに色とりどりの音楽が詰め込まれているとなると、ジュリアンが「自分が関わった作品の中で最も多様性のあるアルバム」と語るのも頷ける。ストレートかつシンプルがトレードマークだったThe Strokesとは違い、様々なジャンルに触れては精密に書き出し、盛大に表現するジュリアンの姿は新鮮で実に面白い。

また、” The Voidz”としてよりメンバーと密接になったことにより、バンドアンサンブルがより強化され、濃密なものとなっている。多様性ある曲たちが並ぶ中、どれも中途半端になることはない。これはジュリアンたちThe Voidzが一体化したことならではの産物ではないだろうか。

しかし、歌詞の表現や訴えたいことはブレがない。「Leave It In My Dreams」や「One of the Ones」では過去に苛まれ、喪失感と悲しみを抱く歌詞が印象強く、The Strokesにも通ずる部分だ。ややThe Strokesの方が前向きだったのに対し、The Voidzでは目の前の悲しみを事細かに見つめている節がある。そういった過去や喪失感というテーマを描く中で、彼の中で切り離せなかったのが社会情勢だ。

「支配されてしまう ワシントンのように」(by Permanent High School)や「おれたちは過去に誇りを持っていた 人々が何のために戦ったのか指導者たちから聞いたからだ。戦争で起こった子どもたちの殺害を正当化するために」 (by Think Before You Drink)

戦争や血など、死にまつわるワードも多い。無慈悲な戦争を美談にしようとする現状、統制を計る国、あらゆる情報が飛び交う世界。その中で「真実を問い詰めることを決してやめないで」と、そう彼らは訴えている。バラエティに富んだ曲たちが並ぶ今作を通して、彼らは一貫して叫びをあげているのだ。

囚われる過去、嘘が蔓延しつくした世界。その中で真実を追い求めることを忘れるな。歌詞に込めた強いメッセージを、あらゆる音像に姿を変化させて我々に届ける『Virtue』。その熱意と迫力は、より強固となったバンドアンサンブルによって、リアルに伝わるだろう。

The Strokesとはまた違ったジュリアンの姿や、多様性ある音楽を楽しみながら、真実を見定める必要性を訴える熱い思いを受け取ることができる。それこそがこのアルバムの醍醐味となるのではないだろうか。(pikumin)

【Release】

『Virtue』
2018年4月25日発売

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