テキスト:pikumin 撮影:TAKAYUKI OKADA(写真は4/20渋谷WWW X)

2018年、4月30日。街はゴールデンウィークともあり、賑わっている最中。
大きな車道脇にあるプラザ梅田ビルを10階まで昇ると、梅田クラブクアトロに辿りつく。
入り口は大勢の人が並び、早足に場内へ進んでゆく。この日、会場はACID ANDROIDを渇望するオーディエンスで埋め尽くされていた。
しかし、これほどまでに人が集まり今か今かと楽しみにしている一方で、粛々とした空気が流れている。まるで喧騒に包まれる街中とは別世界に足を踏み入れてしまったようだった。
ほどなくして、BGMがフェードアウトしていく。SEなく現れたのは今回のツアーをサポートする小林祐介(Gt./THE NOVEMBERS)と山口大吾(Dr./People In The Box)。迎える拍手が一度止み、静寂が訪れたころにACID ANDROIDの首謀者であり、頂点であるyukihiroが颯爽とステージへ登場すると、大きな拍手と歓声が上がった。

yukihiroがスタンドマイクの前に立ったのが、はじまりの合図だった。
先日リリースされた『GARDEN』の一曲目に収録されている「echo」から、本日のライヴがスタート。yukihiroが歌い出すと、その妖艶な声にぞくりとした。
スタンドの前に佇み、マイクを手で握りただ前を見て歌うその姿と歌声から放たれる空気が、じわじわと会場を浸食してゆく。
歌い終わると、今度はマイクを手に取り、「gardens of babylon」を披露。
ディストーショナルな小林のギターサウンドが空気を切り裂き、場内にピリッとした緊張感を与える。シーケンスと軽やかなドラミングが交わる序盤に比べ、曲後半となるとアタックの強くなる山口のドラミングが地面を揺らし始めると、観客は変化していく様を楽しむように手を挙げて飛び跳ねる。
続く「daze」では、ナイン・インチ・ネイルズを彷彿とさせるインダストリアルロックなサウンドに、深く重たいビート感が観客の鼓動を支配する。開始直後に、音に合わせて手拍子が始まり、ここでぐんと場内が熱気に包まれ、一体感が生まれ始める。ロングヘアと衣装をひらりと艶やかに揺らしながら静かに、それでいてロックミュージシャンさながらに熱く歌うyukihiro。リズムに合わせて首や手を動かして、オーディエンスを導く。サビ前のブレイクではひゅっと息を呑む緊張感が訪れるところがたまらなく気持ちよかった。
オーディエンスのテンションが劇的に上がり、その勢いのまま「gamble」へ。ハードロックサウンドで攻めきるアグレッシヴな姿勢を見せた。

序盤にして再びダークサイドの深淵に舞い戻る。ACID ANDROIDのステージは、音像と照明、そして彼ら3人の佇まいが一つのショーを作り上げていた。
熱を冷ますように「dress」が始まると、赤い照明に照らされた彼らは先ほどまでのハードな彼らとは違い、静かなる魔物に変化。エコーが強めにかかったyukihiroの声は、真紅の世界に滲んでは溶けていくように響き、リリカルなギターリフと乾いたスネアの音がディストピアを生み出す。すべてが重なりあうことで、曲の世界が彼らの頭上に浮かび上がっているようだった。人々はステージを見つめ、うっとりと聴き入っている。
同様に「roses」では緑の照明がバックを照らし、庭園に薔薇とツタが浮かびあがる。
甘くエッジの効いたギターが艶やかに響き、滲んでいくようなヴォーカルがしっとりと詩を聴かせるように歌う。曲後半では緑の世界が赤と混じり合いだし、曲と共に目に見える景色にも物語がつづられているようだった。視覚的な美しさ、彼らの佇まい含めて、ショーとして魅了されるのも、ACID ANDROIDのライヴならではの醍醐味なのだろう。
「precipitation」、「division of time」、「unsaid」と続き、セットリスト前半が終了。
幕間を挟むことなく、後半戦へ。

「chill」、「violator」とはじまり、ノイズたっぷりなヘヴィーサウンドを繰り出しては、ダイナミックに散ってゆく。
「gravity wall」の間奏部分では、音源でも感じられた何層にも音を重ねて変化していく構築美を、実際に目の前で体感でき、バンドアンサンブルが強調されることでより細かやかに変貌する様を堪能できた。
そしてここからが本番。ついに彼らは野性剥き出しの姿を見せる。
ヘヴィーメタル色の強い叙情的なyukihiroの声が絶妙に交じり合う「chaotic equal thing」。続く「let’s dance」では、打って変わって叫びあげるようなエモーショナルなヴォーカルに、ファンキーなカッティングにキレッキレなギターソロと小林のギタープレイと、軽やかにリズム刻みながらサビにかけてどしんと重いアタックを決める山口のドラミングが絶大なパワーを生み、エネルギー溢れるステージを披露。
オーディエンスも叫ぶように合いの手を入れ、大きく踊りだす。
演奏終わりには今日一番の大きな拍手と歓声が会場を埋め尽くした。
その勢いを絶やさぬまま踊れるハードロックナンバー「egotistic ideal」へ。初めてyukihiroが口を開いてオーディエンスを煽り、人々は大きな声と地面が絶え間なく揺れるほど大きく飛び跳ねて応えた。
統一感ある曲でまとめてACID ANDROIDらしさを見せた前半と比べ、後半は多彩なジャンルの音楽を通して、一見ではわからないACID ANDROIDの秘めたる熱やソウルフルな一面を感じさせる曲が揃う。
ライヴハウスでは収まりきらないほどの深く広大なサウンドと何度もインパクト絶大な爆音がやってくる「the end of sequence code」を経て、「violent parade」が始まると圧倒的なサウンドボリュームとハイスピードで刻まれるビートにオーディエンスのボルテージは最高潮へ。それを見逃さず、yukihiroはステージの両端へ移動してはしゃがみこみ、観客と至近距離で歌ったり、自身も身体を大きく揺らしながら全身で観客を煽り続けていた。
いよいよライヴも最後の曲を迎えた。
『GARDEN』のラストナンバーである「ashes」をチョイス。まさに今回のツアーを締めくくるのに相応しい曲だ。
先程までの熱をクールダウンさせながらも、火は灯したままに、yukihiroもなめらかに身体をしならせながら歌う。しかし、常に緊張感があるACID ANDROIDらしい。
紡ぎだす音ひとつひとつを逃さず聴かせるように、丁寧に織り成してゆく。 シーケンスはダークな音色を鳴らすが、小林のギター、山口のドラムはとても優雅で美しく、この曲を華やかに仕上げる要因となっている。
それは、yukihiroが持つ闇深い美の造形品を、理解し、自身の感性をプラスすることで成しえたこの二人ならではの成果だろう。
彼らが生み出す音、ステージング、空気感。すべてがひとつとなり、重なってきたこの1時間半。最後の曲で、この三人だから成しえる美のアンサンブルの骨頂が露わとなり、観客にひしひしと伝わったに違いない。
曲は、静かにフィナーレを告げ、観客が盛大な拍手を送る中、彼らはしとやかにステージを去った。終演後に誰もいないステージにずっと歓声が飛び交う光景が、この日のライヴが素晴らしかったということを証明しているようだった。(pikumin)

【ACID ANDROID LIVE 2018 #1】
2018.04.30(MON・HOL) 梅田 CLUB QUATTRO

1 echo
2 gardens of babylon
3 daze
4 gamble
5 dress
6 precipitation
7 division of time
8 roses
9 unsaid
10 chill
11 violator
12 gravity wall
13 chaotic equal thing
14 let’s dance
15 egotistic ideal
16 the end of sequence code
17 violent parade
18 ashes

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