最終更新: 2021年8月9日

Stats(スタッツ)はデュア・リパやラ・ルーのギタリストとしても活動していたエド・シードによるロンドンのシンセ・ロック・バンド。

彼らのデビューアルバム『Other People’s Lives』が今年の3月13日にリリースされる。その完成度の裏側にあったのは下積み時代の努力と取捨選択することであった。

そしてフロントマンのエドが情熱的に語ってくれたバンド名とアルバムにのせた想い。

今この時代を生き、ありふれた日常からインスピレーションを得て音楽に昇華する。そんな彼らのインタビュー。(文:Rio Miyamoto)

アーティスト:エド・シード インタビュアー:yabori 翻訳:Rio Miyamoto

-バンドを始めようと思ったきっかけがあれば教えてください。
エド(Ed Seed): 僕は以前から日常の生活についての曲を書きたいと思っていたんだ。例えば仕事についてだったり、アパートを借りること、それに常にネットでオンラインに繋がっていることとかね。ただそういう事を少し空想的で非現実的だったり、華やかな方法で書きたかったんだ。なぜかと言うと、そういう物事をずっと見つめていると全ての出来事は実際に空想的かつ非現実的であると言うことに気がつくからなんだ。そういう事を僕はダンスミュージックやファンクな曲にのせて歌いたかったんだ。そうすれば、たとえリスナーが歌詞について全く気にしていなかったとしても、ただ純粋に音楽を感じて楽しんだり踊ったりできるからね。

-どのようないきさつがあって今のメンバーと出会ったのでしょうか。
ギターのDuncanと僕は以前から一緒にバンドをしていたんだ。キーボードのNicoleとベースのStuは僕らと同じ音楽界隈でプレイしていて出会ったんだ。ドラマーのJohnとは、友人のEugene McGuinnessのために演奏した時に出会ったんだ。ちなみにそのEugeneは『Other People’s Lives』のうち2曲に参加しているんだよ。そしてキーボードのIsobelとは共通の友達を介して出会ったね。

-6人編成でキーボードのメンバーが2人いるのでしょうか。キーボード2人編成は珍しいと想うのですが、どうしてこのような編成になったのでしょうか。
それが音楽のあり方だよ(笑)!まず最初にリズム隊が整って、そこにずっとテクスチャーやベースをもっと足したいと思っていたんだ。ほとんどのベースラインはサウンドを重くするためにシンセでダブリングさせているんだ。やっぱりギターよりもシンセの方が面白い世界感を作り出せるからね。バンドには2人ギタリストがいるけど、2人とも完璧に役割分担していて、僕はリズム、そしてDuncanはノイズを作るっていう風にしているね。

-エドはバンドについて「自分自身を捨て去り、全く計画していなかったことフォーカスした」と語っていますが、バンドを始めた当初のイメージと実際にバンドで出した音に違いがあったのでしょうか。また違いがあればそれがどのようなものだったか教えてください。
違いはあったね。最初僕らがバンドを始めたときやりたい事があって、例えばボーカルパートが多いことや、できれば一つの音がずっと続くようなベースライン、そしてダンスミュージックの様な生ドラムをやりたいと思っていたんだ。いったん他のメンバーが彼らのオリジナルスタイルを作り上げてきたら、そのサウンドがおのずと僕の目指すものになっていったって感じかな。
質問にもあった、「自分自身を捨て去り、全く計画していなかったことフォーカスした」という僕の発言は元々このアルバムのレコーディングプロセスに対するものだったんだけど、バンドが生み出す音楽に対する全てのコントロールを諦めるという試みだったんだ。その時はみんなで10〜30分ぐらいジャムをして、みんなその場の思いつきで演奏していた。そして録音した演奏を後で聴き直して、良かったところを切り取るんだ。そしてその切り取ったものと、僕が書き留めていた歌詞をつなぎ合わせて曲を作るということなんだ。これはミュージシャンのベストな部分を引き出すための努力だと思うんだ。例えば、曲の骨組みなしで演奏したり、自分自身を捨て去って新しい世界を追求したりね。それで最終的に出てきた物をかき集めてようやくリスナーを満足させられる曲ができ上がると思うんだ。

-Statsというバンド名の由来について教えてください。
Lilias Buchananというポートレートアーティストの友達がいるんだけど、彼女が名前を提案してくれたんだよ。それがバンドの信条でもある、”Everything is stats now.(全ては統計に基づく)”にピッタリ合ったんだ。統計がなかったような昔の時代とは違って、現代では僕らの生活に関わる統計や数字、そして評価基準なんかがあるよね。例えばやデートや人付き合いでも。その統計っていうのは時に世界に大混乱を巻き起こすし、それはもっともなことでもあると同時に不合理なんだよね。統計はとても正確で、日常生活を快適にしてくれる、といった間違ったイメージを与えるけど、人を惑わせるような確実性も同時に与えるんだよ。それについてはStatsの曲でもよく出てくるんだけど。人それぞれ、色んな人生のものさしを持ってると思うんだけど、実際は違うんだ。今自分が感じてる感情を分析したり定義したりできるとみんな思っていると思うけど、実際はできないんだ。そして大量にあふれている数字に固執することをやめて、自分の人生に没頭する必要があると思うんだ。

-デビュー作として完成度の高い作品だと思います。ここまで完成されたものを音楽を始めてすぐには作れないと思うのですが、皆さんは他でも音楽活動を行ってきたのでしょうか。
ありがとう!そうだよ、全員が違うバンドで以前プレイしていたんだ。僕は以前Dua LipaとLa Rouxと一緒にツアーを回っていたんだ。それより以前はDuncanと一緒にカントリー・パンク・バンドを一緒にやっていたんだ。NicoleはBat For LashesやThe Irrepressibles、他にも色んな人と音楽をやっていたし、Stuは自身のバンド、Left With Picturesをやっていた。Isoはとても成功した映画やテレビ作家で、多分君たちも彼女の作品を知ってるかも知れないけど、『Fleabag』や『Vanity Fair』っていう作品もあるんだ。そしてJohnはEugene McGuinnessやMowerや多くの人とプレイしていたよ。

-今回のアルバムは“自分たちとは違う人々の生活”というテーマがあるのでしょうか。またどうしてこのようなテーマを取り上げようと思ったのか教えてください。
一つのテーマとしてはそうだね。ただアルバムのテーマが出てくる前にすでに曲は全て完成していたんだ。もともと大量に曲があって、その中からお互いにフィットする曲を選んでいったって感じだね。なぜならこのアルバムは、僕の人生の物語は穴(欠点)だらけだ、ということを認識することに関するものなんだよ。この世界は僕に自分の人生をまるで自分自身が主役の物語のように経験させてくれるんだ。自分が未知なる大発見に向かって旅をして、それが本物の自分を認識させてくれる。“Other people’s lives”は僕にとって物語なんだけど、例えば情熱だったり、旅行することだったり、そして奇跡で満ちているような物語を一貫して象徴しているんだ。だけど僕の人生は筋が通っていないんだ。たくさんの矛盾や形のない台本のわき筋があって、そして日々僕は同じ役者であるという感じもあまりしないからね。一人になって何か意味を見いだそうとしているというか。そして自分自身を捨て去った時に意味を見つけることができるんだ。愛する人と一緒にベッドで寝ている時や、ダンスを踊っている時、赤ちゃんの世話をしている時、大きなスタジアムで群衆の中に立っている時、お酒を飲んでいる時、読書をしている時、そしてこのバンドでプレイしている時、そういう瞬間に全てがひとつになるんだ。だからこのアルバムではそういう自分を失う瞬間や、自分が生きるべき、または語られるべき物語を表現するために、全てのことを結びつけようとしているんだ。こういうことは主に家の中や普段の生活の中で起こるんだ。そこが自分の居場所だからね。Dua Lipaとのツアーをやめたのも新しく生まれた息子のためなんだ。そしてそれが僕に、”内から広大な方法で世界を見る”、という新しい世界の見方を教えてくれたんだ。これは自分自身を諦めるということ、そして自分自身を生み出すことなんだ。世界とみんなに向けてね。

-どうして『Other People’s Lives』というアルバムタイトルにしたのでしょうか。
だって最高のタイトルだからね(笑)!

-最新作をどんな人に聴いて欲しいと思いますか?
僕たちの曲に込められている感情や考えを理解してくれる人たちに届けばいいなと思うね。僕が1番素晴らしいと思うのは、例えば誰かが連絡をくれて、その人の人生で今起きていることに僕達の曲がうまくリンクして、その人に何かしらの意味を与えられた、って言ってもらえることだね。

-忙しいところ回答頂きありがとうございました。日本でのライブを楽しみにしています!
こちらこそありがとう!ぜひ日本に行きたいと思ってるよ!実は以前Dua Lipaと一緒にプレイしてた時に日本を訪れたんだけど、おそらく僕が訪れた場所の中で1番お気に入りの場所だね。絶対行くよ!

Other People's Lives
Other People’s Lives

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Stats
Memphis Industries (2019-02-15)

【Profile】
Statsはバンドの創設者でフロントマン、Ed Seedを中心としたロンドンのダンス・バンド。Elton John(Beats 1)、i-D、DIY Mag、Q等から、すでに高い評価を得ている。『Other People’s Lives』はStatsのデビュー・アルバムで、ロンドンのRAKスタジオでレコーディングされた。メンバーはEdとJohn Barrett – drums、Stu barter – bass、Duncan Brown – guitar、Nicole Robson – keyboards、Iso Waller-bridge – keyboards。アルバムは2019年2月、Memphis Industriesよりリリースされる。

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。
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