最終更新: 2021年3月30日

アメリカのサウスカロライナ州出身のChaz Bear(チャズ・ベア)によるプロジェクト、Toro Y Moi(トロ・イ・モア)。

彼の6枚目となるアルバム『Outer Peace』がアメリカでは今年の1月、日本盤は10月16日に解説書付きでリリースされる。

Toro Y Moiとは


Toro Y Moi(トロ・イ・モア)のサウンドはWashed OutやNeon Indianと共にチルウェイヴ称され、2000年代後半から注目を浴びるようになった。

2009年にCarparkと契約し、2010年にデビュー・アルバム『Causers of This』をリリース。

サンプリングを使用せず全て生音でレコーディングされた2011年のセカンド・アルバム『Underneath the Pine』は、海外メディアから高い評価を獲得した。

2013年には90年代のダンスやR&Bからの影響を受けたサード・アルバム『Anything in Return』。

2015年にはTalking HeadsやTodd Rundgren等から影響を受けたギター・アルバム『What For?』。

2017年にはシンセ/エレクトロを基調とした5枚目のアルバム『Boo Boo』をリリース。

2019年には今までの作品の中でも最もポップな6枚目のアルバム『Outer Peace』をリリースした。

Outer Peace

今回の『Outer Peace』についてToro Y Moi(トロ・イ・モア)ことチャズ・ベアは、“交通渋滞に巻き込まれた時”や“フリーランスの人が次の現金収入を得るために躍起になっている時”など、

普通は苛立ちや不安を感じる時、逆に安心してしまう矛盾した状況を意味しているという。

そしてアルバム『Outer Peace』のテーマとして、“現代社会で文化がどれだけ消耗品となってしまったか。またそれがどのようにクリエイティヴィティに影響を与えているか。”

“あなたが注意深く作品を聴こうが単に聞き流そうがどちらでも構わない、これは創造力・創造性の為の音楽だ。”と語っている。

『Outer Peace』でもシンセが巧みに重ねられ、エレクトロ色が強いが、ファンクやディスコ、R&Bからメロウなテイストまで幅広いジャンルが練り込まれた作品となっている。

パーカッションが隠し味

『Outer Peace』のオープニングトラックである「Fading」ではエレクトロだが、グルーヴ感のあるビートから始まる。

ファンキーなベースやキャッチーなフレーズが次々とレイヤーされていく軽快なチューンで幕を開ける。

そして2曲目の「Ordinary Pleasure」はシングルカット曲として発表された一曲。

イントロからコンガがリズムを刻み、そこにファンク感満載のワウのかかったベースが登場するが、その時点でこの曲の持つA面曲としてのポテンシャルが分かる。

最近のTame Impala(テーム・インパラ)といい、BELONGでもおなじみのThe Babe Rainbow(ザ・ベイブ・レインボー)といい、

最近のサイケデリック界ではコンガなどのパーカッションが頻繁に使われるようになったのは偶然なのだろうか。

どれも上手くサイケデリックに寄り添い、曲がスパイスアップされている。

「Laws of the Universe」は最初から最後まで軽快なビートで、ギターなのかギター風シンセなのかはっきり分からないが、

イントロのファンキーなフレーズがリスナーのテンションを上げることは間違いないだろう。

「Ordinary Pleasure」からのアップテンポな流れが最高だ。

随所に散りばめられたスパイス

アメリカ人女性シンガーのABRAとフィーチャリングした楽曲「Miss Me」から「New House」そして「Baby Drive It Down」へと続く。

この3曲はどこかグルーミーでダークな空気感が漂い、前作の『Boo Boo』を思わせる楽曲でアルバムが繋がっていく。

その内の一曲「New House」では、どこかノスタルジックで物悲しげなサウンドとピアノフレーズが繰り返され、

曲を聴いていてどこかの景色が見えるというか、この独特で不思議な世界感がどこかクセになる。

そしてシングル曲として最初に発表されたディスコチューン「Freelance」で一気に雰囲気が一変する。

オートチューン(音程修正)が強めにかかっていてわざと機械っぽいボーカルにしているが、エフェクトとは関係無しに声色に変化を生み出すあの歌い方もとてもユニークで面白い。

そしてLA行きの機内アナウンスから始まるアッパー系ダンストラック「Who Am I」へと続く。

「Monte Carlo」とラストトラックの「50-50」はスローでエレクトロな曲に仕上がっており、レトロ感とノスタルジックさを感じさせながらアルバムを締めている。

「Monte Carlo」ではブルックリン発のトリオであるWETとのコラボ、「50-50」ではフィラデルフィア出身のプロデューサーであるInstupendoとのコラボが実現。

ちなみにチャズ本人は「50-50」がお気に入りのトラックだそう。

チャズ・ベアの遊び心

Toro Y Moi(トロ・イ・モア)ことチャズ・ベア
Toro Y Moi(トロ・イ・モア)の新作アルバム『Outer Peace』ではチャズの新たなサウンドのバリエーションや曲の方向性、そして遊びが随所に散りばめられており、

いろんな顔を覗かせる自由さと彼のチャレンジ精神を存分に感じることのできる作品だった。

多少前作の名残もあったように感じるが、今回で広げた幅を活かして次のアルバムではどうなるのか楽しみだ。

アルバムリリース

収録曲:
1. Fading
2. Ordinary Pleasure
3. Laws of the Universe
4. Miss Me (feat. ABRA)
5. New House
6. Baby Drive It Down
7. Freelance
8. Who Am I
9. Monte Carlo (feat. WET)
10. 50-50 (feat. Instupendo)

Toro Y Moiプロフィール

TORO Y MOI

“Toro y Moiは米サウスキャロライナ出身のChaz Bearによるプロジェクトだ。そのサウンドはWashed OutやNeon Indianと共にチルウェイヴ称され、2000年代後半から注目を浴びるようになった。2009年にCarparkと契約し、2010年にデビュー・アルバム『Causers of This』をリリース。サンプリングを使用せず全て生音でレコーディングされた2011年のセカンド・アルバム『Underneath the Pine』は、Pitchfork等から高い評価を獲得した。2013年には90年代のダンスやR&Bからの影響を受けたサード・アルバム『Anything in Return』、2015年にはBig Star、Talking Heads、Todd Rundgren等から影響を受けたギター・アルバム『What For?』、2017年にはたシンセ/エレクトロを基調とした5枚目のアルバム『Boo Boo』をリリース。2019年には今までの作品の中でも最もポップな6枚目のアルバム『Outer Peace』をリリースした。”

引用元:Toro Y Moi(トロ・イ・モア)プロフィール(Big Nothing)

Toro Y Moi代表曲(Youtube)

Toro Y Moi – 50-50 (feat. Instupendo)

Toro Y Moi – Ordinary Pleasure

Toro Y Moi – Freelance

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。

高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。

13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。

関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。

2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。

2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。

普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。

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