Toro Y Moi

最もポップな6作目

アメリカのサウスカロライナ州出身のChaz Bear(チャズ・ベアー)によるプロジェクト、Toro Y Moi(トロ・イ・モア)。

彼の6枚目となるアルバム『Outer Peace』がアメリカでは今年の1月、日本盤は10月16日に解説書付きでリリースされる。

Toro Y MoiのサウンドはWashed OutやNeon Indianと共にチルウェイヴ称され、2000年代後半から注目を浴びるようになった。

2009年にCarparkと契約し、2010年にデビュー・アルバム『Causers of This』をリリース。

サンプリングを使用せず全て生音でレコーディングされた2011年のセカンド・アルバム『Underneath the Pine』は、海外メディアから高い評価を獲得した。

2013年には90年代のダンスやR&Bからの影響を受けたサード・アルバム『Anything in Return』。

2015年にはTalking HeadsやTodd Rundgren等から影響を受けたギター・アルバム『What For?』。

2017年にはシンセ/エレクトロを基調とした5枚目のアルバム『Boo Boo』をリリース。

2019年には今までの作品の中でも最もポップな6枚目のアルバム『Outer Peace』をリリースした。

創造性の為の音楽

今回の『Outer Peace』についてチャズは、“交通渋滞に巻き込まれた時”や“フリーランスの人が次の現金収入を得るために躍起になっている時”など、

普通は苛立ちや不安を感じる時、逆に安心してしまう矛盾した状況を意味しているという。

そしてアルバムのテーマとして、“現代社会で文化がどれだけ消耗品となってしまったか。またそれがどのようにクリエイティヴィティに影響を与えているか。”

“あなたが注意深く作品を聴こうが単に聞き流そうがどちらでも構わない、これは創造力・創造性の為の音楽だ。”と語っている。

今作でもシンセが巧みに重ねられ、エレクトロ色が強いが、ファンクやディスコ、R&Bからメロウなテイストまで幅広いジャンルが練り込まれた作品となっている。

パーカッションが隠し味

アルバムのオープニングトラックである「Fading」ではエレクトロだが、グルーヴ感のあるビートから始まる。

ファンキーなベースやキャッチーなフレーズが次々とレイヤーされていく軽快なチューンで幕を開ける。

そして2曲目の「Ordinary Pleasure」はシングルカット曲として発表された一曲。

イントロからコンガがリズムを刻み、そこにファンク感満載のワウのかかったベースが登場するが、その時点でこの曲の持つA面曲としてのポテンシャルが分かる。

最近のTame Impala(テーム・インパラ)といい、BELONGでもおなじみのThe Babe Rainbow(ザ・ベイブ・レインボー)といい、

最近のサイケデリック界ではコンガなどのパーカッションが頻繁に使われるようになったのは偶然なのだろうか。

どれも上手くサイケデリックに寄り添い、曲がスパイスアップされている。

「Laws of the Universe」は最初から最後まで軽快なビートで、ギターなのかギター風シンセなのかはっきり分からないが、

イントロのファンキーなフレーズがリスナーのテンションを上げることは間違いないだろう。

「Ordinary Pleasure」からのアップテンポな流れが最高だ。

随所に散りばめられたスパイス

アメリカ人女性シンガーのABRAとフィーチャリングした楽曲「Miss Me」から「New House」そして「Baby Drive It Down」へと続く。

この3曲はどこかグルーミーでダークな空気感が漂い、前作の『Boo Boo』を思わせる楽曲でアルバムが繋がっていく。

その内の一曲「New House」では、どこかノスタルジックで物悲しげなサウンドとピアノフレーズが繰り返され、

曲を聴いていてどこかの景色が見えるというか、この独特で不思議な世界感がどこかクセになる。

そしてシングル曲として最初に発表されたディスコチューン「Freelance」で一気に雰囲気が一変する。

オートチューン(音程修正)が強めにかかっていてわざと機械っぽいボーカルにしているが、エフェクトとは関係無しに声色に変化を生み出すあの歌い方もとてもユニークで面白い。

そしてLA行きの機内アナウンスから始まるアッパー系ダンストラック「Who Am I」へと続く。

「Monte Carlo」とラストトラックの「50-50」はスローでエレクトロな曲に仕上がっており、レトロ感とノスタルジックさを感じさせながらアルバムを締めている。

「Monte Carlo」ではブルックリン発のトリオであるWETとのコラボ、「50-50」ではフィラデルフィア出身のプロデューサーであるInstupendoとのコラボが実現。

ちなみにチャズ本人は「50-50」がお気に入りのトラックだそう。

チャズの遊び心を堪能できる作品

『Outer Peace』ではチャズの新たなサウンドのバリエーションや曲の方向性、そして遊びが随所に散りばめられており、いろんな顔を覗かせる自由さと彼のチャレンジ精神を存分に感じることのできるアルバムだった。

多少前作の名残もあったように感じるが、今回で広げた幅を活かして次のアルバムではどうなるのか楽しみだ。

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)


兵庫県出身のサイケデリック・ロックバンド、Daisy JaineのVo./Gt.。アメリカ・ボストンに留学経験があり、BELONGでは翻訳を担当。サイケデリック、オルタナ、60s、ロカビリーやR&Bと幅広く聴きます。趣味はファッション、写真、映画観賞。

リリース情報

OUTER PEACE
OUTER PEACE

posted with amazlet at 19.10.07
TORO Y MOI
CARPARK RECORDS (2019-10-16)

発売日:2019年10月16日
品番:CAK131CDJ(国内流通仕様)
定価:¥2,300 +税
発売元:ビッグ・ナッシング / ウルトラ・ヴァイヴ
その他:解説付
収録曲目:
1. Fading
2. Ordinary Pleasure
3. Laws of the Universe
4. Miss Me (feat. ABRA)
5. New House
6. Baby Drive It Down
7. Freelance
8. Who Am I
9. Monte Carlo (feat. WET)
10. 50-50 (feat. Instupendo)

プロフィール


Toro y Moiは米サウスキャロライナ出身のChaz Bearによるプロジェクトだ。そのサウンドはWashed OutやNeon Indianと共にチルウェイヴ称され、2000年代後半から注目を浴びるようになった。2009年にCarparkと契約し、2010年にデビュー・アルバム『Causers of This』をリリース。サンプリングを使用せず全て生音でレコーディングされた2011年のセカンド・アルバム『Underneath the Pine』は、Pitchfork等から高い評価を獲得した。2013年には90年代のダンスやR&Bからの影響を受けたサード・アルバム『Anything in Return』、2015年にはBig Star、Talking Heads、Todd Rundgren等から影響を受けたギター・アルバム『What For?』、2017年にはたシンセ/エレクトロを基調とした5枚目のアルバム『Boo Boo』をリリース。2019年には今までの作品の中でも最もポップな6枚目のアルバム『Outer Peace』をリリースした。

Music

50-50 (feat. Instupendo)

Ordinary Pleasure

Freelance