Cigarettes After Sex

新作『Cry』を手紙形式で紐解く

シガレッツ・アフター・セックス(Cigarettes After Sex)の楽曲のほとんどは、ボーカルのグレッグ・ゴンザレスがかつて愛した恋人たちに向けられたものである。

今もなお大切だと思える誰かのことを想って書かれた、言わば“手紙”である。

だからなのかは分からないが、家族や友人に手紙を書く時、私は決まってシガレッツを聴きたくなってしまう。

電話やメールといった機械を介した人とのやり取りが苦手な私には、手紙を書くことが子供からの習慣になっている。

その習慣に、彼らの楽曲は自然と馴染む。シガレッツの音楽は、私にとって手紙を書くことと同じに思える。

だから新作『Cry』のアルバム紹介も手紙として書いてみることにした。

このアルバムやシガレッツ・アフター・セックスというバンドの魅力を伝えるには、“手紙”が一番適している・・・はず。

マヨルカ島から愛をこめて

Cigarettes After Sexあらためゴンザレスへ

この手紙はあなたの元には届きません。今はそれが少し寂しいです。以前、私はあなたに一度メールインタビューをしたのですが、覚えてますか?

あなたからの返答は私への手紙のようで、会ったことのないあなたと手紙のやり取りをしているようで、それがとてもうれしかったです。

だから、こうしてまた手紙を書いています。

メールインタビューという、あなたの元にちゃんと届く手紙を書けると思ってました。

だけど、1stアルバム『Cigarettes After Sex』のリリース以降、あなたやバンドは大きく飛躍した。

日本の音楽シーンもあなた達を大々的に取り上げ、主要なCDショップでもシガレッツのコーナーが大きく展開していたり。

普段ネットなんてしないから、バンドを取り囲む環境がこんなにも変化していたことを私はちゃんとりかいしていなくて・・・。

だから今回、あなた宛てのメールインタビューという手紙を書くことができると思ってた。それが世界中からインタビューの依頼があるとのことで、あなたへの手紙が書けなくなってしまった。

寂しいけれど、シガレッツの音楽を沢山の人が愛していると思うとうれしいです。だから、こうしてまた手紙を書いています。

あなたには届かないけれど、この手紙はきっと、日本にいるシガレッツのファンやこれからシガレッツの音楽に触れるリスナー宛てにものでもあるかもしれません。

2ndアルバム『Cry』を聴きました。1stにはない温かさを感じました。

1stは冬の思い出を歌っている曲もあるから、温かさの中に雪の冷たさのようなものを感じました。だけど今回は、より温もりを感じることができた。

それもそのはず、今作はスペインのマヨルカ島で作ったそうですね。

あなたはどちらかと言うと冬の景色が好きそうだから、バカンスにうってつけの南の島のイメージが全くと言っていい程なかった。

だけど調べてみると、マヨルカ島は音楽や芸術とも縁のある場所なんだそうで。

あなたの好きなショパンも、結核の療養上、お医者様の勧めで長くマヨルカ島に滞在していたんだとか。

名曲「バラード第2番」もマヨルカ島で作られたものとのことで驚きました!そういう理由があってあなたは今作をマヨルカ島で作ったんですね。

観光客で賑わうビーチくらいしか知らなかったけど、街には古くからある教会があったり、木造のトロッコのような路面電車が走っていたり。

絵本に出てくる街並みで、行ったこともないのに懐かしい気持ちになる。

シガレッツの音楽にあるノスタルジックな部分と通じるものがマヨルカ島の空気には漂っているのかもしれない。

1stとは違う懐かしさや温かさを求めて、あなたはバンドメンバーを連れてマヨルカ島に向かったのでしょうか?

マヨルカ島の暖かい空気をたっぷり吸い込んだアルバムなのに、なぜにタイトルが『Cry』?南の島にいても、大切な誰かを思うと寂しくなるから?

どこにいても会えない人を想うことは誰にとっても悲しみを感じてしまうこと。それを象徴するかのように、今作のジャケットもまたモノクロなんですね。

その海がマヨルカのビーチかはさだかではないけど、モノクロの海を雨が打ちつけているようにも見えて、空と海が泣いている、だから“Cry”!・・・なんてことも考えてみたり(笑)。

海がモノクロになるとそれがどこだか分からないし、分からないからこそ、聴き手はその海に想いを馳せられるのであって。

自らの記憶と重なる何かがそこにはあるから、だからシガレッツの音楽は沢山の人の心に触れられるのかもしれません。

今こうして会えないあなたに手紙を書くのは、やっぱり寂しいです。でもなぜか、心は穏やかです。寂しいけれど、優しい気持ち。

これがシガレッツの音楽で、それがすべて。

専門的な解釈云々のレビューなんて要らない。悲しみの中にあるちょっとした温もりはきっとみんなの心にあって。それが『Cry』というアルバムそのものだから。

届かないあなたへの手紙が少しでも多くのリスナーの心に届くことを願って。 かおる子より

追伸
「Hentai」という曲があるけれど、そんな日本語をどこで覚えたのですか(笑)?

“Hentai(変態)”と言うより、歌詞の内容を考慮してタイトルを付け替えるなら、正しくは“Shishunki(思春期)”(笑)。

ゴンザレス、あなたは決して“Hentai(変態)”ではなく、むしろ“Henjin(変人)”だと私は思うのです・・・まじめな話(笑)。

ライター:桃井 かおる子


スマホ、SNSはやっておらず、ケータイはガラケーという生粋のアナログ派。

リリース情報

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品番:PTKF2173-2J
定価:¥2,400 +税
発売元:ビッグ・ナッシング / ウルトラ・ヴァイヴ
付帯物:未定
収録曲:
1. Don’t Let Me Go
2. Kiss It Off Me
3. Heavenly
4. You’re the Only Good Thing in My Life
5. Touch
6. Hentai
7. Cry
8. Falling In Love
9. Pure

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収録曲:
1. K.
2. Each Time You Fall in Love
3. Sunsetz
4. Apocalypse
5. Flash
6. Sweet
7. Opera House
8. Truly
9. John Wayne
10. Young & Dumb [Explicit]

Crush

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Partisan Records (2018-07-09)

収録曲:
1.Crush

Neon Moon

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収録曲:
1.Neon Moon

プロフィール


2008年、フロントマンのグレッグ・ゴンザレスを中心に米テキサスのエル・パッソにて結成されたドリーム・ポップ/アンビエント・ポップ・バンド。2012年に発表したEP『I.』が昨年突如話題となり、YouTube上にてEP収録曲「Nothing’s Gonna Hurt You Baby」が47,000,000のビューを記録し、無名の新人ながら驚異的な数値を記録。ローリング・ストーン誌の「2016年知っておくべき10のアーティスト」に選出され、ライブはアメリカやヨーロッパで即完売に。2017年6月、全世界待望のデビュー・アルバム『シガレッツ・アフター・セックス』をリリースし、これまでに55万枚(ストリーミング相当)以上を売り上げた。Spotifyで3億6,000万を越えるストリーミングと220万のマンスリー・リスナー、YouTubeでの3億5,000万のストリーミングを記録し、Taylor Swift、Kylie Jenner、Lana Del Rey、Françoise Hardy、Lily Allen、Busy Philipps等もアルバムを絶賛した。これまでに3回来日公演を行っており、ここ日本でも着実にファンを増やしている。2019年10月25日にセカンドアルバム『Cry』をリリースする。

Music

『Cry』全曲試聴

Heavenly – Cigarettes After Sex