最終更新: 2021年8月9日

ミュージシャンは基本的に、自分のことを表現するものだという先入観があると思う。

かく言う自分もそう思っていたのだが、神奈川のトラックメイカー兼SSW・Takara Arakiは自分のことを1曲にするほど伝えたいことがないと断言する。

彼女は2018年にデビューEP『Paranoia』をリリースし、2nd EPとなる『DIE FOR ME』を11月28日、Tanukineiri Recordsからデジタル配信する。

収録された5曲にはそれぞれの人格があり、それらは物語から触発され、書き下ろしたものだと言う。

では一体彼女はどのようなことを考え、『DIE FOR ME』という物々しいタイトルの作品を作ったのだろうか。メールインタビューでその正体に迫った。

Takara Arakiとは

インタビュー:Takara Araki インタビュアー:yabori

-Takara Arakiさんが音楽を始めたきっかけについて教えてください。
Takara Araki:市の小学生で構成されているマーチングバンドに小学1年生の頃に入団したことがきっかけです。主にスネアドラムを演奏していました。

-Takara Arakiとして活動をスタートさせたきっかけについて教えてください。
専門学校を卒業してすぐに作った「女優」という曲が下北沢のモナレコードのコンピレーションアルバム(『モナレコ・コンピ~夢中にならないで~』)に収録されることになって「先のことは分からないけどもう少し音楽を作り続けてみよう」と思ったことがきっかけです。

-Takara Arakiというのは本名なのでしょうか?だとすればどうしてステージネームではなく、ご自身の名前で音楽活動をしているのでしょうか。
本名です。ステージネームを何度も考えようと思いましたが、もう一つの名前の自分と本名の自分を両立できるほど私は器用じゃないので本名のままです。

-公開されているアーティスト写真は目を隠していたり、あえて白目だったりしますが、何かこだわりがあるのでしょうか。
「目は口ほどに物を言う」ということです。とても感情的な身体のパーツである目に不自由を与えています。私の写真を見た印象を明言できないようにしたいと思っています。

DIE FOR ME

Die for Me
-今作『DIE FOR ME』は自身に潜む5人の人格を楽曲の中で表現しているそうですね。1曲づつ、自分とは違う人格の人物が出てくるそうですが、どうしてこういう構成で制作されたのでしょうか。
私自身のことが1曲になるほど伝えたいことが無かったからです。そこで本を読んで強く惹きつけられた人物に歌詞と音楽をつけて主役にさせてあげたくなりました。

-また5人ともTakara Arakiさんとは違う人格だそうですね。それぞれどういうキャラクターなのか簡単に教えてください。
“DIE FOR ME”は何でも自分の思い通りに人を操るにつれて飽きと憤りが混ざり合い死に対する好奇心を止められなくなる少年です。

“JUNE”は古い木造アパートで質素な生活をしている一見物静かな女性です。彼女はガソリンで満たされたような心の持ち主でマッチ1本で燃え盛るような人です。

“LUXURIA”は今日の愛情に飢えた女性たちです。

“GODDESS”は大きな羽を持ち玉座に座る今の私とは道を違えた未来の自分です。一度の復讐は心に終止符を打つための大切なことだと考えています。

“陰”とは“女性”という意味です。女性の白い肌にはどんな意味があると思いますか?そう問いかける女性でも男性でもない人です。

-今作は楽曲によって声色がかなり変わる印象があります。それぞれのキャラクターもしくは楽曲に合わせた声色で歌っているのでしょうか。
無意識ですがその通りだと思います。先ほど紹介させていただいた人格たちに招集をかけて歌っているようなイメージです。

-アルバムタイトル『DIE FOR ME』にはどのような意味があるのでしょうか。
全ての曲は2017年に作りました。その頃の私は「安い愛情をさも高価そうに言う奴はみんな私の前で死んでしまえ」と思っていました。今となってはこの言葉でドキッとする人、ハッとする人がいて欲しい、そういう人たちに私の音楽を聴いて欲しいと思います。

ルーツについて

-以前、ラナ・デル・レイの曲をカバーしていたのがとても印象的でした。どうして彼女の曲をカバーしたのでしょうか。また彼女に共感する部分があれば教えてください。
彼女の人生や経験を私が勝手に解釈することは避けていますが、悲しみは悲しみのまま微笑むような彼女の音楽が好きです。彼女の音楽をより身近に感じたくてカバーしました。

Video Games(Lana Del Rey)cover
https://youtu.be/8_g84tqZt-A

-自身の音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。
Whole Story
Kate Bush『The Whole Story』
コンピレーションアルバムですが中でも「Experiment Ⅳ」には強く衝撃を受けました。私は普段から耳栓をして外出しているのですが、音が頭の中を支配し人体に害を及ぼすイメージが見事に体現されているMVになっていたからです。

Born to Die: Deluxe
Lana Del Rey『Born To Die』
彼女の手には「Trust no one」「Paradise」というタトゥーが入っているのですが、このアルバムは彼女が全身で奏でる「孤独の楽園」のようなものを感じています。今のシンプルさの原点として魅力を感じています。

プロコフィエフ:ピーターと狼 / サン=サーンス:動物の謝肉祭
カミーユ・サン=サーンス「動物の謝肉祭」
アルバムとして扱っていいのか迷いましたが、私が音楽に導かれる大きなきっかけになった組曲です。私が中学2年生の時に吹奏楽部で演奏しました。「私は今、雄鶏と雌鳥の夫婦喧嘩の羽の音を演奏している」「骨を演奏している」「気泡を演奏している」など感動が絶えませんでした。

<2>リリース情報

Die for Me
Die for Me

posted with amazlet at 19.11.23
Tanukineiri Records (2019-11-28)

レーベル:Tanukineiri Records
品番:TNR-141
フォーマット:Spotify,Apple Musicなどのサブスク配信
https://distrokid.com/hyperfollow/takaraaraki/die-for-me
収録曲:
1. DIE FOR ME
2. GODDESS
3. LUXURIA
4. JUNE
5. 陰(WOMAN)

Paranoia
Paranoia

posted with amazlet at 19.11.23
Tanukineiri Records (2019-11-14)

収録曲:
1.Paranoia
2.Selfish
3.I’m In Love
4.Speechless
5.Loser

Takara Arakiプロフィール


Takara Araki 1994年生まれ、
神奈川県在住 トラックメイカー兼シンガーソングライター
2003 マーチングバンドでスネアドラム演奏を始める
2010 指揮法を安藤伸二に師事
2011 声楽、ピアノ、スネアドラムのレッスンを開始
2013 作曲を始める
2017 下北沢モナレコードのコンピアルバム「モナレコ・コンピ~夢中にならないで~」に「女優」が収録される
Twitter:https://twitter.com/takara___araki

Takara Araki代表曲

rakia “Silence, Warm & Bright feat.Takara Araki” from『Trace Of A Dream』

Gimgigam – Horizon (feat. Takara Araki) (Lyric Video)

ライター:yabori
yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori