最終更新: 2021年8月9日
目次
2019年の年間ベストソング30曲
2019年、この曲はよく聴いたもしくは印象的だった曲は?と聞かれると何を思い浮かべるだろうか。
BELONGでは今年から新人インディーバンドを中心に掲載していた手前、アルバムよりも楽曲をメインに聴く事が多かった。
例年ならベストアルバムをやっているのだが、今年は曲を中心に選ぶ方が面白いんじゃないかということで、ベストソングを選ぶことにした。
今年聴いてきた曲も、この記事をきっかけに知った曲も、2019年を振り返りながら聴いてもらえたらと思う。
年間ベストソングプレイリスト
Rio Miyamotoが選ぶ今年の10曲
Vampire Weekend 「This Life」
彼らのソングライティング技術はメジャーで通用するレベルなのだが、同時に自由さと音楽に対する情熱はインディーズで、まさに”メジャーとインディーズのいいとこ取り”なのだ。
豪華なコラボやオマージュ、そして細野晴臣の曲をサンプリング使用するなど、地球の描かれたジャケットが表すように国境を越えて幅広いアーティストが結集した最高傑作だ。(Rio Miyamoto)
FUR 「Him and Her」
FUR(ファー)の音楽に出会った時、初めてArctic Monkeysを聴いたときに感じた衝撃に似た何かを感じた。
ストレートど真ん中を本気で狙っている感じ、という表現が一番近いのだが、FURの楽曲、特にサビのメロディーの”ハズし方”のセンスに脱帽した。
自信を持って人に勧めたくなるエッセンスが満載で、個人的に今年発掘したバンドの中で一番期待値が高いバンドだ。(Rio Miyamoto)
Tame Impala 「Patience」
Tame Impala(テーム・インパラ)はファーストアルバムの時から愛聴しているのだが、まさかこのレベルに達するとは夢にも思わなかった。
サイケデリックとアダルトなオシャレ感が両立している上、この上なくグルーヴィーなのだ。
一ミュージシャンとして成熟した彼らが2000年代を代表し、後生に語り継がれるアーティストになる軌跡を今目撃している幸せを噛みしめながら聴いて欲しい。(Rio Miyamoto)
Temples 「The Beam」
一番好きなバンドは?と聞かれたら迷わずTemples(テンプルズ)と即答するほど彼らの音楽が好きなのだが、
今作でシンセメインのサウンドからギターロックに大きく舵を切った彼ら。
この曲はA面曲ではないが一番ツボにハマったので今回選ばせて頂いた。サビはどこか飛躍していく感覚があり、その疾走感が気持ちいい。
アウトロのソロでわざとキーを外しているのだが、その外し方がまさにTemples!なのでぜひ聴いて欲しい。(Rio Miyamoto)
Bibio 「Curls」
Bibio(ビビオ)は、”景色を音楽で表現する天才”として尊敬するアーティストの一人だ。
今作は特に大自然の雄大さと繊細さを同時に感じるアルバムに仕上がっているのだが、本当に聴いているだけで大自然の中に身を委ねている様な感覚になる。
Bibioは”アーティストが好きなアーティスト”の部類に入ると思うのだが、音楽を作る側でなくとも、この味のあるサウンドと美しいメロディーに心奪われるのではないかと思う。(Rio Miyamoto)
Minor Poet 「Tropic of Cancer」
初めてこの曲を聴いたとき、Smith Westernsの再来か!?、と二度見ならぬ二度聴きしたアーティスト。
彼の楽曲はポップ感120%でメロディーがとにかく良質なのだ。それと彼の歌声がSmith Westernsとの共通項だろう。
SSWとして自身で作曲からレコーディングまで成し遂げるアーティストの楽曲は全てのサウンドにその人のテイストが練り込まれているが、この曲を聴くとそれを感じてもらえるはずだ。(Rio Miyamoto)
Golf Alpha Bravo「Groove Baby Groove」
Jagwar Maのボーカル、ガブリエルによるソロ・プロジェクトが今年始動した。
第一弾として発表されたのがこの曲なのだが、”愛すべきバカ”というフレーズが似合う楽曲だ。
楽曲のシンプルさと気分を高揚させてくれるアップリフト感はオーストラリア人特有の陽気さからくるもの、というのが音を通して伝わるのだ。
育った地域や作曲する環境などで楽曲の色は変わると思うのだが、その色が顕著に感じられる楽曲だ。(Rio Miyamoto)
Anni B Sweet「Buen Viaje」
Templesのフロントマンであるジェームス・バグショーが初めてプロデューサーを務めたことで話題を集めた彼女の最新作。
ヘッドホンで聴くと音の奥行きを始め、左右で振り分けられたギターなど、細かいサウンドメイキングがなされているのが分かる。
彼女の歌うスペイン語も味があり、一昔前の海外のB級映画を想起させるヴィンテージ感のあるサウンドで表現されるスペーシーなサウンドスケープは中毒性があり何度も聴き返したくなる。(Rio Miyamoto)
Whitney 「Giving Up」
Whitney(ホイットニー)はリスナーの期待を全く裏切らなかった。
今年セカンドアルバムを発売し、最初のシングル曲として発表された音源が「Giving Up」だったのだが、この時点で間違いなく前作を上回っている実感があった。
サウンドの方向性に大きな変化はないが、しっかりとブラッシュアップされているため前回のローファイ感が好きなファンもすぐに馴染める質感に仕上がっている。
聴くと心が優しく包まれるこの暖かさは極上だ。(Rio Miyamoto)
Drugdealer 「Lost in My Dream」
Drugdealer(ドラッグディーラー)。名前からしてジャンキーまっしぐらだが、彼はなかなかの正統派ミュージシャンだと思う。
The BeatlesやThe Beach Boysなどの古典派好きには必ず刺さるクラシック感に、嫌らしくない程度にサイケデリックな要素を詰め込んだ楽曲が彼のテイストだ。
サウンドも背伸びせずしっかりと60年代を踏襲している。間違いなく過小評価なアーティストなので、名前による先入観を捨ててまずは一聴して欲しい!(Rio Miyamoto)
滝田優樹が選ぶ今年の10曲
LANA DEL REY 「Venice bitch」
9分超えの長尺ながら文句なしで今年一番聴いた曲。純粋無垢で煌びやかなメロディが永遠を感じさせてくれる。
ストリングスが印象的な序盤から徐々にサイケデリックな要素を孕み、暴力的な展開へと発展する。
中盤以降にはすでにもう一度初めから聴きたくなってるという不思議な感覚に襲われる。飽きが来るどころか無限に聴きたくなる名曲。(滝田優樹)
SASAMI 「Adult Contemporary (feat. Soko)」
Dirty ProjectorsやPavementらでお馴染ドミノ・レコーズからデビューの女性SSW。
元々はLAのインディ・ロックバンドCHERRY GLAZERRのキーボードとして活動して活動していた経歴を持つ彼女はマルチ奏者でもある。
いわゆるDIY的に作りこまれたベッドルームポップ~インディロックが見え隠れするアーバン・メロウな楽曲。
鳴らされる楽器自体は生々しいのに曲全体は靄がかかって妖艶なのがたまらない。(滝田優樹)
yeule 「An Angel Held Me Like a Child」
シンガポール出身でロンドンをベースに活動するシンガー/トラックメイカー。
ジャケ写やアー写先行で、きっといい音楽だと確信して聴いてみたら見事にハマった。
Nat Ćmieのエレクトロニック・ポップ・プロジェクトとして立ち上げられたyeule (ユール)は、ゴシックやドリームポップを存分に取り入れたエレクトロニカポップを武器とする。
耽美を極めた楽曲はネクストGrimesとも言える才能を感じた。(滝田優樹)
Better Oblivion Community Center 「Exception to the Rule」
LAの女性SSW、Phoebe Bridgersとオマハ出身のSSW、Conor Oberstによる新プロジェクト。
アルバム全体ではフォークやカントリー、インディロックを主軸に、2人の掛け合いを聴かせる。
しかし、この曲はエレクトロニカ要素が多めになっていて、ビートが前面にくるモダンポップな趣である。
それぞれ、ソロでの活動では確認できない姿を観れるのもお得感があっていい。(滝田優樹)
YVES JARVIS 「out of the blue, into both hands」
モントリオールを拠点にプロデューサーやコンポーザー、そして作曲家としても活動するJean-Sebastian Audetのソロプロジェクト。
小粋でブルージーなローファイギターが味わい深い本曲。
しかし、古臭さは全くなくソウルフルな歌声と幻想的なサウンドエスケープとが合わさり奇妙に音世界を演出する。異質や異質。(滝田優樹)
The Soft Cavalry 「Bulletproof」
Slowdiveのレイチェル・ゴスウェルとその旦那スティーヴ・クラークによる新プロジェクト。
クラブミュージックのように厚くてバシバシとくるドラミングから幕をあける「Bulletproof」。
ダンサブルなサウンドワークに面食らいつつ終始2人で唄われる仲睦まじい展開に少しほろりとくる。
2人が織りなす甘美で艶めかしいヴォーカルとローが効いたパンチあるサウンドとのギャップが完璧。(滝田優樹)
Sharon Van Etten 「Memorial Day」
いかにもサイケなねっとりとしたサウンドと子供の鼻歌のような奇怪なサンプリング、どこを取ってもエキセントリックで前衛的であるのに着地点はポップミュージック。
してやられた・・・。
ジャケット写真で象徴的なそこかしこに散らばったおもちゃ、そのおもちゃのように配置された電子音が計算なのか感覚的なのかわからないのもまだ憎たらしい。(滝田優樹)
Nilüfer Yanya 「 In Your Head」
主戦場はソウルであっても、ニューウェイヴやインディロックなサウンドで唄わせても輝きを魅せる。
ハスキーでメロウなボーカルはこの曲では最高潮に開放的で爽快感を与えてくれる。
あれ?本当にソウルミュージシャン?なの?って何回も確認しちゃったけど、それほど歌のバリエーションが多いってこと。(滝田優樹)
Beabadoobee 「Disappear」
Dirty Hit の新人。鋼感のあるギターとLo-Fiな質感、キュートなヴォーカルとが織りなすベットルームポップは極上の癒しとなった。
Emily YacinaやClairoあたりのベットルームポッププロジェクトからもリリースあったが、その中でもこの曲は一番可愛かった。
仄かなスパイスとごく僅かな違和感を孕ませたアレンジも秀逸。(滝田優樹)
Drahla 「Stimulus For Living」
この曲を聴いて真っ先にSonic Youthの『GOO』を思い出した。ベースもヴォーカルも全盛期のキム・ゴードンだったもんだから(笑)。
いい感じにダーティなギターもその通りだし、Sonic Youthからの影響を感じさせまくりなんだが、この時代にここまでの質感で寄せられるって逆に凄いなと。
グルービーなサックスがアレンジとして取り入れられてるところも突飛でツボ。(滝田優樹)
yaboriが選ぶ今年の10曲
Deerhunter「Death in Midsummer」
今年の来日も記憶に新しい、Deerhunter(ディアハンター)。
インディー・ロック最重要バンドと言われて久しいが、彼らはその名に甘んじることはなかった!
アメリカの片田舎で着想を得て、録音したかのような不思議なサウンドが妙に心地良い。
毎度、彼らの引き出しの広さと奇想天外さには驚かされっぱなしだが、それを成し得るのもバンドのブレインであるブラッドフォード・コックスの想像力に他ならない。(yabori)
Babe Rainbow「Morning Song 」
オーストラリアのサイケ・ポップバンド、Babe Rainbow(ベイブ・レインボー)。MVや写真を見る限り、未だにヒッピー生活をしているんじゃないかと勘繰りたくなる。
そんな大自然と一体となった生活が功を奏したのか、めちゃくちゃユルいポップサウンドが絶品。
ここまで読むとどうせ60年代の焼き回しだと思うだろうが、ドラムは宅録っぽいローファイな打ち込みサウンドで同時代性もちゃんとあるんだな。(yabori)
Aldous Harding「The Barrel 」
今年一番聴いた曲はひょっとするとこれかもしれない。今年来日したAldous Harding(オルダス・ハーディング)のサードアルバム『Designer』からの1曲。
一見すると上品な美人なのだが、実はこういう人だったのか!という笑撃的なMVも話題にもなった。
本人がどうであれ、とにかく曲が良い。必要な音が必要な場所で鳴っていて、余計なものがないというミニマムさ。
それゆえ何度聴いても聴き飽きることがないのが最大の魅力。(yabori)
Plastic Mermaids「Floating in a Vacuum」
音楽性を伝えるために、バンド名を出すやり方はありがちなのだが(自分もよくやる)、外れることが多々ある。
サイケ・ポップバンドの際、引き合いによく出されるのがMGMTなのだが、聴いてみて「違うやん!」となることばかりであった。
しかしながらPlastic Mermaidsこそ、真のMGMTの再来だと言いたい!
イントロの転がるような弦楽器、突き抜けるようなドラムサウンド、けだるいボーカルと全てが揃っている。(yabori)
Ex Hex「Cosmic Cave」
こんな音楽が聴きたかった!超爽快なロックを鳴らす、女性3人組のバンド・Ex Hex(エクス・ヘックス)。
男勝りな大爆音を鳴らす彼女たちが今作のレコーディングで使用したアンプは癖が強く、徹底的にアナログにこだわったRockman。
それゆえ(音が)でかい・(曲が)短い・(癖が)強いと3拍子揃ったぶっ飛びサウンドが誕生したのだ。それを3分ちょうどにまとめるバランス感覚も素晴らしい!(yabori)
Weyes Blood「Everyday」
悪趣味なCarpentersこと、ナタリー・メーリングのプロジェクト、Weyes Blood(ワイズ・ブラッド)。
去年はThe Lemon Twigsが本格的にブレイクし、バロック・ポップ復活の狼煙を上げたのだが、今年の主役は彼女だった。
牧歌的でポップな良曲なのだが、これでもかというほどB級なホラー映画仕立てのMVとの対比が面白い。
アルバムタイトルは『Titanic Rising』だし、つくづく趣味が悪い(笑)。(yabori)
Jay Som「Tenderness」
ドリーム・ポップの新星、Jay Som(ジェイ・ソム)の1曲。この曲を初めて聴いた時、何て懐かしい曲なんだろうと思った。
初めて聴いたのも関わらず、昔聴いたかのような感覚があったのはとても不思議だった。
カセットテープのような音質と子守唄のようなボーカルは、聴くものを幼少期にトリップさせる。
ドリーム・ポップは聴き手に別世界に連れて行くものと言われているが、懐かしかったあの頃にトリップさせてくれるこの曲は新しいドリーム・ポップなのではないかと思う。(yabori)
DYGL「Spit It Out」
前身バンドのYkiki Beatの時から、海外のインディーロックと勝るとも劣らないサウンドを作っていた彼ら。
DYGL(デイグロー)ではよりソリッドなガレージロックに転身したが、海外での活動が実を結び、今作で圧倒的な自信を手に入れたことが分かる。
ロックはもともとダンスミュージックであったという根源的な歴史すら思い起こさせる、ロックの神に愛された1曲。(yabori)
The Voidz 「The Eternal Tao 」
この曲を聴くと「ジュリアンさん、これ、The Strokesで歌わなくて大丈夫なんすか?」と勝手に心配してしまう。
というのもこの曲の歌詞はジュリアン・カサブランカスが16才の時に感じた怒りや不条理について歌われており、パーソナルかつ重大なテーマを扱っている。
裏を返せば、それだけThe Voidz(ザ・ヴォイズ)が彼にとって大事な表現の場所になっているということでもあるのだろう。彼のパンク精神に触れられる貴重な一曲。(yabori)
THE NOVEMBERS「ANGELS」
本作リリース前にアルバムタイトルが『ANGELS』になると告知され、思わずのけぞってしまった。
初めはどうなることやらと思っていたが、アルバム全体を聴くと、過去作とは比べものにならない飛躍が見えた。
特に「ANGELS」は、貫いてきた“美しさ”と“爆音”であることをこれまでとは別次元で融合させた1曲。
小林は「自分たちは大きな船でありたい」と言っていたが、この曲にはこれまでのすべてが詰まっていると思う。(yabori)
ライター紹介
Rio Miyamoto
兵庫県出身のサイケデリック・ロックバンド、Daisy JaineのVo./Gt.。アメリカ・ボストンに留学経験があり、BELONGでは翻訳を担当。サイケデリック、オルタナ、60s、ロカビリーやR&Bと幅広く聴きます。趣味はファッション、写真、映画観賞。
Twitter:@rio_daisyjaine
滝田優樹
北海道苫小牧市出身のフリーライター。音楽メディアでの編集・営業を経て、現在はレコードショップで働きながら執筆活動中。猫と映画観賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
Twitter:@takita_funky
ライター:yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
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Twitter:@boriboriyabori