THE NOVEMBERS(ザ・ノーベンバーズ)が、8th アルバム『At The Beginning』をリリースする。

7th アルバム『ANGELS』から約1年ぶりのニューアルバムで、収録曲「薔薇と子供」が先行公開されている。

本来であれば、その新作『At The Beginning』を携えたワンマン“TOUR – 消失点 -”が本日(5月16日)から開始する予定であったが、新型コロナウイルスの影響のため延期となっている。

そんな混乱のなかリリースされる『At The Beginning』は、先日公開された『ANGELS』レビューでも記したとおり、前作からの流れを引き継いだ作品とである。

今回はそれを踏まえて、今作『At The Beginning』について語らせていただく。

そのため、まずはその記事を読んでから本稿を読むことをお願いしたい。

『At The Beginning』とは

『At The Beginning』 Album Cover
THE NOVEMBERS(ザ・ノーベンバーズ)、8枚目のアルバム『At The Beginning』。

シーケンスサウンドデザイン/プログラミングにyukihiro(L’Arc~en~Ciel、ACID ANDROID)を迎え、今回もアルバムジャケットはtobirdが手がけた。

5月16日からはBandcampのみで先行販売され、5月27日以降はダウンロード販売やストリーミング配信、フィジカルリリースが開始される。

新作『At The Beginning』を端的に言えば、アンビエント・ミュージックの作法を取り入れた前作『ANGELS』を応用した作品である。

その応用は“At The Beginning”といったタイトルに逆らい、可逆変化することなく、より強靭な武器へと変化した。

例えば、サウンドとシンクロした歌詞。
そして、埋もれてしまわないサウンドメイク。

より音と詞の繋がりを強く感じ、必然性と具体性をもって曲が出来上がったことが伺える。

『ANGELS』で獲得した音楽表現はそれほどにも大きかった。

今回も全曲解説をもって、最新アルバム『At The Beginning』の全容をお伝えする。

全曲レビュー

「Rainbow」

アンビエント、インダストリアル、そしてドラムンベースと漸次的な変化を魅せる「Rainbow」。

“そうさ君はいつもここが はじまりさ”

という号令とともに、それらが一つの受け皿に流し込まれ大きな爆発を起こす。

ここで浮き彫りになるのは音の融和ではなく、共存。

奥からはギター、手前にはヴォーカル、左右にはシンセや打ち込みといったようにそれぞれの居場所がわかる。

どんなに小さな音でも埋もれることなく、その存在を知らせてくれる。

6thアルバム『Hallelujah』から6th EP『TODAY』、7thアルバム『ANGELS』を経て、辿りついた音響効果だ。

「薔薇と子供」

全編に渡って「Rainbow」で記した音の共存が施されていることは大前提として、シンセや打ち込み、

ドラムパッドなどデジタル化された音を有機的に機能させているのも今作『At The Beginning』の聴きどころ。

ドラムの単音を波紋状に広げるイントロ部分は、その波紋にサイレンを思わせるサウンドを這わせることで

“いま右足で踏んだ花には名前があるって いまお喋りしている人が教えてくれたよ”

という歌詞が活きてくる。

今まさに、花を踏んだということを知らせてくれているようだ。

音の必然性と具体性に注目することはTHE NOVEMBERSの作品を解き明かすにあたっての必須条件になっている。

「理解者」

グランジなギターを盛大に盛り込んだ「理解者」は、サウンド全体がローファイに処理されている。

曲の中間と後半部分に関しては断続的にノイズないしは、砂嵐が挿入されヒステリックに展開。

生ドラムとギターノイズ、断末魔じみたドローンと対比的に挿入される陽気なワウ音、

全てを加工せずに並列に鳴らすことでどのように響くのか実験したアグレシブなナンバーだ。

築き上げたアンビエントな手法を、ここにきて一度解体させるとは――。

「Dead Heaven」

起伏あるシンセサイザーとそれに沿っていくベースライン、まとわりつく冷ややかなギター、火がついた導火線のようにそれを追いかけるトラップビート。

ようやく追いついたころで、ヴォーカルの小林が“踊ってる俺を 誰が どこの誰が 踊らせることができる どこの誰が”と咆哮する。

ここでの打ちこみビートから生ドラムへの切り替えが見事であり、前作『ANGELS』の「TOKYO」と同様に

ビート・ミュージックを取り込みバンドサウンドに馴染ませた、というよりも意識的にコントラストとして採用したという印象だ。

“どちらが俺を踊らせるころができる?”といった具合に。

「消失点」

「消失点」というタイトルが冠せられた本曲は、『At The Beginning』という作品のなかでは“特異点”だ。

イメージとしては木の実ではなく、ハープ、チェンバロなどバロック・ポップに用いられる楽器などが奏でる音粒子を詰め込んだ、マラカスの中にいる感覚。

エレポップを緩衝材にして、そのマラカスを軽快に振り鳴らされたと錯覚するサウンドワークである。

多要素が複雑に絡み合う混乱を繋ぎ止めるのは、炭酸みたいにシュワシュワっとしたノイジーな音処理。

“いままで見えなかった風景 聞こえなかった声達を”

奇怪なサウンドワークだが、その細かな工夫が、誰が聴いても胸躍るポップミュージックへと昇華させている。

「楽園」

「消失点」を通過して、行き着く「楽園」。

ハープや大胆なストリングスを導入しつつ、民族音楽テイストのパーカッションから水のせせらぎ、鍵盤打楽器などヒーリング・ミュージックを踏襲した楽器さばきとなっている。

それぞれが癒しを与える音の響きであるが、これらは音の隙間なく、きっちりと敷き詰められている。

せわしないその様は、まさに「みんな急いでいる」だ。

6th EP『TODAY』に収録された「みんな急いでいる」は音の空白を意識して、環境音を配列していたのに対して、「楽園」では環境音を埋め込んでいる。

ここでも過去作なくして、『At The Beginning』が完成されなかったことを証明している。

「New York」

「楽園」で過去作なくして、今作がないことを結論付けた直後に“過去はくれてやる”という歌詞で一蹴する「New York」。

打ち込みやシンセ、ドラム、そして歌詞が反復されいつしかKraftwerkさながらのアバンギャルドなテクノポップへと変容していく。

ミニマルなプロダクションであるが、耳を引くのはアナログ感あふれるコーラスと愉快な口笛だ。

これまでになかったアプローチだが、サウンド配置と構造の改革や音響効果との向き合いがあったからこそ挑戦できた新機軸ではないだろうか。

「Hamletmachine」

タイトルと歌詞から伺うにハイナー・ミュラーによる劇作『Die Hamletmaschine』がモチーフとなっているのだろう。

しかし、「Hamletmachine」においては更にアップデートされたギターノイズについて書き記したいと思う。

5thアルバム『Rhapsody in beauty』から表出したノイズに対する探求を「ANGELS」で到達点を迎えたと思えたが今作でも続いていたようだ。

確信をもったサウンドデザインを基に一心不乱にかき鳴らし、史上最大級の音圧で届けられるノイズシャワーは、まるで次元が違う。

他の楽器に潰され、潰すことなく聴覚を刺激し、音のイメージをくっきりと浮かび上がらせる。

それは“屑鎖 俳優 止揚 笑顔 亡霊 偽りの個人”かもしれないし、それ以外かもしれない。

「開け放たれた窓」

淡く優しいシンセサイザーと飾り気のないストリングス、刻まれるハイハット、無垢なヴォーカルが紡ぐムーディなバラード曲「開け放たれた窓」。

胸を締め付ける物憂げな唄のメロディは、風通しのよい音像によってふうふわと舞い、

“君に本当のこと言わなくちゃ 君に大事なこと伝えなきゃ”

という一節は口ずさんでしまうほどにキャッチーな調べとなる。

純度が高く深く沁み入るサウンドと抽象的に描かれた歌詞。故に聴くたびに「開け放たれた窓」の解釈は変わっていく。

歌詞の必然性

『ANGELS』を通過して、『At The Beginning』における音と詞の結びつきはさらに強くなったと言えるだろう。

サウンドが擬態した歌詞、歌詞が擬態したサウンド。といった具合により心象風景を描きやすくなった鮮やかな音像。

1曲1曲を解明していく段階で、その音像が思い浮かび上がらせるものやことは歌詞にリンクしている、という発見がいくつもあったからだ。

意識的な音作りと作詞がなければ、こういったシンクロは多く起きるものではない。

また、『At The Beginning』では“本当”という歌詞が多く存在する。

“どんな綺麗事も本当になる 嘘みたいに”(Rainbow)

“本当の世界みえるかい 本当の声がきこえるかい”(消失点)

“ねえ本当の太陽って どんなにあたたかいんだろう”(楽園)

“君に本当のこと言わなくちゃ 君に大事なこと伝えなきゃ”(開け放たれた窓)

THE NOVEMBERSにとっての“本当”とは、より曲のイメージがサウンドで表現しやすくなったことに由来するのではないだろうか。

“本当”に届けたい音楽を届けられる喜びに『At The Beginning』と銘打ち、再出発を誓った。

“誰かが隠したわけじゃない 種も仕掛けもなく ずっとそこに在った”(消失点)

決してこれまでの作品が、必然性と具体性を欠いたものでも“本当”じゃなかったわけでもない。

THE NOVEMBERSがやりたい思うことや伝えたいものを音楽として表現しやすくなった、ということだ。

前作を“飽くなき探求と深遠なる表現、そして慈悲深さがつまった7thアルバム『ANGELS』はロックバンドにおける音楽表現の幅をも広げた1枚である。”

と帰結させたが、今作『At The Beginning』にあたっても、それはそっくりそのまま当てはまるだろう。

誰が聴いたってさらなる深化も進化も遂げた作品を作りあげ、それでいて本人たちは『At The Beginning』と宣言する。

その姿勢にただただ恐れおののくばかりだ。

きっとこれからもTHE NOVEMBERS は“本当”を追い求め、その都度リスタートを切り“本当”を届けてくれるに違いない。

リリース

8thアルバム『At The Beginning』

『At The Beginning』 Album Cover
発売日:2020年5月発売
収録曲:
01.Rainbow
02.薔薇と子供
03.理解者
04.Dead Heaven
05.消失点
06.楽園
07.New York
08.Hamletmachine
09.開け放たれた窓

7thアルバム『ANGELS』

発売日:2019年3月13日
収録曲:
01.TOKYO
02.BAD DREAM
03.Everything
04.plastic
05.DOWN TO HEAVEN
06.Zoning
07.Ghost Rider
08.Close To Me
09.ANGELS

6thアルバム『Hallelujah』


発売日:2016年9月21日
収録曲:
01.Hallelujah
02.黒い虹
03.1000年
04.美しい火
05.愛はなけなし
06.風
07.時間さえも年老いて
08.!!!!!!!!!!!
09.ただ遠くへ
10.あなたを愛したい
11.いこうよ

5thアルバム『Rhapsody in beauty』


発売日:2014年10月15日
収録曲:
01.救世なき巣
02.Sturm und Drang
03.Xeno
04.Blood Music.1985
05.tu m’(Parallel Ver,)
06.Rhapsody in beauty
07.236745981
08.dumb
09.Romancé
10.僕らはなんだったんだろう

4thアルバム『zeitgeist』


発売日:2013年11月30日
収録曲:
01. zeitgeist
02. We
03. Louder Than War (2019)
04. Wire (Fahrenheit 154)
05. D-503
06. 鉄の夢
07. Meursault
08. Sky Crawlers
09. Ceremony
10. Flower of life

3rdアルバム『To (melt into)』


発売日:2011年8月3日
収録曲:
01. 永遠の複製
02. 彼岸で散る青
03. 瓦礫の上で
04. はじまりの教会
05. 37.2°
06. ニールの灰に
07. 日々の剥製
08. 終わらない境界
09. holy

2ndアルバム『Picnic』


発売日:2010年3月10日
収録曲:
01.Misstopia
02.Figure 0
03.dysphoria
04.pilica
05.パラダイス
06.sea’s sweep
07.Gilmore guilt more
08.I’m in no core
09.Sweet Holm
10.ウユニの恋人
11.tu m’

1stアルバム『Picnic』


発売日:2008年6月4日
収録曲:
01.こわれる
02.Arlequin
03.chernobyl
04.アマレット
05.ewe
06.僕らの悲鳴
07.ガムシロップ
08.アイラブユー
09.白痴
10.picnic

ライブDVD『美しい日』

THE NOVEMBERS 11th Anniversary FILM『美しい日』
フォーマット:2DVD
Disc1:11th Anniversary & 6th Album Release Live “Hallelujah” at Shinkiba STUDIO COAST(110min)
Disc2:11th Anniversary Documentary(64min)
レーベル:MERZ
品番:MERZ-0107
発売日:2017年4月22日(土)
価格:5,500円(本体価格)

プロフィール

THE-NOVEMBERS/ANGELS

“2005年結成のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTより1st EP「THE NOVEMBERS」でデビュー。様々な国内フェスティバルに出演。
2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、 2014年には「FUJI ROCK FESTIVAL」 のRED MARQUEEに出演。海外ミュージシャン来日公演の出演も多く、TELEVISION,NO AGE,Mystery Jets,Wild Nothing,Thee Oh Sees,Dot Hacker,ASTROBRIGHT,YUCK等とも共演。

小林祐介(Vo/Gt)はソロプロジェクト「Pale im Pelz」や 、CHARA,yukihiro(L‘Arc~en~Ciel),Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO`s bloodでも活動。ケンゴマツモト(Gt)は、園子温のポエトリーリーディングセッションや映画「ラブ&ピース」にも出演。高松浩史(Ba)はLillies and Remainsのサポート、吉木諒祐(Dr)はYEN TOWN BANDやトクマルシューゴ率いるGellersのサポートなども行う。

2015年10月にはBlankey Jet CityやGLAYなどのプロデュースを手掛けた土屋昌巳を迎え、5th EP「Elegance」をリリース。
2016年は結成11周年ということで精力的な活動を行い、Boris,Klan Aileen,MONO,ROTH BART BARON,ART-SCHOOL,polly,Burgh,acid android,石野卓球,The Birthday等錚々たるアーティストを次々に自主企画「首」に迎える。2016年9月に6枚目のアルバム「Hallelujah」をMAGNIPH/HOSTESSからの日本人第一弾作品としてリリース。11周年の11月11日新木場スタジオコーストワンマン公演を実施し過去最高の動員を記録。2017年FUJI ROCK FESTIVAL WHITE STAGE出演。

2018年2月には、イギリスの伝説的シューゲイザー・バンドRIDEの日本ツアーのサポート・アクトを務める。同年5月、新作EP『TODAY』をリリース。”

引用元:THE NOVEMBERS公式HP

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ライター:滝田優樹

北海道苫小牧市出身のフリーライター。音楽メディアでの編集・営業を経て、現在はレコードショップで働きながら執筆活動中。猫と映画観賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky