ネオソウルとは、ソウルミュージックと他ジャンルが結合しながら派生して誕生したR&Bのサブジャンルである。

ファンクやヒップホップなど、様々なジャンルから成り立つため、どこからがネオソウルなのか定義するのは正直難しい。

だが最近では、ネオソウルは身近な存在になり、日常で耳にする機会が増えてきている。

そこで今回は、ネオソウルに共通する特徴や歴史、そして注目の新人アーティストを10組紹介したい。

ネオソウルとは

JUNGLE
JUNGLE

ネオソウルは80〜90年代前半にアメリカとイギリスにて、ソウルとR&Bが組み合わさって誕生した音楽ジャンルである。

ネオソウルの音楽性は幅広く、R&B以外にもジャズやファンク、ヒップホップやキーボードなどの電子楽器を多用したエレクトロニック音楽、さらにはフュージョンやアフリカン・ミュージックの要素も取り入れられる。

1990年代中頃にはソウルのリバイバルとして、ディアンジェロやエリカ・バドゥなどのアーティストによって広められ、2000年代前半に全盛期を迎える。

そして2010年代、アリシア・キーズやフランク・オーシャンなど、トップチャートを賑わすアーティストにより、ポピュラーミュージックとして復興してきた。

後で紹介するMoonchildやBLACK PUMASなどは、2020年代のネオソウルの未来を担っている。

ネオソウルの特徴

ネオソウル(neo-soul)

ネオソウルは他ジャンルとの境界線がはっきりしていない。

アーティスト毎に魅せる色は十人十色だとは言え、一体どの要素がネオソウルとして確立するのに必要不可欠なのか。

そこで、ネオソウルに共通する特徴を3つまとめたので説明したい。

感情を込めた歌詞

ネオソウルの特徴の一つとして、感情を込めた歌詞が重要視される。

というのも、元々ソウルミュージックでは、黒人が差別撤廃などの社会的なメッセージを歌い上げていた歴史があり、その強いメッセージ性が現在も引き継がれていると思われる。

ネオソウルの中でもヒップホップ要素が強い曲では、社会性、普遍性、文化的背景などを反映された歌詞も多い。

ソウル、すなわちアーティストの”魂”を力強く音楽に昇華させているジャンルがネオソウルである。

幅広いスタイルのボーカル

ネオソウルの特徴として、幅広いスタイルのボーカルが挙げられる。

古典的なソウルのスタイルとして、ゴスペルのようなパワフルで感情的なボーカルやコーラスなどがある。

特に最近のネオソウルでは、ファルセットを生かしたテクニックや囁くようなボーカルスタイル、さらにヒップホップや男女混声が主流である。

これらのボーカルスタイルと、先ほど説明した感情を込めた歌詞により、聴き手の心に響くネオソウルが完成するのである。

グルーヴ

ネオソウルと言えばざっくりと”オシャレな音楽”というイメージが強いかと思う。

その”オシャレ”の大きな要素の一つがグルーヴ感ではないかと考える。

ネオソウルは、R&Bやファンクなど、リズム感を重要視する音楽がブレンドされたジャンルである。

そのリズム感に加え、ソウル特有の高いボーカルの表現力や、ジャズのテクニカルな演奏技法も加わり、それら全てがグルーヴに直結している。

そのグルーヴが、オシャレな雰囲気と心地よさを生み出すため、ドライブ・ミュージックやリラックス時のBGMとして使用されることが多いのかもしれない。

ネオソウルの代表的なアーティスト

ネオソウルのムーヴメントを引き起こした代表アーティストであるD’Angeloとエリカ・バドゥ。

そして現代のネオソウルシーンにおける重要アーティストの一人、フランク・オーシャンについて紹介していく。

D’Angelo

D'Angelo(ディアンジェロ)
D’Angelo(ディアンジェロ)はアメリカのバージニア州出身のSSW兼プロデューサー。

ヴォーカル、ギター、ピアノ、ベース、ドラム、そして作詞作曲までをこなすマルチ・アーティストとして知られている。

1995年にリリースしたファーストアルバム『Brown Sugar』で既存のR&Bを柔軟に変化させ、ネオソウルのムーヴメントを作り出した。

2000年にはセカンドアルバム『Voodoo』でグラミー賞最優秀R&Bアルバムを受賞し、今なおアーティストに尊敬されるアーティストとして楽曲提供の分野でも活躍している。

エリカ・バドゥ

エリカ・バドゥ(Erykah Badu)
エリカ・バドゥ(Erykah Badu)はアメリカのテキサス州出身のアーティスト。

1997年のデビューアルバム『Baduizm』ではグラミー賞と共に、ソウル・トレイン・ミュージック・アワードでR&B/ソウル・アルバムを受賞。

ソウルやR&Bはもちろん、ジャズやファンクを始めヒップホップなどを織り交ぜた音楽性がネオソウルのムーヴメントの火付け役となった。

圧倒的な歌唱力と表現力、そして感情に訴えかける内省的な歌詞。

これらの要素が、エリカ・バドゥをネオソウル界のクイーンとして成立させているのだろう。

フランク・オーシャン

フランク・オーシャン(Frank Ocean)
フランク・オーシャン(Frank Ocean)はアメリカのルイジアナ州出身のSSW、プロデューサー、写真家である。

2012年発売のファーストアルバム『Channel Orange』ではグラミー賞を受賞し、一気に名を世に知らしめた。

R&Bにソウル、ヒップホップにポップミュージック、他にThe EaglesやMGMTなどからサンプリングをするなど、音楽的影響は多岐にわたる。

フランク・オーシャンの音楽性はボーダーレスだが、R&Bをルーツに多ジャンルを発展させている点において、ネオソウルとしてカテゴライズされるのではないだろうか。

ネオソウルの新人アーティスト10組

ネオソウルがいかに多様性を含み、アーティストごとに独自のスタイルを確立しているのか。

そこで、ネオソウルの新人アーティストであるMoonchild、BLACK PUMAS、JUNGLE、Free Nationals、Hiatus Kaiyote、アンダーソン・パーク、FKA twigs、Rhye、The Marías、Yellow Daysの10組を通して、ネオソウルというジャンルの”広がり”を感じていただきたい。

Moonchild

Moonchild
南カリフォルニア出身のネオソウル・トリオ、Moonchild(ムーンチャイルド)。

R&Bやジャズ、そしてモダンなシンセサイザーを多用した電子音楽を包括したネオソウルが特徴だ。

ソウル特有のソウルフルなボーカルとは打って変わって、紅一点の女性ボーカル、アンバー・ナヴランの歌声はウィスパーのような優しさを強みとしている。

ビートを変幻自在に操り、独特のグルーヴを醸し出すのも”ネオ”ならでは。

そんなMoonchildの来日情報やバンドに関する内容はこちらから。

『Little Ghost』

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BLACK PUMAS

Black Pumas
第62回グラミー賞“ベスト・ニュー・アーティスト”にノミネートされた、テキサスのネオソウル・デュオ、BLACK PUMAS(ブラック・ピューマズ)。

BLACK PUMASは70年代へのリスペクトを感じさせるサイケデリックと、ヴィンテージなファンクのエッセンスを含んだネオソウルを奏でる。

そしてボーカリストのエリックによる透き通ったファルセット。

感情をこれでもかと言うほど詰め込んだ歌声は、新人バンドということを完全に忘れさせる存在感がある。

BLACK PUMASのリリース情報やバンドについては、こちらも合わせて読んでいただきたい。

『Black Pumas』

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JUNGLE

JUNGLE
ロンドン発の男女混合7人組ネオソウル・バンド、JUNGLE(ジャングル)。

Jamiroquaiやノエル・ギャラガーからも絶賛されているJUNGLEは、エレクトロやファンク、そしてダンスやサイケデリックを併せ持つ。

何層にも重ねられたシンセサイザーは壮大でサイケデリックな世界観を創り出す。

もちろん根底にあるのはグルーヴィーなソウルで、Bee Geesを彷彿とさせる裏声も秀逸だ。

JUNGLEのセカンドアルバム『FOR EVER』インタビュー記事はこちら。

『For Ever』

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Free Nationals

Free Nationals
Anderson .Paakのバックバンドとして知られる、ロサンゼルス出身の4人組ネオソウル・バンド、Free Nationals(フリー・ナショナルズ)。

レトロファンクと海外で称される彼らの音楽性だが、そこにソウルとR&Bがミックスされたネオソウル。

レトロファンクというのも、カセットやレコードなどのアナログ特有の温かみを音に落とし込み、受け継いできた過去の音楽へのリスペクトを表現している。

インスト曲以外は全て豪華アーティストとコラボし、メロウなドライブミュージックを奏でる。

Anderson .Paakを始め、豪華面々が参加したFree Nationalsのデビューアルバムについてはこちら。

『Free Nationals』

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Hiatus Kaiyote

Hiatus Kaiyote
オーストラリアはメルボルン出身の4人組バンド、Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)。

グラミー賞最優秀R&Bパフォーマンス賞にノミネートされた経歴を持つネオソウル・バンドである。

紅一点のネイ・パームの圧倒的な存在感に変則的なリズム、そして色んなジャンルの顔を覗かせるプログレッシブな曲展開に、ゲームのような奇妙なサウンドエフェクト。

一聴すると、様々な要素が混沌としているように感じるが、これらを一つにまとめるのがHiatus Kaiyoteのグルーヴ感だろう。

Hiatus Kaiyoteは見た目も相まって、ジャンルやバンドという概念を超え、一つの新しい”民族”なのではないだろうかとさえ思わせるバンドだ。

『Tawk Tomahawk』

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アンダーソン・パーク

アンダーソン・パークAnderson .Paak
アンダーソン・パーク(Anderson .Paak)はアメリカはカリフォルニア出身のシンガー、ラッパー、プロデューサー、マルチプレイヤー。

2019年にリリースされた4作目『Ventura』ではグラミー賞の最優秀R&Bアルバムを受賞している。

交友の幅が広く、ドクター・ドレーの作品への参加を始め、ライブではThe Free Nationalsをバックバンドにつけ、音楽プロデューサーであるKnxwledgeとのコラボデュオ、NxWorriesなど幅広く活動している。

『Oxnard』

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FKA twigs

FKA Twigs
FKA twigs(エフケーエー・ツイッグス)はイギリスのグロスタシャー出身の女性SSW。

音楽の他にダンサーや女優としての顔も持ち、マルチな才能を発揮している。

イギリスとアイルランドで最も優れたアルバムに贈られるマーキュリー賞や、ブリット・アワードにもノミネートされた経験がある。 

ビリー・ホリデーやマーヴィン・ゲイなどから影響を受けていると公言しており、エレクトロニック・ミュージックやヒップホップ、R&Bからネオソウルまでジャンルの壁を超越した音楽性がFKA twigsの特徴だ。

『MAGDALENE』

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Rhye

Rhye(2020)
Rhye(ライ)はカナダのトロント出身のマイク・ミロシュによる音楽プロジェクト。

アルバムのアートワークは一貫して官能的な女性のデザインで統一されているうえ、透き通ったハイトーン・ボイスはジェンダーレスなため勘違いしやすいが、Rhyeは男性アーティストである。

Washed OutやAirと共鳴するクリアなエレクトロニック・サウンドによって描かれるロマンティックな情景は美しくも、そこへ微かな陰影が見え隠れするのがRhyeの生み出すネオソウルである。(2020年11月17日更新)

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Yellow Days

Yellow Days(イエロー・デイズ)
Yellow Days(イエロー・デイズ)はイギリス出身のジョージ・ヴァン・デン・ブルックによるソロ・プロジェクト。

内に秘めた感情を剥き出しにしたハスキーかつソウルフルな歌声は圧巻で、同じくUKの新鋭King Kruleが引き合いに出されることが多い。

レイ・チャールズやThundercat、マック・ディマルコなどから影響を受けた音楽性は、ジャズやファンク、ローファイなサイケデリックを取り込んだ独自のネオソウルへと昇華されている。

どのジャンルも一瞬にして自分のフィールドへ持ち込む、変幻自在なソングライティング技術に優れたUKの若き才人だ。(2020年11月17日更新)

A Day in a Yellow Beat

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The Marías


The Marías (ザ・マリアス)はロサンゼルス出身の5人組バンド。

プエルトリコ生まれ、LA育ちのフロントウーマンであるマリア・ザードヤによって使い分けられる英語とスペイン語は、西海岸を飛び出した異国情緒を身に纏う。

そんなマリア・ザードヤの恍惚とした美声に加え、レトロフューチャーな音像から伝わるサイケデリア、そして居心地の良さが約束されたラウンジ・ミュージックがそこへ折り重なる。

エリカ・バドゥ、ディアンジェロ、Tame Impalaなど多様なアーティストからインスパイアされたThe Maríasの音楽性はサウンドにジャンル、そして言語と、あらゆる垣根を超えたネオソウルを創り上げた。(2020年11月17日更新)

Superclean, Vol. II

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ネオソウルは拡張する

ネオソウルを拡張させる、新世代アーティスト7組を紹介

80〜90年代に誕生してから、他ジャンルを取り込みつつ、時代に合わせたサウンドへ柔軟に変化しながら派生してきたネオソウル。

現代ではポピュラー・ミュージックとして、確立した地位を築き上げるまでになった。

その反面、行き過ぎた多様性から明確な定義がなく、サブジャンルとしてのレッテルは拭いきれないというのも事実である。

しかし、ソウルミュージックが多様性を取り入れてなければ、今の時代にここまでリスナーに愛されるジャンルに成り得なかっただろう。

懐古主義とモダニズムのどちらの強みも持ち合わせ、生活に馴染み易いリラックスしたグルーヴを身に纏い、ネオソウルは今後さらに拡張していくに違いない。

Youtube

  • Moonchild – “The List” (Official Video)
  • Black Pumas – Colors (Official Live Session)
  • Jungle – Casio
  • Free Nationals – Beauty & Essex (feat. Daniel Caesar & Unknown Mortal Orchestra) (Official Video)
  • Hiatus Kaiyote – Nakamarra
  • Anderson .Paak & The Free Nationals: NPR Music Tiny Desk Concert
  • FKA twigs – cellophane
  • Rhye – Open (Official Video)
  • Yellow Days – A Little While
  • The Marías – I Don’t Know You

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ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。

兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。

2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。

サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。

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