最終更新: 2024年5月11日

Sleater KinneyやBikini Killなどのガールズバンドが中心となって、90年初期に巻き起こったライオット・ガール・ムーブメントから約30年。

現在、そういったムーブメントを確認できないが各地で続々とガールズバンドが生まれては勢力を強めている。

先日リリースされたCHAIとHiNDSのコラボ曲「UNITED GIRLS ROCK ‘N’ ROLL CLUB」はそのことを告げるとともにガールズバンドとして女性としての飛躍を唄った1曲だ。

そんな「UNITED GIRLS ROCK ‘N’ ROLL CLUB」を受けて、ガールズバンドの益々の活躍を祈るとともにその勢いを伝えるべく5組のバンドを紹介させていただく。

ガールズバンドとは

その名の通り、ガールズバンドとはメンバー全員が女性のバンドのことである。

諸説あるが1960年代のPLEASURE SEEKERSがガールズバンドの草分けで、1970年代のThe Runawaysがガールズロック・バンドの道を切り開いたとされている。

また日本ではガールズやZELDA、少年ナイフといったバンドがその代表だ。

ライオット・ガール

Sleater-Kinney(スリーター・キニー)
Sleater-Kinney(スリーター・キニー)
その後、Sleater KinneyやBikini Killらが中心とするライオット・ガール・ムーブメントにより男性中心で女性軽視的であったバンドシーンに一石が投じられる。

それによりガールズバンドは音楽やファッションなどを通して女性らしさとは別の個性と多様性を訴えた。

このムーブメントはバンドシーンのみならず、社会や政治においても女性たちの権利拡張を訴える第三波フェミニズムを後押しすることにもなった。

つまりガールズバンドの活躍は女性の社会で活躍や権利を獲得することに繋がっているといっていいだろう。

ガールズバンドの台頭

Phoebe Bridgers(フィービー・ブリジャーズ)
Phoebe Bridgers(フィービー・ブリジャーズ)

90年代のライオット・ガール・ムーブメント以降、ガールズバンドの活躍は女性ヴォーカルのParamoreとFlyleaf、

ソロアーティストであるアヴリル・ラヴィーンといったロックアクトが活躍していたものの女性のみで構成されたバンドは2010年ころまで沈黙していた印象だ。

BeyoncéやLady Gaga、Taylor Swiftといった女性ポップ・アイコンの登場。Courtney BarnettやPhoebe Bridgers 、Julien Bakerといった女性シンガーソングライターシーン。

そしてUKはロンドンやマンチェスター、イングランドなどを中心に盛り上がるインディーロック界隈。

これらに促されるように近年ガールズバンドシーンにおいても活況を呈している。

2020年、注目のガールズバンド5組

ここまでガールズバンドにおける歴史と背景を解説してきた。

ここからはまた活気づいてきたそのシーンを知ってもらうべく注目のガールズバンド5組を紹介する。

そのどれもがエネルギッシュでパワフルなものであるだけでなく、多様な音楽性を孕んだ次世代バンドである。

Haim

Haim(ハイム)
エスティ・ハイム(Vo./Ba.)、ダニエル・ハイム(Vo./Gt.)、アラナ・ハイム(Vo./Gt./Key./Per.)の三姉妹からなるインディー・ガールズロック・バンド、Haim(ハイム)。

カリフォルニア州はロサンゼルス出身のHaimは、西海岸に根付いたサーフロックを香り豊かに、パワフルなポップミュージックを届けてくれるガールズバンドだ。

カントリーやフォークを内包した小気味いい旋律に、モダンポップを踏襲したリズムワークと音響制作、アレンジ。

一聴して軽やかに身を揺らしてしまうポップなメロディに気を取られてしまうが、特に2020年リリースの3rdアルバム『WOMEN IN MUSIC PT. III』では緻密なビートメイクが光り、より多彩で強固なものへと進化している。

最早インディーロック・バンドというよりはメインストリームのポップミュージックの舞台、ど真ん中へと躍り出たHaim。

その姿は西部劇さながらのカウボーイのように勇敢でロマンチックである。Haimの音楽的開拓にこれからも注目である。

代表作『Women In Music Pt. III』

Dream Wife

Dream wife(ドリームワイフ)
ロンドンはブライトン出身のガールズロック・バンド、Dream Wife(ドリーム・ワイフ)は各方面から注目を浴びる。

FAT WHITE FAMILYやShame、Goat Girlらとともにサウスロンドンシーンを盛り上げる新鋭として、

ないしは90年代のライオット・ガール・ムーブメントの音像と精神性を引き継ぐバンドとして、

そして今回お届けするガールズバンドの台頭における代表格として期待を寄せられるDream Wife。

ロンドンパンク直系のサウンドとキャッチーなメロディを軽快にかました1stアルバム『Dream Wife』からファンシーさを推し出したニューウェイヴへと舵を切った2ndアルバム『So When You Gonna…』まで。

これまでの作品を聴いてわかる通りDream Wifeの音楽には表しかない。一言で言うならばわかりやすさ。楽曲の構造そのものに細かな気遣いや工夫が見え隠れするものの、聴いてパンクやニューウェイヴと言い切ってしまえる明確さが潔くて、愛らしいポイントだ。

そんなDream Wife、デビューアルバム『Dream Wife』のインタビュー記事はこちらから。

代表作『So When You Gonna…』

The Big Moon

The Big Moon(ザ・ビッグ・ムーン)
先述のDream Wifeがロンドンパンクを継ぐガールズバンドであるが、同じくロンドン出身のThe Big Moon(ザ・ビッグ・ムーン)はブリッドポップを継ぐガールズロック・バンドである。

扇情的なヴォーカルとギターは、SuedeやElasticaを彷彿とさせる“鮮烈”さ。
そう、ここで声を大にして言いたいのが偉大なるバンド達を彷彿とさせるブリッドポップ由来のギターロックでありながら感じさせるのは懐かしさではなく“鮮烈”さである。

ヴォーカルラインやコーラスワーク、引き出しの多いギターフレーズ。90年代ブリッドポップに触れ、2000年代以降のオルタナティブロックも通過してきたThe Big Moonならではの感覚によるブリッドポップ・リバイバルである。

2ndアルバム『Walking Like We Do』ではピアノやシンセを多用したモダンポップスに接近。風通しの良さも兼ね備えつつ全作で聴かせてくれたギターロックはよりビルドアップした印象だ。

ベースラインやドラムのダイナミックさも獲得し、バンドサウンドはさらに広がった。次世代インディーロック・バンドとしての未来を託したくなる有望株である。

代表作『Here Is Everything』

HiNDS

HiNDS(ハインズ)
US、UKと続いたがスペイン・マドリードから活きのいいガレージサウンドを届けてくれるガールズバンドは、HiNDS(ハインズ)だ。

The LibertinesやThe Vaccinesといったバンドのサポートも務めたことのあるHiNDSは、じゃじゃ馬なガレージギターと気ままなヴォーカルとコーラスがクセになるバンド。

その姿はまさに最新アルバム『The Prettiest Curse』に収録されている楽曲「Just Like Kids (Miau)」のよう無邪気な子供そのもの。

そんなガレージサウンドとは別にスペインの土壌を感じさせるラテンダンス・ポップな要素もHiNDSというバンドを語るにあたって欠かせないアイデンティティだ。

目まぐるしいサウンドと奔放なヴォーカルとコーラスを支える背骨として機能するだけでなく、強烈な個性を助長。

恣意的な姿勢を貫き通すHiNDSだが、実は強か一面も持ち合わせたりする…?

代表作『I don’t run』

CHAI

CHAI(チャイ)
そんなHiNDSと共振するようにこちらも天真爛漫に音楽を鳴らす“ニュー・エキサイト・オンナバンド”こと、CHAI(チャイ)。

双子のマナ(Vo./Key.)とカナ(Vo,/Gt.)を中心とするCHAIは、国内だけでなくSXSWへの出演や全米ツアーも行う次世代ガールズバンド日本代表である。

楽曲を通してかわいいを再定義し、コンプレックスを肯定したポジティブなメッセージはもちろんのことCHAIの凄さは幅広い音楽性。

ファンクからダンス、サイケ、インダストリアル、グランジ…など他要素を内包したポップサウンドは越境的で、ゆったりとしたコミカルな唄メロと相まって恍惚としてしまう。

メッセージ性もしっかりと持ちながら、ハイセンスなサウンドも聴かせるCHAIが国内のみならず海外でも活躍するのは頷ける。

出演予定であったグラストンベリーが中止になってしまったのは残念だが、コチェラへの出演や世界ツアーを行う日も遠くはないはずだ。

代表作『PINK』

ガールズバンドのコラボ

CHAI×HiNDS

chai,hinds
日本とスペインを代表するガールズバンドであるCHAIとHiNDSによるコラボ楽曲「UNITED GIRLS ROCK ‘N’ ROLL CLUB」。

それぞれ2018年のフジロックに出演したことをきっかけに実現した今回のコラボ曲は日本語とスペイン語、英語が混在した歌詞となっている。

そのタイトルと“世界をドラマチックに 飲みこもうよ”といったリリック。

それをワールドワイドに活動するCHAIとHiNDSが三ヶ国語で唄うこととは――まさしくガールズバンドの台頭を告げるものであるとともに現代、まだまだマイノリティであるガールズバンドたちを鼓舞するということ。

代表作『UNITED GIRLS ROCK‘N’ROLL CLUB』

ガールズバンドが当たり前の世界に

ガールズバンドの新時代を切り開く5組を紹介!
CHAIとHiNDSをはじめとする今回紹介したガールズバンドたちはそういった使命感をもって活動を行っている。

そこに頼もしさを感じながらも、今後女性が何かを行う上で偏見や先入観、そして不自由がなく活躍することが当たり前である世界になることを切に願う。

今回ガールズバンド記事を執筆した際に、女性がバンドをやっているから、活躍しているから注目されるという視点は持ち合わせていないことをはっきりと断言しておく。

あくまでも彼女たちが鳴らす音楽そのものに魅力を感じてのことだ。

そのためにこれからもこの記事では、今回紹介しきれなかったガールズバンドを含めて多数のバンドを紹介していきたいと思う。

各ガールズバンドのおすすめ曲

  • Haim – Summer Girl
  • Dream Wife – Sports!
  • The Big Moon – Your Light (Official Video)
  • Hinds – Good Bad Times
  • https://youtu.be/VV4_eG-L8Sw
  • CHAI/HINDS – UNITED GIRLS ROCK’N’ROLL CLUB

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky