アメリカのサイケデリック・バンド、ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)の16作目となるアルバム『American Head』がリリースされた。

新作アルバム『American Head』の解説と共に、フロントマンのウェイン・コインが語った母国アメリカへの原点回帰について掘り下げている。

長い音楽キャリアを経て再認識した“アメリカン・バンド”としてのアイデンティティー。

一体、フレーミング・リップスは『American Head』でどこへ辿り着いたのか。

ザ・フレーミング・リップスとは

ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)
ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)はアメリカのオクラホマ州出身のサイケデリック・ロックバンド。

フロントマンのウェイン・コイン(Vo./Gt.)を筆頭に、マイケル・アイヴァンス (Ba./Key.)、スティーブン・ドローズ (Gt./Dr.)、ジェイク・インガルス(Key./Gt.)、デレク・ブラウン(Gt./Key.)、マット・ダックワース(Dr.)、ニック・レイ(Per./Dr.)の7人で構成されている。

1983年にバンドは活動を開始。

1986年にファーストアルバム『Hear It Is』を発表し、その後1987年に『Oh My Gawd!!!』 、1989年には『Telepathic Surgery』、1990年に『In a Priest Driven Ambulance』をRestless Recordsよりリリース。

そしてアメリカのレコード会社であるワーナー・レコードと契約し、『Hit to Death in the Future Head』を1992年にリリース。

1993年に『Transmissions from the Satelite Heart』、1995年に『Clouds Taste Metallic』、1997年に『Zaireeka』、1999年に『The Soft Bulletin』、

2002年に『Yoshimi Batlles the Pink Robots』、2006年に『At War with the Mystics』、2009年に『Embyonic』、2013年に『The Terror』、

2017年に『Oczy Mlody』、2019年に『King’s Mouth』、そして2020年に『American Head』をリリースした。

2003年にはグラミー賞、最優秀ロック・インストゥメンタル・パフォーマンス賞を受賞している。

来日公演

フレーミング・リップスは1999年に単独来日をソールドアウトさせる。

翌年2000年にはサマーソニックへの初出演を果たし、2002年、2006年、2009年にもサマーソニックで来日。

2010年に東京と大阪でツアー、2013年に東名阪ツアーで来日している。

そして2014年にはフジロック・フェスティバルへ出演した。

ウェイン・コインのルーツ

ザ・フレーミング・リップス(ウェイン・コイン)
ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)の最新作『American Head』。

フロントマンのウェイン・コインによって書かれた、“We’re An American Band(我々はアメリカン・バンドだ)”と言うショートストーリーが発表され、今作『American Head』について書かれている。

フレーミング・リップスはアメリカのオクラホマ州出身のバンドだが、ウェインは幼少期からThe Beatlesや母親の聴いていた60年代のアーティストであるTom Jonesなど、イギリスのバンドを愛聴してきた。

そのため、自分たちがどこの出身なのかは全く気にせずに音楽人生を歩んできた。

そして『American Head』を制作するにあたり、フレーミング・リップスのアイデンティティー考えたときに挙げられたのが、“We’re An American Band”と言う点である。

Grateful DeadやFunkadelicなどのクラシックなアメリカン・バンドについて考え始め、両親や兄弟、そしてペットなど身近な存在に対して感じる“フィーリング”を音楽に託すことに決めたのだ。

原点回帰をすることによって新たな冒険へと足を踏み入れたその第一歩こそが『American Head』である。

American Head

ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)の通算16作目となるアルバム『American Head』。

オープニングナンバー「Will You Return / When You Come Down」の静寂からバンドアンサンブルへと移行する曲展開は、フレーミング・リップスが“アメリカン・バンド”として新たな道へ歩を進めるプロセスとリンクしている。

まるで宇宙に放り出されたかのような無重力な空間を演出する楽器隊、そして共に浮遊する女性ボーカルがPink Floydを想起させる「Watching the Lightbugs Glow」へと続く。

シングル曲「Flowers of Neptune 6」と「Dinosaurs on the Mountain」では、心が締め付けられる温かさと切なさが同居した独自のサイケデリック・ワールドが展開され、このアルバムの方向性を提示する。

続く「At the Movies on Quaaludes」ではタイトル通り、映画館で睡眠剤やドラッグでハイになり、外の現実世界と映画館の非現実世界の狭間を漂うドリーミーな世界が広がる。

「Mother I’ve Taken LSD」、「Brother Eye」、「Mother Please Don’t Be Sad」では母親や兄弟についての追憶の旅へとリスナーを誘い、テーマである原点回帰が歌詞に色濃く反映される。

大麻を売り捌いていた若かりし頃へ思いを馳せた「You n Me Sellin’ Weed」では、曲の最後にパトカーのサイレンが挿入されているのが過去の自分への戒めのように捉えることもできる。

緊張感張り詰めるメロディーと巧みなビートメイキングが交錯する「When We Die When We’re High」、そしてウエスタンなアコースティックギターがサイケデリックと結びつく「Assassins of Youth」へと繋がる。

アメリカ人女性カントリーSSW、ケイシー・マスグレイヴスをフィーチャーした「God and the Policeman」では、過去のドラッグディーラーにまつわるトラウマティックな思い出について描かれている。

ラストナンバー「My Religion Is You」ではフォークソングの要素として宗教感について語られているが、フロントマンのウェインが信仰するのは彼の母親であるという愛へと帰還して幕を閉じる。

転機作である理由

ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)
ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)が『American Head』で手にした、“アメリカン・バンド”というアイデンティティー。

今作『American Head』では“アメリカン・バンド”と言うテーマが、コンセプト・アルバムのような一貫性を持ち各楽曲に織り交ぜられている。

ウェイン・コインの地元であるオクラホマ、家族、友達、愛、ドラッグなど、若かりし頃の数々の思い出が、歌詞に言語化されているだけでなく、一つのアートとしてアルバムに昇華されている。

そして、過去への回帰によって描かれるノスタルジックなバラードとサイケデリックな色彩は、美しくも心をギュッと握られるような悲しみを繊細に表現している。

フレーミング・リップスが『American Head』で辿り着いたのは、過去を全て認めて受け止める強さなのではないだろうか。

リリース

16thアルバム『American Head』

発売日: 2020年9月18日
ジャンル: サイケデリック
収録曲:
1.Will You Return / When You Come Down
2.Watching the Lightbugs Glow
3.Flowers of Neptune 6
4.Dinosaurs on the Mountain
5.At the Movies on Quaaludes
6.Mother I’ve Taken LSD
7.Brother Eye
8.You n Me Sellin’ Weed
9.Mother Please Don’t Be Sad
10.When We Die When We’re High
11.Assassins of Youth
12.God and the Policeman (feat. Kacey Musgraves)
13.My Religion Is You
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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プロフィール

ザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)

“ウェイン・コイン(ギター、ヴォーカル)とマイケル・アイヴァンス(ベース)を中心に1983年米はオクラホマにて結成された、ザ・フレーミング・リップス。

オルタネイティブから、サイケデリック、スペース・ポップ、はたまた実験的かつ前衛的なアプローチで、世界中のリップス中毒者から熱い支持を受けている。

世界を祝福する歓喜の音響 『ザ・ソフト・ブレティン』(99年)以降、世界的に大きな評価を受け、 『ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ』(02年)でリップス史上最高の売上を記録し、グラミー初受賞の快挙も成し遂げる。

06年 『アット・ウォー・イズ・ザ・ミスティックス(神秘主義者との交戦)』 、08年には初画監督作品となる 『クリスマス・オン・マーズ』 、 09年に 『エンブリオニック』、13年に『ザ・テラー』 をリリース。

その間にも、ビートルズの名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”)を、彼らならではの摩訶不思議な像次解釈にてカヴァーしたり、ピンク・フロイド(Pink Floyd)『Dark Side of the Moon(邦題:狂気)』のトリビュート・アルバム『Flaming Side of the Moon』を制作したりと、オリジナル・アルバム以外の制作活動にも、非常に貪欲に取り組んでいる。”

引用元:ザ・フレーミング・リップス(WARNER MUSIC JAPAN)

フレーミング・リップス代表曲(Youtube)

  • The Flaming Lips – God and the Policeman (feat. Kacey Musgraves) [Official Video]
  • The Flaming Lips – Do You Realize?? [Official Music Video]
  • The Flaming Lips “Race For The Prize” – Late Show #PlayAtHome

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。

兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。

2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。

サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。

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