国内ガレージロックバンドの雄、Mississippi Khaki Hair (ミシシッピ・カーキ・ヘアー)が、1stフルアルバム『From Nightfall till Dawn』をリリースした。

初の全国流通盤となるアルバムは、現行のインディーロックの意匠のもとサウンドデザインされた思慮深い1枚となっている。

今回はTaito Kimura(Vo/Gt)にインタビューを行い、今作についてはもちろん彼のルーツやバンドの今後など幅広く話を聞いた。

結成のいきさつ

Mississippi Khaki Hair(ミシシッピ・カーキ・ヘアー)

インタビュー:Taito Kimura(Vo./Gt.) インタビュアー:滝田優樹

-BELONGでは初インタビューとなりますので、Mississippi Khaki Hairの成り立ちから教えてください。
Taito Kimura:僕らはほとんどのメンバーが大阪市出身なので、大阪で活動していて。まずは僕とDaiki Usui(Ba.)の二人は高校時代にシューゲイザーポップバンドをやっていたんですよ。その時は2015年くらいなんですけど、ヤックやエックスラヴァーズみたいなシューゲイザーに留まらない音楽が流行っていたくらいの時期で。ジーザス&メリーチェインやケイジャン・ダンス・パーティーにも通ずるようなインディーロックバンドをやっていましたね。そのバンドは高校卒業した年に止めてしまったんですけど、そのタイミングでもともと好きだったポストパンクをやってみたいなと思って。Daikiと周りにいたメンバーで組んだのがMississippi Khaki Hairの始まりですね。

-なるほど。そうだったんですね。
僕は昔からフランツ・フェルディナンドがすごく好きで、自分たちもそういう音楽をやってみたいと思ったんですよ。

-もともとポストパンクであったり、シューゲイザーというルーツがあったかと思うんですけど、最初に聴き始めた音楽や音楽に目覚めたエピソードがあれば教えてください。
僕が小学2年生くらいの時なんですけど、テレビCMでさっき言っていたフランツ・フェルディナンドの「Do You Want To」が流れていて。直感的にこれが良い!と思いました。それとベッカムがリフティングしているボーダフォンのCMで、ザ・ダンディー・ウォホールズの「Bohemian Like You」が流れた時も影響を受けましたね。この2曲が幼少期の深いところにあるのかなと思います。

-小学生の時から洋楽を聴いていたんですね!ということはご両親も洋楽を聴いていたんですか?
両親は邦楽が好きなんですけど、はっぴぃえんどや吉田拓郎を聴いていますね。日本のフォークか洋楽だとボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクルとか。今、そういう音楽を聴いてみるとフォークに留まらず、インディーロックにも通ずる要素があると思うんですけど、そういう音楽を小さい時から聴いていて。あとは兄がすごくバンドサウンドが好きで、その影響もありますね。兄は僕よりも10個年上で、バンドのギターボーカルをやっていました。

-楽器をやろうと思ったタイミングはいつになりますか?
それもちょうど小学2年生くらいの時ですね。クリスマスの朝に目覚めるとリビングにドラムがあって、それがクリスマスプレゼントだったんですよ!ちゃんとサンタクロースにしか分からないように辞書の中にサンタクロースへの手紙を挟んでいたんですけど、無視されて・・・(笑)。その時に欲しかったのはマウンテンバイクだったんですけど、何故かそれがドラムになっていて(笑)。ドラムは欲しかったわけじゃないんですけど、とりあえずはしゃいでおこうと思って、気を使ってはしゃぎました(笑)。それが楽器を始めた理由で、中学生くらいまではバンドを組まずにドラムだけやっていましたね。

-なんというエピソード(笑)。ご両親もドラムを習わせたかったんですかね?
そうみたいです。クリスマスの粋な計らいみたいにして、ドラムを習わせてくれたんで。無理やり習わせるとかではなかったですね。

-では話が変わりますが、2019年に上京されてきたということですが、今年の春に現体制となったということでしょうか。
そうですね。新メンバーが二人加入しました。

-それまでは関西を拠点にして活動されてきたと思うんですけど、上京してから関西と音楽の制作環境やライブ活動とか、バンドで活動していく上で大きい変化はありましたか?
僕らの音楽に対する取り組み方やアプローチが大きく変わりましたね。特に大きな変化はソングライターとしてより研究するようになりましたね。メンバーも練習量を増やしたり、こちらに来てお世話になっている方達からも色んな影響を受けて。以前のMississippi Khaki Hairは楽しいことに重きを置いていたんですけど、それ以上に今は積極的に具体的な取り組みを行うようになりましたね。

-上京してきて作曲のスタイルが変わったり、アレンジの仕方が変わったりしたことはありますか?
もともとインディーロックが好きで、キャッチーかつ強いフレーズを淡々と繰り返すものが良いと思っていたんですよ。それゆえに曲の構成が固まってきた時点で、お決まりのパターンも決まってしまっていて。それがインディーロックの長所でもあり短所だったわけですけど、サウンドプロデューサーの方と話したりして全体を客観的にみてバランスをとることが大事だと思うようになりました。そういうデザイナー的な目線を獲得して、サウンドが少しづつ変わっていったように思います。

From Nightfall till Dawn

-それではこれから発売されるデビューアルバム『From Nightfall till Dawn』について聞いていきたいと思います。今作には2018年に発売リリースされてたEPの曲も入っていたと思いますが、このアルバムを制作するにあたって新しく作った曲はありますか?
「Gravity」と「Moonshadow」、「Hold On」、「Live for Nothing」ですね。これらの曲は1から作り始めましたね。

プロデューサー

takeshiiwamoto
-今回バンド初の試みでQUATTROの岩本岳士さんがプロデューサーですが、どうして彼にお願いしようと思ったのですか?
洋楽テイストの邦楽をやるという意味で岩本さんの持つキャリアだったり、ノウハウやアイデアを僕に継いで欲しいという気持ちを持ってくれていたみたいで。最終的には僕らのライブに来ていただいて、その時にお願いすることにしました。僕は邦楽に詳しくないというのもあって、QUATTROについても知らなかったんですけど、後からQUATTROがやってきたことを知ってお願いしました。

-実際に岩本さんはどんな風にアルバム制作に携わっていったのでしょうか。
僕自身のキャラクターを配慮していただいた上で、ほとんど任せてくれましたね。岩本さんはダメなところはダメだとはっきり言われるんですけど、同時にヒントも与えてくれて、それをバンドメンバーで解決するという形で進めていきました。作品の音作りに関してもアドバイスをもらいましたね。お互いに信頼関係もできていましたし、今の僕らにとってベストなやり方で進んでいったと思いますね。

サウンド

-サウンド面ではシンセの使い方が変わり、ダンサブルで風通しの良さを感じたのですが、岩本さんからのアドバイスもありましたか?
シンセがより大胆になって他の楽器との絡みも増えましたね。そこは岩本さんからの影響が強いと思います。僕自身は鍵盤楽器が得意な方ではないので、ありがたかったですね。

-それに比例してベースやドラムも重厚感を増した印象なんですが、それもシンセに負けないように意識していたのでしょうか。
基本的にMississippi Khaki Hairはロックバンドであると思っているので、おしゃれなシンセポップになるのは違うと思っていて。その結果、本来のバンドアンサンブルがよりトゲトゲしたサウンドになったので、かえってバランスがとれたように思います。

-さっき鍵盤楽器が得意でないとか、おしゃれなシンセポップになり過ぎないようにと言っていましたが、どういったことがあってそう思うようになったのでしょうか。
鍵盤楽器の強みって打楽器的な弾き方もできる上に音も伸ばしやすいし、コードも押さえやすいんですごく便利な楽器だと思うんですよ。でもそこに頼りすぎるとインディーロックとしての面白味がなくなると思うんですよね。今の日本のバンドシーンにおいてのシンセの比重の大きさはどうなんだろうと思うこともあって。僕らとしてはあえて音をスカスカにしたり、独特な音を作ったり、引き算で音楽を作るように考えてやっていますね。

-そこの意識がうまく発揮されたなっていう曲は今回のアルバムだとどの曲だと思いますか?
「Moonshadow」はがっつりロックバンドって感じなんですけど、日本のロキノンサウンドもちょっと意識しながら、キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンみたいな切れ味の良いガレージロックをイメージして作っていたんですよ。「Moonshadow」の曲中にはひずんだシンセがずっと入ってるんですよね。ルート弾きが入ってる中でシンセが出すぎず、引っ込みすぎずバランスよくできましたね。

楽曲タイトル

-収録楽曲でいうと、「Chain of Flowers」はザ・キュアーの楽曲と同名曲があったり、「You Made Me Realize」はマイ・ブラッディ・ヴァレンタインに同名曲があるじゃないですか。楽曲自体は似てないんですけど、タイトルをつける際に意識された部分はありましたか?
そう言われるとそうですね。確かに影響はあると思います。ザ・キュアーもマイ・ブラッディ・ヴァレンタインも好きなので。意識はしてなかったんですけど、そこからの影響でタイトルをつけたんだと思います。

-意図的にタイトルをつけたわけじゃなかったんですね。
そうですね。かっこいい言葉と思って引っ張って来てるんですけど、意識的ではなかったですね。

歌詞

-歌詞にも触れたいなと思います。歌詞の内容はハードボイルドな内容だと思うんですけど、“彼女はシンディローパーを聴いていた”っていう部分が印象的でした。文学的なタッチが光る歌詞だなと思うんですけど、作詞についてこだわりはありますか?
もともと本がすごく好きで、サリンジャーやビートニクのジャック・ケルアックをよく読みますね。一番好きな作家はウィリアム・サローヤンなんですけど、そういうところから散文詩に興味を持つようになりました。でもそれ以上にフランツ・フェルディナンドへの憧れから歌詞にあえて熱を入れすぎないようにしていて。わざと歌詞に記号性を残すようにしているんですよ。例えば自分のプライベートが出すぎないようにしていますね。他にも押韻であったり、耳触りのいい歌詞を作るのも大事にしていますね。歌詞も引き算が大事だと思います。

-インディーロックからの影響が強いと言っていましたが、BELONGの記事で次世代のガレージロック・バンドの内容でMississippi Khaki Hairも掲載しました。ガレージロックにまとめられて違和感を感じることはなかったですか?
ガレージロックの記事にまとめてもらってすごく嬉しかったです!小さい時にジェットやザ・ヴァインズも好きでしたし、ザ・ストロークスやレイザーライト、アークティック・モンキーズも好きなので自分の中にはガレージロックの素養があると思います。

-そうなんですね!というのも僕自身、Mississippi Khaki Hairをガレージロックの枠組みに入れることに少し抵抗があったんですよ。
ガレージロックの括りに入れてもらって違和感は感じなかったですね。それよりも僕たちが憂慮しているのがジャンルに縛られることで。ポストパンクをやってるから偉いとか、インディーロックだから値打ちがあるとか、そういう文化的な権威主義が苦手で。ジャンルはリスナーやメディアが独自に判断するのが良いと思います。僕らは純粋なポストパンクでないといけないというのはないので、色んな見方があって良いと思います。自分の中にない言葉で他の人が、自分たちの音楽について語ってくれるのは嬉しいことだと思いますね。

バンドのルーツ

-それではMississippi Khaki Hairの音楽性であったり、活動に影響を与えた音楽作品を3枚あげるとしたらどういったものになりますか?
フランツ・フェルディナンドのセカンドアルバム『You Could Have It So Much Better』とフォンテインズD.C.のファーストアルバム『Dogrel』、ザ・ホラーズのセカンドアルバム『Primary Colours』ですね。

フランツ・フェルディナンド

フランツ・フェルディナンドはポストパンクやアートロックでありながらも、ダンスフロアにすら届くリーチの長さがすごいと思っていて。

フォンテインズD.C.

フォンテインズD.C.はすごくストレートでワクワクするなと。手垢まみれじゃないポストパンクが聴けて嬉しかったですね。

ザ・ホラーズ

-ザ・ホラーズのセカンドアルバム『Primary Colours』は今作に近いなと思いますね。
ザ・ホラーズも昔から影響を受けていて、今作の滑らかなシンセの質感は彼らからの影響が大きいですね。

-海外のポストパンクやインディーロックバンドからシンパシーを感じると言っていましたが、日本だと共感できるバンドはどういったところになりますか?
No Busesです。ボーカルの近藤君と仲良いんですけど、自分たちとすごく近いものを感じますね。面識はないんですけど、TAWINGSもかっこいいと思います。

-Mississippi Khaki Hairもそうですけど、2000年代のインディーロックに影響を受けた日本の若手バンドが出てきていると思うんですけど、そういったシーンを自分たちが牽引していくんだっていう使命感はありますか?
日本のインディーロックシーンを盛り上げていきたいと思います。僕らはNetflixであったりYouTubeであったり、ネット環境が充実したことにに対するカウンター世代って言われてますけど、文化資本が誰しもに平等に降り注ぐ時代になったわけで。その中でインディーロックの情報がしっかり入ってきて、みんなそれにインスパイアされてバンドを始めている状況が僕にとっても嬉しいなと思います。ふらっとライブハウスに入ってかっこいいバンドを見れるのは幸福なことだと思うんですけど、イデオロギーが欠落しているバンドもたまにいるので。僕らはそこをちゃんとしていきたいと思っているんで、勉強・研究して新しいアイデアを広めていきたいなと思います。

-海外のインディーロックだとロンドンやアイルランドのダブリンとか、地域ごとに特色が出てきていると思うんですけど、日本も地域ごとに特色があれば面白いと思います。例えばCHAIみたいに海外のレーベルと契約する日本のバンドが増えていけば面白いなと思いますね。
おっしゃる通りで日本のインディーロックシーンって、海外の文化や音楽をダウンロードするばかりで、アップロードできてないんですよね。お決まりのパターンを100%でやれることが正解みたいな。真似事とは言わないですけど、インディーロックは海外から入ってきたもののコスプレみたいになりやすいなと思うんですよね。逆にお決まりのパターンでかっこいいバンドになりやすいというのもあるんですけど、自分たちから海外に発信できるようになって本物のシーンと言えるようになると思います。僕たちはバンドとしてそこを目指していきたいですね。

-最後に今作をどんな人に聴いてもらいたいと思いますか?
Mississippi Khaki Hairを始めた当初はタワレコのポップで、“わかる人だけ聴いてくれ”みたいに書くようなスタンスだったんですけど、今はそういうのも良くないと思っていて。今作はコンセプトがいくつもありながら普遍的でもあると思っています。誰しもに伝わるようになっていると思うし、力がある曲が集まっていると思います。もちろんみんなに聴いてほしいんですけど、注意深く聴いてくれると嬉しいです。

リリース

1stアルバム『From Nightfall till Dawn』

発売日: 2020年11月11日
収録曲:
1.Hurts
2.Slovenia
3.Gravity
4.Rusty Sapphire
5.Chain of Flowers
6.Moonshadow
7.Phone Call
8.You Made Me Realize
9.Blood
10.Hold On
11.Live for Nothing
12.True Love
フォーマット:CD
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イベント

ストリーミングライブ

THE PURSUIT OF HAPPINESS
・日程:2020年12月1日(火)
・場所:下北沢BASEMENTBAR(TOKYO)
・出演:Mississippi Khaki Hair / No Buses / Tomato Ketchup Boys
・開演:19:30
・チケット:¥1,500

ワンマンライブ

1st full album “From Nightfall till Dawn” Release Party
・日程:2020年12月19日(土)
・場所:SOCORE FACTORY(大阪)
・出演:Mississippi Khaki Hair
・開場/開演:19:00/20:00
・チケット:¥2,500(前売り料金・ドリンク代別)

Mississippi Khaki Hair代表曲(Youtube)

  • Mississippi Khaki Hair – Moonshadow
  • Mississippi Khaki Hair – Phone Call
  • Mississippi Khaki Hair – I Never Curse the Night

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky

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