UKはサウスロンドンを拠点に活動する男女7人組ロックバンド、Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)。

先日リリースされたデビューアルバム『For the first time』は、全英チャート初登場4位を獲得した。

英国国内のみならずここ日本でも注目を浴びるBlack Country, New Roadの音楽には様々なジャンルの要素が詰め込まれ、さらに勢いを増すロンドンの音楽シーンをそのまま体現するかのようだ。

そんなBlack Country, New Roadのルーツとは? そしてデビュー作『For the first time』について、メイとチャーリーにインタビューを行った。

Black Country, New Roadインタビュー

Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)2
インタビュー:メイ・カーショウ(Key.)、チャーリー・ウェイン(Dr.) インタビュアー:滝田優樹 通訳:原口美穂

-まずBELONGでは初インタビューとなりますので、Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)の成り立ちからをお聞かせください。
メイ・カーショウ:私たちのほとんどは、高校の時にケンブリッジで出会ったの。私とルイスは同じ音楽クラスで、チャーリーは私たちの後輩だった。で、アイザック、ルーク、テイラーの3人は近くの高校に通っていて、そのあとジョージアとルイスがギルトホールで出会った。ジョージアはもともとコーンウォール出身。何人かは他のバンドに一緒にいたりもしたし、その流れでこのメンバーで自然に音楽を演奏するようになって、今のバンドがスタートしたの。

Black Country, New Roadの意味

-Black Country, New Roadというバンド名の由来を教えてください。
チャーリー・ウェイン:“Black Country, New Road”っていうのは、イギリスのミッドランドに実在する道路の一部なんだけど、バンドはその道と何の関係もない(笑)。Black Countryはイギリスにある工場地帯でもあるんだけど、その名前を取った理由は、とにかくバンド名を考えて、それについて話し合いをするのに皆が疲れてしまったから(笑)。それで、バンドメンバーの何人かでWikipediaで記事がランダムに出てくるジェネレーターを使い始めたんだ。あれは僕の誕生日だったのを覚えてる。アイザックと遊んでたら、彼が“Black Country, New Road”っていう名前にたどり着いた。最初に聞いた時は最悪だと思ったし、他のメンバーも嫌がってたと思う。でもアイザックの意思は固く、そのままその名前になったんだ。でも今となっては、気に入っているよ。バンドにとっても意味をなすバンド名になってきたしね。
メイ:バンド名の候補は気が滅入るほど沢山あった。1ヶ月間毎日誰かが必ず新しい候補を出してた。本当にノンストップだったのよ。もう私なんて最後の方は、べつになんでもいいって思っちゃってた(笑)。勝手に決めてって(笑)。それくらい大変だったの(笑)。

-Black Country, New Roadはハードコアやポスト・ロックを軸にして、ジャズやクラシックなど他要素を孕んだ音楽性となっています。メンバー7人の個性が詰め込まれたものだと思うのですが、メイとチャーリーはこれまでどのような音楽を聴いてきたのでしょうか?
メイ:私はポップ・ミュージックを沢山聴いてきた。あとはクラシック音楽も同じくらい沢山聴いてきたわね。The Beatlesやポール・サイモンとか、父親が聴いていた音楽も。チャーリーはどう?
チャーリー:僕は、母親がKLFやThe Fall、Motörheadなんかが好きだったから、そういう音楽を沢山聴いていたな。父親はエルヴィス・プレスリーやGrateful Dead、The Velvet Undergroundが好きだったから、それも聴いてたな。

サウスロンドンの音楽シーン

-Black Country, New Roadが拠点としているロンドンといえば、北はGirl RayやSorry。南はShameやFat White Familyなど、世界でも有数のインディ・ロックのホットスポットです。その他、Ezra CollectiveやThe Expansionsなどのジャズやネオ・ソウルなどなど、非常に刺激的な場所だと思うのですが、お二人から見たロンドンはどのような場所ですか?
チャーリー:僕にとっては常に音楽の街。ロンドンに引っ越してきたのもそれが理由。高校の時から、自分が好きなバンドがウィンドミルでギグをやっているのを知っていたし、ロンドンにいけばきっと音楽的な刺激をたくさん受けて、色々学べるんだろうなと思ってた。それに、ロンドンはとにかくデカい。だから、何かに興味を持てばそれが手に入るし、実際に経験も出来る。自分以外にもそれに興味を持っている人が周りに沢山いるし、そのおかげでそれを深く追求できる。それって最高だと思うね。
メイ:学生の時は、オックスフォード・ストリートに行くのがすごく楽しみだったのを覚えてる。広いロンドンの複雑な地下鉄で迷ったりして、私は都会にいるんだって気持ちになってた。音楽に関しても、ロンドンみたいに音楽が満ち溢れている街はないと思う。特にすごいのはその幅広さ。5ポンドで学割のチケットを買ってクラシックのコンサートが見れたり、ウィンドミルみたいなベニューに行くと、本当に色々なタイプのバンドのショーが見れたりする。何でもあって、経験できるのがロンドンの魅力だと思う。

-アルバムの収録曲「TRACK X」にはJerskinやblack midiといった同じサウスロンドンのアーティストやバンドが出てきていましたね。上記のようなサウスロンドンを取り巻く音楽シーン(インディ・ロックやジャズ、ソウル、グライムなど)をそのまんま表現してくれているバンドだと思います。まるでBlack Country, New Roadを聴けば今のロンドンの音楽がわかる!みたいな。自分たちをどのようなバンドだと思いますか?
メイ:この質問に答えるのは難しい。親戚からどんな音楽って聞かれる時も言葉に詰まっちゃうの(笑)。
チャーリー:こういう質問には気をつけることにしてるんだ(笑)。何かひとこと言えば、それが広がって定着してしまうからね(笑)。大雑把だけど言えるのは、僕たちが作っているのはオルタナティヴ・ロック、もしくはロック・ミュージックってことかな。ロンドンには本当にたくさんバンドがいて、周りにいる僕らに近いバンドの音楽も素晴らしいし、自分たちも聴いて楽しんでいる。僕たちのサウンドはblack midiやsquidとは違うし、彼らのサウンドが直接的に僕らのサウンドに影響することはないけど、近くで彼らの活動を見て、そこから色々と学べるのは幸運なことだと思う。例えばdeathcrashっていうバンドとツアーをした時は、もっと柔らかく静かに音楽を演奏する方法を学んだ。僕らのサウンドが“ロンドン・サウンド”と言われる理由もわかるよ。そうやって、周りのバンドや音楽から色々と学んで、それにフィルターをかけて自分たちの音楽に取り入れているからね。

-ここ日本でもBlack Country, New Roadは全英チャート初登場4位を獲得するなど、注目を浴びています。日本のメディアやライターのみならず、CDショップでも大きな展開をしてあなたたちは日本の音楽リスナーからも受け入れられています。(もちろん私もあなたたちのファンです)これについてどう思いますか?
メイ:すっごく嬉しい。早くツアーで来日にできたらいいのに。そしたらおじいちゃんや叔母さんもライブに来れるし(笑)。バンド活動を初めてから、ギグで忙しくてここ数年全然日本に行けてないの。だから、日本に行ける日が早く来ることを祈ってる。すごく良い旅になると思うわ。
チャーリー:僕も2015年に日本に行ったことがあって、すごく良い経験だったのを覚えてる。本当に素晴らしい国だし、絶対にまた戻りたい。それがすぐに叶うといいんだけど。ロンドンのバンドにとって、日本に行くのって皆夢見てることだと思うよ。遠いからこそ行ってみたいし、自分の国と違うからこそ刺激的でもある。そんな日本のみんなが僕たちの音楽を聴いて楽しんでくれているなんてびっくりだし、最高だね。

-日本以外からの世界の反応はどうですか?
メイ:西ヨーロッパからの取材は多い。
チャーリー:僕はこないだトルコのイスタンブールのメディアから取材を受けた。あれは楽しかったな。
メイ:オーストラリアも。
チャーリー:そうだね。あと、インタビューじゃなくてもメッセージも色んな場所からくるよ。パラグアイとか南アメリカとか。日本からのリアクション同様、これもまた素晴らしいことだと思う。
メイ:クレイジーよね。

For the first time

-ここからはデビュー作『For the first time』についてお聞きします。まずはタイトルについて、かなりドストレートなタイトルになりましたね(笑)。なぜ、このようなタイトルを付けたのでしょうか?
メイ:これはチャーリーが答えて。
チャーリー:バンド名と同じく、アルバム名を考えるのにも苦労したんだ(笑)。最悪な名前の候補が沢山あった(笑)。だから、一番安全な名前で行くことにしたというわけ(笑)。このアルバムはライブのセッティングでレコーディングした作品だから、僕はどれか有名なライブ・アルバムの一つから名前を取りたかった。それで、”for the first time”は、『We’re All Together Again for the First Time』というデイヴ・ブルーベックのアルバムから取った言葉なんだけど、ライブ・レコーディングにも、ファースト・アルバムにも合うタイトルだと思ってそんなタイトルに決めたんだ。

-『For the first time』のプロデューサーにはMy Bloody Valentineを手がけたアンディ・サヴァースが参加してますね。その経緯は?
メイ:前に一緒に作業したことがあるんだけど、その時すごく馬が合ったの。アンディだったら作業がしやすいことがわかっていたから、彼に依頼することにした。彼はすごく優しくて、バンドをサポートしてくれる。彼の意見もしっかり持っていて聞かせてもくれるんだけど、それを私たちに強制するわけじゃない。サウンドをより良くしながら、私たちらしさもきちんと残してくれるのがアンディ。だからまた一緒に作品を作りたかったの。

-静と動、幅広い音楽要素が入り混じるボーダーレスな内容となっています。『For the first time』はライブレコーディングの形式を用いて制作されたようですが、なぜそのように行ったのですか?また今作のコンセプトを教えてください。
チャーリー:作品にコンセプトはないし、ライブレコーディングになったのも意識的ではない。僕らの普段のやり方がそれだから、自然の流れでそうなったんだ。もし敢えて言うとすれば、コンセプトは、当時バンドが作っていた音楽やアイディアの記録かな。何かどうしても達成したかった目的や野心があったわけじゃないんだよ(笑)。とにかく良い音楽のコレクションを作って、それをライブで演奏したかった。それで今回のアルバムが出来上がったんだ。
メイ:どの曲も、ライブパフォーマンスのために書かれたものなの。だから、ライブレコーディング以外の方法でレコーディングするのは逆に不自然だったのよね。

-今作について、ノイズやスリリングな展開があることから日本のメディアではポスト・ハードコア文脈で語られることが多いです。個人的にはマイク・キンセラ率いるAmerican Footballのように抒情的な側面、あるいはUSエモの系譜的なものも感じたのですが、お二人はいかがですか?
チャーリー:American Footballってもっとソフトじゃない?もっとライトというか。でも、確かに複雑な動きがある面ではそうかもしれない。USエモの要素はあると思うよ。僕たち自身、結構沢山聴いてる音楽でもあるし、好きでもある。でも、意識してUSエモを取り入れているわけじゃない。特徴の一つとまではいかないと思うね。
メイ:無意識だけど、サウンドのどこかでそれが流れていることはあるかもしれない。ポスト・ハードコアっていうのはちょっとビックリ(笑)。
チャーリー:ハードコアの要素が入ってると思ったことは正直一度もないな(笑)。少なくとも、僕が聴いたことのあるハードコアバンドからの影響は入ってないと思う(笑)。

Black Country, New Roadのルーツ

-「SCIENCE FAIR」では“影響を受けるマイクロインフルエンサーを次々と変えながら”という歌詞もありましたが、Black Country, New Roadの音楽や活動に影響を与えた、バンドのル-ツにあたるアルバムを3枚教えてください。また、そのアルバムからどのような影響を受けていると思いますか?
メイ:アルバム3枚か・・・。難しいな。
チャーリー:桁違いの難しさ(笑)。今回のアルバムに関してだったら、『Pop 2』(Charli XCX)。メンバー全員が好きで、アルバムを書いていた時期にみんな聴いてたからね。
メイ:今私たちのプレイリストをチェック中(笑)。皆それぞれ、色んな時期に色んな音楽を聴いていたから、絞るのが大変なのよね。
チャーリー:アルバムを選ぶのは特に難しい・・・。

-では、アーティストや音楽作品だったらどうでしょう?
メイ:それぞれ聴いていた時期は違うけど、アーサー・ラッセルは皆聴いてたよね?
チャーリー:そうだな。
メイ:”Track X”にはその影響が反映されてると思う。
チャーリー:確かに。
メイ:Arcade Fireは?
チャーリー:特に『Funeral』はそうかも。でもそれは、アルバムを作り終わった後じゃない?
メイ:そうだっけ?私はその前だと思ったけど。2年前の夏くらいに沢山聴いてたイメージかな。
チャーリー:それって、トラックを全部書き終えたくらいの時期だろ?
メイ:そうだ、その通り。書き終えた後、レコーディングの前のタイミングね。
チャーリー:アリアナ・グランデを沢山聴いてたのも覚えてる。『Sweetner』と『thank u, next』を特に聴いてた。そんな感じ(笑)。今言った中から選んで(笑)。

-最後に日本のリスナ-にメッセ-ジをお願いします!
チャーリー:これは(日本語が話せるから)メイじゃなきゃ(笑)。
メイ:(日本語で)アルバム聴いてくれてありがとうございます(笑)。これからも私たちの音楽をチェックしてね(笑)!
チャーリー:そして、日本に行けるのを楽しみにしてる!

-チャーリーも日本語で言いたい(笑)?
チャーリー:それができたらいいんだけど(笑)。僕は日本語は全く話せない。でも勉強はしたいんだよね。日本の文化って世界で評価されている文化だから、言語がわかったらもっと深く理解できるんだろうなって思うから。

アルバム

1stアルバム『For the first time』

発売日: 2021/2/5
収録曲:
01. Instrumental
02. Athens, France
03. Science Fair
04. Sunglasses
05. Track X
06. Opus
07. Black Country, New Road w/ Stargaze orchestra – Athens, France live from Haldern (Bonus Track)
フォーマット:CD、アナログ
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コンピレーションアルバム『Speedy Wunderground – Year 4』

発売日: 2019/12/6
収録曲:
01. Sustained Threat / Scotti Brains
02. bmbmbm / Black Midi
03. The Dial / Squid
04. Athen’s, France / Black Country, New Road
05. Heart Attack / All We Are / Alex Kapranos
06. I Feel Fine / Tina
07. Concept / Treeboy & Arc
08. Taking on Time / Sinead O’Brien
フォーマット:Mp3
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Black Country, New Roadバンドプロフィール

Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)1

“全員がケンブリッジ周辺の出身で、現在はロンドンを拠点に活動、アイザック・ウッド(ヴォーカル/ギター)、ルイス・エヴァンス(サックス)、メイ・カーショウ(キーボード)、チャーリー・ウェイン(ドラム)、ルーク・マーク(ギター)、タイラー・ハイド(ベース)、ジョージア・エラリー(ヴァイオリン)の7人から成るバンド、ブラック・カントリー・ニュー・ロード(以下BC,NR)。これまでにイギリスで行ったライブはすべて完売、リリースした2曲のシングルはプレミア化、〈プリマヴェーラ〉や〈グラストンベリー〉といった海外の大型フェスからのオファーも受け、更にはソニック・ユースのキム・ゴードン、レディオヘッドのエド・オブライエンという大物2人とフランスのテレビ番組で共演、デビュー前から多くのレーベルより注目を集めた彼らが、争奪戦の末〈Ninja Tune〉との契約を発表!デビュー作『For the first time』を2月5日にリリースすることが決定”

引用元:Black Country, New Road(ブラック・カントリー・ニュー・ロード)バンドプロフィール(Beatink)

Black Country, New Roadの評価

“世界最高のバンド – The Quietus

「Sunglasses」は凄い曲だね…わかりやすい曲ではないかもしれないけど、完全に音楽の旅に連れていってくれるし、彼らは自分たちの音をすでに確立してる。彼らの、自分たちがやっていることに対する情熱が集結した感じは最高だ!彼らと共演できてよかったし、またやりたいね。 – Ed O’Brien (Radiohead)

「Sunglasses」はファニーで、鮮やかで、そして紛れもないアンセムだ – The Guardian

ポストロックからポストパンク、そしてフリージャズのノイズの爆発へと変化していく9分間のワイルドな音の旅だ – Stereogum

張り詰めた緊張感によって埋め尽くされたカオスな音の旅 – NME”

引用元:Black Country, New Roadの評価(Beatink)

Black Country, New Road動画

  • Black Country, New Road – ‘Track X’ (Official Video)
  • Black Country, New Road – Sunglasses
  • Black Country, New Road – Echoes with Jehnny Beth – ARTE Concert

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky

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